遅すぎた依頼

トビカゼ

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シナリオID:68

オープニング


「助けてください!」

 リブラネスタの冒険街の小さな酒場。冒険者ギルドにつながる小さな店に飛び込んできた一人の婦人が口にした言葉。
 突然の出来事にギルド全体はどよめきを起こすも、酒場の経営者は手慣れた様子で給仕に水を手配させる。

「まぁ、落ち着きな。これを飲んでから何が起きたか話してみろ」

 相当な距離を走ってきたのだろう。肩は大きく上下し、纏う衣服も泥だらけ、火急の依頼を持ってきたのは想像にたやすいことだった。
 だからこそ、正確に事態を把握すべきと、周りの冒険者たちを窘め、女性が話し出すのを待つ。

「はい……実は」

 話の内容は非常に単純だった。
 ここから徒歩で数日の距離にある鉱山を有する小さな村。
 その鉱山に突如蛮族、とはいえ10割ゴブリン種の一団に襲撃が行われ、自身の夫を含む数人の炭鉱夫が逃げ遅れたという。
 特に戦いの備えもない小さな村では鉱山に立ち入ることも出来ず、居てもたってもいられなくなった彼女は村から走ってここまでやってきたという。

「なるほどな……よくわかった。この依頼受けるとしよう」

 かくして依頼は成立、女性は安堵のため息と共にすがすがしいまでの笑顔になる。

「ああ、よかった。助かるのね……!」

 喜ぶ女性はそのまま店員に案内されるがままに店内へと送られていく。
 そして残された冒険者たちを前で酒場の経営者は首を振る。

「何人か動けるやつはいるか? 悪いが依頼を受けてもらいたい」

 鉱山への救助依頼だろうか。
 いや、それはもう無理だ。察しがいい者たちはとっくに気づいている。
 事件の襲撃発生から数日、何の装備もない炭鉱夫が複数のゴブリンを相手に生き残れるわけがない、と。

「まぁ、わかってるやつもいると思うが。依頼の内容は『鉱山の奪取』だ」

 はっきりと、依頼の内容を言い切った。人命救助ではなく、奪取と。

「正直救助は望めない。あの女に関しちゃ……放っておいても構わんが、もし気になるならどうするかは任せる」

 遺品を回収し、はっきりと事実を告げるか。
 詳細を隠蔽し、事実を隠して優しい嘘を述べるか。
 それとも、奇跡を信じて行動するか。
 どちらにせよ、依頼そのものには強く直結はしない内容だ。

「そういう事だ。おい、情報屋。お前馬車を扱えたな、何人か揃えられたら現地に向かってくれ」

 ぶっきらぼうに、店の一角でゴールドを数えていた一人の情報屋の少女に声をかける。
 少女は「えぇー」と不満たらたらな声をあげるも、経営者の情報量で報酬を出す、の一言で態度を一変させた。

「仕方ないなぁ。まぁ、移動もそこそこ急ぎっぽいし、これでも結構情報には詳しいんだ。鉱山の事とか教えてあげるよ。気に入ったら情報屋としてお気に入りに登録よろしくね」

 どうやら情報提供役として動いてくれるようだった。
 30分もすれば準備は終わり、出発の準備が整い、君たちは目的地へと出発することになる。


 依頼そのものはゴブリンの討伐。初めての仕事でも、きっと問題なく片づけられるほどの難易度だろう。
 しかし、鮮明に焼き付いたあの女性の事は、どうなるのだろう。
 君達には、二つの行く末が委ねられた。

解説

■目的 依頼内容は『鉱山の奪取』 鉱山へ潜り込んだゴブリン種の殲滅です。 また、追加の依頼という形で依頼人の女性の対応を依頼されています。 彼女に対してどのように対応を行うかは、皆さまに一任されている状態ですが、手に余る場合は放棄していただいて問題ない内容です。 ■状況 馬車で数日かけた場所にある、小さな村。その鉱山に立てこもったゴブリン達。 村の外には飛び出してはこないものの、仕事場である鉱山に立ち入ることが出来なくなっています。 襲撃が発生してから3日は経過しており、逃げ遅れた人々の生存は絶望的です。 また、村や鉱山については情報屋の少女から得た『それまで』の情報であり、情報外の出来事が発生することも想定されます。 ■鉱山について 希少な鉱物は発掘されはしないものの、一般的に普及する鉱物が産出される鉱山です。 人の手は最奥まで入っており、最低限洞窟を照らせる灯りは各箇所に用意されていますが、やや薄暗い場所に変わりはありません。 また、入り組んでいるうえに道も枝分かれしています。 詳細地図は渡されているため、迷う事はありません。 採掘用の道具や、つるはしなど鉱山内部に残されており、必要な場合は使っていいという話はもらっています。 毒ガスの類が発生することはありません。 ■敵について ゴブリンが十数体、明確な数は不明です。 ホブゴブリン2体、目撃情報から武器は持っていなかったといわれています。 これら以外に障害が現れる可能性はあります。 入念に注意した方がよいでしょう。 ■NPC ・酒場の経営者 冒険者に仕事を与えることに手慣れた経営者です。 皆さんの仕事結果を否定することなく、どのような結果でも柔軟に対応はしてくれるでしょう。 悪意がそこに存在しなければ、ですが。 ・依頼人の女性 炭鉱夫である夫を助けてもらう為、村からやってきた人物です。 なりふり構わないところはありますが、目的の為に全力を尽くす人物のようでした。 様子を見る限り、少々気が触れてしまっている可能性は否定できません。 ・情報屋の少女 非常に金に煩い情報屋です。 戦闘能力はありませんが、意外と多彩で、もしかしたら仕事の一部を手伝ってくれる可能性が存在します。 手癖が悪く、猫のような身軽さが特徴です。

マスターより

初めまして、今回が初めてのシナリオとなります、トビカゼと申します。 開幕からあまり明るくないシナリオを出していますが、基本的にはハッピーエンド主義です。本当です、本当です。 それはそれとして、複雑な内容ですがなにはともあれゴブリンを撃破し、まずは主目的を完遂していただければとなります。 それ以降の対応に関しましては、皆さまのPC様が思うががままに行動していただければ、物語は必然的に形になっていくと思われます。 NPCに関しましても、情報屋は自由にこき使っていただければ問題ありません。場合によってはお金をせびるかもしれませんが、報酬が減り過ぎることはないのでご安心です。 さて、それではどのような物語が組みあがるのか、皆さまのご参加を楽しみにお待ちしております。

リプレイ

●
 鉱山の入り口近辺でセロンガード・シュタインドルフが組み立て上げたバリケードを見て一息をついた。
「ふぅ、思ったよりしっかりしたものが出来ました」
 入口をふさぐように組み立てられたバリケード。完全封鎖ではないが、これから中に入る事も思えば十分すぎる設計だろう。
「ああ、いい感じだ。あとはここを押さえて……と」
 完成だ。とケン・Z・ブラッドリーがセロンガードから渡されたロープで固定すれば、他の者から見ても強固なバリケードの出来上がりだ。
 村民の見張りもあれば、そう簡単にゴブリンが抜け出ることはないだろう。
「こいつァ良いマップだ!」
 後ろでマップを見ていたロイ・ロビンソンは渡してくれた情報屋の少女に満足そうな顔を浮かべた。
「でしょ? まぁ、私も仕事だからさー、この前調べといてよかったよ」
「今後とも贔屓にさせて貰うよ、もし良かったらもう少し力を貸してくれねーかな!? 俺は出世するぜ!」
 ほんと? と、嬉しそうな顔を浮かべる彼女。
「まぁ、戦えないけどさ。せっかくだしもうちょっとだけ手伝ってあげるよ」
「大丈夫、戦いは任せとけ!」
 もとよりそのつもりだ、と言わんばかりにロイは言い切る。
「遅くなった、戻った」
 村のほうから女性の報告と聞き込みを行いに行っていたマリイ・パルティスとその手伝いを行っていたファム・ゴートが戻ってきた。
「村長、喜んでいたね」
「はい、村での異変も特にはなく。逃げ遅れた人の情報も……」
 特に異変もなく、静かな数日間と、洞窟内に逃げ遅れた人々の容姿や種族といった情報をマリィは共有する。
 その情報を聞いて、グレイシア・ハーシーが眉を僅かにしかめた。
「何も……ない、か」
「どうかしたか?」
「ちょっとね。とはいえ、仕事にはまだ関係ないと思うから、片づけてからだな」
 腕を組んだグレイシアは、要らぬ混乱を招く必要もないと一度思考を自分の中に追いやった。
 とはいえ、疑問はまだ晴れてはいない。
「なぜゴブリン達は略奪していくでもなく、放置されているでもない鉱山に籠っているのだろうな……」
 グレイシアの疑問は、至極真っ当なものだった。

●
「ギィッ!?」
 それはとても静かな開戦だった。
 坑道に入り、ある程度進んだところで迂闊にもうろついているゴブリンの一団がいたのだ。
 索敵も疎かな連中をセロンガードとマリィの放った矢が撃ち抜き、ファムの魔法がゴブリンを一斉に焼き払う。
「拍子抜けね」
「そうね。でも気になるわね……どうしてここに留まっているのかしら」
 逃げようとするゴブリンへ追い打ちをするようにエステル・ヴィタの放った魔力の矢が、ゴブリンの頭部を撃ち抜いた。
「ゴブリン、スレイだー!」
 残った数体に向けて、アルテ・ルナフィニスが木の斧を抱えて突撃する。
 木製とはいえ重量のあるその存在が叩きつけられればゴブリンはあっさりと倒れ伏し、逃げ惑うゴブリンにはケンの放った不可視の衝撃が喰らいついていく。
「おいおい、何逃げようとしてんだよ……逃がすわけ無いだろう」
「終わり?」
「いや、まだだ。ホブゴブリンも見てない」
 思った以上にあっけないゴブリンを見て、グレイシアはまた思考を巡らせた。
 あまりにあっけない。ここが安全だと思い込まされてるほどにあっさりとゴブリンたちは不意を打たれ、蹴散らされる。
「作為的なものを感じるな。とはいえ……」
 ひとまずは情報が足りない。あとは仕事が終わってからだ、と言いたいのだがどうしても不信の思考を切り捨てられないのはまだ若いからだろう。
 一段落したところで道が二手に分かれている。どちらも灯りが十分に照らされており、セロンガードの持ち込んだ松明と合わせれば十分な明かりが確保されている。
 道が分かれた先は合流できる作りとなっており、その先にいくつも隠れられそうな場所が多い。
 「っと、ちょっと待って」
 情報屋が皆に止まるように促した。
「この先から……音が聞こえる……けど」
「ゴブリンか?」
 どうにも歯切れが悪い。ロイが確認を取れば、彼女は頷く。
「多分ね……もう間に合ってない」
 耳をすませば、無数の殴打の音とゴブリン達の声。
 炭鉱夫の悲鳴は聞こえてはこない。
「……そうか」
 ロイが波を噛み締め拳を強く握る。
 可能性はゼロじゃない、可能性があるならばと思っていた。
 だが、目の前の現実は非情なものであり、追い打ちするような何かが砕ける音が聞こえてくる。。
「これは」
 マリィが放った探知用のエーテルの波動が、この先に無数の生命の存在を捕らえた。
「いますね。両方に」
「なら、探索するチームと逃走を押さえるチームに分かれよう」
「そうね、確認した中にホブゴブリンがいたら後退して合流。もう片方も戦闘が起きたらやってくるかしら」
 ファムの提案にエステルがさらに案を重ねる。
 その案を否定するものはおらず、どう動くかと相談が始まる。
「あ、情報屋さん。この近くでゴブリンが出たことってあったのー?」
「ちょっと待ってね……ううん、あんまりゴブリンが出たって話はないんだよね。今回が本当に急にって感じ」
 メンバーと編成を相談している間に、アルテは武器を構えなおしながら情報屋に気になった事を聞いていた。
 今までの気になる点を合わせ、不可解なことは確かだ。
「そっか、ありがとー」
 おそらく、この村にゴブリンの襲撃に対する備えや経験は一切ない。
 さらに加えればここはあまり襲撃されるという事もなかったという事だ。
「ううむ……あ」
「グレイシア、こっち」
 次々に出てくる情報に、グレイシアが頭をひねっていればいつの間にかメンバーの編成が終わっていた。
 おいていかれるのはよろしくない、慌てて彼女は仲間を追う。

 先に向かう事になったのはケン、グレイシア、エステル、ロイの4人。
 道を進んだ4人が見たのは炭鉱夫と思しき男性と、その肉と骨を執拗に叩き潰すホブゴブリンを含む一団。
「くっ……」
 より一層、ロイが強く歯噛みする。
「突っ込むには……早いか」
「ええ、そうね」
 相手の中にはホブゴブリンが1体。もう一体は別にいるのだろう。
「牽制して、一度後退しましょう。合流して確実な撃破を」
 そう言って放ったエステルの矢が、手近なゴブリンを撃ち抜いた。

●
「まったく、こういうやつらがいるから偏見がなくならねぇんだよな」
 仲間を撃ち抜かれ、意識をこちらに向けたゴブリン達を誘導しながら進んできた道を戻るケンが吐き捨てた。
 ゴブリンという種族における偏見。ここ近年で確かに彼らは人として扱われだしているが、その側面でこういった事態はいまだに拭えていない。
 通路を抜けた先を見やれば、既に戦闘準備を整えている。。
「打ち漏らしは防げたか、ならば!!」
 大剣を構えなおしたケンが反転し、一足で飛び込む。その瞬間的な突撃は追ってきたホブゴブリンが反応するよりも早く刃が届く距離まで詰め込み、大剣の一撃がホブゴブリンの首を狙って叩き込まれる。
 強い衝撃と手ごたえは確かにあった。だが、ホブゴブリンの屈強な体躯は木の大剣の一撃に耐えきった。
 突然の反転と襲撃に周りのゴブリン達は慌てふためき、一斉に距離を取るがホブゴブリンは攻撃に耐えきるなりその巨大な拳を振りあげる。
「ちっ!」
 突撃からの薙ぎ払いでは回避は間に合ったものではない。盾を構えて振り下ろされる拳に耐える。
 腕がしびれるほどの衝撃、その強靭な肉体だからこそ下手な武器は不要だと言わんばかりの一撃だ。
「まずいですね」
 マリィが呟く。
 放ったエーテルの波動が、もう一方の通路から複数の存在の接近を告げてきた。
 派手に戦闘を始めた以上、相手も感づいてやってきたのだろう。
「ルナフィニスさん、ブラッドリーさんの援護をお願いしても?」
「任せてー!」
 ケンのカバーに入る為、もとよりホブゴブリン狙いだったアルテが突っ込んでいく。
「なら、もう一方のホブゴブリンは任されよう」
 前衛の二人が前に出た以上、残る大物を押さえる役割を担うグレイシアが槍を構え、襲撃に備える。
「まずはそちらからです」
 マリィは通路の先からに潜むゴブリン達に向けて光の矢を放つ。
 矢は直撃はせず、ゴブリン達の横をすり抜けていくかと思われた瞬間、突如炸裂する。
 その炸裂したその光が無数のゴブリン達を撃ち抜き、多数のゴブリンを完全に沈黙させたうえで残りを一気に混乱に叩き込む。
「……行きますよ」
 少しばかり、怒りの感情がその言葉には籠っていた。
「そりゃー!」
 ケンの援護をする為にもアルテは正面から突っ込んでいく。
 あまりに真っ直ぐな突撃を見たホブゴブリンが対応しようとしたその瞬間、アルテの姿が目の前から消える。
 フェイント。正面から仕掛けると見せかけ、アルテはホブゴブリンの足元にもぐりこむ。
「貰ったー!」
 ごっ、という鈍い音がホブゴブリンの脚に突き刺さる。
 その巨体を支える始点となる足が崩れ、その場に膝をつくように倒れ込む。
「援護するぞ!」
 膝をついたホブゴブリン、そしてその後方に控えるゴブリン達。
 アルテとケンの創りだした絶好の好機。これを逃す理由はロイには一切ない。
 収束されたエーテルが嵐を作り出し、流れる暴風がホブゴブリンを打ち貫き、その後方のゴブリン達を吹き飛ばす。
「おおおっ!」
 完全に膝をつき、撃ち貫かれて満身創痍と化したホブゴブリンの首にケンの大剣が叩き込まれれば、ごきりと音を立ててホブゴブリンの首は完全に折れた。
「あっちはやってくれたか」
 マリィの攻撃を抜け、姿を現したホブゴブリンとグレイシアが戦闘を始めたときには片方は大物を片付けている。
「やられるわけにはいかないね。援護を頼むよ」
「ん、任せて」
 グレイシアが槍を構えるや否や、ファムは構えた杖を媒介にエーテルを前面に集中。それを一気に解き放つ。
 嵐のように吹き荒れるエーテルは遭遇したゴブリン達への先制の一手となり、狭い通路に逃げ場なく吹き荒れる。
「状況的にも有利ね。援護するわ」
 やはりというべきか、ファムの魔法の中でも耐えているホブゴブリン。あれとまともに戦う為にもとエステルはエーテルを糸の様に操り、放つ。
 魔力で作られたそれはホブゴブリンの手足に絡みつき、完全にとまでは言わなくてもその回避や防御の能力を抑え込む。
「はぁっ!」
 複数の魔法の援護により作られた一直線の道。その直線を瞬間的に踏み込み、ホブゴブリンの胸部へと槍を突き出す。
 軽い手ごたえと共に、槍の刃が胸に突き刺さる。
「……浅い!」
 その強靭な体躯を完全に貫くことは出来ていない。やはり、まだ武器の性能が乏しいという懸念は的中していた。
 相手の胴を蹴りつけ、槍を引き抜くも完全な回避や防御は間に合わない。ホブゴブリンの振るった腕がグレイシアを捕らえ、吹き飛ばす。
「グレイシア!」
 近くの壁に叩きつけられたグレイシアを援護する為、セロンガードはエーテルを纏わせた矢を素早く連射する。
 一射はホブゴブリンへ突き刺さり、もう一射は近くで生き残っていたゴブリンへと突き刺さった。
「馬鹿力ね……まだやれるかしら?」
「も、ちろん」
 血を拭い、槍を杖に立ち上がるグレイシア。
 騎士であると名乗る以上、決して仲間を傷つけさせない。自分の後ろへと進ませるわけにはいかないと自らの痛みを隠し通してグレイシアはホブゴブリンへ再び距離を詰める。
「攻め切れないのならば、これはどうだ?」
 今度は突きではなく、槍の柄を叩き上げるような一撃。一瞬武器が光ったかと思えば、重い痛打がホブゴブリンの腕を弾き上げる。
「今……!」
 完全に防御が崩れた。
 グレイシアの作った絶好の好機を逃すまいとエステルの魔矢がホブゴブリンの頭部へ突き刺さる。
「炎は危ないね。こっちも同じように」
 ファムもまた同じように魔矢を放ち、セロンガードも狙いすました一撃をホブゴブリンの頭部へ撃ち放つ。
「これでトドメ」
 急所への一斉放火。流石にこれには耐えきれず、ホブゴブリンはぐらりと揺れると仰向けに倒れ伏す。
「……ふぅ」
 終わった。完全に、というわけではないが目下の一番の障害は撃破できた。
 何体かゴブリンは奥へと逃げて行ったものの、後は仲間と合流して殲滅するのに時間はかからないだろう。

●
 結局、洞窟の最深部まで進んでゴブリンを殲滅するのに時間はかかることはなかった。
 依頼は無事に完遂。完全に達成した彼らは元の酒場に戻っていたが、その顔はどこか暗い。
「……くそっ」
 特にロイの苛立ちは隠せないものがあった。
 結局、洞窟内の生存者は誰一人としていなかった。遺品の回収は出来たとはいえ、助けたいという気持ちが一番強かっただけに苦しいものがあるのだろう。
「落ち着け。ゴブリンの殲滅は終わった。皆殺し……いや、犠牲者の為の供養は出来たんだ」
「けど……」
 どこか心の整理はつかない。ケンの様に割り切ることはまだロイにはできていなかった。
「そう思う事が、彼らには十分伝わるんじゃないかな」
 ファムがなだめるようにそういえば、ロイはそうだな。と自分に言い聞かせるように呟いた。
「彼女の想いに応えられなかったのでしょうか」
 自分の顔についたひっかき傷を押さえながら、マリィは物憂げに言った。
 結局依頼主の女性にはありのままの事実を伝えることになった。
 その際、やはりというべきか女性は夫の死という事実に耐え切れず、冒険者達に強く当たった。
 エステルの説明も聞かず、落ち着かせるようにマリィがその怒りごと強く抱きしめたとしても彼女の涙と叫びは止まることはなかった。
 ただ一つの希望も与えられず、理不尽ばかりを押し付けてしまった。仕方のないことだというのに、マリィの優しさがマリィを苦しめている。
 だが、結果としてだけ言えば依頼は完遂している。誰一人、村人達も君達を責めることなく、その苦労に報いてくれていた。
「あの後、しばらく調べてみたんだけどさ。依頼人さんと旦那さんの周りでトラブルとかはなかったよ」
「そうか、何よりだ」
 その報告を聞き、懸念を抱えていたグレイシアはそっと胸をなでおろす。
「そっかー。他にはー?」
 ゴブリン達の動向を気にしていたアルテも気になる事はあるようで、情報屋に何かないかと聞いていた。
「他ー……は関係あるかわからないけど。あの村の近くで他の冒険者がゴブリンのねぐらを一つ潰したっていう報告があったぐらいかな」
「あー……」
 結局彼らも追われてきたのだろうか。結局のところそれは定かではない。
 だが、遅かったから。仕方ないから。そうやって言い聞かせて生きていく。そういう生き方もどうしても必要となってしまう。
 その中で、彼らは自らの最善を選び、そしてまた新たな問題にぶつかっていくことになるだろう。
 それはまた、次の話で。

マスターコメント

無事の依頼達成おめでとうございます。 やはりというべきか、皆さん被害者を助けたいという気持ちが強く、しかし非情な現実というものはどうしても曲げられないものでした。 その中で、しっかりと気持ちの面を描写できていればよいのですが。 リプレイも楽しんで書かせていただきました。 もし縁があればどこか別のシナリオでもお会いできればと思います。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2020年10月24日 15時38分40秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ファム=ゴート

    初めましての人ばかりだね、よろしく。 与えられた情報だけで見るなら ①ゴブリンとホブゴブリンの討伐 ②依頼人の女性の対応 この二つになると思う。 鉱山の中は地図をもらってるから迷子にはならないらしいけど、薄暗いし死角は取られやすいかも、お互いにカバー出来るといいね。 正確な数が記載されてないから、虱潰しにするとしても何巡かする必要があるかもね。 女性への対応は各個人の裁量にもよるけど、私はどっちでもいいよ。嘘をついてもしばらくすれば分かってしまうことだとは思うし、案外本当に誰かしらは生き残ってるかもしれないし、皆の意見を聞きたい。 あとは、想定外のことについてどの程度考慮するか、について話が出来たら良いなと思う。 一先ずはここまでで、進め方に問題があれば指摘してくれると嬉しい。

  2. アルテ・ルナフィニス

    アルテだよー。 そーだねぇ…。まだ事件から数日程度なら、ゴブリンたちによる改造もそこまでだろうから、地図を頼りに暗がりと死角に気をつけていかないといけないねー。 とりあえず、女の人にどこらへんにいた予定だったのか聞いて、そっちへの急行をしたらどうかなーって思うよ。 女の人が知らなきゃ、情報屋さんに頼もうかーなんかできるーとか、いま鉱石掘ってるのはどこら辺ーとか知ってるかもだしー。 もしかしたら―万が1ー億が1ー?生きてるかもだし。 生きてなくても、遅れるほど遺品荒らされてくっちゃくちゃになっちゃうかもだからねー。 あとはゴブリンと坑道っていう逃げるのに最適な組み合わせだから、逃がさずに倒す方法とかも考えた方がいいかもねー? んー、そうだー。武器はない―って話だけど、ツルハシは放置されてるらしいから、それをもってかかってくる可能性もありありのありだから、気をつけてぇ?

  3. マリイ・パルティス

    私はシューターのマリイと申します。よろしくお願いします。 ペットの狼も同行しますね。 生存者に関しては、絶望的とはいえ諦めたくはないですねぇ。支障のない程度に居ることを前提にとは、個人的には思っています。 女性の対応は悩ましいですね。いつかは真実を伝えるべきでしょうが、それが今なのかと言われると……。 想定外なことは。アルテさんが言ってるように逃走はなんとしても避けたいところですね。 ……他にも罠を仕掛けられてる可能性もあるかもしれませんし、考えるときりはないですね。とりあえず敵の方が有利な状況だと思って行動するしかなさそうです。 一応スキルで捜波がありますので、敵の位置はある程度把握できそうでしょうか。回数は限られているのと、隠れてる相手にどのくらい通用するかが分からないので過信はできませんけど。

  4. ケン・Z・ブラッドリー

    ウォーリアーのケンだ よろしく頼む。 絶望的だとしてもいることを考慮しておくべきだろう 最悪、遺品とかを持ち帰ってやるべきだろうしな 炭鉱という場である以上、それなりに地図化されてるといいんだが・・・・地図があるのなら出口になりえる場所をふさいでおくことで敵の逃亡を防ぐこともできるんじゃないか? それにこちらが戦いやすい場所とかもあらかじめピックアップできれば戦いやすいと思うぞ あとはやはり炭鉱の坑内ということは明かりの確保も必要だろう スキルによる光源は戦闘時とっておいて基本はランタンか松明だな まぁ・・・・・・俺装備とスキルで金使いきっててスキルも道具も用意できないんだけど(苦笑) しかし・・・まぁ、首を狩るのに遠慮がいらない相手というのはそれはそれで現状把握にもってこいで助かるんだがね 女性のメンタルケアまではさすがに俺はできないな そういったのは同性の人のほうがいいだろう

  5. エステル・ヴィタ

    キャスターのエステルよ。よろしく。 絶望的だとしても、希望を抱いておくのはとても良いことだから、そういう方向で私も考えておくわね。 でも、当然最悪は考えておかなきゃだから、せめて遺留品の類は持ち帰りたいわね。 炭鉱だし、人の出入りは普段からあるでしょうから道々に火を灯す燭台?みたいなのがあるかもだから、松明で点々と火をつけていくこともできるかなって考えているわ。ゴブリンが暗闇でも見える目を持っていないなら、火はそのままかもしれないけれど。 戦闘になったらスキルで光を灯すわね。あとは動きを封じたり、ね。 女の人への対処はどうしようかしら…あまり上手い言葉が見つからないのだけど、言葉はかけてあげたいわ。

  6. セロンガード・シュタインドルフ

    はじめまして、此度の依頼ではお世話になります。 退路の確保は難しくなさそうですが、一応《感波》がありますので、万が一にも《捜波》された時はお任せください。暗がり対策にたいまつも持ちました。 戦闘になった際は、小さいのから《ラピッドショット》で相手にしようと思ってます。 女性の対応なのですが、気が触れている、というのが気になります。放置した場合や、嘘をついた場合は悪い方向に傾倒しそうだと私は思いました。ありのまま事実を伝えるのもありかと。強いて申し上げるのならば、嘘をつくくらいならば遺書を偽造するくらいしなければ難しそうです。 想定外といえば、鉱夫達はゴブリンに奴隷化されてるなんて事ないですか?人質にでもされてたら、ある意味幸運なのですが…

  7. No.7

    ウォーリアのグレイシアだ。 槍を振り回すくらいしかできないが今回はよろしく頼む。 鉱夫が奴隷にされている、というのは考えにくいように思う。ホブゴブリンが常に監視しているというならともかく、鉱山の採掘という力仕事をしている人間は並のゴブリンからは脅威に映るはずだ。 始末した方が都合がいいと考えるのではないかな。

  8. ファム=ゴート

    全体の意見としては、可能性は薄いけど生きているケースも考慮する、辺りに落ち着くかな? 遺留品の回収にしても、生存者の可能性を考えるにしても、仕事予定にしていた場所の特定はしておいても良いかもしれないね。 鉱山の探索方法としては ①出入口を絞って敵を追い込む ②炭鉱内の燭台に火をつける、スキル等で明かりを確保する 辺りが出ているかな、とても良いと思う。 ①は待ち伏せをするのか、崩して埋めてしまうのかによって手間と人員の割き方に気を付けないといけないかもね。 仕事場へ急行することを優先するなら、どの程度時間を掛けるかも考えた方が良いかもしれない。 戦闘方法に関しては、うん、各々で得意とすることは違うだろうから、出来るようにすれば良いんだと思う。 囲まれたり、後ろを取られないようにお互い意識出来るといいね。 依頼主への対応はもう少しゆっくり考えた方がいいのかもしれないね、遺留品の有無や生存者によっても変わりそうだから、状況に合わせて変えられると良いのかも。 敵の逃走や、罠、あとは人質や奴隷の可能性。 敵の逃走は上でも触れたけど、逃走経路を塞ぐ形に出来れば比較的簡単になるかな。 罠は、殺傷系もそうだけど音を鳴らしてこちらの接近がバレても嫌だね。 確定しているものではないけど、注意しようか。 人質や奴隷に関しては生きているってことになるから、比較的朗報だね、光を突然消したり急に発光させたりすれば、一時的に視界を奪えるかも。 そういう隙を作れたら奪い返せるかもね。

  9. アルテ・ルナフィニス

    んー……。 思いついたんだけどー。 急いで駆け抜けてー、人を助ける、遺留品を確保するーしたら…。 入口にもどってから……火、とかはなっちゃえばいいんじゃないかなーって思えてきたよねー。多分、枝分かれしてるってことだから…つまり元は一本だよね、ってさ? ……危ないかな? で、そう考えると、敵を追い込んだりーはとりあえず後回しにして、確保できる灯りでかけぬけて、とりあえず速度優先で突破して戻って、ってなるんじゃないかなーってねー。 女の人はー……ボクちょっとわかんないな、まだ難しい

  10. ケン・Z・ブラッドリー

    火攻めに関しては反対だな 理由としては2点あって、まずは坑道全部に影響及ぼす規模の火を起こすのが手間ってのと今後も炭鉱で働く人らが働けなくなる可能性があるからってのだ

  11. エステル・ヴィタ

    ええと。炭鉱って色んな石があるの。石炭は燃料になるくらいだから燃えやすいし、熱すると有毒な空気を出して二度と炭鉱として使えなくなる可能性もあるの。そういう石がまだ埋まってるかもしれないし、掘り起こしたとしてすぐに外に出すわけじゃなくて、ある程度の量を掘り起こすまで保管してたりするから、そういうのに火をつけちゃったら取り返しがつかなくなるから。私は反対しておくわ。

  12. No.12

    オレの地元もシグモル火山帯で鉱山は多かったが、火の扱いには気を付けないと事故の元だと聞いた覚えはあるな。 他にひとつ気になることがあるのだが、なんでゴブリン達はわざわざ鉱山の中に潜っているんだ? 略奪なら自分の巣穴なり集落なりに戦利品を持って帰ると思うんだが、奴らも難民かなにかなのか。

  13. アルテ・ルナフィニス

    それもそーかー。 じゃあ、本体見つけた後、急いで戻って出口で迎え撃つ人と、残存がいないか内側から探す待ち伏せと探索を2班に分けて同時にやれば、逃亡は防げそうー。 まぁ、最初に見つけたときに全部倒し切っちゃえばいいんだけどー で、逃げたやつの追撃じゃなくてー 最初、ゴブリンたちが集まってるところを見つけた場合は、みんなで集まって戦闘ーがいいよねー?

  14. セロンガード・シュタインドルフ

    確かに、不思議なところは多いですね。 武器も持たずに来たというのも、なかなか気になるところではあるかと思います。 私としては、察知される前に何匹か減らしておきたいです。恐らく居るであろう歩哨と動哨を先に始末します。 逆に、洞窟からうまくおびき出して外で始末、あるいはその間に手薄となった炭鉱内の捜索なんかも考えました。 はい、私もそれでいいかと思います。 >> 最初、ゴブリンたちが集まってるところを見つけた場合は、みんなで集まって戦闘ーがいいよねー?

  15. ファム=ゴート

    敵を倒しながら本隊を見つけて戦闘、その後で入り口を塞いで逃げ道を無くして残りの敵を倒す、で落ち着きそうかな、うん、私もそれでいいと思うよ。

  16. ロイ・ロビンソン

    大遅刻だ!ロイ・ロビンソンってもんだ! クラスはキャスター!よろしく! 火魔法の懸念について理解したぜ! 火魔法、爆魔法の類は俺も自重しよう! ゴブリンは坑道を巣穴にでもしようとしたのかねぇ。マスターは鉱山の奪取って言ったがよ、マップが用意されているくらいには入り組んでる、そんな場所なら 上手くやり過ごしてる可能性は全然捨てらんねーよ!救助路線でやったらァ!

  17. マリイ・パルティス

    少し間が空いてしまいましたね。 流れは了解しました。 入り口を塞ぐ方と先に進む方、別れる場合どちらの役割を担うかははっきりしておいた方がいいでしょうかね。 とりあえず私は人が少ない方に回ろうと思います。 そうそう。村の様子も今現在ははっきりしてないのですよね。 女性についての報告、安全確認やついでにここ数日気になることは無かったか、とかちょっとだけ確認したいのですけど……代表者さんの家あたりに少しだけ顔出ても問題ないでしょうか? 一刻も早く向かいたいという場合は無理にとは言いませんので。

  18. ケン・Z・ブラッドリー

    確かにゴブリンたちがどこから来たのかってのも気になるし、武器持ってなかったというのもきになるな どここから流れ着いた放浪のゴブリンって可能性もあるのか そうなると空腹とかで凶暴そうになってる可能性あるな >代表者の家に 俺はいいと思うぜ 入り口を塞ぐ準備がいるんだからその間に聞くということもできるんじゃないか 班分けだけど坑道を塞ぐ人員と中に入る人員と分けるのはちょっと不安があるな 俺たちの人員自体少ないからな 塞ぐといってもずっとそこで塞いでいるんじゃなくて、バリケイードみたいなのを作って簡単に出られなくするって感じでみんなで協力してぱぱっとやっちまうとか村の人に手を貸してもらうとかできないかな とりあえず・・・俺は坑道の中に入って敵を倒しに行くほうかな

  19. アルテ・ルナフィニス

    ぁー、村長の家にいくのだいじかもー。 なんかそこらへんきな臭い可能性あるしねー。 んー、どうなんだろうねー。逃げ出すやつって大体焦ってるから、窮ねずみねこ噛みな感じはあるかもだけど、通せんぼである程度何とかなるんじゃないかなーって思うよー じゃあボク塞ぐ?通せんぼ?なほー。腕力で人がいたら運べるしね!

  20. ファム=ゴート

    村の確認はしてもいいと思う、確認するにしても、バリケードを作るにしても、時間のやりくりが難しいなら情報屋に頼んでみてもいいかもしれないし。 バリケードを作る作らないは、最初に時間を掛けるかどうかくらいの違いしかないと思う。 どっちでやっても大丈夫だと思うよ、纏まる方でいいんじゃないかな。

  21. No.21

    どのみち道すがら情報屋とは顔を合わせるんだ。 各々気になったことは彼女に頼んでおいていいのではないかな。 地図もあることだし入口を塞がずとも、まとまって進みつつ、分岐の度に待機と先行を入れ替えて虱潰しでいいと思う。 ……捜波も便利だが、狼をペットとして連れているなら臭いでもある程度潜んでいる道は絞れそうな気がするな。

  22. ファム=ゴート

    時間もないし、私も虱潰しの方でプレを書くね。 基本的な行動は敵の処理と味方のヒールのつもり。 探索に関しては得意な人に頼ることにする、よろしくね。

  23. ファム=ゴート

    プレイングの提出をしたよ、現地でもよろしく。

  24. セロンガード・シュタインドルフ

    『それまで』の情報とおっしゃっているので、 私も現地に到着してから情報収集することに賛成です。 突入する前に想定外は可能な限り排除したいですから… 情報屋さんにお願いするか、自力で聞きに行くかですが、 時間がないのもその通りなのですがパーティの保身が掛っているので、 概要だけでも自分の耳で相手の口から聞きたいです。 あ、もちろん! 生存者がいると仮定してその救助を第一とするならば話は別です! そこはパーティの決定に追従しようかと思います。 私も塞ぐ方に回ろうかと思います。 閉所は、誤射が怖いので…バリケードを作りつつも 万が一抜け出した相手が出たら、弓矢で後ろからサクッとやろうかと…

  25. マリイ・パルティス

    すみませんギリギリになってしまって。 ありがとうございます、では時間がかかる場合はNPCさんにお願いすtる旨も入れておきますね。 とりあえず索敵要員として進む方にしておきますね。

  26. No.26

    ん、オレも提出完了だ。 あまり顔を出せずにすまなかったが、上手くいくことを願おう。

  27. セロンガード・シュタインドルフ

    私も提出いたしました。 無事にみんなでもどりましょう!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0