【選逝】聖女に祈りを捧ぐ者はなく

電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 むぎあき納品 2023年06月14日 12時16分42秒

 すれ違った時に分かったの。
 私の片割れ、私の半身。
『ブルーベル(エリカ・プレトリウス)? 素敵な名前ね、私は――』

 セレナ(もう一人の私)。
 セレナ(もしもの私)。

 ■
 
 シュヴァーン社のデュープが施設に侵入したとの報せを受けて、監視カメラを確認する。
 何処かで見たことのあるデュープ。薄桃色の髪も瞳の色も、よく見ればその顔も。
 正体に気付いた時、この事態を想定していなかった過去の自分を浅はかだと蔑んだ。
「如何しますか?」
「殺すわけにはいかん」
 既にV.C.社の人員に被害も出ているとはいえ、共同開発者(シュヴァーン)の許可無く処分してしまえば難癖を付けられかねない。

「ねぇ……レ、ナ。迎えに……」

 譫言のようにふらついた足取りで、しかし阻む人間をデュープに備わった身体能力で捻じ伏せている。
 まるで亡霊のようだ、と生み出しておきながら本能が彼女を忌避する。
 セレナとブルーベル。人工の双子。
 異なる遺伝子から生まれた赤子達を継ぎ接ぎし合い作り出したプロトタイプ(試作品)。

「セレナを向かわせろ」
「よろしいのですか?」
 最早ブルーベルは正気とは言えない。セレナに対して何をしでかすかも分からない。
「……十分データは取れた、シュヴァーン社に連絡しろ。責任は先方に取ってもらわなければな」

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「ねぇ先生、今日の試合にヒビヤさんが出るんでしょう? 出るのよね?」
「……ああ、よく知ってるねブルーベル」
 こんな状況でどこから情報を仕入れているのやら(独房の中で彼女はいったいどんな景色を見ているのだろう)。
 
 結果的に洗脳には成功した。
 ブルーベルの頻繁な脱走も無くなり、ヴァイオレット社とお互いに抱え合っていた負い目(弱み)も解消され、結果的にはこれで良かったと言えよう。
「先生、テレビを頂戴。ヒビヤさんに会いにいかなくちゃ」
 会いに行く。
 そんなこと出来やしないのに、ブルーベルはしきりに彼とのあり得ない逢瀬を口にする。
 
 セレナの記憶を除去した弊害か、思考の大部分が欠落したブルーベルにものは試しとナギ・ヒビヤ(日比谷 梛)への執着を植え付けた(接触させないことを約束して了承を得た)ものの。

「……ふふっ、ヒビヤさん。だめですよ、そんなに強くしちゃ……ねっ、ほら。動いてる、私とあなたの……」

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「あの子どうするんです? 正直見てらんないですよアレ」
 デュープとしてはもう使い物にならない。だから生かしておく理由も無いし、少なからず良心のようなものが痛みもする。
 
「搾れるだけ搾り取れ。V.C.社にふんだくられた分は有効利用させて貰わなきゃ、例の計画に加担した俺たちの立場が悪くなる」

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0