デビュタント! ~蕾が花開くとき~
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 菊華 伴納品 2023年04月26日 14時31分27秒
●さぁ、喧噪と喝采の溢れる舞台へ
――デビュタント――
それは、ファイブシスターズ合同の新人お披露目演武会の事である。各々売り出したいデュープの能力や魅力を観客たちに披露し、ファン獲得を狙うもの。そして別の会社のデュープを引き抜くために見繕う場所でもあった。
しかし、まぁ、デュープ本人たちにとって上層部の狙いなぞ関係がない。彼らにとっては初の大舞台であり、夢の(あるいは野望の)第一歩なのである。
控室。その隅っこでアルセドらしきユニフォームの少女が深呼吸を繰り返していた。セーラー服アレンジを施されたそれに、武器だろう船の櫂。それらを見ればゴンドラ乗りにも見えるだろうか?
(緊張でドキドキが止まりませんがコルリ先生も一緒なのできっと大丈夫です……!)
初めての舞台という事で、B/Bird(ブルーバード)は緊張しているようだ。そんな彼女を、ホログラムだろう青い鳥が心配そうに見つめている。
「やっぱり、緊張します……よね?」
そこに声をかけた者が一人。紫のユニフォームから、ヴァイオレット・コンピューティングのデュープという事が分かるだろう。物語に登場するエルフのような耳をした、儚げな印象の少女だった。
「うまくできるか、気になるわよね。わかるわ」
そう言ったのは、いつの間にか一緒にいた、ロビン・テクノロジーズのデュープ。手にした十字槍が武器なのだろう、大切に持っていた。
「やっぱり、みなさんも同じなんですね」
B/Birdは、二人の様子を見て安堵したことで肩の力が程よく抜けたようだ。
「わっ、私は……アンユグェンと、申します……。おしゃ、べり、少し、下手ですけど……よろしく」
「私はH;NAよ。通称は『ヒナ』。よろしくね」
ヴァイオレットのユニフォームを纏ったエルフ耳の少女は、そういってぺこりと頭を下げる。と、次はロビンのユニフォームの少女もまた微笑んで挨拶する。
B/Birdは自己紹介をし、「あと……Call, コルリ先生!」と相棒ともいえる青い鳥のホログラムAIを紹介し、3人は少しずつ打ち解けつつあった。
ふと、モニターを見れば、今行われているデビュタントの様子が見られる。ステージで華やかな演技を見せる同胞に、3人は息をのむ。
その時、彼女たちの通信端末が一斉に鳴り響いた。そろそろ出番であるらしい。
「……それじゃあ、行ってくるわね」
と、H;NAは十字槍を落としそうになりながらも、微笑んでステージへと向かった。
「がんばって!」
B/Birdは声をかけ、アンユグェンと共にガッツポーズを見せる。H;NAは二人に「えぇ!」と頷き、ステージへと駆け上がり……転んだ。
●橙と黒の戦巫女
(スポットライトが当たる前でよかったわ)
H;NAは、真っ暗な中ステージへとあがる。そして、十字槍を手に身構えた。やがて、スポットライトが彼女を照らす。
――ロビン・テクノロジーズがお送りするは、こちらの新人です。その名は……、H;NA!!
流れ出すBGMは笛や三味線、琴など雅な雰囲気を漂わせる楽器からなるもの。その中で一人の戦巫女のようなデュープが可憐な舞を見せていた。
(先程みたいに躓いたら……)
彼女自身はそんな不安を抱えていたが、身体は戦いの動きを覚え、悠々と泳ぐように舞う。
靴に仕込まれた仕掛けが火を噴き、加速する。現れた人型のエネミーロボをその十字槍で素早く倒していく。その動きは洗練されており、多くの観客が注目しているようだ。
――特徴は、靴にあります。こちらは……。
彼女が舞う中、武装など語れる範囲で紹介する司会者。その内容を聞きながら、H;NAはふと、靴を一瞬見る。
(そういえば、アレはまだ隠すように言われたわよね)
どうやら、まだ隠しダネはあるらしいが、お披露目はまだのようだ。
その事に注意しながら、H;NAはぐるり、と回りながら十字槍を振るう。飛んでくるミサイル型のおもちゃを一気に切り払えば、色とりどりの千代紙が降り注いだ。
BGMも終わりに近づいていく。彼女は最後に大立ち回りを演じ、ポーズを決めた。
(どうにか……できたっ)
だが、ステージを降りる際また躓いてしまって、恥ずかしい思いをする彼女なのだった。
●青のフェータ、舞う
――続きまして、アルセドの新人をご紹介します。
「……もしも何か起きたらサポートお願いしますっ。コルリ先生!」
ステージ袖で、B/Birdが鳥のホログラムAIにそっと言う。だが、スタッフに促され、少女はステージへと飛び出した。ぱっ、と舞台が明るくなり、足元に水面の映像が浮かぶ。歩くたびに波紋が広がり、櫂を振るえば、波が起こる。
――当社が誇る技術の子、B/Birdの登場です!
被ったキャノチエから青い鳥が飛び出し、少女はキャノチエ脱いで一礼。同時に、爽やかなBGMが流れ始める。
櫂をくるくるまわし、コリル先生と共に楽し気に踊り始める。背後のモニターでは、武器の性能や、コリル先生についての紹介が流れている。
彼女が舞えば、水しぶきのホログラムがおこり、喝采が起こる。そして、飛んできたボールを櫂で叩くと、花びらが零れ吹いてきた風に舞い上がった。
(楽しいね、コリル先生!)
心からの笑みを見せ、B/Birdはコリル先生と共に踊り続ける。きらめく水飛沫のホログラムの中、彼女は優雅な一礼で締めくくった。
拍手の中、少女はキャノチエを被りなおす。と、コリル先生がすまし顔でそこに留まる。
「楽しかったですね!」「ピィ!」
彼女の言葉に、小鳥は楽しそうに鳴いて答えたのだった。
●紫紺の妖精が射貫くモノ
H;NAとB/Birdの演舞に勇気を貰ったアンユグェンは、静かに頷く。
(がんばらなくちゃ……!)
女性は、照明が落とされた中、静かにステージへと上がっていった。
――続きまして、登場するのはヴァイオレット・コンピューティングの新人です。
木々の映像が浮かび、どこからともなく矢が飛んでくる。
音のなるタイプの矢は爆ぜ、花びらを降らす。
ステージ上に現れたのは、エルフのような耳をしたデュープ。音もなく現れた女性に、皆が注目する。
(深呼吸して……)
――『紫紺の狙撃手』、アンユグェン、ステージ、オン!
彼方此方から飛んでくるドローンを、的確に素早く射貫く。その素早さに観客たちが息をのむ。
それだけではない。BGMが無い中、いくつもの円盤状の標的が彼女へと飛んでくるが、手早く撃ち落とすその度にプリズムが舞い、会場を煌びやかに彩っていく。
(撃ちまくれ、私!)
放たれた玉を打ち抜けば、華やかな音を立てて花が降ってくる。その中を踊るように動き、ドローンを射貫いていく。
漸く奏でられ始めたピアノの演奏に合わせ、踊るアンユグェン。いつしか、観客達は彼女の踊りに魅了されていた。
最後に彼女はクロスボウを天井に向け、ポーズを決めた。
沢山の拍手の中、彼女へと捧げられる。その中でアンユグェンは深々と一礼し、笑顔で手を振った。そして、漸く満面の笑みを見せるのだった。
●舞台を降りて
「緊張した……」
アンユグェンがため息を吐きながらステージを降りていく。と、H;NAとB/Birdはスポーツドリンク片手に彼女を出迎えた。
「二人とも、素敵でした!」
「あなたも、ね」
B/Birdが目をキラキラさせてそういえば、H;NAが彼女に笑いかけつつアンユグェンへスポーツドリンクを手渡す。3人は、しばし今日のステージについてお互いの感想を言い合うのだった。
(終)
――デビュタント――
それは、ファイブシスターズ合同の新人お披露目演武会の事である。各々売り出したいデュープの能力や魅力を観客たちに披露し、ファン獲得を狙うもの。そして別の会社のデュープを引き抜くために見繕う場所でもあった。
しかし、まぁ、デュープ本人たちにとって上層部の狙いなぞ関係がない。彼らにとっては初の大舞台であり、夢の(あるいは野望の)第一歩なのである。
控室。その隅っこでアルセドらしきユニフォームの少女が深呼吸を繰り返していた。セーラー服アレンジを施されたそれに、武器だろう船の櫂。それらを見ればゴンドラ乗りにも見えるだろうか?
(緊張でドキドキが止まりませんがコルリ先生も一緒なのできっと大丈夫です……!)
初めての舞台という事で、B/Bird(ブルーバード)は緊張しているようだ。そんな彼女を、ホログラムだろう青い鳥が心配そうに見つめている。
「やっぱり、緊張します……よね?」
そこに声をかけた者が一人。紫のユニフォームから、ヴァイオレット・コンピューティングのデュープという事が分かるだろう。物語に登場するエルフのような耳をした、儚げな印象の少女だった。
「うまくできるか、気になるわよね。わかるわ」
そう言ったのは、いつの間にか一緒にいた、ロビン・テクノロジーズのデュープ。手にした十字槍が武器なのだろう、大切に持っていた。
「やっぱり、みなさんも同じなんですね」
B/Birdは、二人の様子を見て安堵したことで肩の力が程よく抜けたようだ。
「わっ、私は……アンユグェンと、申します……。おしゃ、べり、少し、下手ですけど……よろしく」
「私はH;NAよ。通称は『ヒナ』。よろしくね」
ヴァイオレットのユニフォームを纏ったエルフ耳の少女は、そういってぺこりと頭を下げる。と、次はロビンのユニフォームの少女もまた微笑んで挨拶する。
B/Birdは自己紹介をし、「あと……Call, コルリ先生!」と相棒ともいえる青い鳥のホログラムAIを紹介し、3人は少しずつ打ち解けつつあった。
ふと、モニターを見れば、今行われているデビュタントの様子が見られる。ステージで華やかな演技を見せる同胞に、3人は息をのむ。
その時、彼女たちの通信端末が一斉に鳴り響いた。そろそろ出番であるらしい。
「……それじゃあ、行ってくるわね」
と、H;NAは十字槍を落としそうになりながらも、微笑んでステージへと向かった。
「がんばって!」
B/Birdは声をかけ、アンユグェンと共にガッツポーズを見せる。H;NAは二人に「えぇ!」と頷き、ステージへと駆け上がり……転んだ。
●橙と黒の戦巫女
(スポットライトが当たる前でよかったわ)
H;NAは、真っ暗な中ステージへとあがる。そして、十字槍を手に身構えた。やがて、スポットライトが彼女を照らす。
――ロビン・テクノロジーズがお送りするは、こちらの新人です。その名は……、H;NA!!
流れ出すBGMは笛や三味線、琴など雅な雰囲気を漂わせる楽器からなるもの。その中で一人の戦巫女のようなデュープが可憐な舞を見せていた。
(先程みたいに躓いたら……)
彼女自身はそんな不安を抱えていたが、身体は戦いの動きを覚え、悠々と泳ぐように舞う。
靴に仕込まれた仕掛けが火を噴き、加速する。現れた人型のエネミーロボをその十字槍で素早く倒していく。その動きは洗練されており、多くの観客が注目しているようだ。
――特徴は、靴にあります。こちらは……。
彼女が舞う中、武装など語れる範囲で紹介する司会者。その内容を聞きながら、H;NAはふと、靴を一瞬見る。
(そういえば、アレはまだ隠すように言われたわよね)
どうやら、まだ隠しダネはあるらしいが、お披露目はまだのようだ。
その事に注意しながら、H;NAはぐるり、と回りながら十字槍を振るう。飛んでくるミサイル型のおもちゃを一気に切り払えば、色とりどりの千代紙が降り注いだ。
BGMも終わりに近づいていく。彼女は最後に大立ち回りを演じ、ポーズを決めた。
(どうにか……できたっ)
だが、ステージを降りる際また躓いてしまって、恥ずかしい思いをする彼女なのだった。
●青のフェータ、舞う
――続きまして、アルセドの新人をご紹介します。
「……もしも何か起きたらサポートお願いしますっ。コルリ先生!」
ステージ袖で、B/Birdが鳥のホログラムAIにそっと言う。だが、スタッフに促され、少女はステージへと飛び出した。ぱっ、と舞台が明るくなり、足元に水面の映像が浮かぶ。歩くたびに波紋が広がり、櫂を振るえば、波が起こる。
――当社が誇る技術の子、B/Birdの登場です!
被ったキャノチエから青い鳥が飛び出し、少女はキャノチエ脱いで一礼。同時に、爽やかなBGMが流れ始める。
櫂をくるくるまわし、コリル先生と共に楽し気に踊り始める。背後のモニターでは、武器の性能や、コリル先生についての紹介が流れている。
彼女が舞えば、水しぶきのホログラムがおこり、喝采が起こる。そして、飛んできたボールを櫂で叩くと、花びらが零れ吹いてきた風に舞い上がった。
(楽しいね、コリル先生!)
心からの笑みを見せ、B/Birdはコリル先生と共に踊り続ける。きらめく水飛沫のホログラムの中、彼女は優雅な一礼で締めくくった。
拍手の中、少女はキャノチエを被りなおす。と、コリル先生がすまし顔でそこに留まる。
「楽しかったですね!」「ピィ!」
彼女の言葉に、小鳥は楽しそうに鳴いて答えたのだった。
●紫紺の妖精が射貫くモノ
H;NAとB/Birdの演舞に勇気を貰ったアンユグェンは、静かに頷く。
(がんばらなくちゃ……!)
女性は、照明が落とされた中、静かにステージへと上がっていった。
――続きまして、登場するのはヴァイオレット・コンピューティングの新人です。
木々の映像が浮かび、どこからともなく矢が飛んでくる。
音のなるタイプの矢は爆ぜ、花びらを降らす。
ステージ上に現れたのは、エルフのような耳をしたデュープ。音もなく現れた女性に、皆が注目する。
(深呼吸して……)
――『紫紺の狙撃手』、アンユグェン、ステージ、オン!
彼方此方から飛んでくるドローンを、的確に素早く射貫く。その素早さに観客たちが息をのむ。
それだけではない。BGMが無い中、いくつもの円盤状の標的が彼女へと飛んでくるが、手早く撃ち落とすその度にプリズムが舞い、会場を煌びやかに彩っていく。
(撃ちまくれ、私!)
放たれた玉を打ち抜けば、華やかな音を立てて花が降ってくる。その中を踊るように動き、ドローンを射貫いていく。
漸く奏でられ始めたピアノの演奏に合わせ、踊るアンユグェン。いつしか、観客達は彼女の踊りに魅了されていた。
最後に彼女はクロスボウを天井に向け、ポーズを決めた。
沢山の拍手の中、彼女へと捧げられる。その中でアンユグェンは深々と一礼し、笑顔で手を振った。そして、漸く満面の笑みを見せるのだった。
●舞台を降りて
「緊張した……」
アンユグェンがため息を吐きながらステージを降りていく。と、H;NAとB/Birdはスポーツドリンク片手に彼女を出迎えた。
「二人とも、素敵でした!」
「あなたも、ね」
B/Birdが目をキラキラさせてそういえば、H;NAが彼女に笑いかけつつアンユグェンへスポーツドリンクを手渡す。3人は、しばし今日のステージについてお互いの感想を言い合うのだった。
(終)