突然の小宴会
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ロビン・テクノロジーズ制作 雨月ハジメ納品 2023年05月31日 12時39分03秒
「あー! ったく面倒くせえ」
背伸びをしながら昼間っから薄暗い路地裏を歩いているのはN-06――エヌシックスだ。ロビン・テクノロジーズ所属の戦闘特化型デュープで、彼の戦闘スタイルはとにかく実践に秀でている。その反面魅せ方についてはおざなりだが、そこが良いというコアなファンも多い。派手で自由すぎるゆえにアンチも多い彼がこんな場所を一人でうろついているのには理由があった。
「ファンサなんざ向いてねえっつの。んなもん俺に求めんな」
そう、飽きてファンサ会場を抜け出してきたのだった。押し寄せるファンとアンチのど真ん中でハンマーのブースターで飛び上がる姿は、そこにいる人々の目に中々爽快な光景に映っただろう。悲鳴を上げた責任者を除いて。
「さて、これからどうすっかな」
そんなことはおかまいなしとばかりにN-06は路地裏を軽く見渡す。するとある場所でその金色の瞳がぴたりと止まった。ニヤリと口角をつり上げてぽつりとこぼす。
「そうだな。憂さ晴らしでもすっか」
同じ頃、ヨルは繁華街をのんびりと歩いていた。それというのも今日入れられていた試合の内容に原因がある。なんとヴィジュアルバトルに登録されていたのだ。
「向いてないって言ったはずなんだけどなあ」
彼は淡々と積み上げてゆくバトルスタイルに定評があるデュープだ。しかしフルフェイスヘルメットがデフォルト容姿である影響もあってか、当然のようにヴィジュアル面は得意でない。その結果、こうしてそっとボイコットをキメている訳である。
普段の姿がフルフェイスであるため素顔で出歩いていてもめったに気づかれない。その素顔には横一文字に大きな傷がついており、やはりアイドル的アピールとは程遠いであろうことが伺われる。
「これからどうしようかな。特にやることもないし……」
とぼやけば、路地裏から大きな笑い声が飛んできた。何だかどこかで聞いた声のような気がする。引き寄せられるように足を向けて見れば、そこには見知った顔が居た。
「あれ、こんな所で何してるの」
「おう、久しぶりだな!」
掘っ立て小屋のような小さな酒場で豪快に飲んでいるN-06だ。真昼間から堂々とビールジョッキを振り上げて挨拶してくる。他にやることもないからまあいいか、とヨルもその隣に座って同じようにビールを注文した。
「君、今日イベントに参加してるんじゃなかったか。ポスターに写真載ってるけど」
と酒場の奥のポスターを指さす。それに景気よくN-06が返す。
「ファンサ飽きた! 連中ならハンマー床にたたきつけて黙らせてやったぜ!」
「あーあー、君んとこのファン(アンチ)が暴れても知らないよ」
すぐにビールが運ばれてきて、苦笑しながら乾杯した。そこからは完全に小宴会である。酒とつまみがジャンジャンと注文されてゆき、みるみるうちに空になってゆく。ジョッキと皿が積み上げられていく中でN-06の快活な笑い声とヨルののんびりとした声が合間に響く。
「お前こそバトルかなんかじゃなかった?」
「あー⋯⋯そう、バトルね。ヴィジュアルバトルに登録されてたんだよ。なんで俺がヴィジュアル⋯⋯」
「はー!? ヴィジュアルぅ!? なんのヴィジュアルだよナマス斬りかぁ!?」
「そんなに笑うことはないだろ。だから今日は逃げてきたんだよ。俺の少ないファンも笑うに決まっている」
腹を抱えて笑うN-06にヨルもつられて笑う。その笑顔は傷があるにもかかわらずヴィジュアルバトルに出てもおかしくないようなものだったが、この場にいる連中にはそんなことを気にするものはいない。
明るく豪快に笑って飲んで食べるN-06と、それを横で見ながらつられる様に笑うヨル。はたから見ればいいコンビに見えるかもしれないが、2人の所属するチームは異なっておりいわば敵同士だ。当然のように戦ったこともあり、これからも戦う可能性がある。
「そろそろお前とももう1回やりてえなあ! お前もそう思うだろ?」
「そうかい? 君はいつも面白そうに戦っているように見えるけどね」
当たり前のようにそんな話が話題に出る。そうして当たり前のように続けた。
「ああでも、前より面白くなってなかったら殺すぜ!」
「⋯⋯君も。そんなこと言って俺に殺されないように、せいぜい強くなっておいてくれ」
デュープバトルで死者が出ることはない。そのはずだ。しかしその目は真実を語っているようにお互いまっすぐだった。瞳の中で闘争の火が荒れ狂うように燃えている。その炎を見れば、ファンサだのヴィジュアルバトルだのに彼らがいかに向いていないかがわかるだろう。
飲んで食って笑いあう。それと同じように戦いあう。それが彼らの日常なのだ。
生を謳歌するようなその笑い声は、その日1日中路地裏に響き渡っていた。
背伸びをしながら昼間っから薄暗い路地裏を歩いているのはN-06――エヌシックスだ。ロビン・テクノロジーズ所属の戦闘特化型デュープで、彼の戦闘スタイルはとにかく実践に秀でている。その反面魅せ方についてはおざなりだが、そこが良いというコアなファンも多い。派手で自由すぎるゆえにアンチも多い彼がこんな場所を一人でうろついているのには理由があった。
「ファンサなんざ向いてねえっつの。んなもん俺に求めんな」
そう、飽きてファンサ会場を抜け出してきたのだった。押し寄せるファンとアンチのど真ん中でハンマーのブースターで飛び上がる姿は、そこにいる人々の目に中々爽快な光景に映っただろう。悲鳴を上げた責任者を除いて。
「さて、これからどうすっかな」
そんなことはおかまいなしとばかりにN-06は路地裏を軽く見渡す。するとある場所でその金色の瞳がぴたりと止まった。ニヤリと口角をつり上げてぽつりとこぼす。
「そうだな。憂さ晴らしでもすっか」
同じ頃、ヨルは繁華街をのんびりと歩いていた。それというのも今日入れられていた試合の内容に原因がある。なんとヴィジュアルバトルに登録されていたのだ。
「向いてないって言ったはずなんだけどなあ」
彼は淡々と積み上げてゆくバトルスタイルに定評があるデュープだ。しかしフルフェイスヘルメットがデフォルト容姿である影響もあってか、当然のようにヴィジュアル面は得意でない。その結果、こうしてそっとボイコットをキメている訳である。
普段の姿がフルフェイスであるため素顔で出歩いていてもめったに気づかれない。その素顔には横一文字に大きな傷がついており、やはりアイドル的アピールとは程遠いであろうことが伺われる。
「これからどうしようかな。特にやることもないし……」
とぼやけば、路地裏から大きな笑い声が飛んできた。何だかどこかで聞いた声のような気がする。引き寄せられるように足を向けて見れば、そこには見知った顔が居た。
「あれ、こんな所で何してるの」
「おう、久しぶりだな!」
掘っ立て小屋のような小さな酒場で豪快に飲んでいるN-06だ。真昼間から堂々とビールジョッキを振り上げて挨拶してくる。他にやることもないからまあいいか、とヨルもその隣に座って同じようにビールを注文した。
「君、今日イベントに参加してるんじゃなかったか。ポスターに写真載ってるけど」
と酒場の奥のポスターを指さす。それに景気よくN-06が返す。
「ファンサ飽きた! 連中ならハンマー床にたたきつけて黙らせてやったぜ!」
「あーあー、君んとこのファン(アンチ)が暴れても知らないよ」
すぐにビールが運ばれてきて、苦笑しながら乾杯した。そこからは完全に小宴会である。酒とつまみがジャンジャンと注文されてゆき、みるみるうちに空になってゆく。ジョッキと皿が積み上げられていく中でN-06の快活な笑い声とヨルののんびりとした声が合間に響く。
「お前こそバトルかなんかじゃなかった?」
「あー⋯⋯そう、バトルね。ヴィジュアルバトルに登録されてたんだよ。なんで俺がヴィジュアル⋯⋯」
「はー!? ヴィジュアルぅ!? なんのヴィジュアルだよナマス斬りかぁ!?」
「そんなに笑うことはないだろ。だから今日は逃げてきたんだよ。俺の少ないファンも笑うに決まっている」
腹を抱えて笑うN-06にヨルもつられて笑う。その笑顔は傷があるにもかかわらずヴィジュアルバトルに出てもおかしくないようなものだったが、この場にいる連中にはそんなことを気にするものはいない。
明るく豪快に笑って飲んで食べるN-06と、それを横で見ながらつられる様に笑うヨル。はたから見ればいいコンビに見えるかもしれないが、2人の所属するチームは異なっておりいわば敵同士だ。当然のように戦ったこともあり、これからも戦う可能性がある。
「そろそろお前とももう1回やりてえなあ! お前もそう思うだろ?」
「そうかい? 君はいつも面白そうに戦っているように見えるけどね」
当たり前のようにそんな話が話題に出る。そうして当たり前のように続けた。
「ああでも、前より面白くなってなかったら殺すぜ!」
「⋯⋯君も。そんなこと言って俺に殺されないように、せいぜい強くなっておいてくれ」
デュープバトルで死者が出ることはない。そのはずだ。しかしその目は真実を語っているようにお互いまっすぐだった。瞳の中で闘争の火が荒れ狂うように燃えている。その炎を見れば、ファンサだのヴィジュアルバトルだのに彼らがいかに向いていないかがわかるだろう。
飲んで食って笑いあう。それと同じように戦いあう。それが彼らの日常なのだ。
生を謳歌するようなその笑い声は、その日1日中路地裏に響き渡っていた。