【R!】サファイアの声は斯く癒す
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 依藤ピリカ納品 2023年05月21日 22時42分17秒
『さーて、今日のレイドバトルのボスはこちらー! 空飛ぶ巨大桃色毒イルカ!』
スタジアムに司会の底抜けに明るい声が響き渡る。
『こいつに軽率に触れたり、こいつが発する怪音波に当てられると、麻痺したり戦意喪失しちゃうぞー。取り巻きのミニイルカ達はお空を泳ぐ以外の特殊能力はないが、タックルされるとかなり痛い。数も多いから油断するなよ!』
五社対抗レイドバトル、観客の入りは上々。
多くの観客に注目されているということもあって参加デュープ達の士気も高い。
しかし。
(見事にばらばらですね)
試合開始から暫しの間、戦況を後方から観察していたセントレアは嘆息するでもなく淡々とそう判断した。
今回のレイドバトルは複数企業所属のデュープ達が同じフィールドで同じ敵と戦い、ポイントを競い合う形式。
一番わかりやすいポイントの稼ぎ方は華々しくボスを討伐すること。
それ故に現在選手たちは我先にとベラドンナへ殺到し、足を引っ張り合ったり、取り巻きに袋叩きにされているという魔女の巨釜状態だ。
(今回の参加者の殆どは経験が浅い人。ベラドンナを単騎ないし自チームだけで攻略できる選手は……いない)
そう分析するセントレア自身、自分やVCだけで攻略できるとは思っていない。それは過小評価でもなんでもなく、冷静かつ客観的に判断した結果だ。
つまりこのままではベラドンナを倒せず、勝者不在で全員が泥をかぶることになる。
ならば、セントレアがすることは一つだけ。
「回復します。皆さん、立て直しましょう」
セントレアが麻痺や怪音波、取り巻きにタコ殴りにされて身動きとれなくなったデュープ達に拡声器型の光線銃を向け、射撃の時とは違う操作で発動させる。すると、『それ』を向けられたデュープ達はまるで何事もなかったかのように動けるようになった。
「ボスの右手側が手薄です。防御に自信がある方は正面から左を抑えて、火力や射程に自信がある方は取り巻き対応とボス対応に分かれましょう」
宝石の様な声に指揮され、企業の枠を超えてデュープ達は連携を見せ始める。
起死回生の逆転劇。
ボスを討ったのはSEの選手だったが、判定AIと観客が選んだMVPはVCのセントレアだった。
「ご声援ありがとうございます」
模範的な美しい笑顔と所作で観客に応えるセントレア。
――果たして、気づいた人はいるのだろうか。
この試合で、彼女は誰も癒してなどいないということに。
スタジアムに司会の底抜けに明るい声が響き渡る。
『こいつに軽率に触れたり、こいつが発する怪音波に当てられると、麻痺したり戦意喪失しちゃうぞー。取り巻きのミニイルカ達はお空を泳ぐ以外の特殊能力はないが、タックルされるとかなり痛い。数も多いから油断するなよ!』
五社対抗レイドバトル、観客の入りは上々。
多くの観客に注目されているということもあって参加デュープ達の士気も高い。
しかし。
(見事にばらばらですね)
試合開始から暫しの間、戦況を後方から観察していたセントレアは嘆息するでもなく淡々とそう判断した。
今回のレイドバトルは複数企業所属のデュープ達が同じフィールドで同じ敵と戦い、ポイントを競い合う形式。
一番わかりやすいポイントの稼ぎ方は華々しくボスを討伐すること。
それ故に現在選手たちは我先にとベラドンナへ殺到し、足を引っ張り合ったり、取り巻きに袋叩きにされているという魔女の巨釜状態だ。
(今回の参加者の殆どは経験が浅い人。ベラドンナを単騎ないし自チームだけで攻略できる選手は……いない)
そう分析するセントレア自身、自分やVCだけで攻略できるとは思っていない。それは過小評価でもなんでもなく、冷静かつ客観的に判断した結果だ。
つまりこのままではベラドンナを倒せず、勝者不在で全員が泥をかぶることになる。
ならば、セントレアがすることは一つだけ。
「回復します。皆さん、立て直しましょう」
セントレアが麻痺や怪音波、取り巻きにタコ殴りにされて身動きとれなくなったデュープ達に拡声器型の光線銃を向け、射撃の時とは違う操作で発動させる。すると、『それ』を向けられたデュープ達はまるで何事もなかったかのように動けるようになった。
「ボスの右手側が手薄です。防御に自信がある方は正面から左を抑えて、火力や射程に自信がある方は取り巻き対応とボス対応に分かれましょう」
宝石の様な声に指揮され、企業の枠を超えてデュープ達は連携を見せ始める。
起死回生の逆転劇。
ボスを討ったのはSEの選手だったが、判定AIと観客が選んだMVPはVCのセントレアだった。
「ご声援ありがとうございます」
模範的な美しい笑顔と所作で観客に応えるセントレア。
――果たして、気づいた人はいるのだろうか。
この試合で、彼女は誰も癒してなどいないということに。