【偽楽】沈黙の春
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 依藤ピリカ納品 2023年05月28日 15時53分40秒
青い空に碧い海、白い建物に蒼い花々。
溜息がもれてしまいそうな位綺麗な海辺の街を、心よりお慕いしている方と並んで歩く。
白を貴重としたワンピースにレースで編まれたジレ、足元は編み上げサンダル。頭には日除けのつばの広い帽子をかぶって。
「どうかしましたか?」
「い、いえ! 陽射しにあまり慣れて無くて」
「無理はなさらないで下さいね」
「はいっ、ありがとうございます。ナギさん」
見つめられるだけで耳朶迄赤くなっている自覚はある。
繋がれた手が汗ばまないように、この不自然な程に早くなった鼓動が伝わらない様に。
唇を噛んで、かの人の視線と声と手の恩恵を受けて歓喜しているあさましい自分を戒めた。
幸せ。
怖い位幸せ。
こんな楽園みたいな場所で、大好きな方のお傍にいられるなんて。
あまり得意ではないデュープバトルを頑張ってきて良かった。
足手纏いにならないように必死で、華やかな戦いぶりとは縁遠かったけれど。
わたしの『未来予測』が少しでもナギさんの、SEのお役に立てたのなら良かった。
そして今回こうしてSEの意向で風光明媚な保養地で、ナギさんと一緒に『休暇』を頂けたのはこの上ない僥倖。
夢なら醒めないで。
そんな幸せに浸っていると、不意に丘の上の教会から鐘の音が聞こえて来た。
「結婚式でしょうか」
Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong
朗らかなナギさんの声が遠くに聞こえる。
真っ青な空を沢山の白い鳥が横切る。
背中を嫌な汗が伝う。頭が痛い。吐気がする。
「×××××?」
ナギさんが名前を呼ぶ。
その名前は。
「……誰?」
その問いを口にした瞬間、『世界』が白い砂となって崩れ落ちた。
ああ、そうか、そうだったんだ。
もう、わたしは。
「ナギ、さん」
伸ばした手が、声が、届くことはない。
だってこの手も声も枯れて、白い砂に埋もれつつあるのだから。
それでも、この心は、感情は、偽物じゃない。替わりなんかじゃない。
わたしは私にわたしを返さなきゃいけないけれど、この気持ちはわたしだけのもの。
『さようなら、ブルーベルで、ブルーベルではない君。
次の子は、ちゃんとブルーベルになれると良いんだけれど』
波音と海鳥の鳴き声に混じって最期に聞こえたのは、そんな声だった。
溜息がもれてしまいそうな位綺麗な海辺の街を、心よりお慕いしている方と並んで歩く。
白を貴重としたワンピースにレースで編まれたジレ、足元は編み上げサンダル。頭には日除けのつばの広い帽子をかぶって。
「どうかしましたか?」
「い、いえ! 陽射しにあまり慣れて無くて」
「無理はなさらないで下さいね」
「はいっ、ありがとうございます。ナギさん」
見つめられるだけで耳朶迄赤くなっている自覚はある。
繋がれた手が汗ばまないように、この不自然な程に早くなった鼓動が伝わらない様に。
唇を噛んで、かの人の視線と声と手の恩恵を受けて歓喜しているあさましい自分を戒めた。
幸せ。
怖い位幸せ。
こんな楽園みたいな場所で、大好きな方のお傍にいられるなんて。
あまり得意ではないデュープバトルを頑張ってきて良かった。
足手纏いにならないように必死で、華やかな戦いぶりとは縁遠かったけれど。
わたしの『未来予測』が少しでもナギさんの、SEのお役に立てたのなら良かった。
そして今回こうしてSEの意向で風光明媚な保養地で、ナギさんと一緒に『休暇』を頂けたのはこの上ない僥倖。
夢なら醒めないで。
そんな幸せに浸っていると、不意に丘の上の教会から鐘の音が聞こえて来た。
「結婚式でしょうか」
Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong Ding-dong
朗らかなナギさんの声が遠くに聞こえる。
真っ青な空を沢山の白い鳥が横切る。
背中を嫌な汗が伝う。頭が痛い。吐気がする。
「×××××?」
ナギさんが名前を呼ぶ。
その名前は。
「……誰?」
その問いを口にした瞬間、『世界』が白い砂となって崩れ落ちた。
ああ、そうか、そうだったんだ。
もう、わたしは。
「ナギ、さん」
伸ばした手が、声が、届くことはない。
だってこの手も声も枯れて、白い砂に埋もれつつあるのだから。
それでも、この心は、感情は、偽物じゃない。替わりなんかじゃない。
わたしは私にわたしを返さなきゃいけないけれど、この気持ちはわたしだけのもの。
『さようなら、ブルーベルで、ブルーベルではない君。
次の子は、ちゃんとブルーベルになれると良いんだけれど』
波音と海鳥の鳴き声に混じって最期に聞こえたのは、そんな声だった。