【BD】銀鬼と舞う
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 煙納品 2023年05月12日 10時51分04秒
ここはVSエネミー、拡張戦場『BREAKDOWN』。撃破したエネミーや攻撃を受けたオブジェクトが、受けたダメージに応じて派手な三次元エフェクトを伴い破損するのが特徴の、爽快感溢れる戦場だ。今宵の主催は翡翠電脳公社、それにアルセドとC.Eが乗った三企業合同マッチである。
各企業六名ずつのデュープが投入され、同時に一つのフィールドでVSエネミールールにてポイントを奪い合う。ただし、ポイントは企業ではなく、『個人』に入るのが今回のミソだ。六対六対六の構図ではなく、自分以外の周りは全て敵――いわゆるバトルロイヤルルールでの戦いである。
故に、同企業でも争いが発生し、結託の余地はない。それぞれのデュープが、普段の味方さえも敵に回して暴れ回る、夢のバトルが展開されている――筈だったのだが。
バトルが始まって数分、最初のレアエネミー出現タイミングで、座標B5の敵出現ハッチの周辺に集まったデュープ達がざわめいた。
敵出現ハッチの真ん前、出てくるエネミーを撃破しながら相争っているデュープがいるのだ。その戦闘ぶりは苛烈、舞うように戦うアルセドの〝danseur noble〟、そしてそれを銃剣と光弾で迎え撃つ“金瞳鬼”。迂闊に近づけば彼らの戦いに巻き込まれ、痛手を受ける可能性がある。
「クソッ、近づけない!」
「あそこが狩り場になるってのに――おい、誰かあいつら止めろよ!」
「無理だってぇの、場所変えて稼いだ方がまだましだ! オレは下りるぜ!」
「チッ……味方の時は頼りになるヤツだが、こうして敵に回すと厄介な野郎だぜ、『隊長』さんはよ」
仕方なく次点の狩り場を目指して走るアルセドのデュープや、側撃の機会をうかがって待機する翡翠のデュープ、舌打ち混じりに二人の討ち漏らしを狩り出すC.Eのデュープ。彼らを余所に、踊り手と鬼王の争いは過熱するばかりだ。
「厄介なものだ。こうして序盤からぶつかり合うことになろうとは」
影のある涼やかな美貌をしたアルセドの舞手、『Du/nas』――デュナスが涼しげに言いながら、地を踏みきった。銀髪が風をはらんで踊り、背に広がる青い光翼が閃を引く。超高速でステップしながらスピン、繰り出される蹴りが刃めいた光を放つ――否、それは最早実際に刃だ! 高周波ブレードが仕込まれた脚部による蹴りが、軌道上にいたエネミーの首を反応すら許さず刎ね飛ばす!
三体の雑魚が爆炎を散らして吹き飛ぶのを尻目に、デュナスは眼前の敵へ襲いかかった。BREAKDOWNではPvPは減点対象だが、有力なデュープの戦力を削いでおくのは、戦略として取りうる策の一つだ。高得点敵の出現場所を押さえている今ならば尚のこと。減点を受けた後で、レアエネミー撃破でスコアを取り戻せばよい!
「ここに湧くレアエネミーを押さえるのは定石中の定石だろう。何も不思議なことはない」
対するは鬼めいて張り出した二本の角が特徴的な、銀の長髪を一つに纏めた武人『Na8-T:Gall』――通称ナハティガル。重く影のある美貌はデュナスに勝るとも劣らない。
ナハティガルは銃剣つき、純白の長銃を構えて接近するデュナスを迎え撃つ。デュナスが蹴りを振り被る前に構えたライフルを五連射、飛び退く! 内二発がデュナスに猛進した。狙いは軸足、そして胴。
しかし鋭いステップ! デュナスは稲妻めいた横っ跳びで己に迫る二発を回避、
「いい腕だ」
そして知っていたかのように賛美した。
逸れたかに見えた残りの三発が、デュナスの後方にいたエネミーに突き刺さりいずれも一撃で爆発四散せしめる!
あの一瞬でデュナスに対する牽制と、エネミー撃破による点数稼ぎを同時に行うとは。音に聞こえた『紫銀隊』の隊長は伊達ではないということか。
ナハティガルを軸とした衛星軌道を高速移動しながら、デュナスは銀髪の鬼を興味深げに観察する。
「どうやら指揮だけではないようだな、金瞳鬼。私の速度に付いてこれたこと、賞賛に値する」
「――己惚れるなよ、優男。この程度、物の数にも入らん。俺の目を欺きたければ、影も落とさず動いてみることだ」
白い銃にエネルギーを注ぎ込みながら、ナハティガルは嘯くように応じた。
彼の左眼を覆う銀の眼帯めいたアイマスクは、神経直結型のリムだ。彼はその処理能力と視力をフルに用いて、索敵・情報収集・解析、火器管制まで行う。その彼の認識能力を前にしては、例えデュナスの速度といえども捉えられぬものではないというのか。
「吼えたな。影を落とさず済むかは分からないが――その挑発、乗ってやろう」
しかしナハティガルに余裕ある声で応じ、デュナスは旋回軌道のまま機を伺う。静かな声ではあったが、覇気がその声の端に滲んだ。――まだ、速くなるというのか。
ナハティガルもまたデュナスの攻撃に注意を払い、沈黙。
一触即発の、不安定な均衡――騒がしいはずの戦場で、向き合う二人の間だけが無音になったかのような緊張感が漂う。
各企業六名ずつのデュープが投入され、同時に一つのフィールドでVSエネミールールにてポイントを奪い合う。ただし、ポイントは企業ではなく、『個人』に入るのが今回のミソだ。六対六対六の構図ではなく、自分以外の周りは全て敵――いわゆるバトルロイヤルルールでの戦いである。
故に、同企業でも争いが発生し、結託の余地はない。それぞれのデュープが、普段の味方さえも敵に回して暴れ回る、夢のバトルが展開されている――筈だったのだが。
バトルが始まって数分、最初のレアエネミー出現タイミングで、座標B5の敵出現ハッチの周辺に集まったデュープ達がざわめいた。
敵出現ハッチの真ん前、出てくるエネミーを撃破しながら相争っているデュープがいるのだ。その戦闘ぶりは苛烈、舞うように戦うアルセドの〝danseur noble〟、そしてそれを銃剣と光弾で迎え撃つ“金瞳鬼”。迂闊に近づけば彼らの戦いに巻き込まれ、痛手を受ける可能性がある。
「クソッ、近づけない!」
「あそこが狩り場になるってのに――おい、誰かあいつら止めろよ!」
「無理だってぇの、場所変えて稼いだ方がまだましだ! オレは下りるぜ!」
「チッ……味方の時は頼りになるヤツだが、こうして敵に回すと厄介な野郎だぜ、『隊長』さんはよ」
仕方なく次点の狩り場を目指して走るアルセドのデュープや、側撃の機会をうかがって待機する翡翠のデュープ、舌打ち混じりに二人の討ち漏らしを狩り出すC.Eのデュープ。彼らを余所に、踊り手と鬼王の争いは過熱するばかりだ。
「厄介なものだ。こうして序盤からぶつかり合うことになろうとは」
影のある涼やかな美貌をしたアルセドの舞手、『Du/nas』――デュナスが涼しげに言いながら、地を踏みきった。銀髪が風をはらんで踊り、背に広がる青い光翼が閃を引く。超高速でステップしながらスピン、繰り出される蹴りが刃めいた光を放つ――否、それは最早実際に刃だ! 高周波ブレードが仕込まれた脚部による蹴りが、軌道上にいたエネミーの首を反応すら許さず刎ね飛ばす!
三体の雑魚が爆炎を散らして吹き飛ぶのを尻目に、デュナスは眼前の敵へ襲いかかった。BREAKDOWNではPvPは減点対象だが、有力なデュープの戦力を削いでおくのは、戦略として取りうる策の一つだ。高得点敵の出現場所を押さえている今ならば尚のこと。減点を受けた後で、レアエネミー撃破でスコアを取り戻せばよい!
「ここに湧くレアエネミーを押さえるのは定石中の定石だろう。何も不思議なことはない」
対するは鬼めいて張り出した二本の角が特徴的な、銀の長髪を一つに纏めた武人『Na8-T:Gall』――通称ナハティガル。重く影のある美貌はデュナスに勝るとも劣らない。
ナハティガルは銃剣つき、純白の長銃を構えて接近するデュナスを迎え撃つ。デュナスが蹴りを振り被る前に構えたライフルを五連射、飛び退く! 内二発がデュナスに猛進した。狙いは軸足、そして胴。
しかし鋭いステップ! デュナスは稲妻めいた横っ跳びで己に迫る二発を回避、
「いい腕だ」
そして知っていたかのように賛美した。
逸れたかに見えた残りの三発が、デュナスの後方にいたエネミーに突き刺さりいずれも一撃で爆発四散せしめる!
あの一瞬でデュナスに対する牽制と、エネミー撃破による点数稼ぎを同時に行うとは。音に聞こえた『紫銀隊』の隊長は伊達ではないということか。
ナハティガルを軸とした衛星軌道を高速移動しながら、デュナスは銀髪の鬼を興味深げに観察する。
「どうやら指揮だけではないようだな、金瞳鬼。私の速度に付いてこれたこと、賞賛に値する」
「――己惚れるなよ、優男。この程度、物の数にも入らん。俺の目を欺きたければ、影も落とさず動いてみることだ」
白い銃にエネルギーを注ぎ込みながら、ナハティガルは嘯くように応じた。
彼の左眼を覆う銀の眼帯めいたアイマスクは、神経直結型のリムだ。彼はその処理能力と視力をフルに用いて、索敵・情報収集・解析、火器管制まで行う。その彼の認識能力を前にしては、例えデュナスの速度といえども捉えられぬものではないというのか。
「吼えたな。影を落とさず済むかは分からないが――その挑発、乗ってやろう」
しかしナハティガルに余裕ある声で応じ、デュナスは旋回軌道のまま機を伺う。静かな声ではあったが、覇気がその声の端に滲んだ。――まだ、速くなるというのか。
ナハティガルもまたデュナスの攻撃に注意を払い、沈黙。
一触即発の、不安定な均衡――騒がしいはずの戦場で、向き合う二人の間だけが無音になったかのような緊張感が漂う。