Das ist mein erster Tanz.
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 柊コウタ納品 2023年06月07日 00時02分53秒
常の冷静さなど消し飛んでしまった。対戦者の顔が、かつての相棒GR-033.rda(ゲルダ・クライン)とまるで変わらぬそれだったからである。そして会場に流れた出場者名のコールまで、彼女をゲルダと呼んだ。
「ゲルダなのか!?」
Na8-T:Gall(ナハティガル・ラー)の取り乱した様子に、しかし、対戦者はきょとんとして目を瞬かせている。
「ええと、確かに“ゲルダ“ですけど……たぶん、はじめまして――かと?」
首を傾げる“ゲルダ“。その仕草に、そうか、そうだな、という思いと共に頭が冷えていく。相棒は死んだのだ。数ヶ月前、バトル中の事故によって。
「なら、他人の空似、だな……すまん、今の発言は忘れてくれ……」
「いえいえ、お気になさらず。お知り合いとそんなに似てたんですねぇ、名前まで一緒なんて。ではでは改めまして、Gerdaです!」
「ああ、Na8-T:Gallだ」
「ナハティガル様、えへへ、よろしくお願いしますねっ」
「……よろしく」
死んだ相棒と同じように、Na8-T:Gallを呼ぶ。なぜこんなにも似ているのだろうか、という疑問が頭を離れない。別人だとわかっているはずなのに。
●
「後にも先にも唯一つの、戦った事しか残らない人生ならば。裁きが下る時が来るまで無敗である事を此処に誓う」
重々しい口上を静かに聞くGerda。バトル経験豊富な彼の雰囲気はフレンドリーとは言い難く、さながら死地を求めて流離う求道者の如き峻厳さ。相対するだけで緊張する。
でも、とGerdaは思う。悪い人ではない。むしろとても誠実で、礼儀正しく、静かな人。最初の大声には驚いたけれど。
(あれはたぶん、向こうもすごく驚いてただけなんだろうし)
その後の彼は気落ちしているようにも見えて、自分が彼の思うその人でなかったことが、なんだか申し訳なく感じられた。
とはいえ、バトルはバトル。自分は彼の対戦者としてここに来たのだ。
[ Na8-T:Gall ]
- Violet Computing -
◇◆ VS ◆◇
[ Gerda ]
- Schwan Electronics -
_
___
Rule : Straight
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3Dグリッド上に無数の線が描画され、現れたのは廃れた城の大ホール。御伽話の舞踏会が終わり、何百年も経ったかのような廃墟の戦場は、天井と、観客席側の壁が崩落している。
2人はそのホールの両端に立った。
【 SESSION >> START!! 】
身の丈より長く重いサイバー剣を細い両腕の凄まじい膂力で構え、Gerdaが接敵。
対するNa8-T:Gallは左眼を起動。掃射でGerdaを牽制、身を翻して壁際のテーブルを踏み台に高く跳躍。灯の無い巨大なシャンデリアに飛び付いて懸垂、一瞬でシャンデリアの上に立ち、ファンが喝采。
掃射に蹈鞴を踏んだGerdaだったが、上へ移ったNa8-T:Gallに向け、片腕でテーブルを投擲。豪快な手段でNa8-T:Gallの狙撃準備を阻止し、観客席は楽しげな歓声に満ちる。
Gerdaが今度は椅子を投げ、Na8-T:Gallが蜂の巣にし、本体を狙ったNa8-T:Gallの銃撃はGerdaの剣が防いだ。
上階の手摺や他のテーブル、崩れた壁を跳び回ってしばらく続いた派手な応酬。Gerdaの耳に響いたのは。
――窓ガラスが割れる高い音。
何事、と一瞬気が逸れたGerdaの視界の端に、細く長く翻る銀髪の光が映った。音はNa8-T:Gallが仕掛けた罠。そう気づいた時には既にGerdaの横腹へ、多機能ライフルの銃剣が襲いかかっていた。
大剣を身の横へ回し、見事に銃剣を受けたGerdaだが、僅かに体勢を崩されたところに二打三打と鋭く打ち込まれ、HPが削られる。
斬り返さんと銀髪の美丈夫を見上げれば、フィールド上空の照明を背負って翳る金色の視線とぶつかった。
●
Na8-T:Gallの目には、この闘いの勝ち筋が既に見えていた。それはGerdaの動きが――戸惑いを覚えるほど明確に――読めてしまうため。彼女との相違点を探すほうが難しい。違うのは髪型くらいか。彼女はショートカットだった、Gerdaは踝まで伸びるロングヘア。色は、同じ。
Na8-T:Gallは、倒れたテーブルや椅子の転がる場所へGerdaを追いこんでいく。あのサイバー剣の威力は未知数、しかしシュヴァーン最新装備との宣伝文句だった。
(使わせて情報を抜くか、使わせず封殺するか)
その逡巡を隙と見たか、Gerdaが斬りかかってきた。重そうな椅子を盾に、突っ込んでくる。己を顧みず敵に向かっていく戦い方を自分はよく知っている。そう、思ってしまう。
当惑を弾に込める。走る速度も体のブレも計測不要なほど彼女と同じで、左眼はGerdaの肩に照準する。
Na8-T:Gallは引き金を引いた。バトルフィールドに現れるのは、紫を纏うゲルダではなく、白を纏うゲルダ。対戦者となることはあっても、並び立つことは二度と無い。なのになぜ、この弾は吸い込まれるように彼女の肩へ飛んでいくのか、わからない。
GerdaのHPを削りきった弾痕が、朽ちたダンスホールの壁に刻まれていた。
「ゲルダなのか!?」
Na8-T:Gall(ナハティガル・ラー)の取り乱した様子に、しかし、対戦者はきょとんとして目を瞬かせている。
「ええと、確かに“ゲルダ“ですけど……たぶん、はじめまして――かと?」
首を傾げる“ゲルダ“。その仕草に、そうか、そうだな、という思いと共に頭が冷えていく。相棒は死んだのだ。数ヶ月前、バトル中の事故によって。
「なら、他人の空似、だな……すまん、今の発言は忘れてくれ……」
「いえいえ、お気になさらず。お知り合いとそんなに似てたんですねぇ、名前まで一緒なんて。ではでは改めまして、Gerdaです!」
「ああ、Na8-T:Gallだ」
「ナハティガル様、えへへ、よろしくお願いしますねっ」
「……よろしく」
死んだ相棒と同じように、Na8-T:Gallを呼ぶ。なぜこんなにも似ているのだろうか、という疑問が頭を離れない。別人だとわかっているはずなのに。
●
「後にも先にも唯一つの、戦った事しか残らない人生ならば。裁きが下る時が来るまで無敗である事を此処に誓う」
重々しい口上を静かに聞くGerda。バトル経験豊富な彼の雰囲気はフレンドリーとは言い難く、さながら死地を求めて流離う求道者の如き峻厳さ。相対するだけで緊張する。
でも、とGerdaは思う。悪い人ではない。むしろとても誠実で、礼儀正しく、静かな人。最初の大声には驚いたけれど。
(あれはたぶん、向こうもすごく驚いてただけなんだろうし)
その後の彼は気落ちしているようにも見えて、自分が彼の思うその人でなかったことが、なんだか申し訳なく感じられた。
とはいえ、バトルはバトル。自分は彼の対戦者としてここに来たのだ。
[ Na8-T:Gall ]
- Violet Computing -
◇◆ VS ◆◇
[ Gerda ]
- Schwan Electronics -
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Rule : Straight
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3Dグリッド上に無数の線が描画され、現れたのは廃れた城の大ホール。御伽話の舞踏会が終わり、何百年も経ったかのような廃墟の戦場は、天井と、観客席側の壁が崩落している。
2人はそのホールの両端に立った。
【 SESSION >> START!! 】
身の丈より長く重いサイバー剣を細い両腕の凄まじい膂力で構え、Gerdaが接敵。
対するNa8-T:Gallは左眼を起動。掃射でGerdaを牽制、身を翻して壁際のテーブルを踏み台に高く跳躍。灯の無い巨大なシャンデリアに飛び付いて懸垂、一瞬でシャンデリアの上に立ち、ファンが喝采。
掃射に蹈鞴を踏んだGerdaだったが、上へ移ったNa8-T:Gallに向け、片腕でテーブルを投擲。豪快な手段でNa8-T:Gallの狙撃準備を阻止し、観客席は楽しげな歓声に満ちる。
Gerdaが今度は椅子を投げ、Na8-T:Gallが蜂の巣にし、本体を狙ったNa8-T:Gallの銃撃はGerdaの剣が防いだ。
上階の手摺や他のテーブル、崩れた壁を跳び回ってしばらく続いた派手な応酬。Gerdaの耳に響いたのは。
――窓ガラスが割れる高い音。
何事、と一瞬気が逸れたGerdaの視界の端に、細く長く翻る銀髪の光が映った。音はNa8-T:Gallが仕掛けた罠。そう気づいた時には既にGerdaの横腹へ、多機能ライフルの銃剣が襲いかかっていた。
大剣を身の横へ回し、見事に銃剣を受けたGerdaだが、僅かに体勢を崩されたところに二打三打と鋭く打ち込まれ、HPが削られる。
斬り返さんと銀髪の美丈夫を見上げれば、フィールド上空の照明を背負って翳る金色の視線とぶつかった。
●
Na8-T:Gallの目には、この闘いの勝ち筋が既に見えていた。それはGerdaの動きが――戸惑いを覚えるほど明確に――読めてしまうため。彼女との相違点を探すほうが難しい。違うのは髪型くらいか。彼女はショートカットだった、Gerdaは踝まで伸びるロングヘア。色は、同じ。
Na8-T:Gallは、倒れたテーブルや椅子の転がる場所へGerdaを追いこんでいく。あのサイバー剣の威力は未知数、しかしシュヴァーン最新装備との宣伝文句だった。
(使わせて情報を抜くか、使わせず封殺するか)
その逡巡を隙と見たか、Gerdaが斬りかかってきた。重そうな椅子を盾に、突っ込んでくる。己を顧みず敵に向かっていく戦い方を自分はよく知っている。そう、思ってしまう。
当惑を弾に込める。走る速度も体のブレも計測不要なほど彼女と同じで、左眼はGerdaの肩に照準する。
Na8-T:Gallは引き金を引いた。バトルフィールドに現れるのは、紫を纏うゲルダではなく、白を纏うゲルダ。対戦者となることはあっても、並び立つことは二度と無い。なのになぜ、この弾は吸い込まれるように彼女の肩へ飛んでいくのか、わからない。
GerdaのHPを削りきった弾痕が、朽ちたダンスホールの壁に刻まれていた。