Das ist mein erster Tanz.

電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 柊コウタ納品 2023年06月07日 00時02分46秒

 常の冷静さなど消し飛んでしまった。対戦者の顔が、かつての相棒GR-033.rda(ゲルダ)(ゲルダ・クライン)とまるで変わらぬそれだったからである。そして会場に流れた出場者名のコールまで、彼女をゲルダと呼んだ。
「ゲルダなのか!?」
 Na8-T:Gall(ナハティガル)(ナハティガル・ラー)の取り乱した様子に、しかし、対戦者はきょとんとして目を瞬かせている。
「ええと、確かに“ゲルダ“ですけど……たぶん、はじめまして――かと?」
 首を傾げる“ゲルダ“。その仕草に、そうか、そうだな、という思いと共に頭が冷えていく。相棒は死んだのだ。数ヶ月前、バトル中の事故によって。
「なら、他人の空似、だな……すまん、今の発言は忘れてくれ……」
「いえいえ、お気になさらず。お知り合いとそんなに似てたんですねぇ、名前まで一緒なんて。ではでは改めまして、Gerda(ゲルダ)です!」
「ああ、Na8-T:Gallだ」
「ナハティガル様、えへへ、よろしくお願いしますねっ」
「……よろしく」
 死んだ相棒と同じように、Na8-T:Gallを呼ぶ。なぜこんなにも似ているのだろうか、という疑問が頭を離れない。別人だとわかっているはずなのに。

●
「後にも先にも唯一つの、戦った事しか残らない人生ならば。裁きが下る時が来るまで無敗である事を此処に誓う」
 重々しい口上を静かに聞くGerda。バトル経験豊富な彼の雰囲気はフレンドリーとは言い難く、さながら死地を求めて流離う求道者の如き峻厳さ。相対するだけで緊張する。
 でも、とGerdaは思う。悪い人ではない。むしろとても誠実で、礼儀正しく、静かな人。最初の大声には驚いたけれど。
(あれはたぶん、向こうもすごく驚いてただけなんだろうし)
 その後の彼は気落ちしているようにも見えて、自分が彼の思うその人でなかったことが、なんだか申し訳なく感じられた。

 とはいえ、バトルはバトル。自分は彼の対戦者としてここに来たのだ。

 [ Na8-T:Gall ]
 - Violet Computing -

 ◇◆ VS ◆◇

 [ Gerda ]
 - Schwan Electronics -

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 Rule : Straight
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 3Dグリッド上に無数の線が描画され、現れたのは廃れた城の大ホール。御伽話の舞踏会が終わり、何百年も経ったかのような廃墟の戦場(バトルフィールド)は、天井と、観客席側の壁が崩落している。
 2人はそのホールの両端に立った。

【 SESSION >> START!! 】

 身の丈より長く重いサイバー剣を細い両腕(リム)の凄まじい膂力で構え、Gerdaが接敵。
 対するNa8-T:Gallは左眼(リム)を起動。掃射でGerdaを牽制、身を翻して壁際のテーブルを踏み台に高く跳躍。灯(ひ)の無い巨大なシャンデリアに飛び付いて懸垂、一瞬でシャンデリアの上に立ち、ファンが喝采。
 掃射に蹈鞴を踏んだGerdaだったが、上へ移ったNa8-T:Gallに向け、片腕でテーブルを投擲。豪快な手段でNa8-T:Gallの狙撃準備を阻止し、観客席は楽しげな歓声に満ちる。
 Gerdaが今度は椅子を投げ、Na8-T:Gallが蜂の巣にし、本体を狙ったNa8-T:Gallの銃撃はGerdaの剣が防いだ。
 上階の手摺や他のテーブル、崩れた壁を跳び回ってしばらく続いた派手な応酬。Gerdaの耳に響いたのは。
 ――窓ガラスが割れる高い音。
 何事、と一瞬気が逸れたGerdaの視界の端に、細く長く翻る銀髪の光が映った。音はNa8-T:Gallが仕掛けた罠(幻聴バグ)。そう気づいた時には既にGerdaの横腹へ、多機能ライフルの銃剣が襲いかかっていた。
 大剣を身の横へ回し、見事に銃剣を受けたGerdaだが、僅かに体勢を崩されたところに二打三打と鋭く打ち込まれ、HPが削られる。
 斬り返さんと銀髪の美丈夫を見上げれば、フィールド上空の照明を背負って翳る金色の視線とぶつかった。

●
 Na8-T:Gallの目には、この闘いの勝ち筋が既に見えていた。それはGerdaの動きが――戸惑いを覚えるほど明確に――読めてしまうため。彼女との相違点を探すほうが難しい。違うのは髪型くらいか。彼女はショートカットだった、Gerdaは踝まで伸びるロングヘア。色は、同じ。
 Na8-T:Gallは、倒れたテーブルや椅子の転がる場所へGerdaを追いこんでいく。あのサイバー剣の威力は未知数、しかしシュヴァーン最新装備との宣伝文句だった。
(使わせて情報を抜くか、使わせず封殺するか)
 その逡巡を隙と見たか、Gerdaが斬りかかってきた。重そうな椅子を盾に、突っ込んでくる。己を顧みず敵に向かっていく戦い方を自分はよく知っている。そう、思ってしまう。
 当惑を弾に込める。走る速度も体のブレも計測不要なほど彼女と同じで、左眼はGerdaの肩に照準する。
 Na8-T:Gallは引き金を引いた。バトルフィールドに現れるのは、紫を纏うゲルダではなく、白を纏うゲルダ。対戦者となることはあっても、並び立つことは二度と無い。なのになぜ、この弾は吸い込まれるように彼女の肩へ飛んでいくのか、わからない。

 GerdaのHPを削りきった弾痕が、朽ちたダンスホールの壁に刻まれていた。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0