疾風怒濤の銀狐
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)アルセド制作 STANZA納品 2023年04月19日 11時10分04秒
がっしゃん!
独房の扉が音を立てて閉まる。
別名を「反省室」と呼ばれるそこは、今やβL-9(通称ベルク)の別宅とも呼べるものとなっていた。
「ふぅーーー」
満足げに大きく息を吐き、ベルクは硬い床に四肢を投げ出す。
「今日も存分に駆け回ったのじゃ」
大の字に伸びて寛ぎまくったその顔は、全力でやり切った清々しさに満ちていた。
ベルクは目を閉じ、今日一日で脳裏に焼き付けた記憶にアクセスする。
途端、耳元で風を切る音が蘇った。
愛用の浮遊ボードを路面に置き、両足を乗せる。
足裏のスイッチを軽くタップすると、ボードがベルクの身体ごとふわりと浮き上がった。
僅か50cmほどだが、それだけでも見える世界は格段に広がる。
見晴らしの良くなった世界に向けて、ベルクはフルスロットルで滑り出した。
一度動き出せば、後は重心の移動だけでスピードも進行方向も、宙返りさえ思いのままだ。
居住区を突っ切り、商業区を抜けて、公園や屋外競技場などの大規模な施設が集まる外縁部に出る。
風を切り、楽しげな笑い声を上げて、ベルクは疾走った。
障害物を巧みに避けながら、銀色の尻尾を後ろに靡かせ、何もかも追い越し遥か後ろに置き去りにして。
目指すは外の世界、生活圏の向こうに広がる広大な緑の平原と、遠くに霞む山のてっぺん。
だが、そんなものはない。
それがホログラムであり、実際は高い壁が続いているだけだと、ベルクは知っている。
何故なら一度と言わず、その壁に頭から突っ込んでボードもろとも病院送りになっているから。
壁には一分の隙間もなく、ボードで飛び越える事も出来ない。
だが外との交流を遮断しているわけではないので、出入り口は当然ある。
人間用のゲートは流石に監視と管理が厳しいが、荷物用は結構ユルい。
警備の隙を見て、ゲートの開閉タイミングを見極め――
(今じゃ!)
ゲートが閉まる直前で隙間を抜けて、コンテナが山と積まれた集積場を突っ走る。
そこを抜けた先に、もうひとつの巨大なゲートがあった。
(あれを抜ければ外の世界じゃ)
だがいつも、その僅か手前で捕まって連れ戻されて、後はお馴染み反省室だ。
もちろん反省はする。
(今日はコンテナの並びがいつもと違っておったのじゃ)
慣れで飛んではいけない、臨機応変な対応力も磨かねば。
翌日。
一晩の反省を終えたベルクは、再びボードに飛び乗った。
「さて、今日はどこまで行けるじゃろうの?」
独房の扉が音を立てて閉まる。
別名を「反省室」と呼ばれるそこは、今やβL-9(通称ベルク)の別宅とも呼べるものとなっていた。
「ふぅーーー」
満足げに大きく息を吐き、ベルクは硬い床に四肢を投げ出す。
「今日も存分に駆け回ったのじゃ」
大の字に伸びて寛ぎまくったその顔は、全力でやり切った清々しさに満ちていた。
ベルクは目を閉じ、今日一日で脳裏に焼き付けた記憶にアクセスする。
途端、耳元で風を切る音が蘇った。
愛用の浮遊ボードを路面に置き、両足を乗せる。
足裏のスイッチを軽くタップすると、ボードがベルクの身体ごとふわりと浮き上がった。
僅か50cmほどだが、それだけでも見える世界は格段に広がる。
見晴らしの良くなった世界に向けて、ベルクはフルスロットルで滑り出した。
一度動き出せば、後は重心の移動だけでスピードも進行方向も、宙返りさえ思いのままだ。
居住区を突っ切り、商業区を抜けて、公園や屋外競技場などの大規模な施設が集まる外縁部に出る。
風を切り、楽しげな笑い声を上げて、ベルクは疾走った。
障害物を巧みに避けながら、銀色の尻尾を後ろに靡かせ、何もかも追い越し遥か後ろに置き去りにして。
目指すは外の世界、生活圏の向こうに広がる広大な緑の平原と、遠くに霞む山のてっぺん。
だが、そんなものはない。
それがホログラムであり、実際は高い壁が続いているだけだと、ベルクは知っている。
何故なら一度と言わず、その壁に頭から突っ込んでボードもろとも病院送りになっているから。
壁には一分の隙間もなく、ボードで飛び越える事も出来ない。
だが外との交流を遮断しているわけではないので、出入り口は当然ある。
人間用のゲートは流石に監視と管理が厳しいが、荷物用は結構ユルい。
警備の隙を見て、ゲートの開閉タイミングを見極め――
(今じゃ!)
ゲートが閉まる直前で隙間を抜けて、コンテナが山と積まれた集積場を突っ走る。
そこを抜けた先に、もうひとつの巨大なゲートがあった。
(あれを抜ければ外の世界じゃ)
だがいつも、その僅か手前で捕まって連れ戻されて、後はお馴染み反省室だ。
もちろん反省はする。
(今日はコンテナの並びがいつもと違っておったのじゃ)
慣れで飛んではいけない、臨機応変な対応力も磨かねば。
翌日。
一晩の反省を終えたベルクは、再びボードに飛び乗った。
「さて、今日はどこまで行けるじゃろうの?」