【偽楽】アンティークローズの憂鬱・後
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 依藤ピリカ納品 2023年04月09日 12時59分56秒
〇
久しぶりの逢瀬は甘やかで、熱くて、私は今生きているのだと。幸せなのだと心から思った。
花畑で抱き上げてくれた彼の腕は以前と変わらず逞しくて。
病室で撫でてくれた彼の手は花に触れるように優しく、もどかしくもある触れ方が堪らなく愛おしくて。
絡めた指も、重ねた唇も、繋がった部分も全部熱くて、甘い痺れに酔い痴れた。
我儘を言って置いていってもらったのは、彼が着ていたシャツ。
顔を埋めると、彼の匂いがまだ残っていて、凄く安心する。
本当はずっとずっと一緒にいたい。
復帰を諦めれば、もっと一緒にいられるだろうか?
彼の残り香を纏ったシャツを抱き締め、寂しさと不安に耐える。
大丈夫、ドクターはそろそろ良い報告が出来そうと言っていた。
きっともうすぐ帰れる、彼の元に、帰るんだ。
〇
マグノリアが咲き乱れる病院の中庭を通り、入院をしている棟とは別の棟に案内される。
この棟は特別な検査や処置をする為の棟なのだという。
初めて訪れた筈なのに、妙な既視感がして肌が粟立ち、唇を噛みしめる。
「赤薔薇」
特別棟の地下は薄暗くて、寒い。
光と花に溢れた地上とは正反対の有様だ。
「ようやく君の不調の原因が解ってね」
ドクターたちがにこやかに説明するが、内容が頭に入らない。
ここは一体なんの部屋なのか。
暗い部屋を取り囲む青白い水槽。
水槽の中にいるのは――私?
「これが不具合を除去した新しい『君』だ」
「新しい、私?」
「そう。もう一年で限界を迎えることはないし、もっと激しいバトルもプレイもできる。子どもも作れるかもしれない」
解らない。
一体何を言っているのか。
新しい『私』って?
「大丈夫、ちゃんと君の記憶は移してあげるから。最初はぎこちない所もあるかもしれないが、彼もきっとすぐに受け入れてくれるさ」
水槽の中に彼のホログラムが投影される。
すると水槽の『私』は目を開き、無表情だった顔が綻ぶ。
「お疲れ様、赤薔薇。君の名も顔も体も注がれた愛も……新しい赤薔薇が継承するからね」
余命、いや、死刑宣告に反射的に体が動く。
しかし無様にも車椅子から転げ落ちただけで、走って逃げることも敵わない。
「さぁ、全部枯れ落ちてしまう前に接ぎ木しよう」
「いっ……や……」
男達の手が伸ばされる。
蹂躙される。
私が、私でなくなる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
〇
愛しい人。
私は貴方だけの、唯一輪の赤薔薇でいたかった。
久しぶりの逢瀬は甘やかで、熱くて、私は今生きているのだと。幸せなのだと心から思った。
花畑で抱き上げてくれた彼の腕は以前と変わらず逞しくて。
病室で撫でてくれた彼の手は花に触れるように優しく、もどかしくもある触れ方が堪らなく愛おしくて。
絡めた指も、重ねた唇も、繋がった部分も全部熱くて、甘い痺れに酔い痴れた。
我儘を言って置いていってもらったのは、彼が着ていたシャツ。
顔を埋めると、彼の匂いがまだ残っていて、凄く安心する。
本当はずっとずっと一緒にいたい。
復帰を諦めれば、もっと一緒にいられるだろうか?
彼の残り香を纏ったシャツを抱き締め、寂しさと不安に耐える。
大丈夫、ドクターはそろそろ良い報告が出来そうと言っていた。
きっともうすぐ帰れる、彼の元に、帰るんだ。
〇
マグノリアが咲き乱れる病院の中庭を通り、入院をしている棟とは別の棟に案内される。
この棟は特別な検査や処置をする為の棟なのだという。
初めて訪れた筈なのに、妙な既視感がして肌が粟立ち、唇を噛みしめる。
「赤薔薇」
特別棟の地下は薄暗くて、寒い。
光と花に溢れた地上とは正反対の有様だ。
「ようやく君の不調の原因が解ってね」
ドクターたちがにこやかに説明するが、内容が頭に入らない。
ここは一体なんの部屋なのか。
暗い部屋を取り囲む青白い水槽。
水槽の中にいるのは――私?
「これが不具合を除去した新しい『君』だ」
「新しい、私?」
「そう。もう一年で限界を迎えることはないし、もっと激しいバトルもプレイもできる。子どもも作れるかもしれない」
解らない。
一体何を言っているのか。
新しい『私』って?
「大丈夫、ちゃんと君の記憶は移してあげるから。最初はぎこちない所もあるかもしれないが、彼もきっとすぐに受け入れてくれるさ」
水槽の中に彼のホログラムが投影される。
すると水槽の『私』は目を開き、無表情だった顔が綻ぶ。
「お疲れ様、赤薔薇。君の名も顔も体も注がれた愛も……新しい赤薔薇が継承するからね」
余命、いや、死刑宣告に反射的に体が動く。
しかし無様にも車椅子から転げ落ちただけで、走って逃げることも敵わない。
「さぁ、全部枯れ落ちてしまう前に接ぎ木しよう」
「いっ……や……」
男達の手が伸ばされる。
蹂躙される。
私が、私でなくなる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
〇
愛しい人。
私は貴方だけの、唯一輪の赤薔薇でいたかった。