【偽楽】アンティークローズの憂鬱・前
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 依藤ピリカ納品 2023年04月03日 00時05分12秒
〇
車椅子に乗った赤髪の乙女。彼女の眼前一面に広がるのはムスカリの花。
彼女はその希望ある花言葉に縋りたかった。
『輝く赤薔薇』の二つ名を持つシュヴァーン・エレクトロニクスの花形デュープ、ルビィ。
「……気高い騎士として、病魔にだって負けるわけにはいかない」
美しい花畑や樹々に囲まれ、豪華な病室と温泉を備えた病院。
まるで楽園のようなその場所で、ルビィは孤独な闘病生活を強いられていた。
〇
悲痛な声が私の名を呼ぶ。
ああ、なんて顔をしているんだ。君らしくもない。
大丈夫だ、すぐに持ち直す。
私の在るべき場所は彼の騎士の隣しかないのだから。
〇
倒れた日のことを夢に見て、真夜中に跳ね起きた。
夢だったら良かったと思う。
でも不自由な両下肢が、夢ではないと私を嘲笑う。
「情けない」
暫く結っていない髪に指を絡めて強く握る。
ドクターは言っていた。
新薬の副作用として幻覚や悪夢を見ることがあると。
どうせなら、彼の幻覚を見せて欲しいなんて都合の良い事を考えてもう一度体を沈める。
寝心地の良い寝具、純白のネグリジェ、景観の良い病室。
これらは全てこれまでの自身の働きと、彼が今尚築き続けてくれる貢献によるものだ。
戦いよりも、花を愛でながら穏やかに暮らすことを夢見ていた。
でもそれは隣に最愛の彼がいてこその夢だ。
一人では、悲しくて、寂しくて、寒い。
〇
これも夢だ。
処置台の上で私は指一本、眼球すらも動かせない。
一糸纏わぬ姿で煌々と冷たい光に照らされて。
人形のような私を白衣を着た男達が見下ろしていた。
屈辱だった。
恐怖や羞恥以上に憤りが勝る。
ありのままの私を見て良いのは彼だけ。
この素肌に、秘部に触れて良いのは彼だけ。
止めろ見るな触るな止めろ止めろ止めろ止めろ止めて!!
〇
先日始めた新薬の副作用が重く、体を起こすのも辛い。
でも、彼の為にも早く復帰したい。その一心で体を起こし、顔を洗い、髪を梳く。
病室のブラウザに予約していた試合が流れ始めた。
彼の試合だ。
無駄のない綺麗な流れ。
でも最期の一撃は甘くなかっただろうか。
対戦相手が女性だったから?
もやもやしていたら、ナースが手紙を持ってやってきた。
彼からだ。
あまりにも前時代的だが、彼はこうした紙の手紙を好む。
近々見舞いに行けそうだとの文面に心も晴れ、窓の外の花畑を見遣る。
嗚呼、早く彼と一緒に花畑へ行きたいものだ。
車椅子に乗った赤髪の乙女。彼女の眼前一面に広がるのはムスカリの花。
彼女はその希望ある花言葉に縋りたかった。
『輝く赤薔薇』の二つ名を持つシュヴァーン・エレクトロニクスの花形デュープ、ルビィ。
「……気高い騎士として、病魔にだって負けるわけにはいかない」
美しい花畑や樹々に囲まれ、豪華な病室と温泉を備えた病院。
まるで楽園のようなその場所で、ルビィは孤独な闘病生活を強いられていた。
〇
悲痛な声が私の名を呼ぶ。
ああ、なんて顔をしているんだ。君らしくもない。
大丈夫だ、すぐに持ち直す。
私の在るべき場所は彼の騎士の隣しかないのだから。
〇
倒れた日のことを夢に見て、真夜中に跳ね起きた。
夢だったら良かったと思う。
でも不自由な両下肢が、夢ではないと私を嘲笑う。
「情けない」
暫く結っていない髪に指を絡めて強く握る。
ドクターは言っていた。
新薬の副作用として幻覚や悪夢を見ることがあると。
どうせなら、彼の幻覚を見せて欲しいなんて都合の良い事を考えてもう一度体を沈める。
寝心地の良い寝具、純白のネグリジェ、景観の良い病室。
これらは全てこれまでの自身の働きと、彼が今尚築き続けてくれる貢献によるものだ。
戦いよりも、花を愛でながら穏やかに暮らすことを夢見ていた。
でもそれは隣に最愛の彼がいてこその夢だ。
一人では、悲しくて、寂しくて、寒い。
〇
これも夢だ。
処置台の上で私は指一本、眼球すらも動かせない。
一糸纏わぬ姿で煌々と冷たい光に照らされて。
人形のような私を白衣を着た男達が見下ろしていた。
屈辱だった。
恐怖や羞恥以上に憤りが勝る。
ありのままの私を見て良いのは彼だけ。
この素肌に、秘部に触れて良いのは彼だけ。
止めろ見るな触るな止めろ止めろ止めろ止めろ止めて!!
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先日始めた新薬の副作用が重く、体を起こすのも辛い。
でも、彼の為にも早く復帰したい。その一心で体を起こし、顔を洗い、髪を梳く。
病室のブラウザに予約していた試合が流れ始めた。
彼の試合だ。
無駄のない綺麗な流れ。
でも最期の一撃は甘くなかっただろうか。
対戦相手が女性だったから?
もやもやしていたら、ナースが手紙を持ってやってきた。
彼からだ。
あまりにも前時代的だが、彼はこうした紙の手紙を好む。
近々見舞いに行けそうだとの文面に心も晴れ、窓の外の花畑を見遣る。
嗚呼、早く彼と一緒に花畑へ行きたいものだ。