ありふれた悲劇
キャラクターノベル制作 とりる納品 2020年11月28日 18時40分05秒
●
どこかの礼拝堂…………。真っ暗闇の中、灯りは蝋燭の火が揺らめくのみ――。
祭壇の前には白装束を身に纏い、同じく白フードを目深に被った男が立っていた。
…………彼はこちらに気付くと口を開き、語り始める。
「さて――では、どこにでもあるような話をしよう――」
「その結末は――どこかで聞いたような話だろうが――」
「――きっと、意味があると思うよ」
●
事の舞台――
その領地は治安がよろしくなく、悪いとすら言え…………そう頻繁とまではいかなくても時折野盗団が出没し、更には年に数箇所、税収が上がらない区域すらあった。
近頃その領地に赴任した代官は財政状況に愕然とし、これまで手をこまねいていた領主へ直談判。
枯れた土地による農作物の少なさはどうにも出来ないとしても、更に事態を悪化させている野盗団はどうにかすべきと領主に言った。
そして領民の命を守る為にも領兵の派遣を決定、盗賊団の討伐に乗り出した。
しかし――だ、何故だかまったく成果は上がらない。数か月…………半年…………数年を掛けても一向に、だ。
…………ふふ、何故だろうね?
兵の練度は決して低くはないはずなのだが…………。代官自身、兵の指揮を上げる施策を講じた。だが――結果はこれまでと一向に変わらない。
当然ながら憤怒する代官だったが…………領主は『不慣れなのだから』と代官を宥めた。領兵は戦はおろか、実戦すら経験したことがないのだから…………と。
…………ここまで領地を荒らし回っている野盗団なのに領主は静観…………何故だろうね…………分からないね…………。
…………その後、代官は兵の練度向上を徹底し、士気向上、および維持を徹底させる。
更には戦の後方支援などにも参加させ、兵を無理矢理と言って良いくらいに鍛え上げる施策を講じた。
しかしてその結果は…………やはりと言うかなんと言うか、状況は変わらなかった。
年に数度出現する野盗団を討伐することはまったく叶わず…………一向に変化のない状況に、代官の怒りは頂点に達しようとしていた――。
だが領主はその様子を静観するのみ…………。領民の困りごとに関心が無いのかな? 悪い領主様だね…………。
しばらくこのような状況が続いたが…………ようやく転機が訪れる。
冒険者ギルドの授恵者一団が、依頼のついで――と言うよりも一向に討伐されない野盗団が居るという噂を聞き付け、様子を見にこの領地へやって来たんだ。
これ幸いと代官は、授恵者の冒険者達に野盗団の討伐を依頼する。数年を掛けても成果をまったく上げられない領兵には、代官はほとほと愛想が尽きていた。
代官からの依頼に、領民を守る為だと授恵者の冒険者達は快く請け負い、役に立たない領兵に代わり、野盗団の討伐へ乗り出した――。
ふっ…………まったく…………冒険者――授恵者というのは正義感に溢れる者が多いね…………。
●
授恵者の冒険者達はさっそくを行動を開始した。これまでの野盗団の出現パターン、出現頻度、などなど…………それらを徹底的に調べ上げた。
…………なんと言うか、さすが授恵者の冒険者様の手際だね。
何故だから判らないけれど、これほど長年にわたって領地を荒らしていた野盗団の資料はほとんどなかったが――
授恵者の冒険者達は少し時間を要したものの、ついに…………野盗団のアジトを見つけ出した。
ふふ、有能だね…………素晴らしいね…………。
あまりにも野盗団に関する資料が少なかったので授恵者の冒険者達は内通者の存在を警戒し、自分達以外の外部には襲撃の日付や時間は決して漏らさず……。
奇襲という形で、授恵者の冒険者達は野盗団のアジトへ襲撃を掛けた。代官からの依頼では『生死問わず』とのことだったので一切容赦をしなかった……。
それはね…………長年領地を荒らして回った野盗団だからね…………皆殺しにされても文句は言えないね…………。
授恵者の冒険者達はその『正義の剣』にて野盗の首を次々と刎ね…………心臓を貫き…………瞬く間に野盗団の頭目以外すべてを殺害した。
本当に無慈悲だね…………。まあ、依頼となればそうなるのも致し方ないか…………相手は凶悪な野盗だもの…………。
…………こでまで一切『領兵には』尻尾を見せずに暴れ回っていた野盗団とは思えない、あっけない最後だね…………。
それから授恵者の冒険者達は頭目へ酷い尋問をし、アジトを徹底的に調べたのだが…………これまでに領民から奪い、貯め込んでいたはずの物品などは一切見つからなかった。
授恵者達は拷問手前…………死なない程度に頭目を痛めつけ、『どこか別の場所へ隠しているのではないか』と入念に問い詰めるが頭目は『無い』の一点張り。
…………授恵者の冒険者達は、これ以上の拷問は頭目が死んでしまうので中止し、疑問は残ったが…………頭目の身柄を代官へ差し出した。
謎は残るが依頼はきちんと果たしたので授恵者の冒険者達は帰還した。
長年苦しめられた野盗団の頭目を捕えたということで、狂喜乱舞と言うほどに喜んだ代官は、その頭目へ…………授恵者達の比ではない拷問にかけた。
……………………語るのもおぞましい、それはそれは酷い拷問にね……………………。
野盗団の頭目は…………凄まじい拷問の果てに…………命を落としたとかなんとか…………。
まあ、それも無駄だったわけではない。それでようやく真実が暴かれたのだから…………。
……………………何のことはない。領主も…………領民も…………領兵さえも…………真実を知っていたんだよ。
『領民――村人達が交代で野盗を演じ、盗まれたという体で税収を下げていた』ということを――。
それゆえに領主は今の代官が赴任して来るまで野盗団を見逃していたということを――。
…………そうしなければならないほどに土地が痩せていたんだね…………。
…………代官の想像以上に農作物の収穫量が少なかったんだね…………税金を払えないほどに…………自分達が食べていくのがやっとなほどに…………。
いや…………恐らくは毎年、相当な数の餓死者も出ていたはずだよ…………。
…………ちなみに、事実を知らなかったのは中央から派遣されて来た『代官のみ』だった…………。
***
「――さて、君はこの話を聞いてどう思ったかな? 酷い話と思ったかな?」
「ふふ…………最初に言っただろう、『どこかで聞いたような話だろうが』と…………」
「…………この程度の『悲劇』など――どこにでもある他愛のない話なんだよ…………」
「肥沃の大地――王国に住む者が聞けば酷い話と思うかもしれないけどね――『王国では餓死するものなしと言われる』ほどだからね――」
そこまで言うと…………語り終えた白装束・白フードの男はどこかから取り出した仮面を付け、礼拝堂から去って行くのだった…………。
…………結局、暗闇とフードに隠れた男の素顔は判らなかった…………。
どこかの礼拝堂…………。真っ暗闇の中、灯りは蝋燭の火が揺らめくのみ――。
祭壇の前には白装束を身に纏い、同じく白フードを目深に被った男が立っていた。
…………彼はこちらに気付くと口を開き、語り始める。
「さて――では、どこにでもあるような話をしよう――」
「その結末は――どこかで聞いたような話だろうが――」
「――きっと、意味があると思うよ」
●
事の舞台――
その領地は治安がよろしくなく、悪いとすら言え…………そう頻繁とまではいかなくても時折野盗団が出没し、更には年に数箇所、税収が上がらない区域すらあった。
近頃その領地に赴任した代官は財政状況に愕然とし、これまで手をこまねいていた領主へ直談判。
枯れた土地による農作物の少なさはどうにも出来ないとしても、更に事態を悪化させている野盗団はどうにかすべきと領主に言った。
そして領民の命を守る為にも領兵の派遣を決定、盗賊団の討伐に乗り出した。
しかし――だ、何故だかまったく成果は上がらない。数か月…………半年…………数年を掛けても一向に、だ。
…………ふふ、何故だろうね?
兵の練度は決して低くはないはずなのだが…………。代官自身、兵の指揮を上げる施策を講じた。だが――結果はこれまでと一向に変わらない。
当然ながら憤怒する代官だったが…………領主は『不慣れなのだから』と代官を宥めた。領兵は戦はおろか、実戦すら経験したことがないのだから…………と。
…………ここまで領地を荒らし回っている野盗団なのに領主は静観…………何故だろうね…………分からないね…………。
…………その後、代官は兵の練度向上を徹底し、士気向上、および維持を徹底させる。
更には戦の後方支援などにも参加させ、兵を無理矢理と言って良いくらいに鍛え上げる施策を講じた。
しかしてその結果は…………やはりと言うかなんと言うか、状況は変わらなかった。
年に数度出現する野盗団を討伐することはまったく叶わず…………一向に変化のない状況に、代官の怒りは頂点に達しようとしていた――。
だが領主はその様子を静観するのみ…………。領民の困りごとに関心が無いのかな? 悪い領主様だね…………。
しばらくこのような状況が続いたが…………ようやく転機が訪れる。
冒険者ギルドの授恵者一団が、依頼のついで――と言うよりも一向に討伐されない野盗団が居るという噂を聞き付け、様子を見にこの領地へやって来たんだ。
これ幸いと代官は、授恵者の冒険者達に野盗団の討伐を依頼する。数年を掛けても成果をまったく上げられない領兵には、代官はほとほと愛想が尽きていた。
代官からの依頼に、領民を守る為だと授恵者の冒険者達は快く請け負い、役に立たない領兵に代わり、野盗団の討伐へ乗り出した――。
ふっ…………まったく…………冒険者――授恵者というのは正義感に溢れる者が多いね…………。
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授恵者の冒険者達はさっそくを行動を開始した。これまでの野盗団の出現パターン、出現頻度、などなど…………それらを徹底的に調べ上げた。
…………なんと言うか、さすが授恵者の冒険者様の手際だね。
何故だから判らないけれど、これほど長年にわたって領地を荒らしていた野盗団の資料はほとんどなかったが――
授恵者の冒険者達は少し時間を要したものの、ついに…………野盗団のアジトを見つけ出した。
ふふ、有能だね…………素晴らしいね…………。
あまりにも野盗団に関する資料が少なかったので授恵者の冒険者達は内通者の存在を警戒し、自分達以外の外部には襲撃の日付や時間は決して漏らさず……。
奇襲という形で、授恵者の冒険者達は野盗団のアジトへ襲撃を掛けた。代官からの依頼では『生死問わず』とのことだったので一切容赦をしなかった……。
それはね…………長年領地を荒らして回った野盗団だからね…………皆殺しにされても文句は言えないね…………。
授恵者の冒険者達はその『正義の剣』にて野盗の首を次々と刎ね…………心臓を貫き…………瞬く間に野盗団の頭目以外すべてを殺害した。
本当に無慈悲だね…………。まあ、依頼となればそうなるのも致し方ないか…………相手は凶悪な野盗だもの…………。
…………こでまで一切『領兵には』尻尾を見せずに暴れ回っていた野盗団とは思えない、あっけない最後だね…………。
それから授恵者の冒険者達は頭目へ酷い尋問をし、アジトを徹底的に調べたのだが…………これまでに領民から奪い、貯め込んでいたはずの物品などは一切見つからなかった。
授恵者達は拷問手前…………死なない程度に頭目を痛めつけ、『どこか別の場所へ隠しているのではないか』と入念に問い詰めるが頭目は『無い』の一点張り。
…………授恵者の冒険者達は、これ以上の拷問は頭目が死んでしまうので中止し、疑問は残ったが…………頭目の身柄を代官へ差し出した。
謎は残るが依頼はきちんと果たしたので授恵者の冒険者達は帰還した。
長年苦しめられた野盗団の頭目を捕えたということで、狂喜乱舞と言うほどに喜んだ代官は、その頭目へ…………授恵者達の比ではない拷問にかけた。
……………………語るのもおぞましい、それはそれは酷い拷問にね……………………。
野盗団の頭目は…………凄まじい拷問の果てに…………命を落としたとかなんとか…………。
まあ、それも無駄だったわけではない。それでようやく真実が暴かれたのだから…………。
……………………何のことはない。領主も…………領民も…………領兵さえも…………真実を知っていたんだよ。
『領民――村人達が交代で野盗を演じ、盗まれたという体で税収を下げていた』ということを――。
それゆえに領主は今の代官が赴任して来るまで野盗団を見逃していたということを――。
…………そうしなければならないほどに土地が痩せていたんだね…………。
…………代官の想像以上に農作物の収穫量が少なかったんだね…………税金を払えないほどに…………自分達が食べていくのがやっとなほどに…………。
いや…………恐らくは毎年、相当な数の餓死者も出ていたはずだよ…………。
…………ちなみに、事実を知らなかったのは中央から派遣されて来た『代官のみ』だった…………。
***
「――さて、君はこの話を聞いてどう思ったかな? 酷い話と思ったかな?」
「ふふ…………最初に言っただろう、『どこかで聞いたような話だろうが』と…………」
「…………この程度の『悲劇』など――どこにでもある他愛のない話なんだよ…………」
「肥沃の大地――王国に住む者が聞けば酷い話と思うかもしれないけどね――『王国では餓死するものなしと言われる』ほどだからね――」
そこまで言うと…………語り終えた白装束・白フードの男はどこかから取り出した仮面を付け、礼拝堂から去って行くのだった…………。
…………結局、暗闇とフードに隠れた男の素顔は判らなかった…………。