【封石】その棘の名を憐憫と云う
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 むぎあき納品 2022年05月19日 11時22分41秒
「この期に及んで何故拒む、アンユグェン」
細い首に手を掛けられて、尚も抵抗しない天使に問いかけた。
「……何故だと思う?」
襲撃者に一方的に追い詰められるがままにされるような半端ものではない筈の彼女が、その手を振り解くこともなく尋ね返してくる。
「俺を見下しているのか」
「いいえ」
いつだってそうだ。アンユグェンの言葉は肌を擽るように気に障って、腹立たしくて。
だから、黙らせてやりたかった。
「私にしてあげられることはまだ、何もないですから」
「……貴様!」
首を絞める手に力が籠る。その物言いが癪なのだと何故気付かないのだ、お前は。
どちらにせよこの強情な天使は、折れるつもりはないらしい。ならば強硬手段に出るまでだ。
指先に魔力を集中させ、アンユグェンの中へと一気に注ぎ込む。座天使に位置するものであっても逃れ得ない秘術が天使の体内を巡るマナの流れを駆け巡り、細い躰が苦し気に仰け反った。
「あ、く……!」
「もう後戻りなど出来ないぞ」
「……ええ、そうですね」
弱々しくも、この期に及んで微笑みながら――その手が悪魔の頬へと伸ばされる、優しく触れた。
手を離せばその場に崩れ落ちたが残された体力を振り絞り、アンユグェンは立ち上がり彼を抱きしめた。
「いつの日かその悲しい心が癒されますよう」
それを撥ね付けることは出来なかった。
「だからどうか私を、いいえ……許さないで」
■
何故お前は、最後の最後まで。
悲し気な顔で俺に微笑んでいたのだ、アンユグェン。
文字通り手中に収まったそれを手遊びするのを止め、問い掛ける。謂れのない虚しさを解きほぐす答えなど返ってはこない。
翡翠色の軟玉は廃墟の瓦解した天井の光を浴びたまま黙して語らない。
「……誰だ」
小さな物音の主へと悪魔は言葉の矢を突き立てた。
現れたのはみすぼらしい小さな人間。こんな所に迷い込んだのは、これが呼び寄せでもしたからか?
ああ、確か奴の眼には常にあれが映っていたんだったか。
「たす、けて」
潰れかけた喉声を一言絞り出して崩れ落ちたそれを、何となく拾い上げた。
分からない。どうしてこんなつまらないものに彼女が魂を燃やしていたのか。
――何故、同じ目で自分を見ていたのか。
「こんな姿に成り果てて、未だ俺を嘲笑っているんだろう?」
封じられた筈の彼女が頷いた気がした。
あれを真似てみれば分かるのか。
腕の中の人間を睨む俺は、どんな顔をしている?
細い首に手を掛けられて、尚も抵抗しない天使に問いかけた。
「……何故だと思う?」
襲撃者に一方的に追い詰められるがままにされるような半端ものではない筈の彼女が、その手を振り解くこともなく尋ね返してくる。
「俺を見下しているのか」
「いいえ」
いつだってそうだ。アンユグェンの言葉は肌を擽るように気に障って、腹立たしくて。
だから、黙らせてやりたかった。
「私にしてあげられることはまだ、何もないですから」
「……貴様!」
首を絞める手に力が籠る。その物言いが癪なのだと何故気付かないのだ、お前は。
どちらにせよこの強情な天使は、折れるつもりはないらしい。ならば強硬手段に出るまでだ。
指先に魔力を集中させ、アンユグェンの中へと一気に注ぎ込む。座天使に位置するものであっても逃れ得ない秘術が天使の体内を巡るマナの流れを駆け巡り、細い躰が苦し気に仰け反った。
「あ、く……!」
「もう後戻りなど出来ないぞ」
「……ええ、そうですね」
弱々しくも、この期に及んで微笑みながら――その手が悪魔の頬へと伸ばされる、優しく触れた。
手を離せばその場に崩れ落ちたが残された体力を振り絞り、アンユグェンは立ち上がり彼を抱きしめた。
「いつの日かその悲しい心が癒されますよう」
それを撥ね付けることは出来なかった。
「だからどうか私を、いいえ……許さないで」
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何故お前は、最後の最後まで。
悲し気な顔で俺に微笑んでいたのだ、アンユグェン。
文字通り手中に収まったそれを手遊びするのを止め、問い掛ける。謂れのない虚しさを解きほぐす答えなど返ってはこない。
翡翠色の軟玉は廃墟の瓦解した天井の光を浴びたまま黙して語らない。
「……誰だ」
小さな物音の主へと悪魔は言葉の矢を突き立てた。
現れたのはみすぼらしい小さな人間。こんな所に迷い込んだのは、これが呼び寄せでもしたからか?
ああ、確か奴の眼には常にあれが映っていたんだったか。
「たす、けて」
潰れかけた喉声を一言絞り出して崩れ落ちたそれを、何となく拾い上げた。
分からない。どうしてこんなつまらないものに彼女が魂を燃やしていたのか。
――何故、同じ目で自分を見ていたのか。
「こんな姿に成り果てて、未だ俺を嘲笑っているんだろう?」
封じられた筈の彼女が頷いた気がした。
あれを真似てみれば分かるのか。
腕の中の人間を睨む俺は、どんな顔をしている?