【夢見庵】雪に塗れて
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 日方架音納品 2022年04月26日 13時05分25秒
第一次天魔大戦程ではないが。
「はっはははは!」
遜色ない大軍勢にはしゃぎ飛び込むナハシュの傍には誰もいない。無垢なる大悪魔の切先は同朋を避けはしないから。
「また無茶をして……ああ! ほら見たことか」
惚れた相手の無鉄砲にハラハラするヨルムンレークは、眼前で舞う血飛沫に慌てて道を斬り開いて――
「……ウチに連れてきた、と」
「ごめんね、彼の怪我が治るまででいいんだ」
受付で仁王立つゴン=ザブロックに手を合わせる。
「ここ何だよ? あ、お前強そーだな戦んない?」
「君は闘うこと以外の遊びも覚えた方がいい。ここは社会科見学と雪遊びが同時にできるよ」
「よくわかんねえけど雪は楽しいからいいか!」
止める間も無く扉をぶち抜いて飛び出していく姿にぺしんと額を叩いて。
「……や、ほんとごめんって」
冷たい視線からそっと目を逸らした。
●
大小様々な雪像の合間に座り込む。雪玉を小さく握って転がして。
「よし、お前は雪太郎な!」
雪だるま作りのセンスもあったらしい。絶妙なバランスの胴体に、通りすがった堕天使の金眼も感嘆に瞬いて。
「え? こいつの目?」
差し出された椿を顔に嵌め込んでみる。華やかになった。でも。
「んー、強さも欲しいなぁ」
今度は女天使の緑眼が考え込んで、近くの松の枝を二本拾う。
「腕が武器! かっけぇ!!」
胴体に刺して満足気に別れた所で漸くヨルが走ってきて。
「魔力のペンダントはあるが、それはそれだ。外は寒いから一応着ておいて」
装備一式を付けてあげたら、マフラーを引っ張ってポンと手を叩く。
「なぁこれもう一個ねぇの?」
「え、無くはないけど」
雪太郎と三人、お揃いスタイルで並んでポーズ。
●
もっと広い場所を見繕い。
「ここを建設地とする!」
ドン! と雪の塊を一つ。どうやら露天で見かけたアルパカを作りたいらしい。
「そしたらでかさの限界に挑戦しようか。最初はこうやってよく固めるといい」
シャベルでペチペチ叩くヨルの真似をして――
「めんどくせぇ!」
ドン! ドン! と飛び上がったナハシュによって積まれていく雪の塊たち。かまくらも揺らす衝撃に、中から驚いた二人組が顔を出した。
「あ、ごめんね。悪気はないんだ。これお詫び」
ドン! のたびにさらりと流れる長い黒髪の女天使へ、片手を立てたヨルは振る舞いの甘酒を差し出す。隣の女悪魔はナハシュを見上げ、赤眼を笑ませて首を傾げた。
「そろそろ削り始める? 俺は下やるよ」
「そーだなー、ってアルパカの顔わかんねえ。連れてきてくれよ」
「はいはい、蹴られないといいけど」
「あ、一番強そうな顔のやつな」
「ええ、それは無理難題でしょ……」
ヨルのほっぺに綺麗な蹄が咲いた。
●
すったもんだの紆余曲折。数mのアルパカがたくさん見守る中、数十mの巨大アルパカも完成間近。
「ひゅー!! でけぇ!!!」
一番良いアルパカの顔の前、羽根をはばたかせてご満悦。
「ん? お、何だそれ美味そうだなぁ」
ごろ寝座敷からの視線に手を振れば、振り返される褐色悪魔の手のひらに美味しそうな丸いもの。隣の赤髪悪魔の手にもちょっと違う美味しそうな丸いもの。雪像作りに明け暮れた腹が盛大な音を立てた。
「くれんの?」
聞こえたのだろう、笑って投げて寄越すそれらを素手でキャッチしたら。ホカホカの熱さに驚いて、お手玉しながらアルパカの首を滑り落ちる。
「ナハシュ! やっぱり怪我が――」
慌てて着地点に走り込み受け止めるヨルに、金色が悪戯に煌めいた。
「滑り台にしようぜ!」
「いいねいいね、毛刈りタイムだ!」
その前に、美味しそうな丸いものをはんぶんこで腹ごしらえして。あとは夢中で――完成と同時に雪の上へ倒れ込んだ。
「こういうのも悪くねえな」
「でしょ?」
降る雪を見つめて、隣には君の声。
「悪くねえがスリルもない。たまに遊ぶくらいでいい」
「スリルか。君はそうだろうね。ならたまに、こうして遊ぼう」
気儘な君に次を強請る。投げ出された指先にそっと、己のソレを伸ばし――
「……そういえば!」
バッと起き上がる。動揺ですっぽ抜けてたけど、俺が回復出来るのでは?
「ナハシュ、調子はどう? ちょっと怪我を見せて……あれ?」
「あ? とっくに治ってるけど」
マジで???
「見せて!!」
寝転ぶ君に覆い被さるように確認する。抉れかけた脇腹も斜めに斬られた腹筋も生まれたてそのもので。
「……っはー。心配したんだよ、もう」
「だから問題ないっつったろ。なぁ髪くすぐったいんだけど」
「削られた俺の繊細な心の分だから我慢して」
「意味わかんねえ」
肩口にぐりぐりと押し付ける頭がお返しとばかりにわしわしとかき混ぜられる。一人で空回ってたのがちょっと恥ずかしい。でも。
「よかった――無事なら良いんだ、無事なら」
君に振り回されるなら悪くない――密やかに微笑うヨルは、すぐ近くで響いた盛大なくしゃみに慌ててナハシュを抱えて露天へ飛んだとさ。
「はっはははは!」
遜色ない大軍勢にはしゃぎ飛び込むナハシュの傍には誰もいない。無垢なる大悪魔の切先は同朋を避けはしないから。
「また無茶をして……ああ! ほら見たことか」
惚れた相手の無鉄砲にハラハラするヨルムンレークは、眼前で舞う血飛沫に慌てて道を斬り開いて――
「……ウチに連れてきた、と」
「ごめんね、彼の怪我が治るまででいいんだ」
受付で仁王立つゴン=ザブロックに手を合わせる。
「ここ何だよ? あ、お前強そーだな戦んない?」
「君は闘うこと以外の遊びも覚えた方がいい。ここは社会科見学と雪遊びが同時にできるよ」
「よくわかんねえけど雪は楽しいからいいか!」
止める間も無く扉をぶち抜いて飛び出していく姿にぺしんと額を叩いて。
「……や、ほんとごめんって」
冷たい視線からそっと目を逸らした。
●
大小様々な雪像の合間に座り込む。雪玉を小さく握って転がして。
「よし、お前は雪太郎な!」
雪だるま作りのセンスもあったらしい。絶妙なバランスの胴体に、通りすがった堕天使の金眼も感嘆に瞬いて。
「え? こいつの目?」
差し出された椿を顔に嵌め込んでみる。華やかになった。でも。
「んー、強さも欲しいなぁ」
今度は女天使の緑眼が考え込んで、近くの松の枝を二本拾う。
「腕が武器! かっけぇ!!」
胴体に刺して満足気に別れた所で漸くヨルが走ってきて。
「魔力のペンダントはあるが、それはそれだ。外は寒いから一応着ておいて」
装備一式を付けてあげたら、マフラーを引っ張ってポンと手を叩く。
「なぁこれもう一個ねぇの?」
「え、無くはないけど」
雪太郎と三人、お揃いスタイルで並んでポーズ。
●
もっと広い場所を見繕い。
「ここを建設地とする!」
ドン! と雪の塊を一つ。どうやら露天で見かけたアルパカを作りたいらしい。
「そしたらでかさの限界に挑戦しようか。最初はこうやってよく固めるといい」
シャベルでペチペチ叩くヨルの真似をして――
「めんどくせぇ!」
ドン! ドン! と飛び上がったナハシュによって積まれていく雪の塊たち。かまくらも揺らす衝撃に、中から驚いた二人組が顔を出した。
「あ、ごめんね。悪気はないんだ。これお詫び」
ドン! のたびにさらりと流れる長い黒髪の女天使へ、片手を立てたヨルは振る舞いの甘酒を差し出す。隣の女悪魔はナハシュを見上げ、赤眼を笑ませて首を傾げた。
「そろそろ削り始める? 俺は下やるよ」
「そーだなー、ってアルパカの顔わかんねえ。連れてきてくれよ」
「はいはい、蹴られないといいけど」
「あ、一番強そうな顔のやつな」
「ええ、それは無理難題でしょ……」
ヨルのほっぺに綺麗な蹄が咲いた。
●
すったもんだの紆余曲折。数mのアルパカがたくさん見守る中、数十mの巨大アルパカも完成間近。
「ひゅー!! でけぇ!!!」
一番良いアルパカの顔の前、羽根をはばたかせてご満悦。
「ん? お、何だそれ美味そうだなぁ」
ごろ寝座敷からの視線に手を振れば、振り返される褐色悪魔の手のひらに美味しそうな丸いもの。隣の赤髪悪魔の手にもちょっと違う美味しそうな丸いもの。雪像作りに明け暮れた腹が盛大な音を立てた。
「くれんの?」
聞こえたのだろう、笑って投げて寄越すそれらを素手でキャッチしたら。ホカホカの熱さに驚いて、お手玉しながらアルパカの首を滑り落ちる。
「ナハシュ! やっぱり怪我が――」
慌てて着地点に走り込み受け止めるヨルに、金色が悪戯に煌めいた。
「滑り台にしようぜ!」
「いいねいいね、毛刈りタイムだ!」
その前に、美味しそうな丸いものをはんぶんこで腹ごしらえして。あとは夢中で――完成と同時に雪の上へ倒れ込んだ。
「こういうのも悪くねえな」
「でしょ?」
降る雪を見つめて、隣には君の声。
「悪くねえがスリルもない。たまに遊ぶくらいでいい」
「スリルか。君はそうだろうね。ならたまに、こうして遊ぼう」
気儘な君に次を強請る。投げ出された指先にそっと、己のソレを伸ばし――
「……そういえば!」
バッと起き上がる。動揺ですっぽ抜けてたけど、俺が回復出来るのでは?
「ナハシュ、調子はどう? ちょっと怪我を見せて……あれ?」
「あ? とっくに治ってるけど」
マジで???
「見せて!!」
寝転ぶ君に覆い被さるように確認する。抉れかけた脇腹も斜めに斬られた腹筋も生まれたてそのもので。
「……っはー。心配したんだよ、もう」
「だから問題ないっつったろ。なぁ髪くすぐったいんだけど」
「削られた俺の繊細な心の分だから我慢して」
「意味わかんねえ」
肩口にぐりぐりと押し付ける頭がお返しとばかりにわしわしとかき混ぜられる。一人で空回ってたのがちょっと恥ずかしい。でも。
「よかった――無事なら良いんだ、無事なら」
君に振り回されるなら悪くない――密やかに微笑うヨルは、すぐ近くで響いた盛大なくしゃみに慌ててナハシュを抱えて露天へ飛んだとさ。