【翼牢】独り、虜囚遊戯
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 むぎあき納品 2022年04月25日 14時14分02秒
薄気味の悪い女だ。おそらくこの場にいる全員が同じ感想を抱いている筈だと、一師団長たる悪魔はその様子を遠巻きに眺めていた。
「さっきからヘラヘラ笑いやがって……!」
熟れた果実のような鮮やかな髪と眼帯の合間に覗く顔は不遜に微笑んだままで、乱暴に首輪を引かれようとも動じない。
若い悪魔が癇癪交じりに手を挙げようとしたのを他の個体が制した。
「素性が分からん以上みだりに刺激するな」
「……ああくそ、分かりましたよ」
張り詰めた空気に満たされた砦の奥へと、女は利口な飼い犬のように連行されていく。
――天使を捕らえる為の罠に彼女が掛かっていたときは、間抜けでも釣れたのかと見回りに通った者達は思ったそうだ。自由になった瞬間、近くにいた悪魔の腕を捩じ切らんと掴みかかってくるまでは。
天使とは違って悪魔は一枚岩とは言い難い。おそらくこの片翼隻眼の女もそう言った手合いの者かとも思われていたが……
「ふぅん、良い内装じゃないか。寛ぐには些か手狭だが」
初めてまともに口を開いたかと思えば、何ともいけ好かない口上を垂れる女。
「気に入ってくれたのなら何よりだ、餌の配給はしないが」
ギリギリ一人が収まる程度の細長い檻の中。首輪と短い鎖で手首の枷を後頭部で繋がれて、胸を逸らす姿勢を強いられた状態で、靴の爪先がギリギリ届くか否かの高さに吊るされた女。
拘束を施した兵士が扉を施錠しようとするのを蹴り飛ばしたおかげで、手首と同じものを両脚にも施されたというのに。
「何が可笑しい」
「……僕がこの状況を愉しんでいるとでも?」
右に、左に、躍るように緩慢に肢体を揺らめかせる女は欠片も臆した様子を見せはしない。
「目的はなんだ?」
「丁寧に教えてもらえるとでも? まさか思っちゃいないだろう」
言外に女は言っている。知りたければ乱暴に暴いて見せろと。
現に傍に控えていた血気盛んな兵士たちは鼻息を荒げ、師団長の許可さえ下りれば我先にと、尋問の名のもとにその体を貪り食うつもりなのだとは見て取れた。
「此処では一時勾留するのみだ。お前のご期待に沿ってはやれん」
取り調べ、並びに尋問は別拠点で行われるとだけ完結に告げられ、籠の中の悪魔、片翼たる黄昏は――
「そうか、それは……」
地下深く囚われ、塵芥共に手を伸ばされる己。
ああ、今にも近づいてくるようじゃないか。あの羽搏きが、翡翠の輝きが。
「とても楽しみだよ」
「さっきからヘラヘラ笑いやがって……!」
熟れた果実のような鮮やかな髪と眼帯の合間に覗く顔は不遜に微笑んだままで、乱暴に首輪を引かれようとも動じない。
若い悪魔が癇癪交じりに手を挙げようとしたのを他の個体が制した。
「素性が分からん以上みだりに刺激するな」
「……ああくそ、分かりましたよ」
張り詰めた空気に満たされた砦の奥へと、女は利口な飼い犬のように連行されていく。
――天使を捕らえる為の罠に彼女が掛かっていたときは、間抜けでも釣れたのかと見回りに通った者達は思ったそうだ。自由になった瞬間、近くにいた悪魔の腕を捩じ切らんと掴みかかってくるまでは。
天使とは違って悪魔は一枚岩とは言い難い。おそらくこの片翼隻眼の女もそう言った手合いの者かとも思われていたが……
「ふぅん、良い内装じゃないか。寛ぐには些か手狭だが」
初めてまともに口を開いたかと思えば、何ともいけ好かない口上を垂れる女。
「気に入ってくれたのなら何よりだ、餌の配給はしないが」
ギリギリ一人が収まる程度の細長い檻の中。首輪と短い鎖で手首の枷を後頭部で繋がれて、胸を逸らす姿勢を強いられた状態で、靴の爪先がギリギリ届くか否かの高さに吊るされた女。
拘束を施した兵士が扉を施錠しようとするのを蹴り飛ばしたおかげで、手首と同じものを両脚にも施されたというのに。
「何が可笑しい」
「……僕がこの状況を愉しんでいるとでも?」
右に、左に、躍るように緩慢に肢体を揺らめかせる女は欠片も臆した様子を見せはしない。
「目的はなんだ?」
「丁寧に教えてもらえるとでも? まさか思っちゃいないだろう」
言外に女は言っている。知りたければ乱暴に暴いて見せろと。
現に傍に控えていた血気盛んな兵士たちは鼻息を荒げ、師団長の許可さえ下りれば我先にと、尋問の名のもとにその体を貪り食うつもりなのだとは見て取れた。
「此処では一時勾留するのみだ。お前のご期待に沿ってはやれん」
取り調べ、並びに尋問は別拠点で行われるとだけ完結に告げられ、籠の中の悪魔、片翼たる黄昏は――
「そうか、それは……」
地下深く囚われ、塵芥共に手を伸ばされる己。
ああ、今にも近づいてくるようじゃないか。あの羽搏きが、翡翠の輝きが。
「とても楽しみだよ」