【螺旋戦線】無疵の鉱盾、魔銘の三刀

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 螺子巻ゼンマイ納品 2022年04月04日 17時06分01秒

「二班より報告! 潜んでいた敵の打破に成功、更に侵攻を進めるとの事です」
「了解、ありがとう」

 報告を受け、地の能天使(パワー)ミツエル(ミツキ・アインホルン)は頷く。
 斥候部隊の指揮を任された彼女の手腕は堅実で、洞窟の上層階の内、かなりの空間の掌握に成功していた。
 だが。「待って」と彼女は戻ろうとする連絡役を呼び止める。

「三班からの連絡が途絶えているわ。何かあったのか、確認したい」

 急いで、と付け加える。
 酷く、嫌な予感がしたのだ。

●

「……歯応えの無い」

 刀を汚す血を振り払い、憤怒の悪魔アーデント(朔真)はつまらなそうに呟いた。
 周囲には、倒れ伏す天使の小隊。恐らくは先遣隊を任された下級天使なのだろう。
(数ばかりいても、これではな)
 彼が無感動に洞窟の先を見遣ると、そこには青褪めた一人の天使。
 踵を返し逃げ去ろうとするそれに、アーデントは一足で追い付くと、ザンッ!
 ただの一太刀で斬り払い、息の根を止めた。
(また一刀、か)
 腰に提げた三刀の、せめてもう一本を抜きたいものだと想ってしまう自分がいる。
 刀を納め、彼が次なる標的を探そうとしたその時である。
 彼の魔眼が、洞穴の分かれ道から戻ってくる敵の姿を知覚した。

 先程よりは手応えがあるだろうか。
 さして期待もしないまま、彼は敵へと向き直り――

●

 ギィンッ!
 敵の首を刎ねんとしたアーデントの刃は、突如割り込んできた鉱石の盾によって防がれた。
「ほぅ……」
「二班は後退、治療を受けて」
 天使の小隊長を守ったのは、ミツエルである。
 ずざり。後ろへ下がり距離を置いた悪魔は、乱入してきた天使を見遣り、言う。
「有象無象では話にならん。首魁は……お前だな」
「えぇ。部下の連絡が途絶えたから来たけれど」
 自ら出てきて正解だった。
 単騎で隊を圧倒する敵(ああいう悪魔)を前に、いくら数を注いでもただ兵力を削るだけだ。
(死体(彼ら)の傷跡は斬撃。他に特徴は見当たらない……)
 きっと敵の能力は強化(シンプルなステータス上昇)。付け入る隙の無い、厄介な力だ。
 対する悪魔は鉱石の盾を見、相手が地の天使と推察した。
(魔力を割くが、眼を使うか)
 カウンター、目晦ましに注意しよう。
 二者はそれ以上言葉を交わす事なく、流れる様に命を獲り合う。

「『偉大なる創世の神の作りし大地よ』」

 呪文を唱えつつ、天使は手にした蛇腹剣で悪魔を狙った。
 けれど悪魔は踏み出しながら、刀の峰で剣を打って軌道を逸らす。
「『汝の名を呼ぶ。パイモン』」
 口にしたのは、刀に与えた魔神柱の名。
 人の世にさえ轟くその名を借りる事で、刀は更なる力を覚醒させるのだ。
 ぶわり。膨れ上がる気配に息を呑む天使。
 剣を弾かれ空いた身に、悪魔は刀を叩き込もうとするのだが。
 直前、天使の身から文字(ルーン)が輝くと、無数の鉱石が散弾のように悪魔を襲った。
(魔術? だが)
「『その上で生きる物全てを支え、その身が帰る場所よ』……ッ!」
 天使の詠唱は続いている。
 仕込みか。身を守るべく彼は、腰の二刀目を抜き払う。
「『汝の名を呼ぶ。グラシア・ラボラス』!」
 二刀を交差するよう振るうと、吹き上がる魔力が降り注ぐ鉱石の全てを砕き割った。
 無傷とは。眉を寄せる天使と対照的に、悪魔は微笑みを口元に浮かばせる。

「強き者は好ましい。その力を超える愉しみがある」
(超える、ね)

 どの口が。ミツエルは苦笑する。
 単純な実力なら、向こうが格上だ。

「『我その強大なる力に支援を求めたり。その力で持って、我が敵を穿て』」

 二刀の斬撃は先ほどより迅く、鋭い。一刀を剣に絡めた天使は、二刀目を鉱石で防ごうとする、のだが。
 たんっ。悪魔はそこで半歩下がり、盾が刃を防ぐ事は無い。
 彼はそのまま、盾を足場に跳ぶと、上から天使の首を狙った。
 届くか? だが、ルーン(天使の仕込み)はまだ残っていた。
 地上から噴く、鉱石の弾。悪魔は身を守る為、翼で急ぎ後退する。

 この時を待っていた(その一瞬が、ミツエルの求めたモノだった)。

「――『大地讃頌・百器万撃』」

 悪魔の全身が怖気立ち、魔眼が危機を知覚する。
 地面が、壁が、天井が。魔力を帯びた鉱石の剣に変異して、一斉に悪魔を襲う。
 逃げ場は、無い。……ならば。

「『汝の名を呼ぶ。レライエ(全てを斬るまでだ)』ッ!」

 叫んだ瞬間、第三の刀がひとりでに鞘から放たれる。
 刹那、鉱石は爆ぜ、煙の向こうから悪魔が踏み込む。

「……三刀目を使わせる者は何百年ぶりか」

 三刀の剣(ネガ・トリスアギオン)。
 魔神の銘持つ三本の刀(両腕で操る二刀と、魔力で制御された一刀)。
 全てが揃う事で、彼は限界を超えた力を発揮する。

「その首、貰い受ける」

 目で追うのがやっとだった。
 全霊の魔力を石の盾とし、三刀の連撃を防ぐ。
 だが反撃の隙は無く、鉱石はやがて砕け、ミツエルは刃の前に姿を晒した。

「――俺の名は、アーデント」
「……地の能天使(パワー)、ミツエル」

 最期に言葉を交わし、天使は命を散らす。
 首を失った天使の隣で、悪魔はがくりと膝を折った。
 三刀目の反動と、先刻の魔術で受けた腹の傷。

「撤退……だな」

 戦況への影響を鑑みれば、それはミツエルの勝利に等しい結果だった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0