襲来、レリトール・レインディア
キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2021年12月17日 12時46分13秒
●襲来、レリトール・レインディア
リーンエス王国レインディア貴族領内、アルメール隊本部屋敷。
その書庫にてグレイブ・ヤードは今日も変わらず、資料の編纂に明け暮れていた。
彼が纏めるのは魔獣たちの討伐記録や発見報告などバラバラに保存されていた各種の情報。
それらが効率的に運用され、読みやすい形に纏められて領内の村に配布されれば魔獣の被害を少しでも減らせるかも知れないという彼の案によるものだった。
だがその量は膨大であり、一朝一夕で終わるようなものではない。彼をもってしても、どの程度の時間を掛ければ終わるのか見当もつかないのだ。
「ふう、少し休養でも入れますか」
椅子に腰かけようとしたグレイブの懐から“古びた短剣”が零れ落ちる。それは随分と年季が入った物ではあるが見事な装飾が施された短剣だ。
それを拾い上げ、グレイブは仮面の奥で懐かしそうに目を細める。
「……もうあれからどのくらい時が過ぎたでしょうか。レインディア卿……私は――」
誰かを守る剣になれたのでしょうか、そう呟こうとした彼の耳に野太い声が届く。
「――ふむ、呼んだか?」
グレイブは短剣を素早く懐にしまい顔を上げる。すると部屋の扉を開けて立つ、レインディア領の領主でアルメール・レインディアの父【レリトール・レインディア】がそこに立っていた。年は取っているがその体躯は大柄で筋骨隆々とした男だ。
「その仮面、アルメールから聞いていた通りの風貌だな。よし、庭に出ろ。お前に用がある」
●交え、通じるはその信念
屋敷の庭先、戦闘訓練も可能なようにと整備されたそこにグレイブとレリトールの姿があった。
レリトールは傍らにあった訓練用の長い棍棒を拾い上げるとその一つをグレイブに渡す。
「最近はアルメールがよくお前の話をするのでな、どのような奴かと気になって直接会いに来たということだ。だが恥ずかしい話、俺は小難しいことはわからん。なんせ、戦うことしか取り柄がないのだからな」
構えろ、と言われグレイブはその言葉に従い棍棒を構えて戦闘態勢を取る。
(流石はレインディア卿……年を経てもなおその気迫、隙の無さは健在ですね)
グレイブが見据えるレリトールもまた棍棒を静かに構えていた。無駄のないその構えには歴戦の経験を感じさせる。
「仮面を取れ、などと言うような無粋な真似はせん。打ち合えば……自ずと分かるものなのだからな。なに、俺も授恵者だ。遠慮はいらん。全力で来いッ!」
「そういうことでしたらその申し出、お受けするとしましょう。ではおひとつ……お手合わせ、願います」
二人の間に流れる静かな空気。
辺りには風の音が響き、二人はじっとしたままお互いを見据えて動かなかった。
先に動いたのはグレイブだ。棍棒を下手に構え、下段からすくい上げるように振るった――と思いきやその手を返し、フェイントによる横殴りの殴打を放つ。
レリトールはにやっと楽しそうに笑い、棍棒の中間部分で彼の一撃を受け止めた。
直後、レリトールがグレイブを押し返し流れるような動作で鋭い突きが放たれ、身体を捻ったグレイブの横っ腹をレリトールの棍棒の先端が掠める。
互いに距離を取り、二人はじりじりと距離を詰めながら互いの間合いをはかっている。
「中々にいい打ち込みだ、くっくっく楽しくなってしまうなァ! 先の一撃はかわされたが……これならばどうだッッ!」
(……本当に素直な一撃です。実に貴方らしい。だからこそ、私にも……勝機があるッ)
力強い踏み込みから放たれる雷鳴の如きレリトールの鋭い突きを紙一重でかわし、グレイブは距離を詰め棍棒を振るった。ぴたりとレリトールの首筋に棍棒があてられる。
「ふははは、まいったまいった。まさか俺の突きがかわされるとはな、流石は現役の冒険者といった所か」
「いえいえ。こちらも手心を加えて貰っていましたし」
「ふむ、そのような覚えはないが……」
グレイブは棍棒を下ろし、とぼけるレリトールへ指摘する。
「棍棒は此方の心得のある得物です。それに貴方本来の得物は大剣でしょう」
「はははは! そこまで気づかれていたとは。グレイブ、お前は中々に面白い男のようだ。やはり直接来てよかった。戦いの最中、懐かしい眼にも会えた気がするからな」
レリトールはグレイブの仮面の奥にある瞳を見て何かを感じ取ったようだ。だが彼は何かを察しそれ以上無粋に踏み込むことは無い。そういう男なのだ、レリトールという人物は。
「お前にならアルメールを安心して任せられそうだ。これからも頼むぞ、我が娘の良き先達として。良き教師としてな」
「ええ、こちらこそ」
仮面の奥に秘められた確かな想いはきっと彼に伝わったのだろう。言葉にせずとも。
レリトールから手を差し出され、グレイブは彼と硬い握手を交わすのだった。
リーンエス王国レインディア貴族領内、アルメール隊本部屋敷。
その書庫にてグレイブ・ヤードは今日も変わらず、資料の編纂に明け暮れていた。
彼が纏めるのは魔獣たちの討伐記録や発見報告などバラバラに保存されていた各種の情報。
それらが効率的に運用され、読みやすい形に纏められて領内の村に配布されれば魔獣の被害を少しでも減らせるかも知れないという彼の案によるものだった。
だがその量は膨大であり、一朝一夕で終わるようなものではない。彼をもってしても、どの程度の時間を掛ければ終わるのか見当もつかないのだ。
「ふう、少し休養でも入れますか」
椅子に腰かけようとしたグレイブの懐から“古びた短剣”が零れ落ちる。それは随分と年季が入った物ではあるが見事な装飾が施された短剣だ。
それを拾い上げ、グレイブは仮面の奥で懐かしそうに目を細める。
「……もうあれからどのくらい時が過ぎたでしょうか。レインディア卿……私は――」
誰かを守る剣になれたのでしょうか、そう呟こうとした彼の耳に野太い声が届く。
「――ふむ、呼んだか?」
グレイブは短剣を素早く懐にしまい顔を上げる。すると部屋の扉を開けて立つ、レインディア領の領主でアルメール・レインディアの父【レリトール・レインディア】がそこに立っていた。年は取っているがその体躯は大柄で筋骨隆々とした男だ。
「その仮面、アルメールから聞いていた通りの風貌だな。よし、庭に出ろ。お前に用がある」
●交え、通じるはその信念
屋敷の庭先、戦闘訓練も可能なようにと整備されたそこにグレイブとレリトールの姿があった。
レリトールは傍らにあった訓練用の長い棍棒を拾い上げるとその一つをグレイブに渡す。
「最近はアルメールがよくお前の話をするのでな、どのような奴かと気になって直接会いに来たということだ。だが恥ずかしい話、俺は小難しいことはわからん。なんせ、戦うことしか取り柄がないのだからな」
構えろ、と言われグレイブはその言葉に従い棍棒を構えて戦闘態勢を取る。
(流石はレインディア卿……年を経てもなおその気迫、隙の無さは健在ですね)
グレイブが見据えるレリトールもまた棍棒を静かに構えていた。無駄のないその構えには歴戦の経験を感じさせる。
「仮面を取れ、などと言うような無粋な真似はせん。打ち合えば……自ずと分かるものなのだからな。なに、俺も授恵者だ。遠慮はいらん。全力で来いッ!」
「そういうことでしたらその申し出、お受けするとしましょう。ではおひとつ……お手合わせ、願います」
二人の間に流れる静かな空気。
辺りには風の音が響き、二人はじっとしたままお互いを見据えて動かなかった。
先に動いたのはグレイブだ。棍棒を下手に構え、下段からすくい上げるように振るった――と思いきやその手を返し、フェイントによる横殴りの殴打を放つ。
レリトールはにやっと楽しそうに笑い、棍棒の中間部分で彼の一撃を受け止めた。
直後、レリトールがグレイブを押し返し流れるような動作で鋭い突きが放たれ、身体を捻ったグレイブの横っ腹をレリトールの棍棒の先端が掠める。
互いに距離を取り、二人はじりじりと距離を詰めながら互いの間合いをはかっている。
「中々にいい打ち込みだ、くっくっく楽しくなってしまうなァ! 先の一撃はかわされたが……これならばどうだッッ!」
(……本当に素直な一撃です。実に貴方らしい。だからこそ、私にも……勝機があるッ)
力強い踏み込みから放たれる雷鳴の如きレリトールの鋭い突きを紙一重でかわし、グレイブは距離を詰め棍棒を振るった。ぴたりとレリトールの首筋に棍棒があてられる。
「ふははは、まいったまいった。まさか俺の突きがかわされるとはな、流石は現役の冒険者といった所か」
「いえいえ。こちらも手心を加えて貰っていましたし」
「ふむ、そのような覚えはないが……」
グレイブは棍棒を下ろし、とぼけるレリトールへ指摘する。
「棍棒は此方の心得のある得物です。それに貴方本来の得物は大剣でしょう」
「はははは! そこまで気づかれていたとは。グレイブ、お前は中々に面白い男のようだ。やはり直接来てよかった。戦いの最中、懐かしい眼にも会えた気がするからな」
レリトールはグレイブの仮面の奥にある瞳を見て何かを感じ取ったようだ。だが彼は何かを察しそれ以上無粋に踏み込むことは無い。そういう男なのだ、レリトールという人物は。
「お前にならアルメールを安心して任せられそうだ。これからも頼むぞ、我が娘の良き先達として。良き教師としてな」
「ええ、こちらこそ」
仮面の奥に秘められた確かな想いはきっと彼に伝わったのだろう。言葉にせずとも。
レリトールから手を差し出され、グレイブは彼と硬い握手を交わすのだった。