情報とは強力な刃であり、盾なのだ

キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2021年09月03日 15時27分40秒

 レインディア貴族領内にあるアルメール隊の活動拠点となった屋敷の資料室にグレイブ・ヤードの姿があった。
 彼はアルメール隊設立にあたり、レインディア貴族領周辺の魔獣や今まで出現してきたクリーパーの情報を閲覧していたのだがそれらはバラバラで纏まりがなく、非常に閲覧しにくいもの。
 いずれ組織としてある程度の人数での運用もアルメール隊は視野に入れているのだが、討伐対象となることが多い魔獣やクリーパーの資料がこの状態では初動が遅れる可能性がある。
 初動が遅れるということは、その分、被害が増え助けられる命が助けられなくなるということだ。それは彼にとって、望まないことだ。
 それ故に、彼はアルメール隊への所属をきっかけにバラバラに散逸した資料をまとめ直し、念の為と写本を作成していたのだ。
 戦闘とはある意味情報戦ともいえる。相手の情報をわからない状態で戦闘すれば、思わぬダメージで被害を受けてしまう。
 例えば、見た目が羊の魔獣がいたとしよう。それを情報なしで討伐しようとした際、猛毒を吐いたらどうなるか。毒対策の装備や解毒の用意がなければ、あっという間に死体が転がることになる。勿論、討伐に向かった者のだ。
 ここに情報があれば、毒対策はもちろん解毒の用意だってできるだろう。遠方から毒の攻撃を受けない距離で戦闘もでき、安全に対処ができる。
 更に言えば、その羊の生態、習性がわかっていれば戦えない者が遭遇した場合、戦闘を回避することだってできるのだ。そう、情報は何にも勝る武器なのだから。
 写本の作成と資料の閲覧で凝り固まった肩を回し、軽く揉んでほぐしながらグレイブは椅子の背もたれにもたれかかる。
 纏まっていない情報を読みやすく再構成しまとめ直すといったものは非常に労力の掛かるものだ。既に実行から数日が立っているがまだ半分も終わっていない。
「これは中々、骨が折れるものですね。ですが、これも後の為……少し休憩したらもうひと頑張りするとしましょうか」
 小休止するグレイブの元に資料の束を抱えたエルフの女性、シリカが入ってくる。その資料は穴が開けられ、紐で括られており閲覧しやすく配慮がされている。
 それをグレイブに手渡すとシリカは資料の説明に入った。
「グレイブさん、こちら以前聞いた経験者や老兵たちの情報をまとめた物です。資料の作成のお役に立ててくださいませ」
「ありがとうございます、こうしてまとめた物があると助かりますよ」
 受け取った資料に目を通しながら、グレイブは資料のまとめ直しの作業を再開する。
 紐で括られたページをぱらぱらとめくりながらもう片方の手でペンを握り、資料を作成していった。
 元より、領主レリトール・レインディアもシリカも戦闘畑の人物であり、魔獣やクリーパーに対する情報の優位性はわかっていた。
 しかし、時と共に変化する魔獣、新型のクリーパーの出現に押され、情報はまとめるのが難しくなり、記録だけに留め、まとめ作業は後回しにされていったのだ。
 その結果がこの膨大な資料の量。部屋一つには収まらず、もう二部屋程、魔獣やクリーパーに関する資料が収められている部屋があった。それでも全体の一部というのだから驚きである。
 すぐさま全てをまとめ直すことは不可能に近い為、グレイブはまとめやすい資料から優先的に手を付けていくことにしている。
 グレイブがまとめな直した資料を見たシリカは驚きの声を上げる。そう、非常に読みやすいのだ。それでいて要点はしっかり押さえられており、有用な資料となっていた。
「非常に読みやすいですね、しかもわかりやすくて……こう言っては何ですが、お嬢様でもこれならわかるかと」
 お嬢様でも……と言ったシリカは苦笑していた。お嬢様……レリトールの娘、アルメール・レインディアは戦いに関しては才能があるようだが勉学は苦手としている。
 難しい資料ともなれば誰かに解説してもらわねばわからないことも多い。
「わかりやすくなっているようで良かったです。私は……こういった資料を更に簡単に誰でもわかるよう冊子にまとめ、各村に置いておきたいのですよ。そうすれば、知らないが故に起きる悲劇を軽減できる気がしますから」
「良い考えだと思います。そういったことでしたら、いずれ資料がまとめ終わった暁には私の方からレリトール様の方へお話しておきますね」
 それだけ言って部屋を去るシリカを見送り、その目標を目指しグレイブは魔獣、クリーパーの積み上げられた資料との格闘を再開するのであった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0