Dear My Family
キャラクターノベル制作 弓月 蒼納品 2021年05月28日 13時45分03秒
●エルゼリオからの手紙~前半戦~
帝都が落ち、帝国が乱れ、冒険者として家を出てから早半年が過ぎる。
――――半年。そう、未だ僅かに半年だ。12月には1つ齢を重ねたエルゼリオだが。
未だに、たったそれだけしか時間が経過していない事が信じられない。
様々な事があった。死人の群と相対し、辺境領の難事に駆り出され、潜った死線の数たるや。
北の城塞都市に済む怪物じみた老人の宅には未だに時折顔を出すが、対峙したのは一度きり。
あれ以来手合わせすらして貰えない。梨の礫とはこのことだ。
経験は確かに彼を育て、その力は家を出た時よりずっと研ぎ澄まされている筈。
けれど最近は何処となく手応えのない。漠然と落ち着いてしまった日々を過ごしていた。
「何かしないと、って気持ちだけ急くのは、良くないよね……」
昨今随分増えてしまった独り言と共に、勢い込んで倒れていたベッドから身を起こす。
部屋に設えた質素な机へ視線を向ければ、その上には一枚の上質紙、インクと万年筆。
これまで余裕がないからと報告をサボっていた父親へ手紙を書こうと思い立ったのも。
もしかするとそんな状況を変えたいという、気持ちの表れだったのかもしれない。
"――――前略、レイノーラの皆へ
手紙を書くのも久々で、何から伝えれば良いのかも分からないけれど。
父上は、間違いなく元気だとして、シグルド兄とオリエ姉は元気ですか。
ボクは何とか元気にやっています。冒険者としても、そろそろ中堅と呼ばれる位になりました。
戦うことにも、大分慣れた……の、かな。自分では、そこら辺はあんまり良く分からないけど。
この半年は、本当に本当に忙しくて。ああ、目が回るってこういうことなんだ……って。
シグルド兄が良く呟いていたことが実感出来た気がします。まだ半年なんて嘘みたい。
帝国崩壊からしばらくは特に国境線が騒がしくて、砦を護る為にアンデッドの群と戦ったり。
その指揮官だって言う"ヤコブ様"って吸血鬼との酒宴に参加したり。
帝国難民キャンプのお手伝いに行った筈が、真冬なのに屋外で相撲を取ることになったり。
うん。何を言ってるのか分からないかもしれないけどボクも何が起きたのか良く分からなかった。
大体ゴブリンのドン・ゴーフルの所為かな。まあ、それまでにも色々有ったんだけど。
ともあれ帝国国境での死人との戦いが一旦決着が付いたと思ったら、今度はメドゥの指先が……
いや、多分父上なら知ってるよね、最近王国だけじゃなくて大陸中で暴れてる、あれ。
どうも裏社会ではそれなりに知名度がある反社会組織らしいけど。
余程上手く隠れてたんだろうね。あの構成員が大陸の各地に出始めた。
運が良いのか悪いのか、その幹部だって言う"赤の薬指"ともぶつかることになって……
……うん、弱音は吐きたくないけど、あの時ばかりは生きた心地がしなかった。
それでもどうにか今、生きているんだから運は良かったのかもしれないけれど。
原理も良く分からない魔法で一方的に遊ばれただけ……って感じで。正直悔しい。
こんなこと言ったら喜んで跳び出してきそうだけど。オリエ姉とどっちが強いかなあ。
あとは、父上と同じ様に呼ばれてる『黒騎士』さんと『白騎士』さんから仕事を受けた経緯で。
北の英雄って呼ばれてるアーチボルト辺境伯とも知り合いになりました。
王国の貴族って言うと父上以外は大体何か影に潜んで悪巧みしているイメージだったけど。
北の辺境伯は何て言うか、生き難そうなくらいにとにかく真面目な感じの人。
そうそう、辺境伯がシグルド兄のこと褒めてたよ。あんなに真っ当に勤勉にはなれないって。
でも何だろう。ボクから見ると良く似てるんだけどね。仕事中毒で全然休みをとらない所とか。
引っ張られて部下の人達まで休めないところとかね……またミライアさんに無理させてない?
何かこうやって書いてたら今更に心配になってきた。駄目だよ、無理するのも、させるのも。
自覚がないだけでいつか限界が来て壊れちゃうんだからね。って、父上からも言ってあげて――――"
――――ここまで書いて。ふと筆が止まる。
どうも色々有りすぎて纏まらないけれど。近況報告なんて物はそんなものだとも思う。
読み返してみて、その時その時に思ったこと。感じたことが頭の中を過ぎっていく。
本当に、半年とは思えない程色々あった。今記した範囲でも、未だ精々半分くらいだ。
用意した上質紙は一枚。残り半分をこの調子で書いていくと最後は豆粒の様な字になる。
少し多めに用意するんだった、と内心後悔を抱けども。こればかりは後の祭りである。
●エルゼリオからの手紙~後半戦~
「うー……どう足掻いても紙面が足りない……」
後半は少し省略して伝えないと。と、流れ作業で続きを記そうとして。
けれど次に脳裏に過ぎった内容を本当に記して良いのか、とはたと気付いた。
それはつまり。彼にとってはやや特別寄りの引き出しにしまってある黒い狐の少女の思い出だ。
いやいや待とうよボク。これは個人的な話の筈。報告の義務なんかない。
けれど黙っているのもどうだろう。それは家族に対して隠しごとをするという事だ。
或いは、それは信頼に対する手酷い裏切りには繋がらないか――――
「――――駄目だ。例え地の果てに居たとしても、絶対父上は面白がって何かして来る」
繋がらない。大丈夫。エルゼリオは割り切ることが得意だ。すぱっと心の中で省略する。
これもレイノーラ一党の中で生きていく内に染み付いた処世術だと言えるだろうか。
つまり誰が悪いかと言えば大体父上が悪い。ボクは悪くない。断固無実だ。
エルゼリオは責任転嫁した。
"――――辺境伯と言えば、北の国境の街にこっちはこっちで驚く位強いお爺さんに逢ったよ。
本当はさっきのメドゥの指先の幹部にこてんぱんにされたから、強くなりたくて。
辺境伯のところの『黒騎士』さんに強くなれる当てがないか聞いたら紹介してくれたんだけど。
これが本当頑固者っていうか、口は悪いし手は早いし乱暴だし取り付く島もないし。
でも、強かった。本当に強かった。斬られる寸前まで動けなかった。
もしかすると父上の知っている人かもしれないね。あれだけ強くて無名ってことはないと思うんだ。
ただ、その時聞かれたことがずっと引っかかってて。強くなる為に人間を棄てられるか、って。
父上ならきっと笑い飛ばす様なことだけど、ボクは何も答えられなかった。
今も、あの時どう答えれば良かったのか、見つけられないでいる。
あ、別に父上の答えが聞きたい訳じゃないんだよ。ただ、そういうことがあって。それで。
どう伝えれば良いか分からないんだけど。それから時々、何で戦うのかって考えるようになった。
その後お爺さんにも結構逢いに行ってるんだけど、相変わらず何も教えてくれないし……――――"
一息を吐く。読み返して、自分が、思ったより追い詰められていたことに気付く。
こんなことを書いて本当に大丈夫なんだろうか……と思う一方で、あの父上なら、とも思う。
恐らく、何も問題はないと豪快に笑い飛ばしてみせるだろう。或いは女々しいと怒られるだろうか。
そのどちらも思い浮かび、思いがけず浮かんだ笑いを噛み殺す。
どちらであるにせよ。無いにせよ。今のエルゼリオの立場こそが、家族からの信頼そのものだ。
せめてその気持ちに恥じるまいと。残り僅かになった紙面に筆先を落とす。
"――――冬が過ぎて、そろそろ旧帝国領の奪還作成も始まろうとしてるって言うのに。
こんなことで悩んでるなんて言ったら父上は怒るかな。それとも、いつもみたいに笑うのかな。
けど、ボクはボクなりの答えを見つけようと思ってる。
泣き言を言いたかった訳じゃないんだ。ただ、もう少しだけ時間が欲しい。
帝都の奪還まではまだまだ時間が掛かりそうだし、多分メドゥの指先とも戦うことになると思う。
リザードマンの国がある大湿地にも居たし、サウゼル大森林の大変動にも関わってたみたい。
大陸中が荒れている感じで、そんな中ボクに何が出来るのかは正直、未だ良く分かってない。
でも、父上がそうである様に。シグルド兄やオリエ姉が、そうである様に。
目の前で弱い人達が虐げられていたら、無理矢理にだって解決まで持ち込めるような。
そんな風になれたら良いなって思ってる。だから、また此処から頑張っていこうと思う。
次に手紙が出せるのは、帝国奪還の動きが一区切りついてからになるかな。
なんて、もしかするともっとずっと早くに手紙で報告しないといけない事が出来るかもだけど。
父上についてはあんまり心配してないけど、シグルド兄も、オリエ姉も、ミライアさんも。
レイノーラの皆が元気で健康で、楽しく居られることを祈って。
今日はこの辺で、筆を置かせて貰おうと思います。それでは、また。
――――――エルゼリオ・レイノーラ"
記した手紙に封蝋をして。冒険者ギルドを経由して故郷へ送る。
ただそれだけの事の筈なのに、何故か心の何処かに蟠っていたもやもやが少し晴れた気がする。
自分事ながら"現金だなあ"と思う一方で。それも家族の繋がりという物なのだろう。
あの日、あの家で過ごした掛け替えのない日々が。きっと今を支えている。
「……よぉし、頑張るぞっ! でないと、今度こそ父上に何言われるか分かんないし!!」
気合一声、拳を振り上げる。見上げれば其処には、雲一つ無い青空が広がっていた。
帝都が落ち、帝国が乱れ、冒険者として家を出てから早半年が過ぎる。
――――半年。そう、未だ僅かに半年だ。12月には1つ齢を重ねたエルゼリオだが。
未だに、たったそれだけしか時間が経過していない事が信じられない。
様々な事があった。死人の群と相対し、辺境領の難事に駆り出され、潜った死線の数たるや。
北の城塞都市に済む怪物じみた老人の宅には未だに時折顔を出すが、対峙したのは一度きり。
あれ以来手合わせすらして貰えない。梨の礫とはこのことだ。
経験は確かに彼を育て、その力は家を出た時よりずっと研ぎ澄まされている筈。
けれど最近は何処となく手応えのない。漠然と落ち着いてしまった日々を過ごしていた。
「何かしないと、って気持ちだけ急くのは、良くないよね……」
昨今随分増えてしまった独り言と共に、勢い込んで倒れていたベッドから身を起こす。
部屋に設えた質素な机へ視線を向ければ、その上には一枚の上質紙、インクと万年筆。
これまで余裕がないからと報告をサボっていた父親へ手紙を書こうと思い立ったのも。
もしかするとそんな状況を変えたいという、気持ちの表れだったのかもしれない。
"――――前略、レイノーラの皆へ
手紙を書くのも久々で、何から伝えれば良いのかも分からないけれど。
父上は、間違いなく元気だとして、シグルド兄とオリエ姉は元気ですか。
ボクは何とか元気にやっています。冒険者としても、そろそろ中堅と呼ばれる位になりました。
戦うことにも、大分慣れた……の、かな。自分では、そこら辺はあんまり良く分からないけど。
この半年は、本当に本当に忙しくて。ああ、目が回るってこういうことなんだ……って。
シグルド兄が良く呟いていたことが実感出来た気がします。まだ半年なんて嘘みたい。
帝国崩壊からしばらくは特に国境線が騒がしくて、砦を護る為にアンデッドの群と戦ったり。
その指揮官だって言う"ヤコブ様"って吸血鬼との酒宴に参加したり。
帝国難民キャンプのお手伝いに行った筈が、真冬なのに屋外で相撲を取ることになったり。
うん。何を言ってるのか分からないかもしれないけどボクも何が起きたのか良く分からなかった。
大体ゴブリンのドン・ゴーフルの所為かな。まあ、それまでにも色々有ったんだけど。
ともあれ帝国国境での死人との戦いが一旦決着が付いたと思ったら、今度はメドゥの指先が……
いや、多分父上なら知ってるよね、最近王国だけじゃなくて大陸中で暴れてる、あれ。
どうも裏社会ではそれなりに知名度がある反社会組織らしいけど。
余程上手く隠れてたんだろうね。あの構成員が大陸の各地に出始めた。
運が良いのか悪いのか、その幹部だって言う"赤の薬指"ともぶつかることになって……
……うん、弱音は吐きたくないけど、あの時ばかりは生きた心地がしなかった。
それでもどうにか今、生きているんだから運は良かったのかもしれないけれど。
原理も良く分からない魔法で一方的に遊ばれただけ……って感じで。正直悔しい。
こんなこと言ったら喜んで跳び出してきそうだけど。オリエ姉とどっちが強いかなあ。
あとは、父上と同じ様に呼ばれてる『黒騎士』さんと『白騎士』さんから仕事を受けた経緯で。
北の英雄って呼ばれてるアーチボルト辺境伯とも知り合いになりました。
王国の貴族って言うと父上以外は大体何か影に潜んで悪巧みしているイメージだったけど。
北の辺境伯は何て言うか、生き難そうなくらいにとにかく真面目な感じの人。
そうそう、辺境伯がシグルド兄のこと褒めてたよ。あんなに真っ当に勤勉にはなれないって。
でも何だろう。ボクから見ると良く似てるんだけどね。仕事中毒で全然休みをとらない所とか。
引っ張られて部下の人達まで休めないところとかね……またミライアさんに無理させてない?
何かこうやって書いてたら今更に心配になってきた。駄目だよ、無理するのも、させるのも。
自覚がないだけでいつか限界が来て壊れちゃうんだからね。って、父上からも言ってあげて――――"
――――ここまで書いて。ふと筆が止まる。
どうも色々有りすぎて纏まらないけれど。近況報告なんて物はそんなものだとも思う。
読み返してみて、その時その時に思ったこと。感じたことが頭の中を過ぎっていく。
本当に、半年とは思えない程色々あった。今記した範囲でも、未だ精々半分くらいだ。
用意した上質紙は一枚。残り半分をこの調子で書いていくと最後は豆粒の様な字になる。
少し多めに用意するんだった、と内心後悔を抱けども。こればかりは後の祭りである。
●エルゼリオからの手紙~後半戦~
「うー……どう足掻いても紙面が足りない……」
後半は少し省略して伝えないと。と、流れ作業で続きを記そうとして。
けれど次に脳裏に過ぎった内容を本当に記して良いのか、とはたと気付いた。
それはつまり。彼にとってはやや特別寄りの引き出しにしまってある黒い狐の少女の思い出だ。
いやいや待とうよボク。これは個人的な話の筈。報告の義務なんかない。
けれど黙っているのもどうだろう。それは家族に対して隠しごとをするという事だ。
或いは、それは信頼に対する手酷い裏切りには繋がらないか――――
「――――駄目だ。例え地の果てに居たとしても、絶対父上は面白がって何かして来る」
繋がらない。大丈夫。エルゼリオは割り切ることが得意だ。すぱっと心の中で省略する。
これもレイノーラ一党の中で生きていく内に染み付いた処世術だと言えるだろうか。
つまり誰が悪いかと言えば大体父上が悪い。ボクは悪くない。断固無実だ。
エルゼリオは責任転嫁した。
"――――辺境伯と言えば、北の国境の街にこっちはこっちで驚く位強いお爺さんに逢ったよ。
本当はさっきのメドゥの指先の幹部にこてんぱんにされたから、強くなりたくて。
辺境伯のところの『黒騎士』さんに強くなれる当てがないか聞いたら紹介してくれたんだけど。
これが本当頑固者っていうか、口は悪いし手は早いし乱暴だし取り付く島もないし。
でも、強かった。本当に強かった。斬られる寸前まで動けなかった。
もしかすると父上の知っている人かもしれないね。あれだけ強くて無名ってことはないと思うんだ。
ただ、その時聞かれたことがずっと引っかかってて。強くなる為に人間を棄てられるか、って。
父上ならきっと笑い飛ばす様なことだけど、ボクは何も答えられなかった。
今も、あの時どう答えれば良かったのか、見つけられないでいる。
あ、別に父上の答えが聞きたい訳じゃないんだよ。ただ、そういうことがあって。それで。
どう伝えれば良いか分からないんだけど。それから時々、何で戦うのかって考えるようになった。
その後お爺さんにも結構逢いに行ってるんだけど、相変わらず何も教えてくれないし……――――"
一息を吐く。読み返して、自分が、思ったより追い詰められていたことに気付く。
こんなことを書いて本当に大丈夫なんだろうか……と思う一方で、あの父上なら、とも思う。
恐らく、何も問題はないと豪快に笑い飛ばしてみせるだろう。或いは女々しいと怒られるだろうか。
そのどちらも思い浮かび、思いがけず浮かんだ笑いを噛み殺す。
どちらであるにせよ。無いにせよ。今のエルゼリオの立場こそが、家族からの信頼そのものだ。
せめてその気持ちに恥じるまいと。残り僅かになった紙面に筆先を落とす。
"――――冬が過ぎて、そろそろ旧帝国領の奪還作成も始まろうとしてるって言うのに。
こんなことで悩んでるなんて言ったら父上は怒るかな。それとも、いつもみたいに笑うのかな。
けど、ボクはボクなりの答えを見つけようと思ってる。
泣き言を言いたかった訳じゃないんだ。ただ、もう少しだけ時間が欲しい。
帝都の奪還まではまだまだ時間が掛かりそうだし、多分メドゥの指先とも戦うことになると思う。
リザードマンの国がある大湿地にも居たし、サウゼル大森林の大変動にも関わってたみたい。
大陸中が荒れている感じで、そんな中ボクに何が出来るのかは正直、未だ良く分かってない。
でも、父上がそうである様に。シグルド兄やオリエ姉が、そうである様に。
目の前で弱い人達が虐げられていたら、無理矢理にだって解決まで持ち込めるような。
そんな風になれたら良いなって思ってる。だから、また此処から頑張っていこうと思う。
次に手紙が出せるのは、帝国奪還の動きが一区切りついてからになるかな。
なんて、もしかするともっとずっと早くに手紙で報告しないといけない事が出来るかもだけど。
父上についてはあんまり心配してないけど、シグルド兄も、オリエ姉も、ミライアさんも。
レイノーラの皆が元気で健康で、楽しく居られることを祈って。
今日はこの辺で、筆を置かせて貰おうと思います。それでは、また。
――――――エルゼリオ・レイノーラ"
記した手紙に封蝋をして。冒険者ギルドを経由して故郷へ送る。
ただそれだけの事の筈なのに、何故か心の何処かに蟠っていたもやもやが少し晴れた気がする。
自分事ながら"現金だなあ"と思う一方で。それも家族の繋がりという物なのだろう。
あの日、あの家で過ごした掛け替えのない日々が。きっと今を支えている。
「……よぉし、頑張るぞっ! でないと、今度こそ父上に何言われるか分かんないし!!」
気合一声、拳を振り上げる。見上げれば其処には、雲一つ無い青空が広がっていた。