【#害】月夜を貫く、爆炎の光
清和アヤカシ闘乱帖 イベントノベル(テーマ)マザリモノ制作 夜団子納品 2026年05月21日 10時33分32秒
夜のとばりが落ちた時間。静寂が包み込む宵闇――この国有数の最先端建築『夜煙ビルヂング』もまた静寂の中にあった。
今宵、このビルヂングは落ちる。私が仕掛けた爆破の術によって。
ここでは今日、結社に所属する有数の重要人物たちが密会を行うとタレコミがあった。裏取りもでき、密命が下る――彼らを雁首揃えてあの世送りにしろ、と。
そこで私は全ての命を確実に刈り取るため爆破の術式を仕掛けることにした。大切な国の建築物に……と思わないでもなかったがこれも新たな時代の平和のためだ、致し方ない。
それにこの爆破事件を見て結社の連中は恐れ戦くだろう。そして新政府に逆らう愚かさを思い知れば良い。
「さて、首尾は上々。連中は……」
向かいの建物から双眼鏡を覗く。標的たちに加え、護衛も少々――と。
一人の男が目に留まる。輝く銀髪に金の瞳、左眼には眼帯を付けた角のある男――『月鬼』夜彲王 射干!
しめた、結社の有力一族『夜彲王家』の者も始末したとなれば相当の手柄だ。妖神と同等レベルの戦闘力を誇ると聞くが、爆発の前では手も足も出まい。なにより、生き延びたとしても護衛対象を逃すことも私を殺すことも不可!
悪くない誤算だと口端を上げていると、冷たい光を孕む金の瞳がふい、と動く。そしてこちらを見た。
「!?」
今、目が合った……? い、いや、これだけ距離があるのだぞ。それにここに私が隠れていると知るものはいない。偶然、勘違いだ。そのはずだ。
だというのに、この胸騒ぎはなんだ――?
ええい、ままよ。もうしばし様子を見る予定だったがもう決行してしまおう。忌々しい結社の鬼め。いまその魂を黄泉に送ってやる――!
仕掛けた爆破術式へ意識を送る。魔力を送り、術を形作り、そして爆破――。
――爆ぜろ!
……。
しかし、いつまでたっても轟音は響かなかった。
「な、なにが起きた!? どうして術が……」
全身から汗が噴き出る。なぜだ、見抜かれたのか!? くそ、計画の見直しだ。いや、荒い手になるがここからまた爆破の術を飛ばして……。
ああくそ暑い! なんでこんなに体が……。
「……え?」
ドゴォォォンッ!
響き渡る轟音、身の内から焦がす熱、そして失われていく生命を感じながら私は理解した。
術を返されたのだ。我が身の内に。あの一目で。
なんと、恐ろしい男なのだ、『月鬼』――。
死にゆく私の頭を満たしたのは、彼の鬼への畏敬の念だった。
今宵、このビルヂングは落ちる。私が仕掛けた爆破の術によって。
ここでは今日、結社に所属する有数の重要人物たちが密会を行うとタレコミがあった。裏取りもでき、密命が下る――彼らを雁首揃えてあの世送りにしろ、と。
そこで私は全ての命を確実に刈り取るため爆破の術式を仕掛けることにした。大切な国の建築物に……と思わないでもなかったがこれも新たな時代の平和のためだ、致し方ない。
それにこの爆破事件を見て結社の連中は恐れ戦くだろう。そして新政府に逆らう愚かさを思い知れば良い。
「さて、首尾は上々。連中は……」
向かいの建物から双眼鏡を覗く。標的たちに加え、護衛も少々――と。
一人の男が目に留まる。輝く銀髪に金の瞳、左眼には眼帯を付けた角のある男――『月鬼』夜彲王 射干!
しめた、結社の有力一族『夜彲王家』の者も始末したとなれば相当の手柄だ。妖神と同等レベルの戦闘力を誇ると聞くが、爆発の前では手も足も出まい。なにより、生き延びたとしても護衛対象を逃すことも私を殺すことも不可!
悪くない誤算だと口端を上げていると、冷たい光を孕む金の瞳がふい、と動く。そしてこちらを見た。
「!?」
今、目が合った……? い、いや、これだけ距離があるのだぞ。それにここに私が隠れていると知るものはいない。偶然、勘違いだ。そのはずだ。
だというのに、この胸騒ぎはなんだ――?
ええい、ままよ。もうしばし様子を見る予定だったがもう決行してしまおう。忌々しい結社の鬼め。いまその魂を黄泉に送ってやる――!
仕掛けた爆破術式へ意識を送る。魔力を送り、術を形作り、そして爆破――。
――爆ぜろ!
……。
しかし、いつまでたっても轟音は響かなかった。
「な、なにが起きた!? どうして術が……」
全身から汗が噴き出る。なぜだ、見抜かれたのか!? くそ、計画の見直しだ。いや、荒い手になるがここからまた爆破の術を飛ばして……。
ああくそ暑い! なんでこんなに体が……。
「……え?」
ドゴォォォンッ!
響き渡る轟音、身の内から焦がす熱、そして失われていく生命を感じながら私は理解した。
術を返されたのだ。我が身の内に。あの一目で。
なんと、恐ろしい男なのだ、『月鬼』――。
死にゆく私の頭を満たしたのは、彼の鬼への畏敬の念だった。