Two of a Kind

キャラクターノベル(グループ)制作 真柄 葉納品 2021年02月28日 23時02分07秒

「とても素敵なお店ですね。リブラネスタにこんな場所があったなんて知りませんでした」
 街の喧騒から切り離された店内は、同色で統一された落ち着いた趣だった。
「えへへ。きっとゲルダさんも気に入ると思ったんです。さぁ、こっちの席へ」
 リサ・ベイカーは自分のお気に入りの席へ、ゲルダ・クラインを誘導する。
 ゲルダに着席を促し、リサはカウンターへ。マスターおすすめのココアを注文し席へと戻った。
「……な、なんか緊張しますね」
「そ、そうですね」
 ココアを待つ間、二人は席で向かい合う。
「依頼だともっと自然にお話しできるのに、なんででしょうね」
「あはは……本当に」
「えっと、リサ様。この間の依頼ではお世話になりました」
「えっ、あ、はい。こちらこそお世話になりましたっ!」
 ゆるりと頭を下げるゲルダに、リサも慌てて合わせる。

「「……」」

 そして、訪れる沈黙。
「……ううっ、ごめんなさい。せっかくお誘いしたのに何だか緊張してしまって」
「そ、そんな! 謝っていただくような事じゃないですよっ! わ、わたしもなんだかうまく喋れなくてごめんなさいっ!」
 再び二人して頭を下げる事、数秒――。
「――ぷっ」
 リサが突然吹き出した。
「リサ様……?」
「ご、ごめんなさいっ! 何だかお見合いみたいって思っちゃったら、もう堪えきれなくなってしまって」
 笑いのツボに入ってしまったのだろうか、リサは必死で笑いをこらえながらゲルダに謝る。
「ふふ、お見合いですか。確かにそうかもしれませんね」
 そんなリサを見て、ゲルダも肩の力が抜けたのか、いつものふわりとした笑顔が浮かんだ。
「ゲルダさん!」
「えっ、はい?」
 と、突然笑い声から真剣なものに切り替えたリサに名を呼ばれ、ゲルダはビシッとし背を正す。
「ずっと思ってたことを、正直に話します」
「は、はい……!」
 真剣なリサの表情に、ゲルダの鼓動が跳ね上がった。
「ゲルダちゃんって呼んでも良いですか!」
「……えっ」
 勇気を出して言葉を振り絞ったリサに、ゲルダはポカーンと呆気にとられる。
「……な、馴れ馴れしすぎますか?」
「そ、そんなことないです! とっても嬉しいです!」
 恐る恐る問いかけてくるリサに、ゲルダは思いっきり頭を振った。
「それから、わたしの事も出来れば、『様』付けなしで呼んでもらいたい、です!」
「はい……はいっ! うれしいですっ。えっと……リサ、ちゃん」
「はいっ!」
 照れ合いながらも二人は笑顔を向け合うと――。
「改めましてリサ――ベイカーですっ」
 少し間を挟んで自分の名を口にしたリサ。
「こちらこそ、改めまして、わたしはゲルダ・クラインですっ」
 そして、ゲルダも始めて自分のフルネームを口にした。

「「……えっ?」」

 互いのフルネームを耳にし、二人して驚いた。
「えっえっ……ベイカーって。リサちゃん確かエスト・ポーラのご出身って……」
「ええっ! 王国商家のお嬢様で、クラインって言ったら……」

「「ええっ!?」」

 再び同時に声を上げた二人。
「リサちゃん、ベイカー家のお嬢様だったんですか!?」
「ゲルダちゃん、クライン家のお嬢様だったんですか!?」
 これまた同時に驚き合い、二人はしばらく相手の顔をじっと見つめた。
「どうして、クライン家のお嬢様が冒険者に……?」
「そ、それはこちらの台詞ですっ。どうして、ベイカー家のお嬢様が冒険者に?」
 お互いがお互いの正体に混乱し、二人してよくわからない質問を投げ合う。

「ははは、随分と賑やかですね。これを飲んで少し落ち着いてください」

 そんな時だった。マスターがカップを運んできたのは。
「……いただきましょうか」
「そうですね」
 ゲルダがカップを手に取り微笑むと、リサも続いた。
 二人でマスターお手製のココアに口を付ける。マスターご自慢の一品は、甘い中にもほんのりとした苦みが混じり、少し大人な味がする。
「おいしい……おいしいです、リサちゃん」
「うれしいですっ! わたしもこのココアを始めて飲んだ時、すごく感動したんですっ!」
 両眼を閉じはぅと熱い吐息を吐くゲルダを、リサは嬉しそうに見つめる。
「あの、ゲルダちゃん。わたし、あなたの事もっと知りたいです」
 そんな幸せそうなゲルダに、リサは思い切って聞いてみた。
「はいっ。わたしもリサちゃんの事知りたいですっ」
 返ってきた答えに、リサの表情はぱっと明るく輝いた。

●
「そうなんですね。なんだかうちとは正反対です」
「あ、そうなんですか?」
「はい、うちは超がつくほどの過保護で……学園にも、その……良縁を」
 と、ゲルダは言いづらそうに語気を弱める。
「そ、それって未来の旦那様を、とかそういうやつですかっ!?」
「ちちち、違いますっ! そういうのじゃなくて、あくまでお客様としてのコネクションを!」
「そ、そうですよね。商家ですもんね。うんうん、わかります、そういうの」
「リサちゃんも、そういうのあるんですか……?」
 何度もうんうんと同意を示すリサに、ゲルダは思わず問いかけた。
「え、あ、うっ……」
「あっ……聞いちゃまずかったですか……?」
 言葉に詰まるリサに、ゲルダは慌てて口を押える。
「……ううん、でも、ゲルダちゃんになら」
 そう言って一呼吸入れたリサは――。
「実はわたし、実家から家出してきてるんです」
「えっ!」
 真剣なまなざしで告白するリサにゲルダは一瞬驚くが、すぐに破顔し――。
「わたしもなんですっ!」
 嬉しそうにリサの手を取った。
「えぇっ!?」
 まさかの回答に、リサが驚いていると。
「どこか他人な気がしないとずっと思っていましたけど、まさかこんなにも沢山の共通点があったなんて、本当に嬉しいです! やっぱり、リサちゃんもご両親の押し付けに嫌気がさした感じですか?」
「はい、そうですね。わたしは商売の方向性というか、スタンスの食い違いで父親と喧嘩してしまいまして」
 ゲルダの問いにあははと乾いた笑みで答えるリサ。
「それじゃ、ずっと実家には……?」
「あ、そんな事ないんですっ。母――継母なんですけど、それとはとても仲が良くて、ちょくちょく帰ったりはしてるんです。もちろん、父親のいない時を見計らって、ですけど」
「凄いですっ! ご実家とのパイプをちゃんと持ちつつ外に飛び出したなんて!」
「そ、そうでしょうか……?」
「はいっ! わたしなんてきっと、実家に戻ろうものなら……」
 どんな未来が待っているかを想像し、ゲルダはぶるりと体を震わせた。
「ご両親に大切にされているんですね」
 そんなゲルダを眺めながら、リサが微笑む。
「あら、リサちゃんもじゃないですか。継母様はもちろん、お父様にもきっと」
「あはは……そうなんでしょうか。いえ、そうなんですよねきっと」
 それは薄々感じていた事。リサはゲルダの言葉にゆっくりと頷いた。
「もっといっぱい聞かせてください、リサちゃんのこと」
「はい、喜んで。わたしもいっぱいきいちゃいますよ、ゲルダちゃんの事!」
「もちろん、喜んで!」

●
「ゲルダちゃん」
「はい、リサちゃん」
 二人は机の上で手を繋ぎ、互いの名を呼びあった。
「これからも冒険者として、そして似た者同士としても、よろしくお願いします」
「こちらこそ、ずっとお友達でいてくださいっ」
 頭を下げるリサに合わせるように、ゲルダも首を垂れる。

 二人は冷めてしまったココアの代わりを注文し、夜が更けるまで時間を忘れて話に花を咲かせたのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0