【晶輩】星よこの歩みを祝福せよ
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)赤の吸血鬼狩り制作 九弐ニデル納品 2025年05月02日 14時38分16秒
昼下がりの『鉱物商カミヤ』。カウンターに座るエルゼリオ・レイノーラは、その可憐な目元に少しばかり力が入っていた。彼は、店主のベニト・カミヤに先日の戦闘を説明し終えるところだった。
「事前に仕掛けておいた法術のお陰で事なきを得たけど」
相手は“青冥公”。偶然が発端であり、五体満足で離脱できたものの……彼には自分の未熟さが強烈に自覚されていた。
「危うく、首を潰されるところだったよね」
スカーフを巻いた首をさする。その下には未だにくっきりとかの吸血鬼の指の跡がついているのだ。
――だから、ボク自身の心技の鍛錬は、当然として。
彼は、ここに装備品の改良を求めてやってきたのだった。
「そりゃ災難だったね」
店主はふむ、と顎を撫でた。
「方向性としては……防御を考えてる?」
エルゼリオは頷いた。最後の瞬間、もう少しで青冥公の胸を刺し貫けるところだったのだ。それができなかったのは、吸血鬼特有のあの恐ろしく強い力で首を掴まれてしまったからにほかならない。もしあれを無視できたなら。
「そう。速いのはなんとかできるから。こっちに攻撃してくる瞬間には、絶対にそこにいるからね。でも、まともに力で押されたら……」
再戦する事があったら、今度こそ遅れは取りたくないんだ。カウンターを見つめるエルゼリオをおいて、店主は店の中を探し始めた。触媒の棚、護符の棚……やがて手にいくつものペンダントを下げて戻ってきた店主はエルゼリオの狩りを知っている。たおやかな女性にも見まごう彼の、したたかな立ち回りを。
「目立つものは駄目だろう? これは小さいから頻繁に祝福の掛け直しはいるが……」
効果は保証する。なんせ僕のお手製、と笑った店主にエルゼリオは笑顔を返した。
「ここに護符を?」
持ち上げたのは、小さな星飾り3つがさがった1本。肝心の護符用の爪には、今は何も留まっていない。店主は分厚い帳面を繰って彼に示した。驚くべきことに、そこにはすでに彼の名とともに護符の処方が書かれている。
「そう。あんたにはこんな……と思ったが、防御か。青の水晶を煙水晶に替えよう」
「客みんなにやってるの?」
「職業病でね」
1週間後。
エルゼリオは“燐甲の護符”を受け取った。ごく短い聖句を唱えれば彼の体は淡い光に包まれる。子供たちの柔らかな手を思い起こして、彼はそれを首に掛ける。長生きして御贔屓に、と笑った店主に彼はきっちり支払いをした。
「事前に仕掛けておいた法術のお陰で事なきを得たけど」
相手は“青冥公”。偶然が発端であり、五体満足で離脱できたものの……彼には自分の未熟さが強烈に自覚されていた。
「危うく、首を潰されるところだったよね」
スカーフを巻いた首をさする。その下には未だにくっきりとかの吸血鬼の指の跡がついているのだ。
――だから、ボク自身の心技の鍛錬は、当然として。
彼は、ここに装備品の改良を求めてやってきたのだった。
「そりゃ災難だったね」
店主はふむ、と顎を撫でた。
「方向性としては……防御を考えてる?」
エルゼリオは頷いた。最後の瞬間、もう少しで青冥公の胸を刺し貫けるところだったのだ。それができなかったのは、吸血鬼特有のあの恐ろしく強い力で首を掴まれてしまったからにほかならない。もしあれを無視できたなら。
「そう。速いのはなんとかできるから。こっちに攻撃してくる瞬間には、絶対にそこにいるからね。でも、まともに力で押されたら……」
再戦する事があったら、今度こそ遅れは取りたくないんだ。カウンターを見つめるエルゼリオをおいて、店主は店の中を探し始めた。触媒の棚、護符の棚……やがて手にいくつものペンダントを下げて戻ってきた店主はエルゼリオの狩りを知っている。たおやかな女性にも見まごう彼の、したたかな立ち回りを。
「目立つものは駄目だろう? これは小さいから頻繁に祝福の掛け直しはいるが……」
効果は保証する。なんせ僕のお手製、と笑った店主にエルゼリオは笑顔を返した。
「ここに護符を?」
持ち上げたのは、小さな星飾り3つがさがった1本。肝心の護符用の爪には、今は何も留まっていない。店主は分厚い帳面を繰って彼に示した。驚くべきことに、そこにはすでに彼の名とともに護符の処方が書かれている。
「そう。あんたにはこんな……と思ったが、防御か。青の水晶を煙水晶に替えよう」
「客みんなにやってるの?」
「職業病でね」
1週間後。
エルゼリオは“燐甲の護符”を受け取った。ごく短い聖句を唱えれば彼の体は淡い光に包まれる。子供たちの柔らかな手を思い起こして、彼はそれを首に掛ける。長生きして御贔屓に、と笑った店主に彼はきっちり支払いをした。