【聖白庭】休み、憩う。

四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)赤の吸血鬼狩り制作 柊コウタ納品 2025年04月28日 09時06分19秒

 暗い。よく見えない。歩け、歩け。脇腹が熱い。衝撃。ぶつかった。敵は、どこ……

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 まだ昼間の暖かさが残る夕暮れ時。
 司祭ノワ・ルーナ(近衛・巧)は裏庭に倒れている小柄な女性を見つけた。傍らに転がる大きなボウガン、脇腹には怪我、そして服に『赤の吸血鬼狩り』の紋章を認め、近くで人知れぬ戦闘があったことを知る。
 急いで駆け寄るノワ。
「大丈夫ですか」
「此、処は……」
 目を開けた女性は、薄桃色の髪を揺らして藻掻くように起き上がった。
「ッ吸血鬼」
 ボウガンを手繰り寄せて構え、警戒心も露わにノワを見上げる女性。そして、怪訝そうにボウガンの先を僅かに下げ、かすれる声で問うた。
「……じゃ、ない……誰」
「白の司祭ノワ・ルーナと申します」
 ノワは己の紋章が見えるよう屈み、静かに、穏やかに答える。女性はボウガンを完全に下ろし、答えた。
「……エリシュカ。吸血鬼ハンター」
「エリシュカさん、敵はどこに」
「わからない、さっきまで戦ってた筈……ごめん、なさい。いつも、周りが見えなくなるの」
 表情を暗くしたエリシュカ(エリカ・プレトリウス)にそっと微笑むノワ。
「大丈夫ですよ。今この辺りには居ないようですね。応急処置になりますが、手当てを」
 させてください、と言いさしたノワの声をエリシュカが遮る。
「わたしはごみだから、気にしないで。そのうち出ていく」
 俯いてボウガンを抱え込むエリシュカにノワは慌てる。
「そういうわけには」
 言いかけてから、彼女の発した言葉に意識が行った。“ごみ”。
 一瞬考え、再び口調を穏やかにしてこう言った。
「怪我人の救助は私の仕事の範疇です。私が職務怠慢にならぬよう、私を助けると思って手当てを受けていただけませんか」

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 満身創痍になっても吸血鬼と戦い続け、気付いたら教会の裏庭に居た。
 法術による処置を受けた後、司祭の『我儘』を聞いて裏庭のベンチに座り、作り過ぎて余りそうなパンとスープを食べる『手助け』をすることに。

 夕焼け色に染まる裏庭。
 司祭の気遣いに身を縮めながら、されど断ることもできず、煮込まれた甘いニンジンを木のスプーンで掬って咀嚼する。パンの入った籠を間に挟んで司祭も座り、ランプを膝に置いてパンを食べている。
 時々司祭が喋り、エリシュカが頷く。
 そうしているうちに体が温まってきて肩の力も抜けていた。

 森の木々の間へと春の夕陽が沈んでいく。
 それは、明日また東の空へ昇る力を蓄えるため、なのかもしれなかった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0