純白《side:白の司祭》
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)白の司祭制作 弓月 蒼納品 2025年05月20日 01時50分21秒
――――それは、純白で染め上げられたありふれた教会の一室。
金管風琴の音色が柔らかに響くその根元で、演奏していた少女は手を止める。
背後を振り返れば、其処には白を基調とした法衣に身を包んだ女。
腰には剣を佩き、一見すれば聖騎士にも見紛うだろう。けれど彼女の装飾具に『青』のものは無い。
「ヴィル。いつ帰って来たの? 文でもくれたら迎えに行ったのに……」
嬉しそうに席を立つ、その純白の少女の名はオルファレナ・リュクスペイン。
『白薔薇の聖女』と呼ばれている、『教団』の『聖女』である。
彼女は一般教徒への広告塔であり、前線は愚か市井に下りる事すら赦されない。
「清く」、「正しく」、「無垢」である事が条件の聖女に迎えを任すなど、どう考えても無理がある。
だが、もし万が一彼女が。つまり当の女剣士ヴィルヘルミナがそれを求めたとしたなら。
彼女は,迎えに来てしまうに違いない。結果、事実を“消す”為に何人の無辜の民が命を落とすか。
「大丈夫ですよ、オルファ。私はオルファに心配されるほど弱くは有りません」
「ふふ、知ってるわ。ヴィルは私が一番信じている"神の剣"だもの」
純粋であることを至上とされる彼女には、与えられる知識が制限されている。
吸血鬼の邪悪は知っていても、勝るとも劣らない『教団』の『悪』は認知外に置かれている。
だから彼女の言葉は、本当に言葉通りの意味だ。
「……? でも、何だか少し顔色が悪いわ、平気?」
ではそんな――――『白の司祭』の聖女付き騎士の仕事が。
綺麗事ばかりで片付く訳が無い。ヴィルヘルミナの手は、ずっと前から血で穢れている。
吸血鬼だけではない。背信者や異教徒、聖女を解放しようとする勘違い『聖職者』まで。
時に“処分”し、時に“排除”し、時に“殲滅”し、あらゆる障害を取り除くこと。
それが彼女が自らに課した――――『教団』における役割だ。
「いえ、平気――――」「……光あれ」
一言。たった一言で、疲労も苦痛も、心の負荷すら消え去った。聖女は法術に特化した存在だ。
触れて、光輝を願うだけで。世界は、主は、彼女に多大な祝福を与える。
それがどれほど歪であろうとも。
「ありがとうございます。オルフェ。助かりました」
ヴィルヘルミナが笑うと、オルファレナも笑う。だから、彼女は戦わねばならない。
彼女の安寧こそが――――ヴィルヘルミナにとって、世界の救済そのものなのだから。
金管風琴の音色が柔らかに響くその根元で、演奏していた少女は手を止める。
背後を振り返れば、其処には白を基調とした法衣に身を包んだ女。
腰には剣を佩き、一見すれば聖騎士にも見紛うだろう。けれど彼女の装飾具に『青』のものは無い。
「ヴィル。いつ帰って来たの? 文でもくれたら迎えに行ったのに……」
嬉しそうに席を立つ、その純白の少女の名はオルファレナ・リュクスペイン。
『白薔薇の聖女』と呼ばれている、『教団』の『聖女』である。
彼女は一般教徒への広告塔であり、前線は愚か市井に下りる事すら赦されない。
「清く」、「正しく」、「無垢」である事が条件の聖女に迎えを任すなど、どう考えても無理がある。
だが、もし万が一彼女が。つまり当の女剣士ヴィルヘルミナがそれを求めたとしたなら。
彼女は,迎えに来てしまうに違いない。結果、事実を“消す”為に何人の無辜の民が命を落とすか。
「大丈夫ですよ、オルファ。私はオルファに心配されるほど弱くは有りません」
「ふふ、知ってるわ。ヴィルは私が一番信じている"神の剣"だもの」
純粋であることを至上とされる彼女には、与えられる知識が制限されている。
吸血鬼の邪悪は知っていても、勝るとも劣らない『教団』の『悪』は認知外に置かれている。
だから彼女の言葉は、本当に言葉通りの意味だ。
「……? でも、何だか少し顔色が悪いわ、平気?」
ではそんな――――『白の司祭』の聖女付き騎士の仕事が。
綺麗事ばかりで片付く訳が無い。ヴィルヘルミナの手は、ずっと前から血で穢れている。
吸血鬼だけではない。背信者や異教徒、聖女を解放しようとする勘違い『聖職者』まで。
時に“処分”し、時に“排除”し、時に“殲滅”し、あらゆる障害を取り除くこと。
それが彼女が自らに課した――――『教団』における役割だ。
「いえ、平気――――」「……光あれ」
一言。たった一言で、疲労も苦痛も、心の負荷すら消え去った。聖女は法術に特化した存在だ。
触れて、光輝を願うだけで。世界は、主は、彼女に多大な祝福を与える。
それがどれほど歪であろうとも。
「ありがとうございます。オルフェ。助かりました」
ヴィルヘルミナが笑うと、オルファレナも笑う。だから、彼女は戦わねばならない。
彼女の安寧こそが――――ヴィルヘルミナにとって、世界の救済そのものなのだから。