謀略戦《side:薔薇の氏族》
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)薔薇の氏族制作 弓月 蒼納品 2025年05月06日 23時18分43秒
漆黒の廊下に軍靴の足音が響く。
夜を煮詰めた――――敢えて形容するなら、そう表する他は無い――――古城。
『竜夜城』に座する薔薇の氏族と言えば、今代に於いて僅かに二柱。
常夜の双竜と謳われる『夜薔薇竜』アルベイル。
『黒薔薇竜』ドライデン=ツヴァイ。そのいずれかである。
「『血竜王』の動きについて、弟から報告があった」
謁見の間の扉を押し開き発された声に。アルベイルは何処か冷めた眼差しを向けた。
それはそうだろう、最早夜明けも近い時間。貴族たるもの、身を休める事も責務の内だ。
そうでなくとも。彼の右目を奪った怨敵――――『血竜王』の話題は、愉快な物でもない。
「……件の、青の聖騎士の調略は順調に進んでいるのだろう?」
「ああ、恐らくは……奴に、自覚は無いがな」
首肯するドライデンに、革張りの眼帯をコツコツと叩いたアルベイルが瞳を細める。
どうにも。彼の片腕は相変わらず“弟に甘い”。人間上がり……直系の血統でも無いだろうに。
「で、あれば問題無い。“影”に探らせた限り、『血竜王』は酷く素行が悪い。
加えてあの制御不能の暴力だ。聖騎士らと利害対立すれば、人間共の方から喜んで首を差し出すだろうよ」
侵略欲、支配欲、権力欲、そういった多くの薔薇の氏族が重視する物が、アルベイルは軒並み薄い。
それでいて、誰より誇り高い吸血鬼で在らんとしているのが彼である事を。ドライデンは知っている。
自ら牙を剥きはせずとも、降り掛かる火の粉は徹して廃するべし。
そんなアルベイルにとって、一方的に奪われただけ。と言う現状は嘗胆の思いそのものだろう。
「アルベイル、俺にとってお前は今でも危なっかしい存在だ」
「……いつまで保護者面をしている、痴れ者め。俺とて永遠に雛竜ではない」
「だとしても……だ。お前の気高さは美点でもあり、同時に足元を掬われかねん弱点でもある」
事実。徒に人を狩るべきでないと言うアルベイルの理念は、『血竜王』の襲撃の前に余りに無力だった。
その場に居合わせなかった無念を、ドライデンはあれ以来忘れた事はない。
「『戦う前に勝つ』事こそが闇の貴族の嗜み――――お前は、俺が護るとも」
「……好きにせよ。奴の首さえ手に入るのであれば、その過程は問わん」
ふ、っと。何処か緩んだ声音で囁く『夜薔薇竜』の声は静かに常闇の中に融け。
陽の射さぬ黒き薔薇の下。謀略は、轟く。
夜を煮詰めた――――敢えて形容するなら、そう表する他は無い――――古城。
『竜夜城』に座する薔薇の氏族と言えば、今代に於いて僅かに二柱。
常夜の双竜と謳われる『夜薔薇竜』アルベイル。
『黒薔薇竜』ドライデン=ツヴァイ。そのいずれかである。
「『血竜王』の動きについて、弟から報告があった」
謁見の間の扉を押し開き発された声に。アルベイルは何処か冷めた眼差しを向けた。
それはそうだろう、最早夜明けも近い時間。貴族たるもの、身を休める事も責務の内だ。
そうでなくとも。彼の右目を奪った怨敵――――『血竜王』の話題は、愉快な物でもない。
「……件の、青の聖騎士の調略は順調に進んでいるのだろう?」
「ああ、恐らくは……奴に、自覚は無いがな」
首肯するドライデンに、革張りの眼帯をコツコツと叩いたアルベイルが瞳を細める。
どうにも。彼の片腕は相変わらず“弟に甘い”。人間上がり……直系の血統でも無いだろうに。
「で、あれば問題無い。“影”に探らせた限り、『血竜王』は酷く素行が悪い。
加えてあの制御不能の暴力だ。聖騎士らと利害対立すれば、人間共の方から喜んで首を差し出すだろうよ」
侵略欲、支配欲、権力欲、そういった多くの薔薇の氏族が重視する物が、アルベイルは軒並み薄い。
それでいて、誰より誇り高い吸血鬼で在らんとしているのが彼である事を。ドライデンは知っている。
自ら牙を剥きはせずとも、降り掛かる火の粉は徹して廃するべし。
そんなアルベイルにとって、一方的に奪われただけ。と言う現状は嘗胆の思いそのものだろう。
「アルベイル、俺にとってお前は今でも危なっかしい存在だ」
「……いつまで保護者面をしている、痴れ者め。俺とて永遠に雛竜ではない」
「だとしても……だ。お前の気高さは美点でもあり、同時に足元を掬われかねん弱点でもある」
事実。徒に人を狩るべきでないと言うアルベイルの理念は、『血竜王』の襲撃の前に余りに無力だった。
その場に居合わせなかった無念を、ドライデンはあれ以来忘れた事はない。
「『戦う前に勝つ』事こそが闇の貴族の嗜み――――お前は、俺が護るとも」
「……好きにせよ。奴の首さえ手に入るのであれば、その過程は問わん」
ふ、っと。何処か緩んだ声音で囁く『夜薔薇竜』の声は静かに常闇の中に融け。
陽の射さぬ黒き薔薇の下。謀略は、轟く。