RAYNOLA!! ~EXODUS~

キャラクターノベル制作 真柄 葉納品 2021年02月07日 21時51分39秒

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「みんな、ただいま」
 屋敷の扉をくぐり、メイド達に迎えられたエルゼリオ・レイノーラ。
「はぁ、寒かった。どこか暖炉に火の入ってる部屋はあるかな?」
 エントランスで出迎えたメイドに問いかけると、食堂へどうぞと答えが返ってきた。
「ありがとう」
 エルゼリオは礼を言って、屋敷の中を奥へと進む。

(どうだ?)

 と、頭の中に直接響いてくる姉オリガロッド・レイノーラの声。
(どうだって言われても……特に変わった様子は無いと思うんだけど)
 エルゼリオは屋敷を歩きながら、姉の声に応じた。
(メイドの中に新顔はあったか?)
(え? どうだろう、まだ全員は確認してないけど、今の所居ない様な?)
(そうか。とにかくメイド長に会え。そこで話をするんだ)
(話って、何を話せばいいのさ)
(なんだっていい、趣味の話とか、好きな食べ物の話とか)
(いやいや! なんかお見合いみたいになってるし!?)
(とにかく何でもいいから話をして、違和感を探ってくれ)
(違和感って、道中も聞いたけど本当にいるの? スパイが)
(いた方が楽しいだろ?)
(楽しくないよっ!?)
 思わず表情を崩してすれ違うメイドに変な顔をされた。
(も、もぉ、オリエ姉が変なこと言うから、メイドから不思議がられたじゃないか)
(ははは、諜報員としてはまだまだだな)
(諜報員になった覚えはないけどねっ!)
 そんな事を頭に念じつつ、エルゼリオは食堂のドアをくぐる。
「あたたかいミルクティーをお願いできるかな」
 迎えてくれたメイドに注文し、エルゼリオは暖炉前の特等席に腰かけた。
(エルゼリオ、毒入ってるかもしれないから気を付けろよ)
(ぶっ! ど、毒!?)
(自分にサルベーションかけといたほうがいいな)
(物騒過ぎない、諜報の世界!?)
(楽しいだろ?)
(楽しくないっ!!)
 運ばれてきたミルクティーを引きつる笑顔で受け取りながら、エルゼリオはメイドに問いかける。
「メイド長は今どこにいるかわかる?」
 カップを運んできたメイドに聞くと、私室に控えていると答えてくれた。
 エルゼリオはメイドに礼を言うと、意を決してカップに口を付ける。
「……はぁ、おいしい」
 芯まで冷えた体を内側から温めてくれる優しさに、エルゼリオは先ほどの事も忘れほっと一息ついた。

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「――以上であります、閣下!」
「何度も言うが、閣下と呼ばれるような身ではない」
 はぁ、と溜息をつきながらもシグルド・レイノーラは目の上に乗せていた濡れタオルを取る。
「だが、予想よりも早く終わった。ありがとう」
 しばらくぶりに見る机の上は、書類が積まれているものの綺麗に整えられていた。
 シグルドは女兵士に礼を言うと、椅子に深く座り直した。
「いえ! 私の方こそ機密に当たる文章を拝見できてとても為になりました!」
「為になったか。面白い感想だ」
「そ、そうでしょうか?」
 体を起こしたシグルドの言葉に、女兵士は不思議そうに目をぱちくりする。
「おかげで今日は少し眠れそうだ」
「お休みになられるのですか?」
 ぐっと伸びをするシグルドに、女兵士は問いかけてきた。
「うん? 休めと言ったのはお前だろう」
「そ、そうなのですが……」
「どうした、気になる事があるなら言ってみろ」
「で、では」
 女兵士はビシッと背筋を伸ばすと、机に置かれた数枚の書類の一つを恐る恐る指さした。
「……これがどうした?」
 書類は女兵士の手によって綺麗に分類訳がされている。その中でも、最も数の少ない山を指さされ、シグルドは首を傾げた。
 すると、女兵士は書類の一番上の紙を手に取り、ある一文を指さす。
「この指示書にあります、『馬車を送れ』なのですが……」
「ふむ、それがどうした?」
「これは『馬車で送れ』の間違いではないでしょうか?」
「なに?」
「も、申し訳ございません! 出過ぎた真似をいたしました!」
 声のトーンを下げたシグルドに、女兵士は慌てて書類を机に戻し、腰を90度に折った。
「あ、いや、すまない。お前が悪い訳ではない」
 シグルドは頭を上げようとしない女兵士に謝ると、置かれた書類をじっくりと見つめる。確かにそこには女兵士の言うように、少し歪な指令が記されていた。
「なんだこれは……なぜこんな単純なミスに気付かなかった」
 そう言うとシグルドは女兵士がより分けた書類を掴み取り、他の書類にも目を通していく。
 そして、そのどれもが一文字違いや数字のけた違いなど、至極単純なミスばかりであった。
「お前がこれを分けたのか」
「はっ! 差し出がましい真似をしまして申し訳ありません!」
 シグルドが問いかけると女兵士はようやく顔を上げ答える。
「何を言う。お前のおかげで助かった」
「え……」
「疲れていたのか、こんな初歩的なミスを見落とすなんてな。――いや、言い訳だな」
 自嘲気味に笑うシグルドに、女兵士はどうしていいかわからずおろおろと手を泳がせた。
「ミライア」
「はっ!」
 名を呼ばれ直立不動の姿勢を取った女兵士。
「今からすべての書類の洗い出しを行う。今夜は寝れんぞ。覚悟しろ」
「はっ! ……え?」
「お前はこの山だ。もう一度おかしなミスがないか探ってくれ」
「えっ、あの……私がでありますか?」
「他に誰がいる。いやなら寝ていても構わないぞ」
「い、いえ! 喜んでお手伝いさせていただきます!」
「そうか、ならば頼む。あまり時間がない。早く座れ」
 と、緊張で直立不動を崩せない女兵士に、シグルドは応接用ソファーを指さした。
「そ、そんな! 私は立ったままで――」
「いいから座れ。文字通り腰を据えてやってもらわねばならんからな」
「は、はいっ!」
 どこか不敵にも見えるシグルドの笑みに久しぶりの精気を見て、女兵士は書類を抱え嬉しそうにソファーに陣取った。

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「だ、大丈夫? 顔色が悪いけど……」
 メイド長の私室へと足を運んだエルゼリオは、椅子に座るメイド長の顔を見て驚いた。
「ぼ、坊ちゃま、お帰りなさいませ」
「あ、うん、ただいま。ってそんな事より、横になっていなくて大丈夫?」
「は、はい。大丈夫ですよ」
 にこりと力なく笑うメイド長。いつもの気丈で強い女のイメージはすっかり鳴りを潜めている。
「そう? それならいいんだけど。あ、そうそうボクが留守の間、何か変わったことはなかった?」
「えっ」
 エルゼリオの何気ない言葉に、メイド長は目を見開き驚くと、すっと目を逸らした。
「……やっぱり何かあるんだね」
「……」
 表情を真剣なものへと一変させたエルゼリオに、メイド長は観念したのかチェストの引き出しを指さした。
「メイドの子が見つけたものです。口外はしないように言っています」
「ありがとう、見せてもらうよ」
 エルゼリオはメイド長が指差したチェストの引き出しを開ける。そこには折りたたまれた紙が入っていた。
「読んでも大丈夫?」
 メイド長に確認すると、こくんと頷く。エルゼリオは紙を手に取ると開いてみた。
「――っ!? これって……えぇっ!!」
「私は信じていません。ですが、この字は……」
「ああ、父上の字だ」
 手に持つ紙には、確かに父の字で文字が記されている。
 そして、その内容は――。
「貴族派と通じ、王の弑逆を狙う」
 エルゼリオは姉との連絡も忘れ、しばらくの間、その文章をじっと睨み付けていた。

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(ふーん、なるほどね)
 オリガロッドは屋敷から少し離れた路地に身を潜めていた。
(驚かないの……?)
 頭の中に響く弟の声は、随分と不安に揺れている。
(驚いてるさ。パパが謀反か。いいね、退屈しなさそうだ)
(ちょ、ちょっとオリエ姉!? 本気で言ってるの……?)
(本気だけど? エルゼリオはどうする、もちろんパパについてくるよな?)
(え、ええっ!?)
(なんだ、ついてこないのか。なら、お前とは敵だな)
 頭の中に響く姉の声が殺気を孕む。
(――なーんてな。驚いたか?)
(えぇぇ…………オリエ姉、人が悪すぎない? ちょっと本気にしかけたじゃないか)
(ははは、悪い悪い。まぁ、パパが本気で考えてるならついていくのは嘘じゃないけどな)
(本気で……っていうことは、やっぱりこれの紙に書かれている事は嘘だっていう事?)
(ああ、真っ赤な嘘だろうな。そもそも、パパが謀反を起こして何の得があるんだ)
(え? えっと、もっと高い爵位がもらえるとか?)
(あの人は身分になんてこだわってない)
(じゃ、じゃぁ、単純に王政に不満があるとか……?)
(そんな話聞いたことあるか?)
(うーん……ない)
(だろ? じゃ、ここで問題だ。パパはどうして私達に屋敷に戻るよう仕向けたでしょう)
(え……えっと、スパイがいるから、でしょ?)
(いたか?)
(うっ……今の所見つけられてない)
(じゃ、居ないのかもな)
(えー……じゃ、なんでボクだけ屋敷に戻したのさ)
(何かあった時の為にだ)
(何かって、なにもな――あ)
 無い訳はなかった。あの一枚の紙の存在でレイノーラ邸に破滅の炎が燻っているのだから。
(そういう事だ。屋敷内の掌握は任せたぞ)
(しょ、掌握!? どういう事! 乱暴なのは嫌だよ!?)
(おいおい、使用人達に乱暴したら私が許さないぞ。そうじゃないだろエルゼリオ。お前が掌握するのは、心だ)
(心……)
(あの男爵を説き伏せたお前なら余裕だろ? 使用人達を安心させろ。お前達は何も心配しなくていいってな)
(安心……わかった、ボクで出来るなら)
(優秀な弟を持てて鼻が高いぞ)
 頭の中に響く姉の声は、殊更に嬉しそうだった。

「さて、どの辺りだ」
 弟との念話を切ったオリガロッドは王都の街並みを見渡す。自身が潜む路地はレイノーラ邸から約100m。
「うちが見えて、距離的に――」
 小さく呟きながら街並みを五感のみならずスキルも駆使し探っていく。
「――あそこか」
 そして、オリガロットは一つの建物へ視線を定めた。

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「ふむ、まだ使えそうだな」
「また随分と懐かしい場所に来ましたね。ここで何しようってんですか?」
 とある街から数刻進んだ森の中、古びた山小屋にハスラム・レイノーラ達は訪れていた。
「別になんもしねぇよ」
「はぁ、なんもしねぇんで?」
「したけりゃその辺の森で猪でも追っかけとけ。晩飯にゃちょうどいいだろ」
「まぁ命令でしたらそうしますが……」
「ああ、それと伝書バトを飛ばしておけ」
「伝書バトをですか。どちらへ?」
「屋敷と軍部へ」
「ふむ、文の内容は?」
「いらねぇ。この場所だけ伝えとけ」
「いらないんで?」
「ああ、いらねぇ。何もつけずにただ飛ばせ。そのうち面白いもんが返ってくる」
「まぁお頭がそう言うんなら楽しいんでしょうな」
 部下はハスラムの理解不能な指令にも文句ひとつ言わず従う。何かが起こる楽し気な予感を感じながら――。

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「へぇ、いい部屋じゃないか」

――ガタッ!

「はは、わざわざ顔を隠さなくてもいいさ」
「……」
「どうしてここがわかったかって? 知りたいなら教えてやろう」
 そう言ってオリガロッドは無造作に部屋へと足を踏み入れる。
「おっと、動かない方がいいぞ、シューターさん」
「っ!?」
「わかりやすいな。それでもメドゥの指先の一員か?」
 また一歩近づくオリガロッドに、子爵令嬢は壁際まで後退しナイフを構えた。
「……どこまで知っているの」
「おや、ようやく口をきいてくれる気になったか」
 オリガロッドが初めて聞く女の声。怒り、驚き、恐怖、そして、焦り。様々な感情が読み取れる声に、オリガロッドは不敵な微笑みを返す。
「知ってる事と言えば、あんたがシューターだろうと鎌をかけて正解だったこと。そして、メドゥ絡みだと山を張ってどうやら当たった事までだな、今の所は」
「……」
「なんだ、もうだんまりか? もっと話をしようじゃないか、子爵令嬢さん」
 両手を上にあげたまま、また一歩とオリガロッドは距離を詰めた。
「それ以上、近づくなら容赦しないわ」
 子爵令嬢は構えたナイフにエーテルを注ぎ込む。
「おー、怖い怖い。子爵令嬢の物言いとは思えないな」
「あなたこそ、騎士爵令嬢じゃない」
「おぉ、そうだったな。忘れてた」
 ポンと手を打ったオリガロッドはまた一歩子爵令嬢に近づいた。
「しかし、子爵家がねぇ。あぁ、お嬢様の単独犯行って線もあるか?」
「……」
「なんだよ、まただんまりか。教えてくれてもいいだろう? 同じ貴族令嬢同士じゃないか、仲よくしようぜ」
「野良猫と一緒にしないで頂戴!」
 オリガロッドは既に子爵令嬢の間合いに踏み込んでいた。子爵令嬢はナイフを構え一足飛びにオリガロッドへ迫る。しかし――。

「へぇ、なかなか鍛えてるじゃないかお嬢様。悪くない一撃だ」

 子爵令嬢渾身の一撃は、オリガロッドの手刀によりあっさりと弾き落とされた。
「ぐっ……」
 痺れる腕を押さえ再び窓際へ後退した子爵令嬢。
「さぁ、教えてもらおうか。あんたは何者だ? 後ろになにが居る」
 オリガロッドは落ちたナイフを回収すると、満面の笑みを向けそう言った。

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「閣下! こちらの文言も誤りであると判断いたします!」
「見せろ」
 女兵士から手渡された手配書はやはりミスがある。それも巧妙に隠されたミス。一度発令してしまえば、幾人もの人の口を経る事で完成する類の工作だ。
「単純なミスとは考えにくい」
 シグルドは分けられた書類を机に並べじっと見比べる。輜重手配書、人事書類、訓練指示書、書類の種類は様々だった。
「一体誰の工作だ」
 既に工作であることに疑いはない。しかし、それがどこの手によるものなのかが見えてこない。こういう仕事は妹の領分だなと思いつつも、シグルドはミスの見つかった書類を何度も見比べる。
「どこかに何か共通点があるはずだ……」
 思考の迷宮から逃げる様に、シグルドはふと窓の外を見た。空は随分と明るくなってきた。
「閣下」
 そんな事を考えていたら、女兵士に呼ばれた。
「なんだ」
 もうその呼び方を訂正するのは諦めた。シグルドは真剣みを帯びた女兵士の声に答える。
「この書類を見ていただけますか」
 と、女兵士は一枚の書類を差し出してきた。
「これは……ふむ、移動先の表記ミスか。無駄なう回路を通ってしまっているな。兵糧と労力の無駄だ……まったく、こんな事では士気に関わる」
「はい。それからこちらもご覧ください」
「ふむ……兵糧の仕入れ先か。数量の間違いで一度差し戻しているな。これも時間の無駄だ」
 「それがどうした?」と、シグルドが女兵士を見つめると。
「共通点かどうかはわかりませんが、ここにある指令は全てバルシュミーダ侯爵領を通ります」
「なに……?」
 シグルドは女兵士の言葉に王国内の勢力図を思い浮かべ、指令書の数々と脳内で照らし合わせる。
「……偶然か?」
 導き出された答えは確かに女兵士の言う通りだった。
「バルシュミーダ侯爵……元は帝国からの亡命貴族だったな」
「はっ! 80年ほど前に先々代が亡命したと、拝読した本に書いておりました」
「派閥に属さず中立を表明している貴族家が、何かを企んでいる……?」
「確証はありませんが、指令書の全ては侯爵領を通過する様になっています」
「しかし、侯爵領は広大だ。その領内は主要道を何本も要している」
「なればこそ、う回路としては不適切かと」
「安全な主要道を選択したと考えられるのではないか」
「時間のロスがあまりに大きすぎます。糧食の差し戻し先としても、生産地に向かわず侯爵領へ赴くのは不自然です」
 これは確認の為の問答。
「ミライア」
「はっ!」
「今日はもう寝ろ」
「え……? お、お役に立ちませんでしたでしょうか」
「違う、そうじゃない。明日から――いや、今日からもっと忙しくなる。お前にはまだまだ助けてもらわねばならん」
「はっ!」
 シグルドの言葉に女兵士はぱっと表情を輝かせた。
「ああ、そうだ。それから、お前は今日から私の秘書官だ。――寝る前に、これを人事部へ持っていけ」
 と、シグルドは手早く書類を作成すると女兵士へ手渡した。
「わ、私が秘書官ですか!?」
「不服か?」
「ととと、とんでもありません! 光栄至極です!!」
「そうか、それはよかった。断られたらレイノーラ軍が解体されるところだった」
 平然とそう言ってシグルドは、驚く女兵士に不器用な笑みを向ける。

 そんな時だった、窓をコンコンと鳩の嘴が突いたのは――。

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「こっちが坊ちゃん。こっちが嬢ちゃんでさぁ」
 部下から二つの紙を受け取ったハスラムは、びっしりと記された文字を一読し不敵に微笑んだ。
「あの女が手先だったとはな」
 オリガロッドからの返信は子爵令嬢の事が書かれていた。
「女に甘いのがお頭の唯一の欠点ですからねぇ」
「うるせぇよ」
 呆れるように笑う部下達を横目に、ハスラムは紙に目を戻す。
「シグルドは……まぁ、ほっといても大丈夫だな」
 シグルドからの報告書は几帳面な性格がよく表れている。報告の羅列と共に、最後には「後顧に憂いなし」の一文が添えられていた。
「さて」
 二つの文面に満足したのか、ハスラムはそう呟くとばっと立ち上がった。
「おや、どこかへお出かけですかい?」
「ああ、出かける。手前ェら、準備しやがれ」
 ハスラムの一声に、控える部下達の表情が引き締まる。
「へい、いつでも行けやすぜ。で、どちらへ?」

「バルシュミーダ侯爵領だっ!」

 部下の問いに答えたハスラムは、マントを翻すと不敵な笑みを浮かべ愛馬へと跨った――。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0