秋ばら薫る仮装パーティー!

キャラクターノベル(グループ)制作 白葉うづき納品 2024年12月07日 11時42分46秒

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 青い空、心地よい爽やかな風、そして秋の実りを祝う収穫祭の準備がされた庭園――学園交流部が主催する仮装パーティーは、絶好の晴天に恵まれた。
「皆、準備お疲れ様。そして君たちの準備も万全なようだね」
 何よりだ、と柔らかくシルヴィア・A・カペルが笑う。とうに学園を卒業した身ではあるが、こうして手伝える時は積極的に赴いて力になりにくる。身を包むのは魔女の仮装、青に白銀のレース模様が描かれた三角帽子とローブを身に纏っていた。ちなみに外部からの参加者のために、簡単な仮装道具も皆で用意済みだ。
「シルヴィ姉様素敵ですよー!」
「ええ、とてもよく似合ってると思うわ」
 わさわさとうごめく白い布、ただし布地に可愛らしいリボンがついたお洒落おばけのエフィルミア。そして落ち着いた色合いのドレスに白いエプロンを合わせたエプロンドレスを着たルベア・ベルニが賛辞を贈る。
「ありがとう。エフィは可愛らしいお化けさんだ、ルベアも君の雰囲気に似合っているし、収穫祭にも合っているね。とても素敵だよ」
「ありがとうございますっ! 派手な仮装と迷いましたが、今日は先輩として陰からサポートする黒子です! 白いですけど!」
「ええと……ありがとう」
 胸を張るエフィルミアと照れたようなルベアを微笑ましく見守った後、さて、とシルヴィアが全体に声を掛ける。
「パーティーの前に、皆に紹介したい者がいる。アルド、頼めるか?」
「はい!」
 元気よく進み出たのは、いつもより立派で大きな銀色の耳と尻尾を持ち、同じ色の獣を模した手袋をしたアルド・シャウアー。
「こちら、フェクダ・ドゥーベさんです。先日から学園交流部の一員になりました!」
「新入部員のフェクダと申します。よろしくお願いします」
 アルドの紹介に合わせ、青年――タキシードとマントを身に纏い、付けていた仮面を外したフェクダが一礼する。部員たちから拍手が起こった。
「改めてよろしくね」
 近くに寄るルーンス・ラグネルはすでに知り合いだ。フェクダは緩慢に頷く。
「ありがとうございます、ルーンス。ところで貴方の仮装は?」
「これ? シャルガネの巫女装束を着てみたんだ」
 くるりと一回転してみせると、たっぷりとした緋色の裾と白の袖が回転に合わせてふうわり揺れた。
「にいさまと交流ある郷に巫女さんがいてね、文化を知る上でも面白いかなって」
「とてもお似合いですよ」
「ありがとう。……確認だけどわかって言ってるかな」
「何がでしょうか。ルーンスの華やかな雰囲気に合っていると思います」
 巫女装束は、シャルガネでは女性が着るものらしい。それを知るルーンスが平然としていたのも手伝ってか疑問を持たなかったフェクダにそれを伝えると、ぱちぱち目を瞬かせていた。
「仮装パーティーか、なかなか面白い催しだ」
「レパシュも来てくれて嬉しいよ。君は騎士……おや、アルドとお揃いかな?」
「よくぞ気付いたな」
 ば、とマントを翻して見せるレパシュ・ラフォンの後ろにふわふわの尻尾が見えた。紫ベースのサーコートとマントを身に纏って飾り物の剣を差し、さらにアルドと同じ銀色狼の耳と尻尾も付け、いわゆる狼騎士に扮している。
「俺たちは同じ種族の仲間同士、という設定だ」
「僕が狼になってみたくて……えへへ。レパシュは種族の中でも誇りなんだよ!」
「アルドは参謀ポジションだ」
「君たちは仲が良いな」
「うん! この会が決まった時から相談してて、!」
「むっ」
「ん? ……わっ」
 シルヴィアは首を捻る。二人が自分の背後に視線を向けているのを見て振り向くと――真っ白い布を被った背の高いおばけがいた。驚くアルドとレパシュ、シルヴィアに白布おばけは楽しげにぶんぶん手を振って白布を揺らしている。むふー、と満足した様子の後に声が零れた。
「テリーズ・トラ・トリュース! 大成功! ですね」
「イズレンディルか! これはまんまと驚かされてしまったよ」
 真っ白い布被りおばけに扮してたのはイズレンディル・パラリム。楽しそうな彼に、シルヴィアも思わず声を立てて笑った。普段真面目な者が出す茶目っ気は、常にも増して微笑ましい。
「テリーズ・トラ・トリュース。今日はよろしく頼むよ」
「ええ。お互い、楽しみましょう」
 白布の手と握手していると、部長が庭園に来た生徒たちに声をかけていた。二人は顔を見合わせて頷き、お客様を迎えにいく。収穫祭の始まりだ。

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 仮装パーティーということで、庭園に並べられたテーブルの上にはお菓子や軽食、飲み物が並べられていた。立食形式の気軽な会ではあるが、さまざまな種類が整然と並ぶ姿は壮観に思える。ルベアはテーブルの上に、自分が提供したりんごのフィナンシェを見つけた。オルセン帰りのお土産だから味は保証できるが、まだ始まったばかりで数は減っていない。
(普段と違う学園……ね)
 ぽつぽつと人が多くなっていく会場を見渡す。普段は授業をしたり憩ったりする場で、仮装をした参加者たちが楽しげに、あるいはゆっくりと交流を始めていた。しかも、その中には貴族も平民も混じっているという。
 これは学園が変革してきたからこその変化だ。ただ貴族と異種族が忌避なく話している姿を改めて意識すると、不思議な気持ちになる。
(仮装パーティーだと普段の躊躇する気持ちも薄まる、のかしら)
 異種族に扮した参加者もいることから、貴族と平民、異種族を完全に見分けるのは難しいだろう。そういう場、なのだ。
「テリーズ・トラ・トリュース!」
「あ、……テリーズ・トラ・トリュース」
「失礼、驚かせた」
「ごめんなさい、ぼうっとしていて……」
 声をかけてきたのは狼の騎士。レパシュという貴族の少年だ。ずいぶん年下で、振る舞いはいかにも貴族で、けれど異種族や平民との交流に積極的という稀有な一人。
「レパシュさんは、楽しんでる?」
「ああ、まず仮装するのが初めてで気分が上がる。耳と尻尾を付けているとこのように感じるんだな、自分も視界も新鮮な気持ちを感じるばかりで興味深い」
「そう……よかった」
 ルベアは小さく息を吐く。シルヴィアのように近しい関係ではない、貴族である少年。けれど積極的にパーティーを楽しんでいる姿にほっとした。
「ばぁ!」
「わっ!?」
 ルベアとレパシュが話している傍ら、濃い色彩のばら咲くアーチで声が上がる。おしゃれ白布おばけが、緊張していた新入部員たちの背後に忍び寄り驚かしていた。目をぱちくりさせる少年少女に、エフィルミアはわさわさ手(布)を動かす。
「はじめの一歩が踏み出せないとみましたっ。緊張はわかります、でも喋ってみたら意外とどうにかなりますよ! やらないよりは後悔しませんっ」
「は……はい!」
 目を瞬かせた二人はお互い顔を見合わせた後、勇気を出して自己紹介を始める。それを見守るエフィルミアはうんうんと満足そうに頷いた。ひとつの縁を作れたようだ。
「可愛らしい幽霊さん、お疲れ様のお菓子はいかがかな?」
「シルヴィ姉様! イズレンディルさんも!」
 青と白銀の魔女、そしてその後ろでわさわさと蠢く白布おばけに、同じ白布おばけが駆け寄る。二人はそれぞれトラブルや問題が起きなかいか監督し、今は情報共有のために一旦合流したところだ。ルベアも声を掛ける。
「シルヴィアさんもイズレンディルさんも、見回りお疲れ様ね」
「お疲れ様ですっ! お菓子いいですねー! 皆さんのおすすめはありますか?」
「そうだな……まずこのカップケーキは収穫祭を意識したデザインでとても美味しそうだ、こちらの尻尾を模した可愛らしいクッキーも素晴らしい、ルベアのフィナンシェもいただきたいし、サツマイモのタルトタタンも良い香りだね」
「そちらは俺が持ち込ませていただきました。婚約者が作ってくれたんです」
 フェクダがひょっこり顔を出すと、エフィルミアがおお、と声をもらす。
「それはお熱いですっ!」
「素敵じゃないか、後でぜひいただこう。南瓜クッキーは私が作ったものだから、エフィにも皆にも食べてもらえれば嬉しいよ」
 テーブルの上の食べ物は、お店で買った既製品や有志によって今朝作った手作りも混じっている。シルヴィアもその有志の一人だ。
「全部おすすめする勢いね」
「……そうだね? エフィにはついたくさん勧めたくなってしまう」
 ルベアの指摘にシルヴィアがはっとする傍ら、というかその真っ最中。エフィルミアはおすすめされたお菓子をしゅばばば! と素早く白布の中に引き込んでいく。思わず白布お化けが体を揺らした。
「ふふ。そんなに急がなくても、どなたもお菓子を取りませんよ」
「はっ! ついシーフとしての本領が! でもどれもとっても美味しいですっ、さすがシルヴィ姉様のオススメ!」
「今の一瞬で食べられたの……?」
「素早いね、さすがエフィ。それじゃ私も何かいただこうか」
「こちらはいかがでしょうか。皆さんもよろしければ」
 白布の隙間から小さなバスケットが差し出される。中にはシンプルな木の実のクッキーが入っていて、手に取るだけでふわりと香ばしい木の実の香りに包まれた。
「ありがとう。……うん、美味しい。優しくて、大森林の味覚を楽しめるお菓子だね」
「お口に合ってよかったです」
「美味しい、イズレンディルさんが作ったの?」
 ルベアの問いに、ええ、と白布の中が頷く。
「実家でよく作る、秋の木の実の焼き菓子です。凝ったものではないですが、私の故郷の味ですよ」
「それはぜひいただきませんと!」
「イズレンディルの所は、収穫祭はどう過ごしていたんですか?」
「そうですね、私の故郷では――」

「美味しそうなにおい!」
「私たちもいただきましょう」
 それぞれの収穫祭の話が、お菓子や飲み物と一緒に盛り上がっていく。楽しげな賑わいに惹かれ、他の部員や参加者たちもテーブルに集まってきた。そこからまた話題が広がり、参加者たちも気軽な会話に花を咲かせていく。
 その話の輪の中にはフェクダもいた。異なる文化を持つ人たちの話は興味深いし、自分の持つ世界がより鮮やかに色付くような気さえしてくる。しばらく交流を楽しんだ後、フェクダはトレイにお菓子を乗せてとある姿を探した。やがて見つけたのはアルドと、お茶の準備をしていたルーンス。
「ここにいたんですね、アルド。ルーンスも」
「よかった、探しに行こうと思ってたんだ」
「俺を?」
「うん、ご馳走したいものがあって」
 そう話すルーンスの言葉からは丁寧語が抜けていた。部員同士、あまりかしこまる必要もない。持ち込んだシロップをカップに適量入れ、用意したお湯を注いでいく。
「コーディアルだって、兄ちゃんが作ったの!」
「兄ちゃん?」
「このシロップを作った『ママ』のことだね」
 柔らかで心地の良い香り。出来たコーディアルのお湯割りを二人の前に出した。
「まあ、ママのシロップとして売られてるのは不本意らしいけど」
「想像が付きます」
 小さく笑った後、いただきますとカップに口を付ける。オレンジとレモンジンジャーの香りが爽やかに香り、温かい中に優しい甘さが広がった。
「美味しいですね、フェクダさん」
「ええ、心が安らぎます」
「きっとママも喜んでるんじゃないかな」
 自身もコーディアルを飲みながらルーンスも頷く。フェクダも、トレイに持ってきたお菓子とフォークをそれぞれの前に置いた。
「こちらもどうぞ」
「わ、美味しそう!」
「サツマイモのタルトタタンです」
 婚約者が、と話をするとアルドは目を瞬かせる。
「あまり身近ではない話ですか」
「うん、でも、それが普通なんだよね。あ、いただきます! ……おいしい!」
「よかった」
 美味しそうに頬張るアルドを見守りながら、のんびりと会話が続く。巫女の仮装はアルドも興味を引かれたようで、フェクダと一緒に質問を重ねながら瞳をきらきらと輝かせていた。
「フェクダさんの仮装は、仮面の人?」
「怪盗紳士らしいです。何も盗んでませんでしたが」
「盗んだんじゃない? 一番大切なもの(お姫様)をさ」
 ルーンスの言葉にしばし考えた後、そうですねと楽しそうに笑う。
「収穫祭ってどうだったの?」
「俺の領では、野菜料理コンテストなどをやっていましたね。街はもちろん、他の領からも人が集まってきて、とても賑やかになるんです。この季節は好きですね」
「へえ、確か農産物も有名だったよね? 地産地消で、自領の野菜の宣伝にもなるから悪くない」
「とっても楽しそう! それにそっかぁ、ルーンスさんすごいね……!」
「商売人は相手を知って敬意を払ってこそ、だからね。まあ、それ以上に土地に紐づいた文化や物語を知るのは楽しいよ」
 国や街を回ると、時々想像を超えた風習や思いもよらない考え方に出会うこともある。それもまた商人の楽しみ方かもしれない。
「アルドはどんな収穫祭を?」
「えっと……帝国の家の話、野菜で作った飾りで家の玄関を飾るんだ。この家ではこの野菜がおすすめだよって目印で、土地の神様のお供え物でもあるんだよ」
「面白いですね」
「神様って、地神様?」
「たぶん……? ごめんね、その頃のことよく覚えてなくて……あ、お母さんの作るミートパイが大好きだったよ! 野菜もたっぷり入ってた!」
 彼の中の思い出話を、フェクダとルーンスは楽しげに聞いていく。
 収穫祭であり仮装パーティーでもある場は、部員だけでなく一般の学生たちもちらほら参加していた。それぞれがそれぞれのやり方でパーティーに参加し、人と人との架け橋にもなっていく。
「冒険の話……いいわ、面白かったらいいのだけど。……ごめんなさいちょっと待って……大丈夫? 良かったら一緒に話しましょう」
「あ、ありがとう……!」
「ばぁっ! 好きなお菓子を言ったら退散するおばけさんですよー!」
「好きな菓子……!?」
 ルベアは会話をしながら、輪に入れない異種族の生徒を見つけるたびに気に掛けていた。エフィルミアは会場を回っては、自分の仮装や技術を使って積極的に話題を提供していく。
(私も頑張らなくては!)
 そんな頼もしい後輩たちを見ながら、イズレンディルは白布を被ったままいそいそと会場を回る。少しでも話の、種族や身分という垣根から、ちょっとだけ顔を出すきっかけになれれば嬉しい。日が傾いてくる頃には『陽気なのっぽのおばけさん』として手を振られたり群がられたりと、すっかりマスコットキャラクターのようになっていた。

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 ぽわ、ぽわ。それぞれのテーブルに置かれたランプに、ひとつ、またひとつと光が灯されていく。秋風が長く伸びた木の影を揺らし始めた頃、シルヴィアはレパシュに声を掛け、庭園内のスペースに向かった。シルヴィアの手にはフィドル、レパシュの手にはフルートがある。
「今にぴったりの曲を奏でようか」
「好きに弾いていい、何でも合わせる」
「ふふ、楽しみだ」
 構えた二人の指先からメロディーが流れ始める。あたたかく弾むようで、どこか真摯で、けれど泣きたくなるほど優しい。レパシュに主導権を任せれば、勇ましくも繊細な音が庭園を包んだ。観客となったパーティー参加者は耳を澄ませていた。
「良い腕だな」
「君も素晴らしい。ここだけでなく、他の場でもまた合わせたいね」
「機会を作ろう」
 一曲が終わり、拍手の中にルーンスが現れる。用意されていたクラヴィコードの前に座り、今度はトリオセッションが始まった。リードするルーンスの音はゆっくりと柔らかで、穏やかだ。
「ルーンスの音も素敵だ」
「良い音だな」
「お褒めに預かり光栄、ってね」
 沈みゆく太陽、キャンドルの優しい光、落ち着いた時間がしばし流れていく。
「一緒にお菓子配りをしてくださり、ありがとうございます、アルドさん」
「ううん、お菓子、美味しいのに残ったらもったいないから」
 二人はバスケットにお菓子を入れて配り歩いていた。手作りのものもあるので、出来るだけ今日中に味わってもらいたい。アルドはイズレンディルの真似をして、白布狼おばけになっていた。
「お手伝いとお話、したかったんです」
 首を僅かに傾げる青年に、白布から顔を出したアルドは照れくさそうに笑う。それを見て、イズレンディルも柔らかく微笑んだ。
「素敵な音楽、もっと近くで聞きに行きましょう!」
「はい!」

「いい曲ですねーっ」
 白布を揺らしながらエフィルミア自身も音に乗る。仮装衣装と一緒に簡単な楽器も用意されているから、後で参加してもいいかもしれない。
「あの、初めまして!」
 かかった声に振り返ると、見るからに下級生である狐のハーフビーストの女の子がエフィルミアを見ていた。それも目を輝かせて。
「その、わたし、おばけさんとお話ししたくて……!」
「……えっ?! 私ですか!」
 ルナリーと名乗った彼女は、本当にお化けみたいに消えては現れるエフィルミア(気配を消しては潜んで驚かせ回っていたのです!)を見掛け、興味津々で追いかけていたそうだ。けれどどう話しかけていいか迷っていたらしい。
「でも、このままじゃだめだって思って……」
「それじゃ、さらなる一歩を踏み出しましょう!」
 そう言ってエフィルミアは手を差し出す。嬉しそうな少女の手を握り、二人で庭のステージへと急いだ。
 庭の一角は楽器を持った者が加わり、ちょっとした演奏会の規模になっていた。生徒たちも聞いているだけでなく、手拍子や体を揺らして参加している。もちろん、貴族も、異種族も、平民も一緒に。これこそ望んでいた景色にも思えた。
(表情や所作が見えづらいからこそ、かもしれないな)
 フィドルを奏でながらシルヴィアは思う。夕暮れともなると、僅かに離れるだけで細かな判別は付きづらくなる。そんな状況、また皆が集まったイベントだからこそ気分が高揚し、新たな縁が生まれるきっかけともなる。
(貴族生徒も一般生徒も、互いに力を抜いて楽しんでくれれば幸いだ)
「あ、フェクダさん」
 体を揺らしていたアルドは、歩いてくるフェクダに手を振る。
「本当に色んな種族や身分がいて、色々な考え方やその背景も異なりますね。勉強になる」
「すごく刺激を貰えるよね」
「アルド、君に兄弟はいますか?」
「え?」
 アルドがフェクダを見ると、いささか緊張しているように見えた。ひとつ息を吐き、改めて向かい合う。
「先日話した兄姉制度……俺は、君と結びたいと思っています」
 誠実で優しい少年は、驚きで目をまん丸くする。それから、柔らかく笑って手を差し出した。

「素晴らしい演奏でした。衣装も、演奏も、このパーティーも……華やかで素敵です」
「ありがとう。この光景が生まれたのも皆のおかげだ」
 拍手を送るイズレンディルに、シルヴィアは一礼して笑顔で応える。
「ええ、本当に頼もしい。こうして見守ることが出来るのも役得でしょうか」
「ふふ、そうだね」
 二人が話す傍ら、ルーンスは生徒たちに囲まれていた。演奏を終えた労いの声もあるが、大部分はルーンスの持ち込んだコーディアルについて話が聞きたいらしい。
「ブレンドは企業秘密。でも、個人で欲しい人に融通は利かせられるかもしれないかな」
 ルーンスが商人としての経験を活かしたトークを展開する中、二つの白布が庭園を横切っていく。エフィルミアとルナリーだ。
「お菓子をいただく時は素早く! 華麗に!」
「は、はい!」
 どうやらエフィルミアの言動を真似しているらしい。楽しげな白布を見送るルベアはひとつ息を吐く。そろそろ時間だ。たくさん笑顔も見られた、良いパーティーだったと思う。
「ルベア」
「レパシュさん。演奏聴いていたわ、お疲れ様。交流も出来たかしら」
「ああ、実りのある時間だった」
 狼騎士の少年を労わると、じっと見つめられる。
「よければ、俺は貴方とも交流を深めたい」
「え?」
「貴方のことがまだわかっていないんだ。よかったらだが」
 いきなりの言葉に驚いていると、ふとテーブルが目に入る。持ってきたりんごのフィナンシェは、ほとんど残っていなかった。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0