【息抜】二足の草鞋

四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)The 4th Stage Cafe制作 龍川 那月納品 2024年04月02日 11時36分22秒

 うさぎ大王が降ってくることをきっかけに始まった「おもてなしバトル」に沸くコンセプトカフェ業界に従事するキャストたちは日々、給仕にパフォーマンスに精を出している。
 今日はそんな彼らの休日を覗いてみよう。

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「次の方どうぞ」
 ディレイン・オールドケイジの声に、老人が部屋に入って来た。
「若先生の嫁はまだか? 店に来てる客でいい人がいなけりゃ、うちの孫とかどうだい?」
「そういうのは相手の意思もないとねぇ。はい、胸見るから服めくって」
 聴診器で肺の音を聞くと少し喘鳴が聞こえる。
「最近煙草増えてるでしょ?」
「少しだけ、少しだけだよ」
「控えてって言ったよね。奥さんにも言っておくよ」
「そりゃないよ。若先生。なあ、先生からもなんか言ってくれ」
 隣で診療の様子を見ていた養父に老人が縋る様な視線を向ける。
「こればっかりはディレインが正しいからですからね」
「長生きして欲しいからね。はい、お大事に」
 ディレインの生家は開業医だ。
 その跡を継ごうと思っているディレインも医師免許を持っており、Middle Aged Starsという名のコンセプトカフェでアイドル活動をする傍ら、こうして休みの日には診療を手伝っている。
「次の人どうぞ」
 次に入って来たのは若い母親に抱えられた幼子。
「昨日の夜から熱が下がらなく……あっ……!」
 ディレインの顔を見て驚いた顔をした母親の顔を彼は知っている。
 最近店に来ている新規客だ。
「あ、あの……!」
 何か言おうとする母親の目を真っすぐ見て、ディレインは人差し指をそっと口元に沿える。
「しーっ」
 悪戯っ子のように笑えば、母親はこくこくと頷いた。
「うん、ちょっと見てみようか」

「今日のお昼は何?」
 午前の診療を終え、奥のダイニングに行くといい匂いで満たされていた。
「今日はディレインの好きなお肉が安かったの」
 養母が微笑みながら、3人分の食事を運んでくる。
「カフェでも色々食べるけど、お袋の料理が一番うまいよ」
「母さんの料理は世界一だからな」
「もう、二人とも。お世辞言っても何も出ないわよ?」
 談笑と共に食事は進んでいく。
 仕事の日はアイドル。
 休みの日は医者。
 忙しくはあるが、ディレインはこの生活を大変だと思ったことはない。
 形こそ違うが誰かを救う日々が、そして穏やかで温かな養父母との時間がずっと続けばいいとディレインは心から思いながら、食後のお茶をすするのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0