【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか

ウォレス・アルヴァローエン
ライゼンナクト卿。冗談ではなく、今後の立ち回り次第では、多くの王国貴族にとってこれが末の代となりかねません。レイウェスト皇子の素性が混血だと知れば、我ら王党派ですら血の気の多い愚か者が騒ぎましょう。さりとて、派閥を引き締めるにも限度があります。
ダミアン・ライゼンナクト
この機にウィリアム殿下の臣籍降下と新たな派閥形成を切り出されては、屋台骨から揺らがざるを得ませんな。先日、バデーニ公爵からはそれとなく派閥辞去の挨拶を受けたが、時勢が読めるものならば当然の動き。もはや止める気にもならぬ。
ウォレス・アルヴァローエン
家格で匹敵し第一夫人の座を争いうるのは、派閥統領としての立場を捨てようがない私達くらいです。確かに勝てる筋ではありますが、バデーニ公爵にしては思い切ったことを。……いえ、彼が考えついた事ではありますまい。絵図を描いたのは王家でしょうね。
ダミアン・ライゼンナクト
ふん、貴殿の下でも、年頃の娘のいる貴族は色めき立っておりましょうな。
ウォレス・アルヴァローエン
新たな派閥は、【集権派】と名付けられるそうですよ。後の歴史では、私達は時流を読み切れなかった愚か者とされるのでしょうね。
ダミアン・ライゼンナクト
今更、派閥を捨てて王家に擦り寄るような見苦しい真似も出来ぬ。我らは黒鋼竜なれば、最後まで竜らしくあらねばなるまい。どうやら、貴殿と道を共に出来るのはここまでのようです。
ウォレス・アルヴァローエン
……わかりました。後のことは、どうぞご心配なく。
レイウェストとメアリー王女の婚約に反対する貴族派に対し、王家はウィリアム第二王子の臣籍降下の動きで対抗。王国内部の対立は急速に深まっていく
(7月25日より 【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか 連動シナリオリリース予定!)
assignment【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか 概要
「【呑竜】眠れる竜は王国を呑むか」は、レイウェスト皇子とメアリー王女の婚約が進む中、ヒューマン至上主義という旧来の価値観からくる内部対立に揺れるリーンエス王国を扱います。
assignmentここまでの流れ
アシムベートがレイウェスト皇子の実父であるという知らせが大陸中を駆け回り、それでも王家はメアリー王女との婚約を進めていく。反感を露わにする貴族に対し、王家はウィリアム第二王子の臣籍降下を発表し、第三派閥の形勢を匂わせた。強硬な姿勢を固める貴族派末端の動きを受け、一時の協調を見せていた二大公爵家は再び道を分かつ事となった。
person_pin関連NPC
亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われていたが、実際はリザードマンの大酋長アシムベートとイダの間の息子であった。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、帝国復興のために周囲の協力を得ながら奮闘していた。ヴィント奪還作戦に於いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。
《本連動での動き》
アシムベート・グリオウにより自身も知らぬ出生の秘密を明かされ、動揺しつつもメアリー王女の身を案じている。
ウィリアム・リーンエス王子の妹にあたるリーンエス王国第一王女。人形のように可憐な容姿からは想像もつかない行動力と気の強さで、周囲を驚かせることもある。現王家唯一の王女であり、国王や王太子、ウィリアム王子の寵愛を一身に受ける影の女王。
《本連動での動き》
レイウェストとの婚約の儀を王都で挙行することを宣言し、ヒューマン至上主義者の憎悪を一身に集めている。
リーンエス王国の第二王子。文武ともに優れた才能を有した《授恵者》であるが、王族らしからぬ軽薄さ故に近親以外の王族からは見下され、対立する貴族からも「毀れ者(こぼれもの)」と揶揄されている。王国の代表として冒険者ギルド本部のあるリブラネスタに派遣されているが、本人はこれ幸いと市井を味わい、自らも依頼をこなす日々であるだとか。
《本連動での動き》
国策により、長きにわたる放蕩生活に終止符を打つこととなる。正妻、側妻、愛妾の区別はあれども広い階層から複数の妻を娶る可能性もあり、王国内では玉の輿狙いの女性がざわついているようだ。
貴族派貴族バデーニ公爵家の長女。バデーニ家は始まりの百家ではなく、領地の規模も侯爵並であるが数代前の語られぬ功績により公爵となった。辺境伯や公爵と渡り合うには厳しい身代であるものの、無難に領地運営をこなし敵を作らず今代まで長らえている。なお、当人の体格はぽっちゃりしており、気にはしているがダイエットが苦手である。
《本連動での動き》
エルヴィラの婿は次期公爵となることがほぼ確実であったため、ウィリアムの臣籍降下に際して名乗りをあげた。婚姻の暁にはウィリアムが公爵となり、現公爵は引退する事を宣言している。
リーンエス王国二大公爵家の一つ、貴族派の筆頭である『黒鋼竜』ライゼンナクト家の当主。貴族原理主義的思想に染まった、王権を拒む貴族たちのとりまとめ役である。あくまで王家の臣下を演じつつ、自らの権利を守ろうとする穏健派と、王家を廃しいずれは自らが王権を奪おうと画策する過激派が入り混じっていた貴族派の手綱を取りきれず、反乱を起こして鎮圧される高位貴族が複数出るなど、ここ数年に派閥は急速に弱体化を進めた。
《本連動での動き》
王家の中央集権化の動きは理解しており、そこに至るまでの影響力争いで王家に後れを取った敗者であると自認する。一部貴族派の過激な発言に呼応する動きを見せているらしい。
リーンエス王国二大公爵家の一つ、王党派の筆頭である『白薔薇』アルヴァローエン家の当主。臣下としての貴族の役割に徹する貴族たちのとりまとめ役である。中央集権を進める王家のもとにあって王党派貴族に既得権益の全てを奉還する程の覚悟は無い。忠誠と引き換えに、なんとか自分たちの地位と権利を残すべく王家へ働きかけてきた派閥である。
《本連動での動き》
より王家の希望に近い第三派閥の成立を、そこに加わることこそが唯一未来があると看破するもののここまでの王党派筆頭としての立場からそうは動けない。
menu_book関連用語・情報
ウィリアムの創る第三派閥【集権派】
王家への中央集権体制の確立を進めたい王家は、権益の拡大を狙う貴族派でも権益の維持を願う王党派でもなく、時が来れば全ての権利を王家へ奉還する事を約した【集権派】を設立する。失う権利のない法衣貴族はともかく、領地貴族の多くにとってその公約に益はなく、彼らの誇りも傷つける選択だ。しかし、そこに早く参画することで領主権は無理でも未来の有力家系としての影響力を保持するべく、既存派閥から集権派へ鞍替えを考える目聡い者もいる。その多くはウィリアムの元へ奥方を送り込む事を画策しているようだ。
王家の中央集権化の動きと、それに伴う貴族の動きについては詳しくはこちら。
龍脈即時通信装置『龍逓架』
崩壊前のシルトラース帝国が実用段階直前にまで開発を進めていた通信装置で、帝国内主要都市の魔導院に設置されていた。龍脈を利用した遠隔地同士の即時通信装置であり、リーンエス王国との決戦に備えて設計された。この龍逓架が発する魔法的な信号が龍脈を通じて帝都の幽界樹に感知され、帝国内の各都市に幽界分樹を呼び寄せたと推測されている。その推測は【泥乱】における帝国近衛連隊の行動により実証された。
また、メドゥの指先が一つを確保していたが、それを元に新たに量産している可能性がある。
龍脈
ロスガリア大陸の地下深くを流れるエーテル地脈。エーテル浄化者はここに働きかけてエーテル浄化儀式を行っている。
幽界分樹
帝都シルトラースに聳える幽界樹を「本体」と見做した場合の、帝国内主要都市に出現した幽界樹の「分樹」。ただし幽界樹については未だ不明点が多く、帝都に出現した幽界樹が本体であるか、それとも地中やアストラル界などに真の「本体」が存在するのかは判明していない。
レイウェスト皇子が皇帝ヨゼフの実子ではなく、リザードマンの大酋長アシムベート・グリオウとイダ・バルダス皇女の間に生まれた子であるという情報は、様々なルートで各国の知る所となった。王国の諜報を担うメアリー王女の耳へと、その知らせを真っ先に届けたのは王家の密偵、ではない。
「これは戦いに向かう直前に書かれた書簡ですが……、慌ただしく決断するのは、レイウェストらしくはありませんわね」
「ふむ。僕には分からないけれど、婚約者のメアリーがそう言うのならば、きっとそうなのだろうね」
「お兄様の方がレイウェストの事はよく知っているでしょうに……」
帝国を背負うあの少年は愚かではない。このような話を王国に黙っている不利益を鑑みて、自ら書簡を送るという結論に達するのは当然だ。しかし、一人で悩んだのであれば同じ結論に達するにせよ、もう少し時間が掛かったであろう。おそらく周囲に相談したのだろうとメアリーは推測し、彼の親しい者の中に冷静な判断を下せる者がいたことに安堵した。
「でも、可愛い妹を取られた兄としては、『リザードマンとのハーフだと分かったが婚約は続けたい。愛しているんだ!』というような熱烈なラブレターを見せられても反応に困るんだけど?」
「そんな文面ではありませんわ。つまらない揶揄いは止めてくださいませ」
「まあ、細かい事はさておき。国としては彼が望もうが望むまいがこの婚約を取りやめる選択はないだろうね。……これは兄としてここだけの話で聞きたいのだけれど、君にはその事への抵抗は全くないのかい?」
「いえ。特に気にしてはおりませんわ。王国へ婿に迎えるならともかく、わたくしが嫁入りする側ですもの。これもここだけの話ですが、いざというときに備えてリザードマンの生態などを学習しておく必要はあるとは思っておりますわ。乳母を選ぶにしても、どうしたらよいのか困りそうですもの」
「おや、困ったな。妹の物わかりが良すぎて兄として葛藤する隙が無い……」
王国はヒューマン至上主義が常識であり貴族なればさらに甚だしい。代々の王家とて本来はそうであった。しかし、現国王は異種族にも寛容な姿勢を示しており、王妃や王太子も同様である。その両親や兄を見て育ったウィリアムやメアリーも、王国にあっては異常なほどに異種族への差別意識がない。異種族を含む多くの冒険者や市井の人々と関わってきた立場であることも関係しているだろう。とはいえ、結婚して子を産むとなれば話は変わるかもしれないと、念のために切り出してみたウィリアムが拍子抜けするほどに、メアリーはレイウェストの素性を気にしていなかった。
「まあ、悩みがないなら良いか。で、その手紙をどうするんだって?」
「この件を帝国から速やかに知らされたと言うことその物が武器になりますわね。王家が独自に知るよりも早く彼の側から申し出ていた。そういう形式があれば、表だっては誰も文句をつけられませんもの」
実質的に一度滅亡した帝国を守っているのは、関係諸国の持つ理性に過ぎない。もしも、最初の多国籍会議で『帝国という国家は既に存在しない』と定義されていれば、旧帝国領土は野心的な王国貴族の狩り場となっていたはずだ。その力関係は、ある程度復興が進んだ現在でも変わらない。経済的にも軍事的にも、今のレイウェストには王国の上位貴族程度の力しか無いのだ。帝国にかつての人口と国力が回復するには数世代は必要となろう。
「なるほど。レイウェスト側の不義理を責める隙を無くした、ということか。……正攻法で美味しい所へ食いつけなくなった連中が何をするか分からない。これからは、これまで以上に身の回りには気をつけるんだよ」
「あら、お兄様こそ。これからはこれまでのように気軽に遊び歩けなくなったのではありません?」
「そうだね。臣籍降下でどこかの貴族家の領主となる所までは生まれたときから決まっていたようなものだけれど、取り潰された侯爵家の領地がついてくるのは想定していなかった。人の手配から始めないといけないから忙しい」
「そういう話ではなく、女性との関係についてですわ」
「ぐ……。まあ、そちらもそうであると認めないわけにはいかない、かな」
●
もともと第二王子 であったウィリアムは、王太子に複数の子が生まれた時点で王族を離れる事が既定路線であった。取り得る道筋は新規に公爵家を立てるか、既存の高位貴族に婿入りするかのいずれかになる。王家の根回しもあり、ウィリアムの婿入り先として貴族派のバデーニ公爵家が手を挙げる事となったのはつい先日の事だ。もともとのバデーニ家は公爵家としては小領であったが、近年に不祥事により取り潰された侯爵家の旧領を領地に加えたことで王子の臣籍降下に相応しい大領の主となる。さらに、今回に関してはウィリアムが既存の貴族派閥に属するのではなく、自らが統領となって派閥を結成する意向を示したために、多くの王国貴族が混乱と戸惑いの中にあった。
「バデーニ公爵家への婿入りのお話はともかく、【集権派】の発表まで早めたのは、わたくしとレイウェストの為の煙幕ですわね?」
「まあね。もちろん僕だけで決めたわけじゃない。父上や兄上、母上も同意の上だよ」
【貴族派】でも【王党派】でもない第三の派閥として、リーンエス王国の中央集権化を進めようという王家の意向を押し出すのが【集権派】だ。法衣貴族はともかく、領地持ちの貴族にとって望ましくない方針ではある。普段は争っている貴族派と王党派も、王家の力を強めすぎる中央集権化には様々な形で反対し、あるいは骨抜きにしてきた。だが、貴族派の大貴族の相次ぐ失墜により王家と貴族の力関係は大きくバランスを崩している。【集権派】が産声を上げたばかりの今ならば、利を見るに聡い貴族は既存の枠組みにとらわれるよりも、王家に協力して将来の権益を確保する方に切り替えるであろう。
「……道を簡単に改められない貴族達は、どう動くか分かりませんわ」
「いや、どう動くのかはわかりやすいんじゃないかな。いつ動くのか、どのように動くのか、誰が動くのかはわかりにくいけれど」
「お兄様は、ご自身の身柄が狙われる程度の事と考えているのでしょうけれど、愚かな方は何をするか分かりません。正妻となさるバデーニ公爵のご令嬢の身も危険に晒されるでしょう」
「エルヴィラはそれくらいは理解しているさ。あの子は賢い子だからね」
ウィリアムの臣籍降下の発表と共に、エルヴィラ・バデーニ公爵令嬢との婚約も内示された。現時点では単なる婚約予定の開示であるが、バデーニ公爵家へ婿入りする以上、彼女が正妻となるのは既定路線だ。身の程を知る令嬢達の間で、第二夫人、第三夫人の座を巡っての暗闘が始まるであろう。
●
「できれば、僕やエルヴィラ、メアリーの身辺が騒がしい程度で済めばいいのだけれど。やけになった愚か者は、盤面そのものをひっくり返そうとするかもしれない。メドゥの指先と手を組むとか、ね」
冗談めかして言うウィリアムだが、ここ数年に起きた大貴族の反乱の背後にはメドゥの指先の影があった。王都で政務に携わっていたゴルティエ元侯爵が長年人身売買に手を染めていたのも、メドゥの指先の繋がりだったらしい。王国貴族のうちどれだけが、彼らに取り込まれているのか見当もつかないのが現状だ。手段を選ばぬ愚か者が手段を選ばぬテロリストと手を組む可能性を踏まえれば、予想される最悪のケースに備える必要がある。
「帝国近衛隊はディズル大湿地帯で『龍逓架』を用いて幽界樹を呼び出したというけれどね。メドゥの指先の手にはその『幽界樹どこでも呼び出し爆弾』が果たしていったい幾つあるのかな。メアリーは推測できるかい?」
「彼らが独自で製造を可能としていても不思議ではありませんものね……。手間や特別な材料などもあるでしょうから無限にとはいかないでしょうけれど、無視できない程度の数はあると思いますわ」
個数を断定するには情報が少ない。幽界樹の特徴を考えれば、出現して脅威となるのは人口の多い都市部となろう。餌のない場所に生えた個体ならば、倒す手段も存在する現状ではそこまでの脅威ではない。各地の検問を厳重とし、移動中の『龍逓架』を発見する事に注力する必要があるだろう。
「メドゥの指先と言えば、右腕と名乗った吸血鬼の事も気になるな。僕を狙っているのかと思えば、まだ余力はあっただろうにあっさりと引いた」
「王城に攻め入ってきた吸血鬼は、わたくしや父上たち王族よりも中庭の剣を狙っていたように見えましたわね」
中庭にある『聖剣』は、それによって砂漠だった王国が豊かな大地に変わったとも、竜喰らいを封じているとも王家に伝えられているが、明確な記録があるわけでも無い。建国当時から刺さっている、とは言われ、抜ければ“災厄”が王国を襲うという話もある古い代物ではあった。
「メドゥの右腕とあの剣、あるいは王家に何かの因縁があるのかもしれないけれど。王家関係で吸血鬼が出てくるような逸話は聞いた事が無いな……」
レイウェストとメアリーの婚約を潰そうという動きと、ウィリアムの新公爵家と婚約を巡る暗闘。そこにメドゥの指先の介入が加われば、『幽界樹』を用いたテロ行為が行われる可能性もある。王国が混乱すれば、メドゥの右腕と名乗る吸血鬼も動き出す可能性は高い。指折り数えて整理すれば、メアリーならずともため息の一つも出ようというものだ。
「そういえば、ライゼンナクト公爵家にも何やら動きがあるようですわ。ダミアン公は時勢を見極められぬような方では無いでしょうが……」
「優秀だからこそ、何をしでかすかわからない。人間はそう単純ではないからね。お互い、身辺にはくれぐれも気をつけるとしようか」
「はい。お兄様も、どうかご無事で」
王家の兄妹は、言葉を交わし、それぞれの道を歩き始めた。それが今生の別れの言葉となるかどうか、今は誰も知らない。
執筆:アルパカコネクト運営