往復書簡


学園内では婚約者同士とはいえもう少し紳士淑女らしい距離を保つように、と窘められてしまった春。
人目を気にせず言葉を交わすにはどうしたら良いか。
そんな悩みを解決する為に始めた、短い手紙のやり取り。
2022年05月14日 19時10分47秒 |24

2022年05月14日 19時35分20秒
(ジャスミンの香が焚きしめられた便箋に、深緑のインクで書かれた流麗な文字)

新入生の遠足に同伴したんだって?
ミレイユが喜んでいたのは良いけれど、他の新入生にも随分と熱を上げさせたらしいじゃないか。
『買い物』は結構だけど、数や質はちゃんと吟味した方が良いと思うよ。傍に置きたいなら余計にね。

2022年05月14日 23時49分24秒
(白い便箋に淡紫色のスミレを添えて。文章も揃えた紫色で綴られている)

折角楽しみにしていたのに随分とまあご機嫌ナナメじゃないか。
遠足では上級生として当然のことをした結果で懐かれたにすぎないし、
すぐに冷めるようなものを熱心に買い集めるつもりもないとでも言っておこうか。
……それに、そう示すまでもなく僕の隣は売約済みだと思っていたのだけれど。

2022年05月15日 09時16分21秒


……それはそうだけれど。
予約済の札が目に入らず手を出す輩や、気づいていてわざと手を出す輩もいるじゃないか。
綺麗で甘い香りの花は、花自体に責がなくとも虫が寄って来るんだから。
ずっと目と手の届く所に置いておけないのは、もどかしい。

(少し膨らみのある淡いクリーム色の封筒におさめられていたのは橙と赤が混じったような色合いのインクで書かれた手紙、そして乾燥させたマリーゴールド……カレンデュラの花弁が入ったハーブティーのティーバッグ)

2022年05月15日 23時41分14秒
嬉々として花に寄っていく君が言うとさすがに説得力があるな。
先日の花宿でもあそこまでやる必要があったかどうか。
……叶うなら。ずっと手中に収めて置きたいと思うのは何も君だけじゃない。

(薔薇の香を焚きしめた黄色の便箋に、少し強めに書かれたと思しき筆跡。
最後の1文からは、逡巡の後に書き足されたが故の筆圧の違いが見て取れるかもしれない)

2022年05月16日 19時32分53秒
(ピンクの薔薇が一輪添えられた白い封筒。
淡い薔薇の香を焚きしめた薄紅色の便箋に、宥めるような柔らかい筆跡で書かれている)

すまないね。
手を抜くのは慣れていたはずだったんだけれど、最近は下手に手を抜くわけにはいかなくなったから。
仕事だと思うと、ついやり過ぎちゃって。

君がそう願うなら、魔法の呪文を一言唱えれば良い。
俺に聞こえる様にね。

2022年05月17日 12時37分40秒
(ワンポイントに小鳥が描かれたオフホワイトのレターセット。インクの色は薄紅色。
蜜色と緑色の細いリボンで括られた2本の白薔薇が添えられている)

……本当にずるいやつ。
「仕事」という言葉を出しておきながら、それでも僕に君を乞えと言う。

それに。呪文というならそれを口にすべきは魔法を得手とする君の方だろう。
僕が疑う余地もないくらい、そのよく回る口で囀ればいい。

2022年05月18日 07時12分52秒
ずるいのはお互い様だろう?

お望みとあらば幾らでも囀ろう。
むしろこれ迄も春先の小鳥かと思うような有様だったと思うけれどね。

それでも足りないというなら、雨のように降らせようか。
俺が思いつく限りの呪文全てを。
もう良いと言われも止めてあげないけれど。

(小さな薄紅色の薄布の包みに添えられた手紙は純白に金の縁どりがされた便箋に、緑の文字が歌うように踊り。
包みの中には両の掌に乗るサイズの毛足の長い仔猫のぬいぐるみ。首元には白薔薇を括っていた密色と緑色のリボンが結ばれ、花水木の花が飾られている)

2022年05月19日 00時32分32秒
お互い様? 君に敵うほど狡いやつなどいるものか。
そもそも僕にとっては身に覚えの欠片もない戯言でしかないし。

先の手紙もそう、
どうしてああも恥ずかしい言葉ばかりを並べ立てておいて
可愛いぬいぐるみを添えて送ってこられるんだ。
ご機嫌取りのつもりだったのなら逆効果だし、
僕は今どうやって君の唇に封をしてやろかと考えてばかりいる。

……ぬいぐるみに罪はないから礼は言うし、粗雑に扱かったりはしないけれど。
(白・桃・紫の芍薬をまとめたミニブーケと共に届けられる封筒。
先と同じオフホワイトの便箋に薄紅色のインクでやや力強く綴らている。)

2022年05月20日 17時11分42秒
(いつかと同じジャスミンの香りがする便箋に、緑のインクで綴られた手紙。流麗だが、どこか揶揄うような筆致)

おや、自覚がないとは。
それは随分と危ういね。
心配でますます目が離せなくなる。
ああ、そうだ。
俺の口に封をするのに丁度良いものを君は持っているじゃないか。
もっとも、今の君には出来ないと思うけれど。
悔しかったら、俺が贈った手元のぬいぐるみか手紙で練習しておくことだ。
……それ以外の練習相手は認めないよ?

2022年05月21日 00時26分40秒
(金縁の便箋に紅色のインク。
負けん気の滲む強気な薔薇の香)

そうだね、『今は』できないとも。
誰だって愛しの婚約者殿に『口吻のひとつもリードできない男』だという泥は塗りたくはないさ。

……それに。
僕が慣れた様子だった時に、泣く羽目になるのは君の方だと思うけどね。

2022年05月22日 22時34分23秒
ロゼが思っていたより慣れた風だったら?
小一時間は軽く問い詰めてしまいそうだから、色々と覚悟しておいて欲しいな。
俺も愛しの婚約者を泣かせて喜ぶ趣味はないからね。
泣くのを堪えている君の姿はいじらしいと思うけれど。

(甘さと苦みを含んだジュニパーの香りを纏わせたシンプルな便箋は今迄の手紙と比べて些か男性的で。
黒っぽい緑のインクで書かれた文字は、こちらが素の筆跡なのか、男らしい硬さが印象に残るもの)

2022年05月24日 23時22分50秒
泣かせる趣味はないなどと白々しい。
ここ最近の君の様子だと平気でやりそうだ。
まったく、可愛げがあった頃の君はどこへいったのやら。

で、生意気盛りの君にひとつ問いたいことがあるんだが。
君の文例の中に外出の誘い文句はあったかな?
花の盛りが終わる前に、どこか楽しめる場所があれば誘いに乗ってやってもいい。

(繊細なレースの透かしがある白い便箋。
文字はうってかわって柔らかに、淡い薔薇色のインクで綴られている。
封筒に添えたのは1輪のカモミールと、それを用いたハーブティーの小瓶。)

2022年05月25日 20時45分06秒
(緑のリボンを結んだ赤い雛罌粟を添えた白い封筒。
中身は淡く優しいクリーム色の便箋に、萌黄色のインクを使って穏やかな筆致で綴られている)

可愛げがあった頃の俺なら幼い君が食べ尽くしてしまったんだと思うよ。

ああ、失礼。
俺としたことが折角の花の盛りなのに失念していた。

王国内だとさる貴族の邸をそのまま残した躑躅園が丁度見頃の筈だけど、どうかな?
それに「ヴェリローズ」という紅茶の店があるんだが、今の時期限定で出している薔薇紅茶があるらしい。
平民向けの店だけど、身分を隠して通う貴族も少なくないとか。
君が好きそうな店だと思ってね。
もしかしたら既に知っている店かもしれないが、花見の帰りにでも寄れたらと。

あとは少し遠出になるけれどシャルガネの方では雨に濡れた紫陽花が美しい時期だし、そちらも興味があれば。

2022年05月25日 23時17分18秒
(白色のかすみ草を黄色いリボンで束ねて淡い桃色の封筒に添える。
貰った手紙と揃えたようなクリーム色の便箋にお気に入りの薔薇色のインク)

人を食いしん坊のように語るとはどういう了見だ。
すべてに案内して貰わないと許せそうにないくらい僕は傷付いた。

……冗談はまあいいとして。
躑躅の盛りを逃す手も無いし、「ヴェリローズ」は僕も気になっていてね。
何時どのように店を訪ねるべきかと悩んでいたから、君と共に行けるのなら嬉しく思う。

シャルガネはむしろ君さえよければ。
あちら方面は僕の趣味に付き合うようなものだろう?

2022年05月26日 22時11分06秒
(甘い香りがするイベリスの小さなブーケを添えた封筒)

君さえ望めば最初から全部エスコートするつもりでいたさ。

シャルガネに関しては君の方が明るいから、それに追いつく為に色々勉強したけれど個人的にも興味深い場所だと思っているよ。
あちらでしか見れない花もあるし。
お互い冒険者になるまでは王国の外まで遠出する機会は滅多になかったから色々新鮮ということもある。

それに、王国から離れた場所の方が羽を伸ばし易いだろう?

(シャルガネで見られる少し変わった風合いの紙を便箋にした手紙の文面はどこか楽し気で、子どもが悪戯に誘うような無邪気さも感じさせるような文字が躍っている)

2022年05月28日 00時33分01秒
よし。それでこそ僕のエスコート役に相応しい。
やりたいことは全てやるに限るのだから。

僕に追いつくために勉強を?
なんだ、食べ尽くしたなどと人に罪をかぶせて置いてしっかりと残っているじゃないか。
可愛げが。

そうだね。羽を伸ばしやすいと言うのにも賛同しようか。
見られてやましいことなど君と僕とにありようはずもないが。
折角なら心から楽しめる方がいい。
……ああでもそうか。君が羽目を外したような発言をしないかだけは気に掛かる。

(悪戯に悪戯を返すような楽しげな文字を綴る紫陽花色のインク。
シャルガネ由来の紙に仄かに滲んだそれは淡い桃色~紫へと多彩な表情を覗かせている。)

2022年05月31日 11時30分48秒
(躑躅園とヴェリローズに訪れる前日に届けられた手紙)

可愛い気が残っているかはともかく、好いた相手と楽しい時間を過ごす為に尽力するのは男として当然じゃないか。

……これでも自重しているつもりなんだけれどね。
まぁ羽目を外し過ぎないよう肝に銘じておこう。

とりあえず、まずは明日の躑躅園とヴェリローズからだ。
王国内だし、変装というと大袈裟だけれど、いつもと少し違う装いをしていこうか。

そうだ、遠出と言えば討論部の方でもお誘いがあったね。
水遊びには早いかもしれないが、海風を楽しむには良い時期だし、君も行くだろう?

それと海繋がりで思い出したが次のティラ=マーレでの仕事、俺は同行出来ないが少し気掛かりな内容だ。
くれぐれも無茶しないよう気を付けてくれ。

(海を思わせる青みがかった緑のインクで綴られた手紙。折り畳まれた便箋を開いた時に鼻を擽るのは、封筒に同封されたプルメリアの花弁の香り)

2022年06月02日 00時18分33秒
躑躅園もヴェリローズもお陰で楽しめた。
まさかあんなものを用意されているとは思わなかったけれど。
……ありがとう。大切に愛でさせてもらうよ。

討論部の方にも勿論顔を出そう。
すっかり旅行癖というか……君との遠出が楽しくなってしまっていけないな。
出発までに多少軽やかな服を用立てるべきかと悩んでいるくらいだ。

ティラ=マーレでの仕事は正直、一緒でなくて胸を撫でおろした部分さえあるんだ。
君と敵対するなどと考えたくもなかったから。夢見が悪くなるどころでは済まなさそうだしね。
無茶をするつもりも元より無いが……
そうだね。ジュストに素直に心配された分くらいは余計に気を引き締めて行ってこようかな。

(淡い緑色の封筒、白い便箋に流れるような筆跡で綴られた文字。
便箋とはべつに、ルゴサローズの花弁を挟んだ紙も添えられている。)

2022年06月23日 12時10分00秒
(彼女がティラ=マーレから帰還した旨を聞き、手紙を添えた花束を贈った後。
暫し顔を合わせられない日々が続いた折、ダイアモンドリリーのブーケ、緑と黄色が鮮やかなキャンディが詰まった瓶、そして淡いレモンイエローの封筒が入ったバスケットを届けさせる)

少しは気が晴れたかな?
楽しい遠出が続いた後のことだから、気掛かりでね。
俺も最近忙しくてなかなか顔を合わせられなかったし……。
また一緒に出掛けられるのを楽しみにしているよ。
そうそう、一緒に届けさせたキャンディなんだけれど、リンデンやレモングラスを含んでいてね。
鬱々とした気分の時に口に含むと良い。

(封筒を開くとふわりと香るのは爽やかなレモンの香り。
封筒と同色の淡いレモンイエローの便箋には緑色のインクで気遣うような優しい筆致で見舞いの言葉が綴られている)

2022年06月26日 01時37分33秒
先日は贈り物をどうも。見舞いだと言わんばかりの手厚さに少し驚いた。
まったく、いつからこんなに心配性になったんだ、君は。
僕自身の負傷は大したことがなかったし、感じるのは不甲斐なさくらいのものだよ。

……そうそう、休息と言うのなら。取るべきなのは忙しかったと白状した君の方だ。
君がゆっくり休んでいる姿を想像する方が難しいくらいだし。
此方に気をまわしたりする前に自身を労わるといい。
僕の気に入りの茶葉でも贈ろうか?

(疑問形で書かいたにも関わらず薄紅色の封筒と共に届くように茶葉を手配する。
薔薇の花弁も多く使ったそれのおかげか、香を焚きしめてもいないのにかぐわしい)

2022年06月27日 18時48分41秒
茶葉ありがとう、とても良い香りだった。
お陰で最近は寝付きが良いし、少しは休めていると思う。

おや、俺は昔から心配性だったよ?
ロゼに限った話だけどね。
君は自分が傷ついた時は平気な顔するのが上手いのに、他人が傷ついた時は風に揺れる花のようだから。
散ってしまわないか、気が気じゃなくて。

そういえば君が何やら吹き込んだせいで、ロイクがあの手この手で俺に食事を摂らせようとしてくるんだよね。
半ば無理やり口に突っ込まれるとフォアグラにされる鵞鳥の気分だ。
流石に少し辟易してきたから、気分転換に外に出ようと思って。
丁度シャルガネで旅館のプレオープンに来てくれという依頼の形をとった招待があっただろう?
少しさっぱりしたものが食べたいし、離れの部屋には個別の露天風呂もついているようだからゆっくり休める。
折角だから一緒にどうかなと思ったんだけれど。

休息が必要なのはお互い様、ということで。

(優しい薄緑色で揃えた封筒と便箋に少し珍しい緑色の薔薇を一輪添えて)

2022年06月28日 12時04分26秒
なんだそれは。
人のことをまるで壊れ物のように扱うのはやめて貰おうか。
仕事を抱え込む、休息を取らない、食を疎かにする……
君の方がよっぽどなんだから大人しく僕の差し金でまんまと肥えると良い。

正直、食事を強制される君を想像するとなかなかに愉快だったんだが……
そこまで言うのなら仕方がない。
露天風呂というものには僕も興味があったし、誘いに乗ろう。

……楽しみにしている。
(淡紅色のレターセットと共に、『花とキャンディの礼に』と短く書かれたカードを添えた
包みがひとつ。中にはシャルガネの伝統的な手法で染められた鶸色の手ぬぐいが入っている)

2022年06月29日 21時10分02秒
へぇ、それじゃあまるでロゼは乱暴にされるのがお好みのように聞こえるよ。

……なんてね。
流石に壊れ物扱いは君を軽んじていたかな、悪かった。
とりあえず。遠出前に体調を崩さないように生活は改めておくから。少しは信用してくれ。

じゃあシャルガネ行きは決まりだね。
そうだ、近郊の街で星逢祭というお祭もやっているそうだよ。
シャルガネの夏の風物詩を扱う店も色々立つみたいだし、面白そうだよね。
ユカタだっけ? 夏に着るラフな着物も貸してくれると聞いた。
流れ星に願いをかけると叶うっていうのは此方でも聞いたことある話だけれど。
子どもの頃は夜空を見る度に頑張って流れ星を探したものだが、なかなか見つからなかったんだよね。

ああ、それと贈り物もありがとう。
良い色だね、流石の見立てだ。
有難く温泉で使わせて貰うよ。

(贈物の手ぬぐいと同じ鶸色の封筒に、シンプルな白い便箋。
文頭には些か問題のある文字が躍っているが、全体的に穏やかで優しい筆致。
漂う少し強めの甘い香りはガーデニアのもの)

2022年07月03日 00時17分51秒
どうやらわかっていないようだから親切にも教えてやるが、
詫びるべきはそのひとつ前の発言だよ、婚約者殿。
よくもまあ人の嗜好を好き放題受け取ってくれたものだね。

……まあいい。よくはないが、シャルガネ行きに免じて置いておくとして。
祭りでしか出ないような店や、そこでしか味わえない趣もあるだろうし気になるな。
実は夏ならではの物品にも期待をしているんだ。
僕を祭りに誘ったことを後悔するくらい君を連れまわしてやるから覚悟をしておくといい。

案外、気を張って探さないくらいが流星だって拝めるかもしれないね。
君は何かそれに掛けたい願いでも?

(きっとこの色の名は知らないだろうと思いながらも取り寄せた紅鶸色の封筒。
鳥の子色の便箋に綴られた文字はどこか小綺麗すぎるくらいに整っている)
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0