灯火:商談(終)


指輪の紋章の看板。宝石の嵌まる場所に、硝子のランプがある。
灯が入っている間――夕方から明け方にだけ開く、小さな酒場。
客はただの酒飲みから脛に傷のある者まで、さまざまだ。
約束事を守れるなら、深い事情は聞かれない。
静かに飲め。人の話を聞け。出来ない仕事を受けるな。

今日も、“巨人の指輪”が光っている。

●説明
薬酒・毒酒の売り買いについて交渉する場。
顔も名前も知らん。符丁も決めてない。
が、なんか書かせりゃ筆跡で分かる。

●伝言板で約束した相手のみ
2020年10月08日 20時34分49秒 |24

2020年10月12日 17時09分22秒
『取引がしたい。薬酒・毒酒をいくつか商っている。
こだわり深い酒を取り扱っていると聞いた。
ただ買ってくれ、とはいわない。まずは品を見て欲しい。

急ぎではないので、そちらに都合の良い日、手隙の折があれば。
商談を希望する。』

(返事は「指輪に灯りがついていればいつでも」とした。今日も変わらず木の脚立と鉄の点火棒を使い、指輪の意匠を持つ看板に光を灯す。一回棒をぶんと払って、店の中へ入っていった。かの人物が今日来るか、明日来るか、それともずっと来ることはないか。何れにせよ自分の仕事は酒場の主、それに支障のあるものではない)

……毒酒ねえ。

2020年10月15日 23時30分26秒
(あなたがお返事をくださってから、数日。晴れた日が暮れて、夜もしんしんと深まるころ。お店の中に、お客様がたのお姿が丁度見えなくなった、そんな折)
(看板の指輪に灯ったほのあかりが、境を際立たせる路地の陰から。するりと抜け出るように、扉を静かに開く影がある。
こまやかな飾りが、しゃらと音を立てる装い。灰のフードマントを目深にかぶる、――つまり。
あなたがもしかすると、どこかで出逢ったような姿に、よく似たそれだ。それは、もしあなたの姿が見えても、少し笑って、黙ったまま。
止められない限りは、カウンターの奥の一席へと足を進めるだろう。覗く細身の手のもう片方には、布のかかったバスケットをひとかご、たずさえている)

――こんばんは。おひさしぶりね。
…ねぇ。あの後、子犬に追われたりはしなかった?

(実際は、つい最近だけれど。しれっと、もったいぶるのはあの日と同じ調子で。少し首をかしいでいる。性懲りもなく現れた悪戯心地が、ご挨拶を)

2020年10月16日 01時03分12秒
ア? なんだオイ。此処までおれを揶揄いに来たのか? こないだはとっとと消えてくれやがって。この性悪女が。
(先日見たばかりの顔だ。名前もしっかり覚えさせられた、魔女だとかいう――実際は女かどうか計りかねる人物。まさに彼女が商談の相手とは知らず、口から悪態が出る)

これから客が来んだよ。帰んな。おれは女子供だろうが殴るぞ。

2020年10月16日 02時37分43秒
ふふ。だって…その方がきっと、覚えていてくださるかしら…って。
けなげに思ってくださって、よろしくてよ?

(小気味の好さがうれしくて、つい。あまりたちのよろしくない笑みが、浮かんでいるのも自覚しているの。実際はまったく、自分の興に従っただけのことだけれど)
(あなたが帰そうとするから、これみよがしに悠然と。席に座る性悪である。そのお手を視線でなぞり)

あら、やんちゃなお手ね。エニアの枝でこらしめたら、楽しそう。
でも…その前に、――あなたには、こちらをお見せしないと。

(小さな刺のついた紫色の植物の名は、もしかすると、こちらでは別の名で呼ばれているかもしれない。あるいは、あなたが旅の客人から聞いていたなら。いたずらっこを叱る時の話にでも出てくる名だ)
(口を返すよう謳い。そして一枚の紙を。あなたに見せるようカウンターに乗せて、指先でとん、と叩く。…背をいくぶん正しながら)

『了解した。では、2、3日中に覗う。 感謝する。』

――改めまして。ご店主様。
まず。不躾なお願いに、お返事をくださったこと。
お招きくださったこと。重ねて、感謝いたします。

(フードを降ろせば、まとめた灰みの髪の、毛先がゆれる。笑みとともに。先の軽口を伏せるよう、しずかに瞼を閉じ、御礼を。これは、冗談いつわりのないものだ。…それから、ほんの少しだけ。悪びれる顔を)

…騙すようになって、ごめんなさいね。
お逢いした時は、あなただと知らなかったの。

2020年10月16日 02時38分32秒
(そしてカウンターテーブルの上にあげる、バスケット。布を取れば、数種の小さなハーブの束、小瓶と共に。中くらいのワイン瓶に似たものが2つ。
ひとつは、やや薄い黄緑がかった液体の入った、カットの複雑な透明の瓶。
もうひとつは、濃藍のボトル越しにも、粘度の高さが見える。赤い蝋で封をしたものだ)

2020年10月16日 16時23分28秒
アァ……?
(思わず眼鏡をかけ直す。今日の商いをする相手の筆跡、そしてバスケットの中身は確かに薬酒と、その原料。そして毒酒の封のしかたが為された瓶。しおらしくこうべを垂れた女の、睫毛の先を見る)

市場に出かける直前に返事を書いた。すりゃ、入れ違いだな。
(知らんのは仕方ねえ。そう言って、香草を紙で巻いたものに火を点け)
――――だがおれが取引相手だと知っててもああしただろ。そういう面白がり方をしてたぜ。
(不機嫌そうな顔は地だ。険は取れ、ただ自分の考えを述べる。そうしながら、バスケットの中身を改めて示した)

さて……商談は素面でやる派かい。呑みたきゃ酒を出すが。

2020年10月19日 05時48分36秒
…そうと、わかった上でも。
あなたは、グラスを出してくださるんじゃないかしらと…実は少し、思っていたの。
(それがひとえに、あなたが商家で、己が商談相手というのがあることを踏まえても。
神妙をしていた眦がほのりと、緩んでしまう。ありがとう、と、そっと添える。謝意がどうか大仰に響いていないといいと、願いつつ)

(伏せていた瞼をあげたら、ぱちり!と揃えた両手の指先を重ねるの。我ながら、嬉し気な音ね)
もちろん、いただくわ。あなたも付き合ってくださるのでしょう?
まずは…このお店で一番よく出るお酒を、いただけるかしら。
差支えの無い範囲で。どんなお酒があるのかも…、教えてくださるなら、うれしいわ。
(例えあなたが共のグラスを取らずとも、これは気にはしないだろう。持ってきた瓶を預けて、後でご確認いただいてもいいのだけれど、とは付け加えながらも。
言葉尻を弾ませる。こちらにいらっしゃるお客様の、お好みはいかがかしら。取り扱うお酒は、お店によっては大切な秘密だから。あなたのよきように、と)
(言いながら自身も、バスケットの中身を並べていく。まず手にするのは、透明の瓶)

ご確認は…まずは薬酒からが、よろしいかしら。
空の小さなグラスも、おひとつくださいな。

2020年10月20日 06時37分08秒
この場はあったろうさ。
ウチの売りは珍しい酒で、アンタはそれを持ってる。簡単な話だ。
(よく出る酒といわれて頭を過ぎったのは、ひどく辛くてべらぼうに強い酒だ。そこいらの酒じゃ満足できなくなった飲んだくれがよく頼んでいく)

……。この店の客はな、酒なしでは生きていけん阿呆共だよ。
二番目に出るやつにしとけ。悪いこた言わん。
(返事を聞く前に引っ込んだ。裏にある大きめの樽から、同じく樽に似た小さなコップへ。黄金色の麦酒を注ぎ、片手には空のグラスを持って、溢さず器用に戻ってきた。二つともそちらに押しやる)

おれは今はいい。これから酒を見るのに舌がバカになっちまわ。そっちは好きに呑みな。
(頬杖をつくと、透明な瓶に目をやる。薬酒というが、効能なんかは…まあ後で聞けばいい)

2020年10月22日 23時15分26秒
(商人然としたお声は、信が湧くものだ。肯きととも、透明な瓶の口元を抑える。ランプの元で見れば、ボトルの首の先にはコルクの代わり、葉が肉厚な植物が栓となって口をふさいでいる。その細い根は、液体の底でくるりと巻いているのだ。その小く密集した葉を指先で二度三度擽ってやれば、口を満たしていた木肌が伸びあがるよう、隙間を作る)
(植物を軽く抓んだら、根を中に残したまま。頂いた空のグラスに、まず少量を注ぎましょう。あなたの心遣いに、自分もまた、くすぐったい心地を憶えながら)

そう?では、ありがたくいただきましょう。
麦酒も、喉の心地が好ましい。好みをいえば、苦味もあって、香りが楽しいものなんか…特に好きなのだけれど。
…こちらも、珍しい麦酒なのかしら?
(あるいは、フルーツの味わいがあるものも。すきりと、爽やかな若さのあるものも。土地それぞれに特徴があるものは特に、つい楽しく杯を進めてしまうから。注いでくださる金色の水面が、あかりにかがやくさまを眺め、香りをかぐ)

2020年10月22日 23時20分23秒
(…思わず手元が疎かになりかけて。いけないわね。いただいた空のグラスに、自分の味見用に少量を注ぎ。あなたのグラスをねだって、そちらにもお注ぎしましょう)

薬酒、毒酒とは言ったけれど…つまるところは、おなじもの。
私は、ほどほどの量を飲んでも、体に害が出にくく、調子を整えるものを薬酒と呼んでいます。
逆に、極少量なら薬にもなるけれど、飲み方に気を付けなければ害が出てしまうものを、毒酒と。

こちらは薬酒の方。アクラルという植物が、月光のエーテルをとりこんで作るお酒。
宵を楽しむ前にたしなめば。悪い酔い、悪夢からは、縁遠くなるはず。
…酒精は少し弱いけれど。お酒好きな方が多くいらっしゃるなら、前酒になるかしら。

(明るい黄緑色は、含めばさらついた舌触り。常温だのに冷涼感があり、どこか、夜霧の露らしい青みがある。薬酒にしては癖は少ないが、飲みなれた方には物足りなさがあるかもしれない)

2020年10月23日 13時15分29秒
特に変わりねえが、貯蔵……アー……寝かせる期間がちと長い。
すると甘みが減る代わりに後味はさっぱりするんで、味の濃いアテと合……う。
(酒を扱って久しいが、見たことのない仕組みの栓だ。まるで人の言うことを聞くような植物の仕草は異質であって、しかし不思議と嫌悪感を覚えない。指先で押した透明なグラスに、若葉よりも青い緑色が注がれていく)

確かに酒は百薬の長とも言うわな。大体は飲んだくれの言い訳だが、そう言われると納得いくもんがある――――
(グラスを軽く額辺りまで持ち上げてから口をつけた。薄荷のような涼しさが、喉をさらりと滑っていく感覚が心地よい)

……おい、薬酒が美味いと困んぞ。アクラルつうのは、その葉っぱか?
(二杯目から高く設定するか、等と考えている)

2020年10月25日 01時21分19秒
(まずは、麦酒にくちづける。一口、二口と味わって。く、喉を微かに鳴らすよう。両手を添えたコップの半ば程までをいただいて、眦緩めて息をつくのだ。…おいしい、と。心地よさそうに呟いた。ポーチからレースチーフを取り出すと、軽くくちもとを抑える)
…注ぐのがお上手だこと。人気があるのも、わかります。
手間のかかっている麦酒なのね。
……ね。もしかして、ドワーフ王国からのものではなくて?
(あなたのグラスと自分のコップの間を、指先で紐結ぶような仕草のあと。確信を持って、という風情でもなく、たわむれるようお酒の話を聞きたがる。味見のグラスも確かめ)

…ふふ。よかった。この子も、調子が良いみたい。
実はね。これ、元はフィルエスのワインなの。
中身がなくなったら、新しいボトルのくちに移してあげれば。アクラルが月光と酒精をとりこんで、作り変えるもの。
管理で大切なのは…普段は暗い水の中に置くことと、月光を度々浴びさせてあげること。…そのくらいかしら。
新しく移した後は、根が馴染んで薬効が出始めるまでに、ひとつき程かかるのが…お店の品としては難点かもしれないけれど。
あと2、3本なら、お持ちできますわ。ご検討くださいまし。
(にこ、と愛想良さそうに、調子の良いことをいう。値については、もし気に入ってくださったら。もう一本の方もご紹介した後に、まとめてご交渉に入るのがいいかしらと提案を添え)

――さて。問題は、こちらの方。
ご店主さま、血酒をお飲みになったことはおありかしら。

(あと、麦酒をもう一杯くださいな。機嫌よさそうにコップを差し出しつ。藍の瓶を横に見る)

2020年10月28日 01時12分38秒
へえ、ご名答。あまり奴ら(ドワーフ)らしい酒じゃあねえが。なんでまたそう思ったよ。
(答え合わせと一緒に、カウンターの上へ置いた二杯目を押し出す。一杯目より少し量が多い)
(どの国、ひいてはどの種族にも、それぞれの特色があるものだ。この時世、酒はおおむね嗜好品である。流通するもののほとんどはもっと、“らしい”。例えばドワーフ王国で愛飲される麦酒はもっと色が濃く、苦みも強く、口当たりも強い…ものと思われる)

融通できる二、三本を貰うモンとして考えといてくれ。
店で出すぶんには確かに不向きかもわからんが、売り出す時期をずらしゃあ何とでもなる。
(普段は暗い水の中、時々月の光に当てる。まじないに近くなってきた管理方法を頭の中に置いて)

好きで呑んだことはねえな。ソイツも血の酒か?

2020年10月31日 19時14分09秒
聞けば、ドワーフ王国は地の中にあって、火事場の熱もこもるのでしょう?
お味の濃いものと、よく合うと仰っていたから…あの地ではいっそう、美味しいのだろうと。
……かのかたがたなら。出来上がった樽から順に干してしまうかしら、とも、おもったのだけれどね。
(ありがとう、と受け取った杯に嬉しそうに口をつけてから。冗談めかせ語尾が小さく笑うのは、健啖闊達ぶりへの眩しさであり。目を細める。ご希望に、承りを示して頷きつつ)

――ええ。
尾蛇の魔獣の血を……ええと。ほどよいぐあいに、して。
(今から注ぐグラスを見て。詳細を省いた)
よく精製したものが、こちらです。
……少し変わった酩酊感が、楽しめるかと。
お出しする時にはかならず、小さなグラスに。
このハーブスパイスを三匙ほど加えてくださいましね。
(ボトルの隣に、数種のハーブがブレンドされた匙つきの瓶を並べ。グラスを頂けるなら、注ぐのはほんの少しの量を。実際に加え、作ってお見せしましょう)
……お味見するなら、お一口くらいで。
この後もまだ、あきないなさるのでしょう?
(作り方を見せるのが主眼だ。もしあなたが味見をするのなら。とろとろと粘度の濃い酒は、側頭から熱くなる強い酒精と苦味、塩気が相まって、癖の強いコクを感じるかも。
数口ならば血が温もって、思考の巡りの早まり、冴えた浮遊感を意識して楽しめる筈。
――あまり進めていくと、魂が半分ぬけたよう。意識が夢うつつにのこったまま、幻をみたり。やがて体温が下がり、体が動かなくなるよう作用する恐れを添え)

2020年11月06日 22時14分13秒
造った傍から呑んじまうのは間違いねえな。たまに樽がやけに軽い時がある。
(冗談には軽口で返す。口に合ったのなら何よりだと、そう言わんばかりに。そうしてから、こちらに勧められるものを見ている。血の酒は変わり種だが、こうして見ると一層風変わりだ。魔女の調薬にも似ていた)

……貰おうかね。
(一口ぶんだけ煽る。血潮らしい塩の味だが、薬用のそれによくある嫌な臭みはない。もちろん人を選ぶ酒でこそあるが、深い味わいとハーブの香りは他にないものだった)

――…驚いたな。酒との付き合いは随分長いが、こんなモンは初めて呑んだ。
(そう大して酒に強くもないのに、二口目を含んでしまうのだ。しかし、過ぎると身体に差し障るのも分かる。三口目で、グラスを意識して離れたところへ置いた)

こいつは……成程な。これだけ温まるんなら冬には丁度いいかもわからん。
客に出すかどうかはちと悩むところだが、一瓶くれ。腰痛に利きそうだ。

2020年11月13日 21時19分47秒
(ふ、ふ、と肩が揺れた。芝居がけない素の笑い声が出てしまって、少し喉を鳴らす)
お気持ち、わかってしまうのが……なんとも、困ったものね。
お眼鏡に叶ったなら、本当に、嬉しいわ。
……私が扱うものは、果たして、お酒が好きな方に呑んで頂けるものかしら…と、少し不安だったの。
(伝統や技法には、理由がある。樽の中で、職人が時間をかけて育てる、美味がある。この手が仕立てるものは、まったく亜流のものだ。……だから、お酒自体を愛する方に、試して欲しかったのだと。笑み交じり、秘密の話のよう、付け加えた)

ええ。…あなたなら。私も安心して、お渡しできるわ。
こちらはこのまま。アクラルの方は、まずこの一瓶。近々、あとの二瓶も、お届けしましょう。
――…ところで、腰痛なの?…お体は、お若そうに見えるのに……、
(その落ち着きある所作に、年長者らしさを疑わない。ただ異なる種族のことは、感覚が掴めないから。興味深げを交えつつ。
お代は、これほどで、いかがかしら?と。メモの端に額をしたためる。安いとは言えないが、それでも少し珍しい古酒程度だろう。交渉にも用あればもちろん、応じるのだ。駆け引きするとしても、きっと、あなたを困らせない程度で、楽し気に頷く筈)

2020年11月18日 15時41分04秒
なんだ。年寄りの不健康自慢をご所望か。おれは歳なりに脆いぞ。腰は弱えしな、眼鏡がねえとものもよく見えん。
(大仰に掌を振る。果たして同年代のハーフリングに知人は居らず、健康事情を知る由もない。もしかしたら見目通りいつまでも若く健康で、ある日ふっと死ぬのが“普通”なのかもしれない)
(示された値段をきっちり確認して。いいだろう、と頷き)
最初の取引なんだ、もう少し足元を見ても良かったくらいだぜ。
(どちらも通好みの味わいに、独特かつ絶妙な酩酊感を得られる。「百薬の長」とは酒飲みの言い訳だが薬効も確かだ。……ここでもう少し金貨を積むとどうなるか。暗算する指)

アンタ、これを(毒酒、薬酒の瓶を指す)商売で扱ってんのかい。それとも趣味か?

2020年11月21日 20時21分25秒
脆い?あんな啖呵をきっていらした、あなたが?
(視線をつ、とその掌からお顔に注いで面白がる。それはまた、体のこととは別のこと。わかっていながら、麦酒もかくや、口あたりの軽やかさが楽しいのだ。それから、乳白で彩られた爪で、毒酒のボトルのいかり肩を軽く、こつりと)
ふふ。最初の取引だから、愛想をよくしたの。……それに。なににせよどちらも、癖のある品だから。
どなたにでも、お譲りできるものではないのよ。
(前半は軽口めかせつつ、言葉端はまろやかな調子で。小さな樽にくちづける)
正直に言えば……趣味のうち。
薬酒も毒酒も、いろいろを拵えてはいるけれど。どれも数がさほど、作れないのもあるし……出し方、扱い方もあるから。
商人さんにも、そうそう卸せない。
……贔屓にしてくださるかたも、いらっしゃるけれど。その方がこちらのお話を、してくださったの。
(お世話になっている商人のかた。そのかたも確かに、商い上手。品の行く末はわからずとも。こちらが煩わされないよう、取引をしてくれるだろう。けれど、……少し冒険してみたくなったのだ。そんな世間話を、最後の一杯、頼む合間に添えただろう)
(あなたの指が、楽し気に見えて。その意図まではわからないけれど、口端が笑んだ)

2020年11月22日 02時53分28秒
脆いから暗器なんかに頼らにゃいかんのだ。
(爪先を鳴らしてみせる。今日も少し鈍い音だ。暗算を終えると眉間の皺が濃くなった。あと一歩譲歩しても良いかとほんの少しだけ考えたが、そうすると渋い)
……ははあ。大体アタリがついたぜ。
ウチも信用できる奴としか取引はしねえんでな。ま・新しい仕入先が出来たのは喜ばしいこった。
珍しい品を作って、卸して。そうだな、喋るまでが趣味ってところか?
(しかしまあ見目に依らず飲むほうだな、と思いながら、麦酒をもう一杯注いだ)
こさえたものがどんな人間の喉に入るかは知れんでも、どんな奴に売るかはアンタが選べる。有意義だったかい。

2020年11月29日 05時02分55秒
(路地裏の光景を思い返す。自身には、その所作は訓練された技術のよう映るから。眉間のお皺を見、喉を鳴らす気儘さで。見抜かれてしまって、頬が緩んだ。あなたへ向けて、受け取ったコップを小さくかかげ)
とても。
おかげでこうして、ゆっくり杯を楽しむこともできる。
……メモを残したのはね。「あすこの店主は、気難しくて商人らしい愛想がない」と、聞いていたからなの。
ご同業のかたがそう仰るなら。きっと、良い商いをなさるかたなのだろうと。思ったのよ。
(人の口というのは、中々、あてになるものね。そう続ける言葉端に、機嫌の良さが混ざる。コップを傾ければ、最後の数口ぶんは、そのまま一息に干してしまいましょう。チーフで口元をそっと拭ったら。酒場で楽しむ方々のお作法に倣い。綺麗に空になった、小さな樽を逆さにしてみせる。静かに器をお返しして)
――…ごちそうさまでした。するっと飲めるから、心地よくて。
ひとつの銘の麦酒を、こうしてじっくり味わうのも。久方ぶりかもしれない。
…ありがとう。美味しかったわ。
……、それに。この子達のことも。
(危うく、飲むことが主題になっている口ぶりをしてしまって、付け加える。決して忘れることはないのだけれど。つい)
(お代は、明日明後日。残り2本のアクラルをお届けした時に。信頼している運びのかたにお願いして、届けて貰う旨を添え。フードを被り、ゆっくり席を立つ。悪戯めかせた目をした)

……ところで、ご店主さま。私の名前は、忘れずにいてくださっているかしら?

2020年12月05日 00時06分54秒
(ち)(舌打ちをした。長い名だ。一度で聞いてすぐに覚えるのも難しいような、覚え間違えるような。それでも女の言い残したそれは、呪いの様に今も残っている)
……ヴェールヴァルデ。
(燃え尽きようという煙草を水入りの小瓶に落とし、煙を追いやる仕草で手を振って)
耄碌手前の頭で覚えてやってるよ。感謝しやがれ。

2020年12月11日 19時57分22秒
ふふ、 もちろんですとも。義理堅いかた。
なら、また。あなたが忘れない内に、お邪魔してしまいましょう。
(苦々しそうにしながら、唱えてくださるあなたに。フードの裾を整えつ、愉しさの滲むやわらかな笑い声)
ゆるりと、お時間くださって。ありがとう。とても楽しかった。
……次、お会い出来た時は。あなたのお名前を、教えてくださいな。
(しばらく旅に出るから、もし、品について尋ねたいことあれば。この場所宛に、お手紙を送ってくださいまし。 言い添え、ある森の場所をメモに残す。お取引のボトルは確実に、近々あなたの元へ運ばれてくるもので。いずれまた、も悪びれずに願いながら。瞼伏せるご挨拶を。空のバスケットを提げて開いた扉から、夜の空気。ごきげんよう、と心地良さそうに、煙の如く…今度はささやかな足音と共に、去っていく気配でありました)

2020年12月12日 20時36分00秒
くたばんなよ。
(――――無愛想で商売っ気がない。というのは、伝聞通りの人物であったことだろう。ひとに見せればやはり「無愛想で商売っ気がない」印象のままだ。しかし眼差しからはほんの僅かに険が取れている)
(あなたを送り出すのは縁起でもない軽口だが、これは元冒険者なりの祝福でもある)

(生きて名前を訊きに来い、と)

2020年12月12日 20時36分07秒
(終)
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0