ひと悶着(終)


市場の連中、特に初めましてのクソ野郎は偉そうな口を利きやがる。
おれの見目がガキだからってナメくさってな。
しかしまあ、今日のクソ野郎は随分と沸点が低い。
ちょいと煽っただけで暗い一角に叩き込まれた。
喧噪に紛れちまってどこにも声が届かんような、クソ野郎がクソ野郎らしい何かをするのに打ってつけの場所だ。
……コイツら、初犯じゃねえな。でなきゃこんなに都合のいい場所を知るもんか。

1:1 1人でも進行 置きレス
誰でも
市場の暗がり、
ガラの悪い商人もどきに絡まれる子どもの図
2020年10月08日 17時29分14秒 |14

2020年10月08日 17時39分17秒
(襟首を引っ掴まれている。別にそう痩せているわけでもなし、身体なりの重さがある。それを軽々持ち上げているあたり腕っぷしは強いんだろう。腕っぷしだけはな。袋小路の塀に叩きつけられる気配がしたんで、首を思い切り伏せる。後頭部はやべえ)

――――どうせ女とガキだけカモにしてきたんだろ?随分と気楽な人生だな。え?

(もっと怒れ。そのでけえだけのタッパががら空きになるくらい、大振りの一発を寄越せ。それを狙っておれは、喋り続けている)

最後に喧嘩した相手はてめえのママか?どうなんだよ、おい。言ってみろや。

2020年10月08日 19時47分02秒
――…あら、

(ある酒場の伝言板に、張り紙をしたためた帰りのこと。その折には気づいていなかった、どこかからの声を耳にし立ち止まる。…そっと、分け入れば、暗い路地にお子がおひとり。悪いおとなに襲われている様子に見え。その暴漢の背が窺えた)

――…

(あなたの位置からは、その暴漢越しに。灰色のフードを目深にかぶる、簡素な杖を手にした小柄なシルエットが見えるのかもしれない。静かに、路地の入口に立っている。――小気味よい啖呵には、おびえの色がないよう感じられたから。フード下から覗くのは、興味深そうに細める眼差し。そしてあなたを囲む者々の数を、そっと数えるような視線の動かし方を)
(殿方があなたに夢中なら、気付かれないかもしれないけれど…どうかしら?)

2020年10月08日 20時24分03秒
(意訳するとこうだ。「俺は授恵者だ」「これ以上生意気を言ってみろ」「クリーパーどもの餌にしてやる」。馬鹿だな。そうじゃねえって分かんだよ)

お前が授恵者なら世も末だぜ。まさかそのクソみてえな冗談で粋がってんじゃあねえだろうな――――

(通りの入り口に…女か、ガキか。小さな影がある。少なくともごろつきの仲間じゃあるまい。なんせ誰もそいつに声を掛けやしねえ。おれに集中してんだろうな)
(見世物じゃねえんだぞ)
(という眼差しを一瞬だけ送ったが、さてあのフードの下に届いたもんか。何をしてやがんだ?……人数を数えてんのか?そう考えた次の瞬間、おれの身体はまた大きく揺さぶられた。また壁を使う気だな。馬鹿の一つ覚えか。眼鏡が落ちて、視界がぼやけた。クソッタレが。入り口に立ってるヤツも、まるで亡霊みたいに見える)

2020年10月09日 01時09分41秒
(群れで狩りをするような荒らいだ声は、少し聞き取りづらい部分もあったけれど。そのぶん、あなたの声と眼差しが、よく通るよう。…思わず、口端を上げてしまって)
(ただ見ているだけだった亡霊もどきが、携えた杖を伸ばしたのは。かしゃりと落ちた装具の音を契機に)
(つ、と振れる杖の先が、あなたと、あなたを捕らえている殿方の数歩かたわらの、背にしている壁を指す。建物ではなく、恐らくは壁を隔てた先に別の道があるのだろうと検討をつけたそこへ。口中で小さくまじないを唱えた刹那、細く絞った閃光の矢が奔る。前置きの無い、突然の破砕音と飛び散る細やかな瓦礫。魔矢は恐らく、あなた方を避けて、傍らの壁に人が通れそうなくらいの穴をあけるにとどまる筈。…加減が上手くできていなかったら、申し訳ないのだけれど)

――ごめんくださいな。
私とも、あそんでいただけるのかしら?

(あなたが壁に叩きつけられる前に。お声がけも叶ったかしら)
(声は穏やかに。まだエーテル光宿る杖の先は、あなたを打ち付けようとしていた暴漢の頭に、狙いを移している)

2020年10月09日 02時20分46秒
(壁が吹き飛ぶと風通しが良くなった。おれの背中側にはマーケットの、別の区画がある。そこはおんなじような袋小路らしく、人はいなかった。まあ居たら悲鳴のひとつも上がるわな)

だとよ。仲良く林檎撃ちでもやっちゃどうだ。てめえの頭に的を乗せてよ。

(エーテル光の狙う先はこのアホにでも分かっている。おれにはぼやけてよく見えんが、大方デコ。脂汗が手のひらにまで浮かんでやがる。ざまあねえ。取り巻きが慌ただしく逃げていく。湿った手で襟首を掴んでいたデカブツは、おれを反対側の道に放り投げやがった。受け身を取るのは造作もない)

っとに、最近のガキは躾がなってねえや……

(ああしたやり方を続けていれば自滅も時間の問題だ。追っかけるのもめんどくせえ。そんなわけで改めてフードの人物に目をやる。女の喋り方をしたように聞こえた)

助けを呼んだ覚えはねえ。金はやらんぞ。

(見ず知らずの子どもを助ける理由はないだろう。尤も子どもにしちゃ口汚く罵倒したから、おれの種族は分かったかもしれない。どっちにしろ善意らしい行動を疑うたちは、それこそガキの頃から変わらん)

2020年10月09日 21時41分01秒
(ああ、よかった。…悲鳴がなかったことに、頬が緩む。みなさま方の足音が遠ざかっていくのなら、杖を降ろしましょう)

――いいえ、いいえ。お金だなんて。
私も…この場所では。
こういうとき、見て見ぬふりをするのがお作法だと、わかってはいたのだけれど…。
ごめんなさいね。なんだか、素敵なお声の、気配がしたものだから。

(我慢ができなくて。お恥ずかしいわ。――一匙の恥じらい含み、口遊むよう言いながら、フードの姿はあなたの元へ歩いていく。制止をすれば止まるだろうが、無ければ気負いや敵意の無い足取りで。叶うなら、そのお足元に落ちているのだろう眼鏡を屈んで拾おうと)

だいじょうぶかしら。割れていないといいのだけれど…。
…あなたも、お怪我はないかしら?

(突然現れたあやしい風体に、あなたの態度はまったくまっとうに思えた。だから、むしろ嬉しむ風。そのお声に、痛みをこらえる響きがないのはわかっているけれど。興味があるので、聞いているという風情のこのフード姿もまた、身勝手さを改める気が無いのだと知れるだろうか。つまり、あなたがあなたらしくあることに、抵抗は覚えない)
(暗がりの中、金に輝くその瞳を見上げる顔は、声も相まって、どちらかといえば女性的な印象があるかもしれない)

2020年10月09日 22時42分59秒
割り込んでぶちのめして、そんで両方から金を取んのがお作法だぜ。

(素敵なお声とやらも、人助け――のつもりがあるかどうかはさておき、それに対する恥じらいも、全くわからん。もしや頭のいかれた女か。しかし会話はできる。ひとまず眼鏡を受け取って、かけ直した)

…割れてねえ。アイツら命拾いしたな。

(もし割れてなんぞいたらただじゃおかねえ。走らなくなって久しい脚が、衰えていなければ。……近くでよく見える顔は女のそれだが、浮世離れした空気のせいか確信が持てん。少なくともこの甘い匂いは、香水のじゃない)

じゃあアンタ、どういう理由でおれを助けた。あのクソバカのだみ声が素敵なお声ってか?

(おれの声じゃあないだろ。騒がしい区画の細道でこの声が聴こえたんなら大した聴覚だ)

2020年10月10日 00時36分57秒
そう、…やっぱり、そうなのね。
あんまり、鮮やかな引き際だったものだから…声をかけそびれてしまって…。

(口元に指をあて、悔いる響きが混ざる。その行為の可否、あるいはできたかどうか自体というよりも――。ただ、その悔やみも。あなたの声に瞬けば。ほどけて消え)

あら。
…理由を、気にしてくださるの?
ふふ、……あなた。罠にかかってしまう、狼みたいなかたね。
…捨ておいても、呪ったりなどしないのに。

(あなたが問うたのは、恩を負わされることへの警戒だろうと、想像はできるのだけれど。…それでも。
すこしばかり眩しそうに、目を細め。つ、と指先で、己の唇をかるくたたく)

本当に。ささやかなことなの。
その、小石を掃う枝のような。しなやかな声が、聞こえたものだから。
――ね。だって、あなた。怖がってなど、いなかったでしょう?
だから、私が声をかけずとも。きっとよかったのだと、思っているのだけれど…。

(ちがうかしら?と、そっと窺う。むしろ、出る機を間違えたかと思っているのだ。なにか狙いがあったのかと。そこに、興が湧いたのだと。
少し長く話してしまったので、一息をつく。揶揄する意図はないと伝えるなら。不明瞭のままでは、…今は、あまりよくないと思ったから)
(…ああでも、確かに。まず耳に届いたのは、殿方たちのお声だったとは、添えて)

2020年10月10日 01時15分50秒
しなやかと来た。益々分からん。

(45年生きてきて、声を褒められたことはない。しかし思えば悪態と挑発には慣れっこだ。しなやか、ってのはそれのことか?続く言葉の消え方から、ある程度の意図と興味を察せる)

全力でおれを絞め上げりゃあ、その分クソバカの胴が空くだろ。そこにこいつを蹴飛ばして腹か肋をやる予定だった。

(靴の爪先に鉄板を突っ込んである。音で分かるよう、適当な破片で小突いてみせた。……これ以上は置いておく。聞き捨てならんことを言われたからだ)

――おいコラ。誰が罠にかかるって?

2020年10月11日 01時00分44秒
(あなたの疑問に、フード姿はどことなく嬉しそうに、喉笑むばかり。意を汲んでくださったことを、そこはかとなく感じ取っている。
実演してくれた“狙い”に、感嘆と、お足元への物珍しさを含ませつつ。自身の肋骨あたりに、自然と手がゆくのだ。耳に良く届く硬質な音に、やや眉をさげるのは非難の色ではなく、想像を擽られての)

それは…とても、痛そうね…。
仕込み靴というものかしら――…、あら…?
いやだわ、私。くちがすべってしまったかしら。

(視線を逸らし、今度はやや、芝居がけて口を押えるのだ。あなたをみて。素知らぬ風、笑っている)

あのけものは、美しいわね。…悪心者には、そこがとても、魅力的だと思うの。
――ねぇ、ところで。
私があの、あなたのファンのかたがたなら。そろそろ、人を連れて戻ろうと思う頃合いかしら?

(ちら、と。彼らが去っていった方を窺いましょう。
つたない話の逸らし方に、あなたはきっと、気づいてくださるでしょうから。…あるいは、怒らせてしまったかしら)
(そこだけはそっと、ご様子をみようと)

2020年10月11日 04時13分08秒
適当こいて逃げるさ。クソバカどもにゃ痛ェ目を見てもらうがな。

(あいつらはこれが初めてじゃない。ここらの自警団はまあまあ腕も立つ。おれは商売柄、それなりに人相を覚えられる。そのへんの警邏に告げ口してやりゃすぐお縄だ。立ち上がって服を軽くはたく)

しかしな、アンタ。会ったときからわざとらしいぞ。知ってることを知らんふりしやがる。
(わかっててやってんだろうがよ。どっちかっつうと「呆れる」が近い。道化を真面目に相手してるような気分だ。すんならこっちにも考えがある。袋小路――もうそうではなくなったが――から表へ、アンタを通りすぎながら。独り言には大きく、語り掛けるには他人事らしい語調で)

そういやァどいつだったかな。おれが罠に引っかかるマヌケっつったか――

2020年10月12日 00時14分50秒
(捕らえられていたのも、その辺りの見込みを踏んでのことと知れば、よく腑に落ちた。あなたが捕まるというのは、この僅か話しただけでも、不思議に感じていたものだから)
(わざとらしさを言い当てられると、擽ったそうにしつ。数拍の間をあける。…実のところ、自身にも、確証は無かったのだ。沈黙には、素直な驚きが滲んでいる。金の瞳を持つ、巨人の指輪の主の噂は、確かに聞き及んでいた)
(そして、すれ違うその背に、思わずゆるやかに右手をのばす。敵意も悪意も無い何気なさは、ただ、その行く背が揺らす銀の髪の軌跡を、指先でくるりと。触れずに追いかけるように)

――…ヴェールヴァルデ。知者の尾を、つまみたがっているのは。ヴェールヴァルデよ。
……あなた、お上手なかたね。

(言い当てられた上に、思わず、のせられてしまって。ほんのりとしたくやしみが、心地よくて。つい、楽しい)
(マヌケだなんて。あなたをそんな風に思っているのだと、思われているとしたら。それは、否定せずにはいられないのだ。)

…魔女の名を、あなた、聞いてしまって。いいのかしら。
でも、――忘れないでくださいな。

(どんな名も、知れば重みになることがある。だから、おかしむ風に擽る声は。ただただ、勝手に謳いあげて。その足を引き止めることなく。
近々、また。お逢いしましょうね。――そんな声をのこして、煙が流れるように姿を消していただろう)

2020年10月12日 17時02分20秒
(律儀に名乗りやがる。おれに覚えさせるみてえな、いや。覚えさせたな。わざわざ最後に警告して、気にかかるように。そのつもりがあったのかなかったのか。効果覿面だよ、クソッタレが。その声のほか、背後から何か触れた気がした。ダンジョンのかすかな罅を通る風くらいの――つまり殆ど勘だが、振り返る)

お逢い……

(するかよ)
(そこには、誰の姿もなかった)

2020年10月12日 17時02分26秒
(終)
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0