生存への標
崎田航輝
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シナリオID:2902
オープニング
それは冒険者による海賊退治の為の船出だった。
その海賊は辺境の海を荒らし、略奪し、人を浚い、時に斬って捨てるという。正義を嗤い、悪行に腐心する、人々の恐怖の対象だった。
港町の人間も、始めは自身らで対処をしようとした。
だが海賊は並みの船乗りよりも海に慣れ、荒れた波間でも船を駆って仕事をする。力の無い人々に解決が望めぬのは、もはや明らかだった。
だから、救いを求められた冒険者達が――その海賊が現れるらしいという、水平線の先にある孤島を目指したのだ。
けれど航海が順調だったのは、出立した大陸が見えなくなるまでの事だった。
雲が暗んだと思うと、壁のような波が立ち、豪雨が船を襲う。
一瞬前まで快晴だった事が嘘のようだった。
青天の霹靂。
神の悪戯。
時に、空は気まぐれを起こす。
悪を討つ冒険者を嘲笑い、悪に溺れる賊を守ってでもみせようとするかのように。渦巻く嵐は冒険者達の船を大波で弄び……その船体を裂いた。
そして全てを藍色の海が飲み込んだ。
全ては短い時間の事だ。
●闇の後
冒険者は、渇きを覚えて目を開ける。
感じるのは草と土のにおい。始めに見えたのは、暗がりだった。
微かにだけ朦朧としてから、すぐに記憶が蘇るのを自覚する。
自分は海で嵐に襲われ、波に飲まれたのだ。
そこから気を失ったのだろうか、海に投げ出されてから後の事はよく覚えていない。
辺りに目を凝らすと――そこが見知らぬ自然の中だと判った。
近くに浜がある木立だ。
海は遠方で水平線が闇に溶けており、他の陸地は見えない。潮の音と、枝葉のさざめきだけが響く……夜の海辺。
どこかの島らしい。
おそらくは、辺境の海に浮かぶ何処かだろうか。
起き上がろうとすると体に痛みが走った。
見下ろすと衣服が海水で濡れており、肌には幾つもの傷ができている。
長い時間、漂流してここに流れ着いたという事だろう。
冒険者は立ち上がろうとして、ふらついた。
傷があるばかりじゃない。喉が悲鳴を上げるほどに渇いているのだ。
数日間は、流されていたのだろうか。疲労だけでなく、強い空腹も覚えていた。
肉体の状態は、切迫している。しかし冒険者は、事態がそれに終わらない事に気づいた。
がさりと足音がする。
遠目に人影が現れたようで……そちらを窺うと、木立の間を男が歩んでいた。
堅気ではないと、すぐに判った。
腰に下げた刃。するどい目元。賊の類だろうか、まるで辺りを見回りしているような様子だった。
男はすぐに去ったが――事態が思わしくない事は明白だった。
どこかも不明な孤島。
不穏な気配。
渇き、空腹。体に残る傷。
――助けを求めるべきだろうか。はぐれた仲間を探すべきだろうか?
一つの判断が、明暗を、生死を分ける直感があった。
解説
マスターより
リプレイ
濡れた衣服が体の重みを増させる。
強い疲労と冷たさを覚えながら、ストレガ・L・リベルガストラは岩場に背を預けていた。
「島、か」
視線を巡らせ呟く。
船が波に消えた後、岸に辿り着いたのは今し方の事。
何とか泳いでやってくる事は出来たが――自身が弱っている事は、自分が一番良く理解していた。
夜の静謐の下、助けが来る気配は無い。
だが、ストレガはその中で――
(こういう事もある)
――生きてるだけ、儲け物。
どこまでも心は冷静。自身が置かれた状況を、目の前に広がる景色を、ただありのまま俯瞰して眺めるように。
(私が生きてるのだから、仲間もいるはずなのだ。無論、敵も)
と、一瞬前に見えた賊の影を思い返す。
切羽詰まった事態、だがそれ故に取るべき行動は一つと判っていた。
“思考は投げ出さず行動する”。思いと共に、ストレガはまず水気を軽く落とし、道具の無事を確認。
そして意識を集中し……生活魔法で水を作って飲んだ。
気休めだが僅かに活力は出る。
それから辺りを見回し、内側に抉れた空洞のある岩場を発見した。
(丁度良いのだ)
天井があるなら火も目立たない。
一度内陸側の木立に入ったストレガは、枯れ草と朽ちて乾燥した幹を調達。先の岩場を仮拠点にして火を熾した。
暖かな橙の光に、生き返る感覚を覚える。
そこで身体を乾かしながら……ストレガは座って目を閉じた。
今むやみに動けば、動けなくなる可能性も高い。故にまずは仮眠して、夜明けを待つ選択を取ったのだ。
勿論、警戒は欠かさずに。
(夜の火は大抵の獣は恐れるが人間は寄ってくる)
故にいつでも動けるよう気を張りながら、体力を回復させていった。
「無事、か……」
セリオス・オーガストは草むらで状況を確認していた。
浜に近い木立の中だ。
大波に揺られ、飲み込まれた事を思い返す。
生きている事が不思議な程の事故だった。ただ……ここにいる事もまた幸運とは言い切れないと理解出来る。
(下手をすればこのまま倒れるな)
食糧は無い。
水袋はあるが、残った水は少量だった。
だが、セリオスは惑わない。厳しい環境化には、慣れてもいるのだから。
まずはその僅かな水で渇きをごまかすと――木立を歩み始めた。
「自然は豊かだな」
ならば命を繋ぐ糧は必ずあるはず、と。
見える植物、地形、その全てに注目して辺りを巡る。
と、まず見つけたのは山菜だ。
栄養は少なくとも食べ物には違いない。しっかりと食しながら……木の高い位置に生える果実も見つけた。
登って採取すると、ココナッツにも似たものだ。
(助かるな)
地面で殻を割り、中の果肉を口に運ぶ。糖分に油分、それらが補給できると、身体に力が湧く感覚があった。
その後、水音を中心に調べを進め……細い川も見つける。
水こそ命の源。
十二分に渇きを癒やすと――セリオスはようやく人心地がつく思いだった。
(……あれは)
と、そこで遠くに人影を見つけて身を潜める。
先刻も気配を感じた賊だ。
相手の正体が完全に割れるまでは、近づくべきではなないだろう。
故に、今はそれが去るのを待ってから――浜側に距離を取り、比較的安全な木陰へ。
幸い、短い睡眠で体力は回復できる。
だから今は休息を、と目を閉じた。
「こんなことになるなんてね」
闇色の水平線。
傷と疲労。
意識を取り戻したユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアは……自身の置かれた状況を把握して声を零していた。
ここは海の果てで、生死の岐路でもあるようだ。
けれど、故にこそ。
「とにかく」
こんな所で死ぬわけにはいかない、と立ち上がった。
動揺や迷いはない。今すべき事が生きるための行動ならば……それをするだけだ、と。
まず生活魔法で生んだ水で喉を潤すと――
「チョコレートは無事ね」
残ったその一欠片を食べて一息つく。
口の中ですぐに溶けてなくなってしまう小ささだが……それでも、微かな気力が戻る。
それからユニスは目を凝らし、先程見えた怪しい影が居ない事を確認。
(大丈夫ね。なら――)
次に幹の大きい木に登り、周囲を見渡した。
すると島自体は小さなものだと判る。
(北側は開けていて、森は近くね)
そうして南に木々が密集していると把握するとそちらへ向かった。
深い森は、エルフの身にとっては慣れ親しんだ環境。ここなら活路を開ける――思いと共に周囲を探り始める。
するとベリー類の果実を見つけたから、口に運びつつ……更に小川も見つけて水に困らなくなった。
「後は……」
視線を巡らせ、草花の間を駆ける影を発見する。
小型の猪だ。
元々、自分の弓の腕を活かせる依頼を、と受けた仕事。その機会がここで訪れるとは思わなかったけれど――
(有り難く頂かなくちゃね)
ユニスは矢でその猪を狩って。川で処理をしてから……木々に囲まれた暗がりで火を熾し、焼いた肉で空腹を満たした。
「ここなら安全そうね」
一息つけると、警戒も出来る位置で……体力の回復を、と。枯れ草で足元を柔らかくしてからマントにくるまる。
眠気はすぐにやってきた。
「他の人も生きているといいけど」
思いながら、ユニスは目を閉じる。
(うちの女どもを連れて来なくて正解だったな)
岩礁の傍。
自身が漂流してきたのだと理解すると――カイン・ステラはそうペット達の姿を脳裏に思い描いていた。
帰宅が遅れて、預かり先には迷惑を掛けそうだ。顔を見られるのも短くて数日は先になるだろう、けれど。
「今は生きて帰るのが優先だな」
仲間が居るなら、その合流にも向かいたい。
故にカインはまず、治癒の光を生んで傷を癒やすと……生活魔法で水分も補給した。
そして――
(後は、ここがどんな場所かだな)
エーテルの波を走らせ、視覚を研ぎ澄ませ。近くに先刻の怪しい人影が無いと確認しながら、地形も把握し森へ移動する。
そこは自然の色濃い環境で。
(夜間なら見つからないな)
そうと判ると、背の高い茂みに身を潜め――座って木に寄りかかる。
一先ずは疲労を回復する事が優先。そのまま眠りについた。
「――さて」
と、目覚めたのは短時間の後。
まだ夜だが、ショートスリーパーにはこれでも十二分。カインは生活魔法で水袋に水を溜めた。
それは身体を清める為。海を漂流していたからでもあるが――体臭が風に乗って察知される危険も考えての事だ。
そうして全身を洗って拭うと、再び物陰に潜んだ。
食物も確保したい所だが……
(動き方は考えねえとな)
先の人影に助けを求めるのは、危険だろう。仕留めて食べ物を奪うのも、仲間の状態が判らない以上は最適解とは言えない。
故に……カインはまだ悪戯には出歩かない。
残った僅かな干し肉を口に運び、空腹を抑えながら――焦らず、訪れる東雲を待った。
動くのは夜が明けてからだ。
「無事で良かったです!」
浜で目覚めたエルナ・クルプファルツは……栗鼠のプリニウスに大事が無いと分かって、まずは一安心していた。
プリニウスも気遣うようにエルナに身を寄せてくれる。
それに笑顔を返したエルナは、まず物資を確認。どんぐりクッキーのかけらを見つけると、プリニウスにあげた。
「どうぞ!」
自分には僅かな量でも、栗鼠には十二分。
プリニウスは尾を振ってそれをかりかりと齧り……鳴き声を返す。
エルナはピュアウォーターで水も与え、自身の渇きも癒やす。たっぷり飲む事で、ほんの少しだけれど飢えの感覚もごまかせた。
それから周囲を確認。
森が近いと判ると――プリニウスに探索に向かってもらう事にする。
「お願いします!」
元気になったプリニウスは、それに応えて木立の間へ。身軽に木々を縫いながら、食べ物になる植物を探し始めた。
同時に、周りの警戒も兼ねてもらいつつ。賊らしい人影が視界に映ると、エルナはその位置関係を覚えていく。
(北から見回りに来ているみたいですね!)
それを把握する頃には、プリニウスが木の実を見つけたから――採取してもらって。
「ありがとうございます!」
帰ってきたプリニウスを労いながらそれを口に運んだ。
甘いもの、塩味のあるもの、油分を含んだもの。一つ一つは小さくとも、種類も数もあって……ようやく活力も戻る。
「これで動けます!」
その後エルナは、賊から距離を取るよう南の浜へ。波打ち際に紋具――グレイウォッシャーで穴を開けて海水を引き込んだ。
それから石で流入口を塞げば――
「じゃん! 即席生け簀の出来上がりです!」
後は岩礁に座り、釣り竿で糸を垂らす。
これなら体力も使わず、必要に応じて休む事も出来る。
警戒は続けつつ……エルナは夜釣りで次々に魚を手に入れていった。
「ベニテング、無事か」
静かな波が寄せる浜。
テテリカは、傍の大鼬が鳴き声を聞かせるのを確認して、安堵の息を零していた。
無論、ここが窮地である事も理解している。
けれど――
(自然の猛威で死の瀬戸際か……)
抱くのは胸が高鳴る感覚。
独自の価値観は、長く自然と共に生きてきた故もあるだろうか。そこに焦燥の色は浮かんでいなかった。
尤も、この危機を甘んじて受け入れるつもりはない。
食物連鎖に取り込まれるなら、愛する大樹海の方が良いし――
(猛獣の糧になるのはともかく、人に殺されるのは嫌だ)
一瞬前に見えた人影を思い返す。
あれは賊だった。島の位置を考えると、ここは当初の目的地の可能性も高いだろう、と。
ただ、きっと仲間も居るはず。
ならば目指すは合流。そして――
(船もいただくか)
決めれば早く、テテリカは島の内側へ。ベニテングと分担して辺りを索敵する。
視界が悪い場所へはエーテルの波も奔らせながら――身を隠せる森があればそこへ向かった。
「ここなら水や食糧もありそうだ」
自然は猛威でありながら、恵みでもある。
それを実感するように……まずは茂みからウリの仲間を見分け、水分の豊富な野菜を手に入れる。同時に落葉樹から数種の木の実も見つけた。
水分に糖、油分。
ベニテングと分け合って栄養を補給し……小川も見つけて喉を潤すと、一息つける。
(後は体力だ)
と、テテリカは乾いた植物と蔓も拾いながら、木立の奥へ。
枝葉に囲まれた場所で……担架を蔓に結び、ハンモックに似た寝床を用意。そこに草葉を敷いて、まずはベニテングをのせた。
「交代で睡眠だ」
ベニテングが小さく鳴いて、まるくなる。
それを見つつ、テテリカは警戒も続けた。
●集う者達
紫を含んだ空が徐々に眩さを増す。
明け方。
ストレガはその早くから動き出していた。
この明るさなら視界には困らない。後は音を頼りに水流を捉え――まずは川を見つけた。
道中、森で香草を、海岸で岩塩も発見して採取。
次に川沿いを捜索し――
「ここは拠点に出来るのだ」
洞穴を見つけるとそこで竃を作る。
その後獣道を追い、鹿を発見。獰猛らしかったが、惑わず包丁刀で仕留めて獲物にした。
そうして血抜きをした肉を、洞穴で焼いて――野草と共に食す。
(やはり糧は源なのだ)
香ばしい匂い、脂の滴る旨味。
空腹が癒えると力が漲るのが自覚出来る。
その後休憩を挟み……鍋に溜めた水を使い、余った肉と骨を香草と塩で煮込み……日持ち出来るようにした。
「うむ」
これで準備は万端。
体調も万全となったストレガは――合流と敵地調査の為に乗り出す。
セリオスは夜分から仲間の捜索に動いていた。
賊の数が多い事も分かり、決して自由な行動は出来なかったが――
(仲間がいるなら南だな)
逆に、見張りが手薄な場所も把握出来てきた。
空が白む頃には、おおよそその地図を脳内で描く事も出来るようになって――程なくその一角、南東の森で人の気配を捉える。
(賊ではないな)
エーテルの波も広げつつ、動きからそうと判ると……一応注意しつつ近づいた。
すると――
「無事だったか」
「そちらも、なのだ」
姿を見せたストレガもこちらを確認し、頷き合うのだった。
時間を置かず、セリオスは木立の向こうに目をやる。
「向こうにも誰かいるようだ」
日が昇り始める中、カインも動き出していた。
明るい時分でも森は隠密に適しているが――
(身を隠しやすいってことは、相手もそう認識して侵入者を警戒するってことだからな)
あくまで四方に警戒を怠らず。
自生するナッツを見つけると適宜採取。更に小川で魚を見つけると……矢を放って仕留めた。
そうして岩場の影で火を熾し、焼いた魚を食す。
(生き返る気分だな)
ふわりと焼けた身に、熱々の脂。飢えた体に生気が戻るのを感じた。
更に小型の猪も見つけて狩り――鏃で血抜き。気取られぬように後始末も忘れずに行って、食糧も十分に確保しつつ。
(皆を探さないとな)
自身が島の東に居るのは判っていたから……北を避け、時計回りに捜索を始める。
すると程なく、木々の間を動く影を察知した。
そしてエーテルを奔らせ、賊でないらしいと判断するとそこへ歩み――ストレガ、そしてセリオスを見つけたのだった。
「平気だったか」
言葉に二人も頷くと……共にまだ足を伸ばしていない西側へ歩み出す。
(交代制で動いているみたいね)
ユニスは森に潜みつつ、賊らの動向も調べていた。
北に彼らの拠点がある事や、その配置の一部も既に把握している。
彼らが件の海賊だった事も確かになり――
(悲運、で終わらせずに済むかも知れないわね)
これは勝てる戦いになる可能性もある、と。
後は仲間が無事でさえ居てくれればと、つぶさに周囲に配っていると――
「……?」
そこで東から近づく影に気づいた。
すぐに判ったのは、動きが明らかに賊とは違うという事。
気配にも心当たりがある。ユニスは辺りの警戒を緩めず、そちらへ急いだ。
「良い感じになりました!」
エルナは岩の上で干物にした魚を見て、満足げな声を零す。
あれから休息を挟みつつ、釣りを続けて十分な食糧を揃えていた。
並行して、プリニウスにも動いてもらい……島の地形の調査、そして仲間の捜索も行っている所。
と、プリニウスが意思を伝えてくる。
南西側の森にて、遠方に動く影を捉えたのだ。
賊が見回りをする挙動とは違うようで――
「仲間かも知れませんね! 出発です!」
エルナはすぐに決断すると、干物を纏めてそちらへ移動を開始した。
(目立つ地形か、または水場の辺りが有力そうだな)
テテリカは合流を目指し、森の西から南下を始めていた。
奇岩や巨木に注意を払うのは、仲間もそれを目印にする可能性があると判断しての事。水場は単純に、生存に必須だからだ。
故にそれらを辿りつつ、ベニテングにも時折、樹木の高い位置で周囲を確認してもらう。
すると――
「動いたな」
ベニテングの視界で、遠方の枝葉が揺れるのを捉えた。
「位置は……川の上流か」
賊でないと確信出来たのは、周到に警戒しているらしい事が判るからだ。
「行くか」
それにベニテングも鳴いて応え、共に木々を縫ってゆく。
すると向こうもまたこちらを察知して近づいてきた。それは――ユニス。
「大丈夫か」
「ええ、そちらは?」
応えるユニスに、テテリカも頷きを返し……程なく別の気配にも気づく。
枝葉に隠れた小さな影。こちらに姿を見せたその栗鼠は――プリニウスだ。
「相棒は無事か?」
テテリカが膝を下ろして言うと、プリニウスは肯定するような鳴き声で後ろを見る。
するとそちらからエルナがやってきて、合流。まずは互いの無事を喜んだ。
それから皆で東に向かうと……こちらへ向かっていた三人とも再会を果たす事が出来た。
「一応、肉は準備してあるのだ」
森の傍の洞穴。
皆はストレガが案内したそこで、一度状況の確認を行っていた。
全員、歩き通しでもあったからとストレガが鍋を見せると……カインも獣肉を置く。
「じゃ、こいつも焼くか」
「干物もありますよ!」
エルナもそれを並べると……皆も山菜や木の実を揃え、まずは食事。英気を養いながら情報を交わす。
「敵拠点はそれなりに堅牢みたい」
ユニスが把握した事を伝えると、セリオスは頷いた。
「見回りに出ている者を狙い、数を減らしてから挑むのが良さそうだ」
「今が好機かもな」
テテリカが言うのは、合流前、一隻の船が島を出ていくのを目撃したからだ。
今居る海賊は本来の半数。
「何とかなりそうね」
それでも多勢相手だが……皆が揃ったのなら、勝ち筋があるとユニスは結論を出せた。
「船も欲しいし――海賊、ぶちのめすか」
カインが言えば、それを合図に皆は頷き合って作戦を開始する。
●反旗
辺境港湾の一部で恐れられるその海賊は、「荒波の民」を自称して略奪を繰り返していた。
その拠点となる島でも常に、構成員の半数が待機しており……見張りも欠かさない。
森は深いが、勝手知ったる環境。
海賊達は今日も朝から数人で分かれ、そこを巡回にあたる――と。
ひゅう、と風音が響く。
「……!」
一瞬遅れて、海賊の腕が血を噴いた。
それで海賊はようやく、何者かから襲撃を受けたと悟る。
だが次の行動を取る前に、木立の間で二の矢を番える影が居た。
それこそ、セリオス。
「大人しくしていてもらおう」
瞬間、放った一矢が真っ直ぐに海賊の腹を貫き……その体を地に崩折れさせていた。
更に、遠くない場所を歩いていた別の海賊へも、ユニスが射撃。その身体を穿って倒れ伏させている。
「まずは順調ね」
「ああ」
セリオスは頷く。作戦通り、まずは見張りの数を減らしていたのだ。
それが順調に進むと、皆は北へ移動。そこにある拠点を確認した。
見えるのはバリケード、小屋、船の停泊場。
確かに堅牢でもある。
だが、今居る人数は二十程度。十分に相手を出来る規模だった。
船を行き来する者もいるが――
「船の破損は避けたいな」
テテリカが言えば皆は同意して次の策に動く。
それは即時の急襲ではない。
時間が経過し、海賊達が丁度、見回りが戻らぬ事に違和感を覚え始めた頃。森から薄っすらと――煙が上がり始めた。
海賊達は、それが仲間でないとすぐに察知。
誰かが侵入し、野営をしているとでも考えたか。船の中に居る者も含め、多くの構成員でそちらへ向かい始めた。
が、それこそ囮。
彼らが踏み込んだそこにあったのは……野営地に偽装したただの焚き火。
それにはっとして、海賊達が見回す――その瞬間。テテリカが離れた木陰から魔弓の弦を弾き、一人を貫いていた。
『畜生、侵入者だ!』
海賊らは焦燥し、攻撃の出処を探そうとする。
が、その頃には既にエルナも弓を引き絞っていた。
番える矢は、輝く光の塊。
意識を集中し、そこに流動するエーテルを一層鋭く研ぎ澄ませながら――放たれた矢は敵の眼前で炸裂。集まる数人を無数の破片で巻き込んだ。
その威力で多くは倒れるが――
「授恵者さんがいるみたいです!」
耐えた数人が、こちらに気づいて敵意を向けてきていた。
けれどストレガは焦らない。
「ならば足を止めるのだ」
言葉と同時、手を翳して魔力を揺蕩わす。
刹那、弾ける雷光が形を取り始めていた。雷蛇大禍――名の如くうねり、絡みつくそれは海賊達の動きを鈍らせていく。
だけに終わらず、ストレガは逆の手を下に振り下ろす。すると強烈な重力場がそこに生まれ……敵集団の動きを封じ込めた。
その隙に皆は攻撃を集中させ、一人、また一人と沈めていく。
後続の敵は澱嵐を避けてこちらに向かってくるが――その足元に矢が突き刺さる。カインが狙いすましていたのだ。
(力は使い切らないようにしねぇとな)
あくまで島に居る賊は半数。
故に後の敵を叩けるよう、技は残しておきながら。
同時に気は緩めず――カインは精密な射撃。こちらに近づかせる前に、殆どの賊を気絶させていた。
「……あとは、あいつらか」
と、目を向けたのは、集団から距離を取っていた数人だ。
それは海賊の首領格と、それを守る三人の仲間。
「やれ!」
首領の言葉と共に、彼らはこちらへ矢を射掛けてきた。
全員が授恵者なのだろう、それは強力。だが紙一重で回避を成功させたユニスは――
「それ以上はやらせないわ」
引いていた矢へ重力波を纏わせて射撃。首領を穿って動きを鈍らせていく。
その間にセリオスが、鏃へ白色の光を輝かせていた。
雪の如く澄明に、陽光の如く鮮烈に。放つその矢撃は凄絶な威力で敵配下の一人を一瞬で気絶させる。
「このまま攻めきるぞ」
「ああ」
応えるテテリカも射撃態勢。
撃ち出した矢を光の破片に変えて敵を巻き込むと――エルナも鮮やかな光を矢として射出。千々に砕ける衝撃で相手の体力を削ってゆく。
「来ます!」
エルナの言葉の直後、相手も矢を返そうとするが……皆は直前に十分な間合いを取っている。
「ここで倒れてる場合じゃないからな」
と、直後にはカインが再び相手を射程に収めて射撃。
素早い動きでも、狙いが淀む事は無く――精確な軌道を描いた矢で首領の足元を貫き膝をつかせていた。
「あと少しだ」
「これで終わらせるのだ」
と、声を返したストレガが手を伸ばし……エーテルを明滅。無数の光弾を生み出していた。
雨の如く注ぐそれは、膚を焼き尽くさんばかりに苛烈。配下らを地へ倒し、首領の体力も底をつかせていた。
静けさが戻ると、ユニスが相手へ声をかける。
「武器を捨てて降伏するなら、これ以上は攻撃しないわ。無駄に命は捨てることはないでしょ?」
海賊達は呻くが……最後にはその言葉を聞き入れた。
その後、一行は海から戻った海賊達も打倒。彼らを船に運び込んだ。
「これで全員だな」
「ええ、何人かは船を動かす為に働いてもらいましょう」
テテリカにユニスが言うと……セリオスも頷いて、残る賊を厳重に拘束した。
「では、出るか」
それに応えて、皆で船に乗り込み――はためく帆と共に、島を離れ始めた。
前方の雄大な海を、エルナは見つめる。
「脱出成功ですね!」
「うむ」
ストレガは一度島を振り返っていた。
そこにあったのは確かに、死と隣り合わせの時間だった。
けれどそれも、自身の経験と知見に蓄積されていくだろう。
カインは大陸での再会を心待ちにしながら……思い出したように再びの空腹を覚える。
「帰ったら美味い飯食お……」
その機会も楽しみにして――今暫くは晴れた空の下、水平線を眺めていた。
マスターコメント
ミドルシナリオ難しい 報酬:標準6 / 6〜8人
2023年04月20日 23時20分13秒 公開
相談掲示板
シューターのユニスよ。 依頼の成立はハッキリしないけど、ある程度は今の内に行動の方向性は表明しておくわね。 私は普通に島に流れ着いたことに。 生活魔法で水を作り、当面の渇きに対処。 周囲の様子を確認しながら見晴らしの良い所で、暗視で周囲の地理とか環境を確認。 森を見つけたら、エルフなので自然にそっちに向かうわ。 森の中で食料や休む場所を確保。 そこから海賊達の様子を遠目で確認。 他の冒険者が戦いとか行動を開始したのを見て取ったら弓での援護を開始。 そんな風な流れを考えているわ。
エルヴンシューターのエルナです!みなさまよろしくお願いしますね! 成立ですね!頑張りましょう! >個人行動 私も流れ着いた事にしましょう! 喉の乾きはピュアウォーターで対処!飢えも少しは誤魔化せるかもしれません! 僅かに残ったどんぐりクッキーはリスさんにあげます!私にとっては僅かな量でも、リスさんなら十分な食事になりそうですし! そうして元気になったリスさんに森に向かってもらって、食べられそうなきのみを取ってきてもらおうと思っています!ついでに捜波で敵さんの位置も確認して貰います! その後は見つからない位置に移動して、波打ち際に穴掘り紋具で穴を開けて、海水を引き込んで即席の生け簀作りをします! 後は日が出るまでひたすらお魚を取りましょう!夜釣りです! 日が出たらお魚さんを干物にしつつ、リスさんに島の地形や他の方の位置などなどを探ってもらいつつ合流を目指していきたいです! と、一先ずはこんな感じで考えています!
テテリカ、シューターだ。よろしく。 俺はひとまず真水や食料や身を隠せる場所も求めてから、海賊退治に乗り出すことになりそうだ。 体力を取り戻しても、単独で敵に挑むのはなかなかに高リスクに思える。 せめて数人合流できてから攻勢に出たい。 島に目立つ奇岩や巨木があれば、冒険者が合流する目印になるかもしれん。 俺の方でもエーテルリンクの獣で人の気配を探してみる。 識字率を考慮すると、複雑な文字が読める下っ端海賊は少ないだろう。一部の海賊に読まれる危険性はあるが、何か情報を残すのに使えそうか……?
単独で敵に挑むのは高リスク、の部分に追記を。 単独で海賊本隊に襲撃をかけるのは危険、という意味だ。 敵と遭遇して応戦することは生きるために大切な選択の一つだと思う。
シューターのカイン・ステラ。 よろしくな。 持っていく汎用スキルは今の所生活魔法とショートスリーパーを予定している。 あと、今回に関してはペット同行なし、だ。 俺も食料確保しつつ合流優先かな。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 ひとまず各自体力回復してから合流というていでいくのだ。 川を探して川の近くを拠点にしようと思うのだ。
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺も他の面子同様安全の確保を最優先だな それが済んだら捜索に向かうつもりだ できたらある程度集まってか海賊退治にしたいところだな