【妖薙】蒼き海に揺蕩う
崎田航輝
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シナリオID:2598
オープニング
シャルガネ、臥魅郷。
その絢酉神社にて、静霞は冒険者達へ頭を下げていた。
前回、絢酉桜寿――静霞の祖先である巫女が残した予言書に従い、妖怪の大群を退けて暫く。
あれから妖怪達が現れる事はなく、郷は日常を送る事が出来ているという。
あの時逃げた個体も、儀式によって殆どが弱っていた。あの妖怪達は大群としては壊滅したと言って良いだろう。
「それでも……まだ脅威が消え去ったわけではありません」
静霞は予言書を広げる。
そう、予言に曰くあれは脅威の前段であった。
妖怪達が逃げていったという海の方も気になると静霞は言う。
「きっとそこに、何かがあるのでしょう」
事実――予言にもまた「海」の文言が記されているらしい。
郷の滅亡を防ぐ為に、とるべき行動もまたそこには書かれている。
だから、と静霞は冒険者達を見つめて。
「郷の未来の為……手を貸してください」
●海妖
「皆様には今回、その海へと向かって頂く事になると思います」
静霞は予言書を改めて読み解いてゆく。
そこに記された文章は――“蒼き大海に伸びる闇、蛇の道の蛇を絶て”。
大海とは、文字通り東の海の事だろう。
「読んでいくと、そこにいる蛇のような妖怪を討つ必要がある、と書かれているんです」
曰く、蛇とは海底に潜む異形らしい。
水中に細長い地下洞窟のようなものがあり、そこから現れるから蛇の道の蛇、という事のようだ。
「この蛇が“巨大な闇を守る存在”なのだと書かれています。巨大な闇、というのが……郷を滅ぼすかも知れない脅威の事でしょう」
郷を脅かすもの――それは、遠い海から今も陸に近づきつつある何かなのかもしれない。
蛇はどうやら、その露払いのような存在と言えそうだ。
「こちらが先んじてその蛇を退治する事で、相手の出鼻をくじく……というのが、予言における対処法なのだと思います」
とはいえ、その蛇自体も強大だと記されている。
蛇と共にその右腕のような存在もいるらしい。
「……危険な戦いになってしまうかも知れません」
それでも皆様ならばきっと、と。
静霞は声音に真摯な信頼を込めていた。
海までは、馬車で送る事が出来ると言う。
「蛇の道は岬のそばにある、と書かれています。妖怪の逃げた方向と合わせて考えると……場所も特定できそうです」
その近辺には、漂着民時代の古い社があるらしいという。
あるいは妖怪達は、神聖な場所を破壊しようとしているのかも知れない。だとすれば、場所はそこに間違いないはずだ、と。
それから、海での行動の為に木の舟を用意したという。
「頑丈なものではありませんが……これがこちらに出来る、皆様への数少ない助力です」
後はただ健闘を祈る事しか出来ないけれど、と。
「戦いに向かう際は、是非、お気をつけて」
●賑わいの兆し
「帰還が叶いましたら、また郷でも過ごしていってください」
と、静霞はそう声を明るくした。
「郷の中も皆様のお陰で、雰囲気が変わりつつありますから――」
曰く、郷は以前よりも賑わっているという。
何でも、最近は観光に訪れる人も現れ始めているらしい。実際、この神社からでも郷の空気の違いは感じ取れた。
「お祭りの効果があったのだと思います」
郷の名前が、外にも多少は知れるようになってきたのだろう。
同盟から商機を感じてやってきた人々もいて……景気の面でも良い波が来そうな兆しはあると言った。
「若い方々も、前より郷の事を考えるようになって下さっているのですよ」
郷の若者といえば、「同盟で商人として大成する」という、一種の夢物語のような流行に傾倒する者が多かったが――
その流行りも今では収まりつつあるのだという。
祭りの楽しさや、郷の変化を感じての事かも知れない。最近では「郷の中で何か出来ないか」と現実的な考えに向かっているようだ。
「郷の方々の、神社に対する認識も以前とは少し変わったようです」
神事としての祭りが成功した事が一因だろう。
伝統は堅苦しいばかりではない――そんなふうに実感して、お参りに来る人々の数も前より増えているのだとか。
「皆様が郷を守って下さっているからでもあると思います」
郷の人々も、妖怪の脅威は感じている。
冒険者達が神社に力を貸す形でそれに対抗している事が、神社への印象の変化を齎してもいるのだろう。
「皆様が、郷の希望です」
それでも安全を第一に、と。
「どうかご無事で」
静霞はそう頭を下げて冒険者達を見送った。
解説
マスターより
リプレイ
臥魅郷を遠く西に望む海。
馬車で到着したその水辺には、静けさが漂っていた。
波も穏やかで見た目に異常は無い。けれど――
「何か、居るわね」
空気の濁りに、ロゼットは呟きを零す。
間違いなく、それは妖怪であろう。ならば前回の軍勢に気づけていなかったら、今頃郷は海と陸からの襲撃で大混乱だったに違いない。
思えばこそ、ここでも負ける訳には行かないから。
「郷も以前より活気づいているんだし。彼らの平穏を守るため、戦果を持ち帰りましょう」
「もちろんです! 来たる脅威に対抗する為に――先ずは先触れたる妖怪さんを退けましょう!」
エルナ・クルプファルツもぐっと気合を入れて……皆と共に舟を馬車から下ろしていく。
と、それを水に浮かべる前に、周囲を警戒するのがヴィナス。
「すぐ近くには居なさそうだけど――」
一帯は無数の川が流れ込み、海とも川の終わりともつかない地形になっている。少し離れたその水面に、時折僅かな揺らぎが見えていた。
「あの辺りを調べようか」
言葉に皆も頷き、舟に乗ってゆく。
水中の得手なイヴェール・イリュジオンは、舟を予備として浮かべおきつつ――自身は潜行。
(しかし、この時期の海に入る事になるとは……)
心に呟きながらも、泳ぎは巧みに。素早く進み、水の底に怪しい影を見つけていた。
それは半魚の妖怪――河童。
同じく潜っていたサイラスも、隣の川底に同じシルエットを発見。一度水上に出てから皆へ伝えた。
「纏まって位置してるな。水上に獲物が来るのを狙ってるのかも知れない」
「他に怪しい気配はない、か」
言って弓を取るのはセリオス・オーガスト。
視覚を研ぎ澄ませ、エーテルの波も走らせて――その川底以外に異常が無い事を確認して。
「気づかれる前に仕掛けるか」
「うん、行こう」
言って杖へ魔力を注ぎ込んでいくのがトゥーリ。
十分に間合いを取って、妖怪に察知されぬ間に――杖を振り下ろし、宙に浮かべた光弾を高速で撃ち出していた。
降り注いだ衝撃の雨は、水底にまで届いて着弾。河童の半数を巻き込み、その膚を灼いていく。
すると河童達は水上に出ようとし始める。
が、その頃にはイヴェールが接近。水中で宝剣を構えていた。
(ヨウカイというのは聞き馴染みかったので何かと思いましたが……クリーパーですね)
見据える河童の姿に、イヴェールは納得する。
こういった異形の、東方における呼び名の一つという訳だ。
そしてクリーパーであるならば――
(斬れば死ぬでしょう)
刹那、イヴェールは一閃。鋭い衝撃の刃を放って一体を両断した。
そのまま、傍の三体が水面へと出てくる前に……ヴィナスが握る刃に力を込め、エーテルを注いでいる。
瞬間、渦巻かせた衝撃の波を放出し、三体を一気に追い込んで。
「後はお願いするよ」
「ああ」
応えるセリオスが光の矢を顕現。強烈な速度で撃ち出して、爆裂させたその衝撃で三体を四散させた。
残る河童が焦燥したように水上へ出てくる。
と、そこへ狙いを定めていたのがモネタ・シャローニャ。クロスボウから真っ直ぐに射出した矢を一体に突き立てて。
「このまま仕留めてしまおう」
「はいっ! どんどん行きますよ!」
エルナも杖を差し向け、鮮麗に煌めく光の球を形成。その全てを撃ち出して一体を灼き祓いながら……残る三体も巻き込んでゆく。
河童達は堪らず水に潜ろうとするが――その後方、水中から既にサイラスが迫っていた。
気づいた河童は攻撃を避けようと水を掻くが、サイラスはそれを凌ぐ動きで追いすがって射撃。二体を同時に貫いて沈めた。
「あと一体か」
「任せて」
水上にでたサイラスに応えるのはロゼット。
その一体は既に水に潜り、こちらの裏へ回り込もうとしていたが――ロゼットはそれを見逃さず、魔力の矢を形成。放ったそれを正確に着弾させて河童を殲滅した。
トゥーリは改めて周囲を見回す。
「浅瀬には、もう敵はいないね」
皆も頷くと、警戒を続けながら舟を漕ぎ出し――陸から離れてゆく。
大きな気配は、その先にあった。
●闘争
陸を遠目に望む海域。
淡い霧の立つそこは、見通しこそ悪くはないが……空気に不可思議な淀みがあった。
「そろそろ、現れる頃かもね」
ヴィナスが言ったのは、風も弱いのに波が強くなってきたからだ。
「洞窟らしきものもありましたね」
と、泳いで水中も見ていたイヴェールが顔を出すと――サイラスもまた頷く。
「あれが蛇の道ってやつだろうな。出てくるならそこからだと思う」
実際、エルナがエーテルの波を奔らせると……その洞窟の奥から近づく、何かの存在が感じられた。
「出てきます!」
そうしてエルナが言った直後、見えたのは大きな二つの影。
洞窟から泳ぎ出た蛇の如き怪魚――イクチと、その傍に控える入道、海坊主だ。
渦巻く水流に、ヴィナスは成程と呟く。
「人型の方が波を起こしていたみたいだね」
「では一先ずあちらを」
と、イヴェールが先んじて海坊主への対応に向かってゆくと……ヴィナスはイクチへ。まずは先手を取って斬撃を飛ばしていた。
すると傷を刻まれたイクチが……敵意と共にその巨体を水上に現す。
体は細長いが、決して脆くは見えない。掴まれば容易に逃れられないのが、その姿からも想像できた。
「下は空気の無い、細長い洞窟……。引きずり込まれたらアウトだろうな」
「やられる前にやるしか無いな」
と、ヴィナスに応えて弓を引くのはセリオスだ。
急襲を受けぬよう、十分に間合いを取りながら……それでも狙いは外さず、矢をイクチの胴へと突き立ててゆく。
イクチは反撃に泳ごうとする、が、そこへ海中から狙いを定めるのがサイラス。放つ一矢で体を穿ち、隙を与えない。
この間に、イヴェールは海坊主の至近。
海中ではより強大に見えるその姿にも、怯まずに……宝剣を突き出してエーテルの塊をぶつけてみせていた。
海坊主は自然、イヴェールに敵意を向けるが――
(思い通りに動きましたね)
それこそがイヴェールの狙い。反撃の抱擁を受けながらも、水流を操作しながら衝撃を弱め……負傷を最小限に弱めていた。
尤も、それでも一撃は軽くはないが――直後にはロゼットが祈りを込めて癒やしの輝きを顕現。イヴェールを包み傷を和らげている。
「まだ攻撃を狙っているわね」
「任せて下さい!」
攻勢を緩めぬ海坊主を目に、ロゼットが言うと……応えて杖を翳すのがエルナ。
その先端に眩い光を凝集させ、魔力の弾として発射。鋭い威力で海坊主の体の一端を灼いてみせた。
水上では、イクチが体をうねらせてこちらに巻き付こうとするが――
「させないよ!」
後方から杖を掲げるのがトゥーリ。
刹那、放出された魔力が風に乗って霞となり、イクチを取り巻いて。視界を茫漠とさせるようにして、その攻撃を失敗に終わらせた。
「今のうちに!」
「ああ」
次には、声を返したセリオスが素早く射撃。風切り音と共に飛来したその矢が、イクチの膚を深々と穿ってゆく。
海域に低い啼き声が轟く。
それはイクチの、咆哮にも似た声音だった。
或いは苦渋の表れだったろうか。イクチは海上から水中へと潜り、下方へと潜行し始めていく。
セリオスは海を覗き込む。
「撤退、という訳ではなさそうだな」
「洞窟に向かってるな、あれは」
と、伝えたのは息継ぎに出てきたサイラス。イクチが海底を目指す姿を確認していた。
「自分を治療しているみたいだし。守りに入ってるんだろう」
「それなら」
ロゼットは言って海坊主へ視線を向ける。
「あの巨人から先に倒しましょう」
「その方が良さそうだね」
ヴィナスも短剣を握り直して頷いた。
海坊主は未だ海中。
イヴェールにしかと引き付けられているから――ヴィナスはその隙に舟上から狙いをつけ、一撃。斬線を飛ばして脳天を穿ってゆく。
海坊主はそれによって水上にも目を向ける、が……その下方。水上から降りていたサイラスが、 竜花琴の弦を引いていた。
直後、放った鋭利な射撃がその相貌に突き刺さる。
海坊主が呻きながら体をよじると、ロゼットもそこへ魔矢を撃ち当てながら――
「一気に攻めきりましょう」
「はいっ!」
応えるエルナも魔力を固めて発射。相手の体力を削ぎ落としてゆく。
海坊主はそれでも尚攻撃的に、イヴェールへと抱擁を試みるが……その直前、トゥーリがそちらへもエーテルの霞を放射していた。
すると海坊主の眼前に留まった深い濁りが、その狙いを鈍らせて。生まれた隙に、イヴェールは回避を成功させていく。
その頃にはセリオスが矢へ煌々とした輝きを湛えさせていた。
白銀に瞬くそれは、極大な光の塊へと変貌してゆく。刹那、一直線に撃ち下ろされたそれが海坊主を貫通していった。
泡を吐き、揺らぐ海坊主。
イヴェールはその姿を見据え、宝剣を握り込む。
(そろそろ終わりですね)
水上からもそれを見取ったロゼットは、棍から生み出した光をイヴェールの剣へと注ぎ込み、その鋭さを増す。
トゥーリもまた、海坊主へ錆色のエーテルを発射。最後に守りを脆くさせて。
「後はお願い!」
トゥーリの言葉に応えるよう、イヴェールは水中で加速。
鮮やかに翻りながら、裂帛の袈裟斬りを叩き込み――海坊主を両断。その体を四散させていった。
遅れて、イクチが洞窟から上がってくる。
皆は間合いに注意しながらも、そこを囲い込むように動いていく。残るのが一体となれば、後は猛攻するだけだから。
(ひとまず撃つか)
まずはサイラスが射撃。目玉と思しき部位を潰して動きを僅かに澱ませる。
そこへエルナとセリオスも攻撃を重ねてゆくが――イクチは未だ沈まず。長大な体をうねらせ、イヴェールを締め上げてきた。
だが、イヴェールも上手く盾を噛まして威力を抑えると――
「すぐに癒やすわ!」
ロゼットが清浄な光を降り注がせ、不調を即座に拭い去る。
トゥーリも回復に助力しながら……それでもイクチを見下ろして呟く。
「まだ結構体力が残ってるように見えるよ。最初の方の傷は、洞窟で半分以上、回復しちゃってたのかも」
「ならば試してみましょうか」
本能か執着か、どちらが優先されるか、と。
一度水上に出ていたイヴェールは、殺気を込めたエーテルをイクチへ撃ち当てていた。
直後、ヴィナスの放った衝撃波が命中すると……イクチは僅かに惑う挙動を見せる。
植え付けられた執着と自己の安全の間で揺れているのだろうか。しかしすぐに下方を向くと、そのまま洞窟へと泳ぎ始めた。
イヴェールは成程と呟く。
「あくまで本能優先ですか」
だがその声音に焦りはない。
相手に合った策をとるだけ、と。次にはイクチを追うように水中へ潜り出した。
一方、エルナもまた――相手が下がった時の為の手は、用意してある。
「始めますよ!」
言葉と共に杖を掲げ、魔力を流動させ始めた。
するとそれによって生み出される光が、徐々に膨大な輝きを帯びてゆく。時間に応じて力を溜める、切り札とも言える技だった。
それに応ずる形で、トゥーリは潜りゆくイクチへエーテルの糸を放出。その体を絡める事で……エルナの攻撃が回避されるリスクを減らしてゆく。
「皆も準備を!」
トゥーリの言葉に頷く皆もまた、それぞれに態勢を整える。
その間、イクチは深くへ下がりながら自己の体力を癒やしているが――イヴェールが劣らぬ速度で泳ぎ、追いすがりながら接近戦を仕掛けていた。
イクチが回復を続ける為、剣撃を重ねても致命傷は与えられない。だが、相手の体力が高い水準に戻る事は十分に阻止できる。
そうしてイヴェールは可能な限りのダメージを与え、イクチが洞窟から取って返せばさらなる迎撃を加えつつ、水上へ向かって――
「今攻撃を集中させれば、追い込めるはずです」
「了解です!」
戻ったイヴェールに応えたエルナが、魔力を溜め切っていた。
更に、トゥーリもエーテルの波動を解放。仲間と共にエルナの能力を引き上げて万全を期している。
「これでいけるよ!」
「はいっ! スーパーエルナ砲! 発射です!」
刹那、エルナは魔弾に乗せて力を解放。一瞬、蒼空すら暗んで見えるほどの……莫大な光の塊を撃ち出した。
周囲の海水を蒸発させながら爆裂したそれは、絶大なまでの威力で着弾。イクチの半身を粉々に吹き飛ばす。
イクチは堪らず、再び潜ろうとするが――
「逃がさないわよ! 光よ、鎖となって我が敵を封じ給え!」
ロゼットが光の鎖を顕現。眩く撓らせたそれを振るい、イクチの体を繋ぎ留めた。
イクチはそれでも藻掻こうとするが……セリオスがその暇すら与えぬよう、残った胴部に鏃を突き立てていく。
「頼む」
それに応じるのがサイラスとヴィナス。
まずはサイラスが下方から射撃を敢行し、イクチの体を縦に貫いてみせると――
「これで最後にしようか」
ヴィナスが同時に短剣で一閃。飛ばした衝撃で、イクチの命を切り裂いた。
戦いの後、皆は浜へ戻って互いに無事を確認していた。
傷があれば癒やして……一息ついたエルナは、近くにある社に立ち寄る事にする。
「ここですか――!」
岬の傍にあるそこは、静霞の言う通り、歴史を感じさせる古さがあった。
調べてみると、その度合いは予想以上で……あるのは鳥居と小さな祠だけで、社としての名も不明。
潮風による風化もあって、漂着民時代のものとしか判らない。
ただ、鳥居も社も海を正面にしていて――漂着民はきっと、ここから故郷に思いを馳せていたのだろう。
だからエルナも静かにお参りをして。
古い時代を思うよう、社と海を暫し見つめていた。
サイラスは帰還する前に、河童や海坊主、イクチの残骸を回収していた。
だけでなく、海に潜って――改めて洞窟へ向かう。
(何かあるならここだろうしな)
戦闘時は見られなかったが、今なら妖怪もいない。一応注意深く、中を探索した。
すると確かに細長い道が続いている。
沖の方向ではあるが、もっと何か特定の場所へ続いているようでもあった。
そこで奥に進んで見ると……ふと、少しずつ高度が上がり始める。
上方のどこかに続いているようで――洞窟から出て、海上からもその先の方向を確認してみることにした。
すると――
「あれは、島か?」
遥か彼方に僅かな大地の盛り上がりを見つけた。
大気に霞んで見えない程の距離だし、潮の満ち引きで隠れてしまいそうな小ささだ。だが、確かに島には違いない。
或いは、あれが妖怪の出処だろうか。
これ以上は強度のある船でなければ進めないだろうけれど。
「ま、何かありそうだな」
それを収穫に、サイラスは戻る事にした。
●先を見据えて
「ご無事に帰ってきてくださって、嬉しいです」
臥魅郷。
絢酉神社にて、静霞はそう皆を迎えている。
何より敵を討伐出来た事。郷が平和へ更に近づいた事に、労いと礼を深く述べていた。
皆も持ち帰った戦果を喜ばしく伝えてから一休み。
翌朝、俄に賑わい始める郷で――それぞれの時間を過ごし始める。
イヴェールは戦闘時からは服を着替えて……散策を始めていた。
「色々とお店もあるようですね」
目立つのはシャルガネならではの味を売る屋台。
その中で米菓の店を見つけたイヴェールは、早速買ってみて実食。
「成程、これは」
かりっとした歯応えと優しい甘味に頷いて――更に食べ歩き。焼きとうもろこしやイチゴ飴なども味わいつつ、お土産でも東方風の色濃い品を中心に眺めてゆく。
「この辺り、良さそうですね」
と、目を留めたのは浴衣だ。
郷では一般的なものだが、オリエンタルで美しい。様々な飾り物に使える組紐も一緒に買って……更に散策を続けていった。
ヴィナスとエルナは神社に残り、静霞と話をしていた。
曰く、静霞は郷の為に次はどうすればよいか悩んでいるという。
だからヴィナスは――商業的な成功例として、同じシャルガネにある街について話す。
「倭桜ノ街……は、知ってるかな?」
「ええ、名前は」
静霞が頷くと、ヴィナスはその街の空気や営みについて語って聞かせた。
「定期的に冒険者を招待している。意見を求められることもあるよ」
それが街を盛り上げている部分もあるのだ、と。
「ここで、もう少し地盤が整ったら……俺達冒険者を招待することで、彼らを広告塔にしてもいいかと思う」
この郷の良い所を残しながら、良くしていく――その為の意見を聞く機会にもなるだろうから、と。
「その街のように、なれたら良いですね――」
静霞はそう言って、是非その意見を重用したいと言った。
ヴィナスは頷きながら、「もうひとつ」と、郷に来ている商人との“付き合い方”についても話した。
「郷を変えたい思いはあると思うけど……。一気に正そうとするとそれ自体が歪みになる。商人の話は書面で貰い、即答しないで吟味して」
即答を促す奴の方が信頼できない。上手すぎる話には絶対穴がある。
それは商人としての、ヴィナスの飾らぬ言葉だ。
「弁えない人は弁えないからね、商人でも」
「……はい。判りました」
静霞は真摯に応える。少しずつ、歩みを進めていければ、と。
「皆様のお陰で、悪い運命も覆す事が出来そうですから。手に入れた平和と、郷を大事にしていきたいです」
「もし全ての予言を退けられたら――それを記念して盛大にお祭りを開くのもいいかもしれません!」
と、提案するのはエルナだ。
本当の平和となった郷での祭りは、前よりも更に盛り上がるはずだからと。
「予言と伝統の郷、臥魅郷! きっと多くの人が訪れる魅力になる気がします!」
「素敵ですね――!」
静霞は是非、大きな祭りを開くと約束した。
「そのときは是非、皆様も楽しまれていってくださいね」
「はい、楽しみにしていますね!」
エルナもまたそう応えて、花のような笑顔を見せるのだった。
神社の高台から降りた住宅地。
その一角にある魔術師――公陽篤杜の家にて、トゥーリとロゼットは彼の相談を受けていた。
冒険者の知見を得たいという神社守・臥之木悟も同席している。
話は今後とるべき道筋についてだ。
「今のままでもやっていけぬ事はない。ただ、それが郷や神社に利するかと言えば、そうではなくてな……」
そういう篤杜は、彼なりに郷を思ってはいるようで……それと現状の齟齬に悩みを抱えているのだろう。
「それなら」
と、口を開いたのはロゼットだ。
「神社での厄除け、御守りの販売を生業には出来ないかしら」
「厄除け、か」
「ええ。東方には、独自の厄除けや御守りの品が伝わっていると聞くわ。絢酉神社には、そういうものは?」
「有る」
篤杜はそう応えた。
「と言っても、内々で作っているだけだが。郷の人間に売れるものでもないからな」
「でも今は前とは違うでしょう? 同盟から来る人も増えた今なら、目に留まるのではないかしら」
ロゼットの言葉に、篤杜も暫し黙ってから頷いた。
「……試みても良いかも知れぬな。貴重な意見を、感謝する」
「商売については、俺達も皆悩んでるんだ」
と、言ったのは悟だ。
郷の経済自体は上向いているが……住人側が何もしなければ長く続きはしない。それは悟にも想像が出来ているのだろう。
「ただ、外から来た商人さん達の真似をするだけでいいのかって気もするし――」
実際、知識の無い篤杜が一度、それで上手く運ばなかったという事情もある。
「そうだね……他と同じことをやっても、なかなか難しいかもね」
トゥーリはそう言いつつ、それでも真剣に考える。
ただ、光明は見えてはいた。
他でもない、祭りが成功に終わったという事実もあるのだから。
「郷にとっては珍しくなくても、外から来た人には珍しいものがここには沢山、あるよね。郷ならではのもの、シャルガネならではのものが」
地元の人間には見えにくいもの。
けれどそれは、郷の何よりの魅力だ。
「そういう文化とか海の幸を保全して、活用していくと良いんじゃないかな」
「成程……」
悟は得心に頷く。
実際、外からの人々の反応にそういった実感もあるのだろう。
トゥーリは「その為に」と続けて。
「祭りも含めて……祠とか、郷の自然を守っていく必要があるよね。海を商業利用するには安全確保も重要だし」
授恵者もそこに需要があるはず、と――篤杜にも視線を向ける。
「この腕も、郷に役立つ利益となるか」
そういった篤杜は、嬉しそうでもあって……トゥーリも「うん」と笑顔で頷いていた。
エルナは神社を辞した後、散策に出ていた。
道を歩めば屋台も並んでいる。折角なのだから食も楽しもう、と。
「あっ、お蕎麦美味しそうです!」
早速そこで天ぷら蕎麦を注文。
素朴ながら深い味わいに舌鼓を打ち……米菓を見つければさくさくの食感と甘味を楽しんで。
さらにりんご飴も味わいつつ――屋台の人気も調査する。
「やっぱり、他には無いお店が人気ですね!」
どら焼きや果物飴は、国外からの客によく売れている。
だけでなく、地元の味と言える寿司や蕎麦は、近場からの観光客にも需要があるようだった。
このデータも利用すれば、今後に役立つだろう。
なのでそれをメモしつつ――
「お寿司も食べていきましょう!」
と、エルナは実食も欠かさずに、美味を心ゆくまで楽しんでいった。
観光客で賑わう店々に、セリオスも立ち寄っている。
「ここは……串揚げか」
牛肉だけでなく野菜や卵など、豊富な食材が楽しめる屋台だ。
まずはそこで食事をしていこうと、セリオスは早速ヒレ肉を注文。さくっとした衣と、肉汁の溢れる食感を味わった。
「成程」
実際に食してみれば、人気なのも頷ける。
そんな実感を得ると……卵や野菜も堪能して、次の店へ。煮た魚を大胆にのせた、かけそばを注文した。
「これも地元の味か」
郷の人々には馴染みがあり、外の人間には珍しいようで――食べている人間には国外から来たと思しき者が多い。
実際、味わいは素朴と言えたが……それでも美味には違いなく。柔らかで旨味のある魚と、あっさりめの出汁がよく合っていた。
「さて、と」
腹が満たされると、後は甘味を一つ二つ、つまんでゆく。
郷は日々、賑わいが増しているという。
この人通りは、それを実際に感じられる眺めだ。
冒険者達が平和を守る事で、郷はきっと良い方向へと向かってゆくだろう。
そんな思いをいだきながら――セリオスは道々をそぞろ歩いていった。
マスターコメント
ミドルシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人
2022年11月28日 01時08分55秒 公開
相談掲示板
ヒーラーの神官戦士ロゼットよ。よろしくね。 あとひとり、成立すると良いのだけど。 今回は海戦ね。木舟は1人乗りか、2人乗りが選択可能と。 戦闘で舟が壊されることを考えると、1人乗りにしておくと 誰かの舟が壊された時に拾い上げることもできるかしら。 >浅瀬の戦い 川底に潜んで、海に出た私たちを襲ってくる『河童』が8体、 魔法射撃を使うから素直に隣接してくるとは限らないわね。 >洞窟海域の戦い 『海坊主』と『イクチ』、2体との戦い。 海坊主は水上と水中で、受ける攻撃が変わるから人によって、 水中戦を挑むメリット(魔法を封じる)も大きいわね。 イクチは潜るたびに回復するのが厄介だわ。水中で追撃を かけたくもあるけど、水中で戦うとデメリットがある相手ね。 人によっては水中戦もメリットがあるから、 慣れない人はルールを読み返しておくと良いかも。
ウォーリアのイヴェール・イリュジオンです。 どうぞよろしくお願い致します(ぺこり) 木舟は1人ずつ乗るなら確かに壊された時に他舟に拾い上げて貰う事は出来そうですね。 ただ操舵はそれぞれが行う事になるので、戦闘中などに舟を動かす事が出来なくなったりするでしょうか? 私達は攻撃を避けられるでしょうが、舟は避けられないので壊され易くなるかも知れません。 >浅瀬の戦い 射程外から引き撃ちされると厄介ですね… 早々に距離を詰めて近接戦で仕留めるか、遠距離攻撃で狙い撃ちにするしかなさそうですね。 舟の移動力がどの程度かにもよりますが、差が大きいようなら近接は水中戦を挑む方が早いかでしょうか? >洞窟海域の戦い 敢えて不利になる方で戦う事もないですし、海坊主は水中から、イクチは水上で戦うのが無難そうですね。 イクチに関してはダメージを与えれば洞窟に引っ込むのであれば、その間は海坊主に攻撃を集中できるので敢えて逃がすのも手でしょうか? 海坊主を倒した後なら海坊主対応の水中戦の人達が追撃に参加出来ますので倒し易くなるかなと。
No.3
サイラスだ、よろしくなー とりま班わけしてかないとかね?遠隔主体の方がいいだろうなってのも 蛇の方逃さず同時攻略するなら引っ張る系は厳しいから殺界で固定とかが選択肢になるかねぇ?海上で威力補正潰してやれるし。とはいえ海坊主の攻撃も受けるのでどちらがいいかは
訂正。定員が埋まったわね。 ウォーリア2名、シーフ1名、シューター3名、ヒーラー2名ね。 射撃は活きそうな戦場だから、シューターが多いのは良いわね。 >洞窟海域の敵 海坊主とイクチとの戦闘を、「班分けして2体同時に戦う」か 「特に班分けせず順番(先に海坊主、次にイクチ)に倒す」か。 ここが相談どころかな? 班分けして2体同時に戦う場合は、海坊主と戦う人、 イクチと戦う人を完全に分けてしまって別々に戦う。 班分けせず順番に倒す場合は、 1.前半、イクチには通常攻撃を主体で海に潜ったら追わない 2.イクチが潜ってる間は海坊主に攻撃を集中、先に撃破を目指す 3.海坊主を倒してからイクチ討伐、潜水中への追撃もかけていく 他の人はどう思うかな。 班分け希望か、全員で海坊主とイクチで連戦する覚悟でいくか。 私は…悩ましいけど、イクチ戦が潜ったり浮上したりで 戦いにくいから、班分けせず全員で連戦もアリかなあ、とも。 だけど、ヒーラーも2名で班分けもしやすい顔ぶれよね。 >木船の操舵 ルールには無いから想像だけど、1人乗りより2人乗りの方が、 1人が漕ぎ手に専念すれば移動力は倍加しそうではあるわね。
顔出し遅くなりました……! エルヴンシューターのエルナです!みなさまよろしくおねがいしますね! >浅瀬の敵 初めは水底に潜んでいるということなので、奇襲を避けるためにも捜波があるとよさそうですね!準備していこうかなと思います! >木舟 舟は一人一艘で、破壊されたら乗り移る方が良さそうな気はしますね! >班分け等 舟の破壊の問題もありますので、班分けはせずに海坊主さんから集中して倒してしまったほうが良さそうな気はしますね!
特に意見はないようなら、班分けはせずに、 洞窟海域の敵も、全員で戦う形で異論ないかな? 洞窟海域では、前半イクチは海に潜ってる間は追撃せずに 海坊主に攻撃を集中、海坊主を倒してからイクチの討伐ね。 >木船 1人乗りで構わないけど、2人乗りで漕ぎ手が欲しい人がいたら 相談に乗るわ。私は攻撃力では微妙だから、舟の漕ぎ手をやって 移動力を増やす、という感じで。 >個人行動 イクチ戦に、行動を封じる神迅縛鎖を試そうかな。 付与が通れば海に潜って回復するのを遅らせられるから。 後は…海坊主を早く倒せるように、輝刃で味方の攻撃UPかなと。 他の人の予定が分かれば、また考えるわ。
・・・ん、顔出し遅くなってすまない。シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず全員で戦うで異論はない。 とりあえず浅瀬の敵はエルナも言ってるが川底に潜んでるからあらかじめサーチをかけて居場所を特定しておいた方がいいか。そのあとは衝撃が出る攻撃でダイナマイト漁ではないが浮かび上がってきたところを狙いたいものだな 洞窟の方もイクチは潜らせてる間に海坊主を片付ける案でいいと思う。イクチだけになったら移動阻害なりをつけたいところだが
挨拶が遅くなってごめん。 シーフのヴィナスだよ、よろしく。 俺も全員戦うので異論はないよ。 で、イクチが潜ってる間に海坊主を倒す、かな。 個人行動は遠距離攻撃可能なものを多めに。 移動補助のスキルにするかデバフにするかは検討して決めるよ。
では全員で戦う方向で。 私は水中で近接中心に対応しましょうか…この時期の海水は冷たそうなのが気になりますが… 海坊主に集中して攻撃するか、イクチがいる間の攻撃を引き受ける役になるかは同じウォーリアのサイラスさんが何をされるかで決めます。
No.11
とりま全員でやるのなー了解 とりあえず水中潜れる装備で射撃かねぇ。船乗った乗らないでカバリングも成立出来るか怪しいし
全員で戦う方向了解です! 確かにこの時期の海水は冷えそうですね……! >個人行動 戦闘面では純後衛な火力役として立ち回ろうかなと思います! 浅瀬の戦闘では主にメテオライトを使用する予定です! 海坊主さんには魔弾! イクチさんにはダメージ4ケタのロマン技!スーパーエルナ砲をお見舞いしましょう!
直前になってすまない、レンジャーのモネタ、近距離系だ。 最初は遠距離で能力を下げる方法で。後半は接近に潜り込んでぼこぼこやるつもりだ。 後は捜波があるらしいからこっちは攻撃に専念する感じで組む。 とりま、こんな感じで。遅くなって本当にすまない……。
…通常の倍のラウンドかけて回復に集中するかも知れませんね… イクチは肉片になりそうですし、私は海坊主に近接戦仕掛ける事にします。 シーザーロアを使って攻撃先をこちらに向けて舟に攻撃がいかないようにはする予定です。
了解。海坊主に仕掛ける人にも、輝刃で攻撃力を 上げていくから、遠慮なくやってちょうだい。 BS対策の方は、INI・移動力まで削られる 束縛の方に絞って解除していくわ。 討伐後の自由行動は郷の、迷ってる魔術師に 提案とかしてみるわ。じゃ、頑張りましょう。
トゥーリだよ。顔出しできてなくてごめんね。 火力は十分みたいだから、バフデバフと回復多めにしておいたよ。 付与は盛れる限り盛った(付与:46)から、これで何とかなるといいなぁ。 事後は臥之木悟さんとかとお話する予定だよ。