【学祭】キツネさんとボクたち、共に迷子
狐野径
コメント 0
シナリオID:2489
オープニング
●知らないのは当人のみ
フィルエス大森林、灰火のとある里。
グレイオンスはテーブルに会った手紙に気付いた。
フィルエス大森林の大異変、帝国過激派の乱入などで里を離れている間に来ていたらしい手紙だった。送り主と中を見て、グレイオンスはそっと目を逸らした。
外を見れば「カカオの旅に何がいるかな」と言いながら、あれこれ拾って歩いている子どもたちがいた。
子どもたちを見てグレイオンスは一つひらめいたことがあった。
パンクリアース学園に通う学園生や聴講生についてなどについての書類を引っ張り出す。
「……頼めるのは……」
エキルとラビトの両親たちを呼び、まず、話をする。
両親たちは驚くが「キツネちゃんだったら、任せても大丈夫です」というのだった。
根回しは完了した。
ウル・ヘルバは縁あってこの里に厄介になっているハーフビーストだ。また、冒険者でもある。
グレイオンスに呼ばれ、唐突にパンクリアース学園の学園祭や体育祭の話をされた。
理由がわからないためウルはしばらく考える。
先日、グレイオンスは内覧会に行ったし、留学生を送り出すための説明会の場を大森林で設けたのだ。
その流れだと理解した。
「行きたいからついてこいってことか?」
「いや、私はいけない予定がある」
「……まぁ、そっか」
ウルはグレイオンスの予定を細かく知らないから、色々あるだろうと思う。それに、最近忙しかったこともあり、休息をしたいということかもしれない。グレイオンスはウルが幼いころから年寄りだし、実際、大森林のエルフの中でも高齢であるのだから。
「エキルとラビトがいずれ、留学したいと言っている」
「……ああっ……ああっ!?」
「それと、カカオが気になるから旅したいと言っている」
「待て待て待て待て」
「頼めるか?」
ウルは間が端折られた会話に頭を抱えた。状況証拠から推理した結果、子どもたちの旅のお供は消去法でウルになったという点まで考えた。
グレイオンスがテーブルに羊皮紙の束を載せた。
つたない字で「森カカオ計画」の文字がある。
これはダメ押しという。
ウルはため息を漏らした。
ウルが「森カカオ計画」を見ている最中に、グレイオンスが告げる。
「今回、パンクリアース学園を見て帰ってくるだけでもいい」
ウルは「あいつらの考えるルート、リスク高くないか」とうめく。
ちびエルフたちが行きたいところはゴールディ、エドゥノーグそしてシグモル火山帯らしい。
これを見て考えるのは、パンクリアース学園に行ってどうするか考えた方がいい気がする。
二人がウルのいう事聞くかどうか、地域の情勢がどうなるかなどあるからだ。
「わかった……俺でいいなら連れてくが、まず学園祭ということでいいな」
グレイオンスがうなずく。
「学園祭に間に合うためにはもう出発しないとならない」
「だろうな。ちびたちと話して――」
「もう準備はできているというから、ウルが準備したらいける」
ウルは「まじかよ」という。知らない間に、決まっていたことだったという事だ。
思わず「エルフの陰謀、呪いだけじゃねぇのか」とつぶやいた。
●学園祭
出発当日。
里の入り口に旅人姿のウル、エキルとラビトがいる。
見送るのはエキルとラビトの両親たちとグレイオンスと、手すきの里の人たち。
エキルとラビトは小躍りしてウルの腕をそれぞれとって、ゆすっている。
「キツネさんとお出かけ」
「キツネさんと学校」
「カカオ」
「カカオ」
エキルとラビトは「カッカカオオオオオオ」とシャウトする。
負けない声でウルが「うるせぇ!」と叫ぶ。
「ウル、子どもたちの前では言葉遣いは丁寧にするように」
すかさずグレイオンスが注意を促した。
「……わかったよ……」
「キツネちゃん、よろしくね」
「キツネちゃん、この子たちが言うこと聞かなかったら、怒ってくれていいから」
エキルとラビトの両親たちは子どもたちより、ウルのことが心配らしかった。
一行は大森林から王国側方向に抜けて、そして、学園を目指すことになる。
――そこは問題なく到着する。
宿を取って、学園祭に向かう段になり、ウルは自分が着ている物を見て頭を抱える。
落ち着いた色合いの長衣に、ズボン。帽子はなし。
エルフのぽい雰囲気の服装なのに、キツネの耳としっぽが目立つ。
手袋はさすがにした。爪が目立ってしまうため。
「なんか変……」
「大丈夫、キツネさん」
「おじいさんとおそろい!」
「……いや、揃いじゃねぇけど……」
グレイオンスが来ているようなものより、上着の丈は短めで動きやすい。
「おじいさん、おじいさん」
「……なんで、おじいさんコール……」
エキルとラビトはいつも通り、動きやすいチュニックにズボン。
ウルがこの服装になった理由は、グレイオンスの代わりに学園側に挨拶しておくという事があるためだ。きちんとした服装という点で、グレイオンスや里の人は迷いなく自分たちの服装を示した。
(小さい頃は、こいつらと同じ服装だったし)
違和感なく受け入れるには、大人になりすぎたのかもしれない。
なお、武器は置いていくため、結構不安だったりするウルだった。
パンクリアース学園に到着すると、学園祭真っただ中でにぎやかだった。
フォルトゥナ・アルヴァ・クラティアス学園長に挨拶しに行く。招待状への礼と返答が遅れて申し訳なったということ。留学したいという世代に間に合わないため、いずれしたいという子どもたちが来たと告げた。
学園長からは大森林の情勢は耳にしているため、気にしていないと返答がある。そして、楽しんでほしいと言われ、面会は終了する。
ウルはエキルとラビトを連れて、どこに行くかパンフレットを見て考える。
「さてと、どこ回るか? 全体見て回りたいよな……森……」
ウルからエキルとラビトは徐々に離れていく。
きょろきょろして、どこに行くか目星をつけている段階。
面会があるから二人はおとなしくついてきていたが、その時も、きょろきょろして今にも駆け出しそうだったことをウルは思い出す。
「いいか、手をつないで離すなよ」
ウルはつなごうと手を伸ばすが、手をつかむ前にエキルとラビトが走り出す。二人は互いの手をつないでいる。
「いや、そうだけど、俺の手もだ!!」
屋台が並ぶ道に向かっている。
人も多いし、その先には建物もある。
どこに行こうとしているかわからないから、ウルは追いかける。
人込みで見失ったら終わりだ。
とはいえ、人の波で超視覚がまず敗北した。
そして、匂いでどうにかしようとしたが、飲食物の匂いに負けた。
森の中とは違うという事を思い知らされる。
「……地道に探すしかねぇなぁ……」
ウルはうめいた。
一方でエキルとラビトはウルがはぐれたことに気付いた。
「手をつないでおけって言ったのに!」
「キツネさん、ダメだよね」
「あっち、面白そう」
「本当だ!」
二人は出し物につられて移動するのだった。
ウルのことは忘れた。
フィルエス大森林、灰火のとある里。
グレイオンスはテーブルに会った手紙に気付いた。
フィルエス大森林の大異変、帝国過激派の乱入などで里を離れている間に来ていたらしい手紙だった。送り主と中を見て、グレイオンスはそっと目を逸らした。
外を見れば「カカオの旅に何がいるかな」と言いながら、あれこれ拾って歩いている子どもたちがいた。
子どもたちを見てグレイオンスは一つひらめいたことがあった。
パンクリアース学園に通う学園生や聴講生についてなどについての書類を引っ張り出す。
「……頼めるのは……」
エキルとラビトの両親たちを呼び、まず、話をする。
両親たちは驚くが「キツネちゃんだったら、任せても大丈夫です」というのだった。
根回しは完了した。
ウル・ヘルバは縁あってこの里に厄介になっているハーフビーストだ。また、冒険者でもある。
グレイオンスに呼ばれ、唐突にパンクリアース学園の学園祭や体育祭の話をされた。
理由がわからないためウルはしばらく考える。
先日、グレイオンスは内覧会に行ったし、留学生を送り出すための説明会の場を大森林で設けたのだ。
その流れだと理解した。
「行きたいからついてこいってことか?」
「いや、私はいけない予定がある」
「……まぁ、そっか」
ウルはグレイオンスの予定を細かく知らないから、色々あるだろうと思う。それに、最近忙しかったこともあり、休息をしたいということかもしれない。グレイオンスはウルが幼いころから年寄りだし、実際、大森林のエルフの中でも高齢であるのだから。
「エキルとラビトがいずれ、留学したいと言っている」
「……ああっ……ああっ!?」
「それと、カカオが気になるから旅したいと言っている」
「待て待て待て待て」
「頼めるか?」
ウルは間が端折られた会話に頭を抱えた。状況証拠から推理した結果、子どもたちの旅のお供は消去法でウルになったという点まで考えた。
グレイオンスがテーブルに羊皮紙の束を載せた。
つたない字で「森カカオ計画」の文字がある。
これはダメ押しという。
ウルはため息を漏らした。
ウルが「森カカオ計画」を見ている最中に、グレイオンスが告げる。
「今回、パンクリアース学園を見て帰ってくるだけでもいい」
ウルは「あいつらの考えるルート、リスク高くないか」とうめく。
ちびエルフたちが行きたいところはゴールディ、エドゥノーグそしてシグモル火山帯らしい。
これを見て考えるのは、パンクリアース学園に行ってどうするか考えた方がいい気がする。
二人がウルのいう事聞くかどうか、地域の情勢がどうなるかなどあるからだ。
「わかった……俺でいいなら連れてくが、まず学園祭ということでいいな」
グレイオンスがうなずく。
「学園祭に間に合うためにはもう出発しないとならない」
「だろうな。ちびたちと話して――」
「もう準備はできているというから、ウルが準備したらいける」
ウルは「まじかよ」という。知らない間に、決まっていたことだったという事だ。
思わず「エルフの陰謀、呪いだけじゃねぇのか」とつぶやいた。
●学園祭
出発当日。
里の入り口に旅人姿のウル、エキルとラビトがいる。
見送るのはエキルとラビトの両親たちとグレイオンスと、手すきの里の人たち。
エキルとラビトは小躍りしてウルの腕をそれぞれとって、ゆすっている。
「キツネさんとお出かけ」
「キツネさんと学校」
「カカオ」
「カカオ」
エキルとラビトは「カッカカオオオオオオ」とシャウトする。
負けない声でウルが「うるせぇ!」と叫ぶ。
「ウル、子どもたちの前では言葉遣いは丁寧にするように」
すかさずグレイオンスが注意を促した。
「……わかったよ……」
「キツネちゃん、よろしくね」
「キツネちゃん、この子たちが言うこと聞かなかったら、怒ってくれていいから」
エキルとラビトの両親たちは子どもたちより、ウルのことが心配らしかった。
一行は大森林から王国側方向に抜けて、そして、学園を目指すことになる。
――そこは問題なく到着する。
宿を取って、学園祭に向かう段になり、ウルは自分が着ている物を見て頭を抱える。
落ち着いた色合いの長衣に、ズボン。帽子はなし。
エルフのぽい雰囲気の服装なのに、キツネの耳としっぽが目立つ。
手袋はさすがにした。爪が目立ってしまうため。
「なんか変……」
「大丈夫、キツネさん」
「おじいさんとおそろい!」
「……いや、揃いじゃねぇけど……」
グレイオンスが来ているようなものより、上着の丈は短めで動きやすい。
「おじいさん、おじいさん」
「……なんで、おじいさんコール……」
エキルとラビトはいつも通り、動きやすいチュニックにズボン。
ウルがこの服装になった理由は、グレイオンスの代わりに学園側に挨拶しておくという事があるためだ。きちんとした服装という点で、グレイオンスや里の人は迷いなく自分たちの服装を示した。
(小さい頃は、こいつらと同じ服装だったし)
違和感なく受け入れるには、大人になりすぎたのかもしれない。
なお、武器は置いていくため、結構不安だったりするウルだった。
パンクリアース学園に到着すると、学園祭真っただ中でにぎやかだった。
フォルトゥナ・アルヴァ・クラティアス学園長に挨拶しに行く。招待状への礼と返答が遅れて申し訳なったということ。留学したいという世代に間に合わないため、いずれしたいという子どもたちが来たと告げた。
学園長からは大森林の情勢は耳にしているため、気にしていないと返答がある。そして、楽しんでほしいと言われ、面会は終了する。
ウルはエキルとラビトを連れて、どこに行くかパンフレットを見て考える。
「さてと、どこ回るか? 全体見て回りたいよな……森……」
ウルからエキルとラビトは徐々に離れていく。
きょろきょろして、どこに行くか目星をつけている段階。
面会があるから二人はおとなしくついてきていたが、その時も、きょろきょろして今にも駆け出しそうだったことをウルは思い出す。
「いいか、手をつないで離すなよ」
ウルはつなごうと手を伸ばすが、手をつかむ前にエキルとラビトが走り出す。二人は互いの手をつないでいる。
「いや、そうだけど、俺の手もだ!!」
屋台が並ぶ道に向かっている。
人も多いし、その先には建物もある。
どこに行こうとしているかわからないから、ウルは追いかける。
人込みで見失ったら終わりだ。
とはいえ、人の波で超視覚がまず敗北した。
そして、匂いでどうにかしようとしたが、飲食物の匂いに負けた。
森の中とは違うという事を思い知らされる。
「……地道に探すしかねぇなぁ……」
ウルはうめいた。
一方でエキルとラビトはウルがはぐれたことに気付いた。
「手をつないでおけって言ったのに!」
「キツネさん、ダメだよね」
「あっち、面白そう」
「本当だ!」
二人は出し物につられて移動するのだった。
ウルのことは忘れた。
解説
●目的・目標
出し物をしている、または、見物している。
ウル、ラビトとエキルが出会えること。
●出会えるかどうか
詳細に詰めていただく必要はないです。
ウルまたはラビトとエキルが「かくかくしかじか」と聞いた際に「どこで、それらしい人を見た」という流れがあれば問題ないです。
辻褄合わなくとも「助けた」ということですね。
とはいえ、ウルのこと忘れているというエキルとラビト……。
●NPC
・ウル・ヘルバ ハーフビースト、縁があってグレイオンスの下にいた。
今回、エキルとラビトの保護者として行動する……はずが、すでに二人を見失った。
超嗅覚、超視覚でどうにかならなかった模様。
動きやすい冒険者らしい恰好ではなく、長目の上着にローブのような裾が長くて動きづらそう。
・エキル 10歳くらい 女 髪灰、瞳アイスブルー 身長130センチ 束ねた髪がリスの尻尾みたい。
ラビトとは双子のきょうだいのように育つ。ウルのことは好き。
元気一杯、好奇心旺盛。
・ラビト 10歳くらい 男 髪灰、瞳銀 身長129センチ 束ねた髪がウサギの耳みたい。
エキルとは双子のきょうだいのように育つ。ウルのことは好き。
元気一杯、好奇心旺盛。
マスターより
こんにちは、狐野径です。
エキルとラビトの両親たち、細かく書くとエキルの両親とラビトの両親になります。
学園祭を楽しむのが基本。
はぐれているNPCはスパイスです。もちろん、放っておけないから一緒に探すということもよいですよ?
よろしくお願いします。
リプレイ
●顔見知り
アンジェは医学など治療に関することをもっと学びたいと思っていた。
パンクリアース学園に行けば学べると聞いた。聴講生でも入学を考えるにしても、学園の様子を見ておけば、考えることに幅が広がる。
学園祭に、友達のミニビヒモーと共にやって来たが、思いのほか人がおり、アンジェは緊張する。そして、ミニビヒモーにの陰に隠れた。
ただ、ミニビヒモーが目立つ。
ミニだけれども、大きなもふもふ。
注がれる羨望のまなざし。
「……ど、どうしたらいいいのかな……」
アンジェはびくびく、どきどき。
「あ、あれは……?」
ヒューマンが多い中、ハーフビーストが歩いている。それはウル・ヘルバであり、顔見知りであるため、アンジェの中で安堵が生じた。
ウルは何か探しているようにも見えたし、何とかそちらに向かう。
「ウルさん? ……えっと……あの、こんにちは」
恐る恐る声を掛ける。
「……ああ……ミニビヒモーの存在感すげぇな……触っていい?」
ウルに問われアンジェはうなずく。
「あの……何か……探しているんですか?」
アンジェの質問にウルは「触ってる場合じゃなかった」とうめいた。
「学園祭お楽しみ中の所悪いが、聞いてもいいか?」
アンジェがうなずくのを見てウルは続ける。
「このくらいの灰髪のちびエルフ見なかったか?」
「……見て……ないです……」
「そうか……見つけたら、入り口か宿で待ってろと言ってくれ」
すでに立ち去りそうな勢いなので、アンジェは急いでいう。
「……手伝います」
「いや、悪いだろ、祭りに来ているのに」
「い、いえ……見学は、できますし……ついでです」
どちらが次いでかわからないが、探しながら見ることは可能だ。
「わりぃな……」
ウルが事情を話した。
外見の特徴などを聞き、アンジェは別れた。
「ミニビヒモーさんも、見つけたら教えてね……」
ミニビヒモーはわかっているかどうかわからない。でも、きっと、わかっているはず!
アンジェは人と接するに怖さを覚えるが、頑張って聞き込みをするのだった。
「……あ、あの、その……こういう感じの子どもたち、見ませんでしたか……?」
聞いていくと「あっちで見た」という目撃は得られる。相手も移動しているためか、なかなか姿は見つからないのだった。
●森つながり
レイラ=ルナフィニスは学園祭の活気に胸を躍らせる。その活気は、エルフ社会ではないもので、とても素敵に見える。
水瀬・希はレイラと共に、学園祭の雰囲気を楽しむ。
展示・研究のスペースから、エルフの子どもたちが出て来た。
エルフ自体が少ないし、子どもだとより一層目立つ。それに手をつないで元気一杯で楽しそうなのも印象的だ。
それを見送ると、希は何の出し物か気になった。
「何をやっとーと?」
「植物の育て方……農業に関わるものみたいですね」
レイラと希はこれも縁だと展示を見ていく。なかなかの力作で、農業の素晴らしさを感じられた。
展示の見物後、向かった先で、見知らぬ赤毛のキツネがレイラと希を見ていた。
「あの人、レイラちゃんを見とうと?」
希は知り合いかと問うようにレイラを見るが、首を横に振る。
相手が近寄って来た。
「すまない、冒険者、だよな?」
ウルは名乗り、かくかくしかじかと情報を求めて来た。
レイラと希はちょっと考える。
「……確か、仲良く手をつないでいたお子さんなら、あちらの出し物……農業についての展示を出ていくのを見ましたよ」
「手をつないどった子たち……灰色髪をしとった……気ぃするとよ。農業のところから、あっちに行ったと」
レイラの説明を、希が裏付けをする。
ウルは「ようやく、目撃が……ありがと」と深く息を吐いて立ち去ろうとした。
レイラはウルが妙に焦っているのが気になった。
「ここは危険ではないと思いますし……飲み物でもいかがかしら?」
焦れば失敗することもありうる。頼まれたということからの責任からかもしれない。
「危険はないが、広いし、あいつらが何するかわからなぇ」
レイラはなるほどと思いつつ、少しでもリラックスして探せるように話を進める。
「そういう事なんですね。二人は森の外は初めてなんですか?」
「一度出かけたらしい。俺も知らねぇが……森の外に興味はあるし、冒険者が里に来た時、絡んでた……らしい」
「絡んでた?」
レイラは首をかしげる。
「ヒューマンやゴブリンとかは依頼の時に見たらしい」
希は「その時何かあったと?」と問う。
ウルは「また聞きだからよくわからない。まとわりついたってくらいしか」と素直に言う。好奇心があることや、他種族を恐れないことはいいことだろうけれども、まとわりつかれ方によっては問題が生じるかもしれない。
話を聞きながら希は、どう探すか考えていた。
「高いところに登って見渡せたら少し簡単やったけど……難しかね。こー人が多いと、髪色とかで判断できんし……どげんしよか……」
「いや、楽しみを中断して悪いから」
「いえいえ、同族ですし、せっかくですから、探すの手伝いますよ」
レイラが言うと、希も首を縦に振る。
「片っ端から出し物を巡るしかなかね? それとも食べ物やろか?」
「……あいつら、財布持ってねぇ……」
ウルが重大なことに気付いた。
「食べ物のあたりで回っていると、出会えるかもしれませんわね」
「おなかすいてしょんぼりしているかもしれんとね」
ということで、三人は飲み物を片手に話をしつつ、捜索を始める。
「エルフゆーんは灰色の髪色の子もおるんやねぇ。レイラちゃんみたく金色の髪やと思っとったばい」
「グレイオンスだって灰色だし、色々いるぞ、意外と……意外と?」
ウルは色々いると示したかったが、知り合いが金髪だったため尻すぼみになった。
レイラはウルがどのあたりの関係者かわかり、尋ねる。
「まぁ、灰火の……グレイオンスさんはお元気です?」
「年の割には動き回ってるし……こっちが心配にもなる」
「そういう事もありますね。帰郷する際は、お伺いしたいですね」
「おう」
希は「機会があったら、フィルエス大森林に行ってみようかなぁ」という。
「来るなら、歓迎する」
ウルは笑う。
「まぁ、俺が言うのもあれだけどな」
三人はのんびり探すのだった。時折、道が分かれていたら、別れて進んでみたりしつつ。
●珍獣?
御邑 奈月は姉の御邑 都と共に学園祭を歩く。
飲み物を買って出し物に向かおうとしたとき、奈月は手をつないで歩くエルフの子どもたちと目が合った。ヒューマンが多い中、エルフとういう点だけでなく、十歳くらいの年頃も目立つ。
「月ちゃん、何見てるのぉ~?」
都が進行方向ではないところを見ているため、視線を追ってみる。
「エルフさん見てたのか」
呼ばれた気がしたのか、手をつないだ二人は走ってくる。
一人はウサギの耳みたいに髪が揺れ、一人の髪はリスの尻尾のようにびょこびょこ跳ねる。
「こんにちは」
二人は頭を下げて挨拶をしてきたので、奈月と都も同じく丁寧にあいさつする。
子どもの一人が「服装からすると冒険者?」と奈月と都に尋ねる。
都が「そうだよ」と答えると、
「えっと、キツネさん見なかった?」
と、唐突に質問が飛ぶ。
奈月と都は「キツネさん?」と復誦。
エルフの子どもたちはお構いなく説明を続行する。
「ボクたちね、キツネさんと来たんだけど、キツネさんが迷子になっちゃたんだ」
「手をつなげって言ったのに、本人が迷子じゃだめだよね」
「それはそうだね」
都は相槌を打ちながらが、よくわからない情報を聞き流しつつ、整理していく。
奈月は都が応対してくれていたおかげで、一歩引いて考えることができていた。
「えっと……キツネさんってどんな人ですか?」
ハーフビーストであることや、名前など聞きだすことができた。
さらに、互いに名乗ったことで、リスの尻尾みたいな髪型がエキル、ウサギ耳みたいな髪型がラビトだということやフィルエス大森林から来たということもわかる。
「そーかぁ……そのウルさんって、はぐれちゃったんだねぇ」
「そうだよ!」
ようやく情報が共有された。
「別の出し物で見かけた覚えがあります」
奈月がウルの目つきが悪くて怖いと思ったから印象に残ってしまった。ただ、ウルのキツネ耳や尻尾はなごむポイントではあったのだけれども。
「なら、学園祭を回るついでに一緒に探そーか? ね、月ちゃん」
都の提案に、奈月はうなずく。
「え、いいの?」
エキルとラビトの声が重なる。
「二人のエルフさんは仲良しさんで、可愛くて、僕らみたいだよねぇ」
都が言うと、奈月が嬉しそうに照れる。
「手をつなごうか? エキルさんは月ちゃん、ラビトさんは僕と。これではぐれないよ」
都の提案にエキルとラビトは特に文句は言わない。楽しい予感がしているのだろう。
奈月は驚くが、頑張ることにした。初対面の子たちで緊張するけれども、困っている子たちを放ってはおけない。頼ってもらえているのだから、それには応じたい。
何より、都もいるし、学園祭だし、探すのも楽しいだろう。
エキルとラビトの視線は頼りにしているというだけでなく、好奇心もしっかりあった。
奈月や都の名前の雰囲気が違う事や初めて見た何かについて、あれこれ質問は飛んでくる。
「お耳丸いけど、どういう飾りを付けるの?」
「グレイオンスはここに着けてるよね」
この調子で子どもたちは話してくる。ちょっとで答えを考えると、次に移っているときがある。質問が自己完結しているのはなぜかわからないけれども、周りに多くの人がいるからかもしれない。
エキルとラビトの質問は都や奈月の外見などから始まる。その結果、奈月は(私が、出し物の珍獣になったみたいです)と思う。
都はエキルとラビトの質問は適度にうなずき、話を進めていた。聞き上手に徹しているようだった。
「いろんなことに興味あるみたいでかわいいエルフさんだなぁ」
とほほえましく見ているのだった。
●飴と空腹と
サイラスは学園祭を見物していた。
自身は鍛冶屋の店を構えているがゆえに、学園祭の出店は新鮮だ。それ以外にも研究展示などもあり、見て回る。展示は力作もあり、感心する。
そんな中、フィルエス大森林の灰火のとある里で会ったハーフビーストが速足で通り過ぎた。声を掛ける間もなかったが、向こうが足を止め戻って来た。
ウルの挨拶は「先日はどうもありがとう」だった。
サイラスは「いや、こちらはできる仕事しただけだ」と返す。
ウルは「頼まれてくれるのが嬉しい」と言った後、口ごもるが話を切り出す。
「学園祭を楽しんでいるところわりぃが……里でちび見た記憶ある?」
里の中には避難してきた人などたくさんいて、子どもがいたかどうかどの子どもかわからない。そのため素直に「わからん」とサイラスは告げた。
ウルは「実は、連れて来たちびどもが迷子になったんだ」と、かくかくしかじかと説明をした。
「これだけ人がいればわからないか」
「もし、見つけたら、俺が探していたから、入り口か宿に来いと伝えてくれないか」
「構わないが。残留思念感応でわかるかも?」
「わかる?」
「試してみる」
試してみると、色々、情報が散った。楽しそうな雰囲気はたくさんあった、場所には。
「……気にしておく。子どもたちの興味持ちそうなところ行ってみるとか?」
「農業の展示は見たらしいが、あとは……想像がつかねぇ……」
サイラスは出し物をいくつか勧めてみた。
ウルは「助かる」と礼を述べ、サイラスと別れた。
サイラスはそのあと、あえて、子どもが寄ってきそうなことをしてみることにした。
スペースを見つけ、そこで飴細工を作る。
シンプルな飴が形を変える。それは手品にも似て、興味を惹かれる。
そのため、学園生も足を止める。
しばらく飴細工していると、エルフの子どもたちが来た。
冒険者の連れも一緒だ。
「かっこいい!」
「すごーい」
「おじさん、里に来たことあるよね」
「そういえばそうだ。冒険者のおじさんだ」
同じ里、子どもたちは冒険者を記憶していたらしい。
「おじさん……か?」
「……お兄さん?」
「ごめんなさい」
「いや……それより、ウルが探していたぞ。入り口か宿で待ってろって」
その伝言に子どもたちが「もうちょっと遊ぶ」と訴える。
「ウルと合流した方がいいのでは?」
「でも、どこにいるかわからない」
建設的な提案は、現実をもって反論された。
都が「僕たちが送ろうか?」と代案を出す。
奈月がうなずき「そうすれば、きっと、心配も減ります」という。
サイラスはすべきことはしたため、片づけをしながら、話がまとまるのを待つ。飴細工や残りの飴があるため「飴食べる?」と子どもたちに問う。
お腹空いていた二人は「食べる!」と言い、飴をもらうと嬉しそうにもらった。
ミニビヒモーがやって来た。
「あ、あの……」
と声がするが、ミニビヒモーではなくその後ろから出て来たアンジェだ。
「ラビトさんとエキルさん……ウルさんが……探してました……」
「え、キツネさん、手当たり次第に話してる!」
「まるで僕たちが迷子みたいじゃないか」
エキルとラビトが怒るためアンジェは困惑する。
「ま、どっちかというと、子どもが迷ったんだろうな」
サイラスがつぶやくと、ウルから事情を聞いているアンジェが首肯した。
「いた、てめーら!」
ウルの怒鳴り声がした。
レイラと希がなだめる。
「怒ると逃げるかもしれないですよ?」
「そうそう、逃げたくなるとよ」
ウルがそれを聞き、動きを止めた。
実際は、奈月と都がラビトとエキルの手をつないでいるため、簡単に逃げられない。
それが見えたらしくウルはほっとした。
「……助かった……」
ウルは頭を下げる。
「方々に迷惑を掛けた、申し訳ない」
「キツネさんが迷子になるからだよ」
「てめぇらが迷子だ! いいか、カカオ調べたいなら、俺から離れるな」
エキルとラビトは顔を見合わせる。
「……」
「いいのくっついて」
「あ?」
二人はウルに両脇からくっついた。
「動けないよな、それ」
サイラスの指摘にウルが「ああ」と渋い顔をする。
「でも、手をつなぐも両側からにならない?」
都が指摘する。
結局、どうしても、ウルが困るらしかった。
なお、エキルとラビトも合流できたことでお礼を述べた。
そして、学園祭の本日の終了まで、皆それぞれ楽しむのだった。
アンジェは医学など治療に関することをもっと学びたいと思っていた。
パンクリアース学園に行けば学べると聞いた。聴講生でも入学を考えるにしても、学園の様子を見ておけば、考えることに幅が広がる。
学園祭に、友達のミニビヒモーと共にやって来たが、思いのほか人がおり、アンジェは緊張する。そして、ミニビヒモーにの陰に隠れた。
ただ、ミニビヒモーが目立つ。
ミニだけれども、大きなもふもふ。
注がれる羨望のまなざし。
「……ど、どうしたらいいいのかな……」
アンジェはびくびく、どきどき。
「あ、あれは……?」
ヒューマンが多い中、ハーフビーストが歩いている。それはウル・ヘルバであり、顔見知りであるため、アンジェの中で安堵が生じた。
ウルは何か探しているようにも見えたし、何とかそちらに向かう。
「ウルさん? ……えっと……あの、こんにちは」
恐る恐る声を掛ける。
「……ああ……ミニビヒモーの存在感すげぇな……触っていい?」
ウルに問われアンジェはうなずく。
「あの……何か……探しているんですか?」
アンジェの質問にウルは「触ってる場合じゃなかった」とうめいた。
「学園祭お楽しみ中の所悪いが、聞いてもいいか?」
アンジェがうなずくのを見てウルは続ける。
「このくらいの灰髪のちびエルフ見なかったか?」
「……見て……ないです……」
「そうか……見つけたら、入り口か宿で待ってろと言ってくれ」
すでに立ち去りそうな勢いなので、アンジェは急いでいう。
「……手伝います」
「いや、悪いだろ、祭りに来ているのに」
「い、いえ……見学は、できますし……ついでです」
どちらが次いでかわからないが、探しながら見ることは可能だ。
「わりぃな……」
ウルが事情を話した。
外見の特徴などを聞き、アンジェは別れた。
「ミニビヒモーさんも、見つけたら教えてね……」
ミニビヒモーはわかっているかどうかわからない。でも、きっと、わかっているはず!
アンジェは人と接するに怖さを覚えるが、頑張って聞き込みをするのだった。
「……あ、あの、その……こういう感じの子どもたち、見ませんでしたか……?」
聞いていくと「あっちで見た」という目撃は得られる。相手も移動しているためか、なかなか姿は見つからないのだった。
●森つながり
レイラ=ルナフィニスは学園祭の活気に胸を躍らせる。その活気は、エルフ社会ではないもので、とても素敵に見える。
水瀬・希はレイラと共に、学園祭の雰囲気を楽しむ。
展示・研究のスペースから、エルフの子どもたちが出て来た。
エルフ自体が少ないし、子どもだとより一層目立つ。それに手をつないで元気一杯で楽しそうなのも印象的だ。
それを見送ると、希は何の出し物か気になった。
「何をやっとーと?」
「植物の育て方……農業に関わるものみたいですね」
レイラと希はこれも縁だと展示を見ていく。なかなかの力作で、農業の素晴らしさを感じられた。
展示の見物後、向かった先で、見知らぬ赤毛のキツネがレイラと希を見ていた。
「あの人、レイラちゃんを見とうと?」
希は知り合いかと問うようにレイラを見るが、首を横に振る。
相手が近寄って来た。
「すまない、冒険者、だよな?」
ウルは名乗り、かくかくしかじかと情報を求めて来た。
レイラと希はちょっと考える。
「……確か、仲良く手をつないでいたお子さんなら、あちらの出し物……農業についての展示を出ていくのを見ましたよ」
「手をつないどった子たち……灰色髪をしとった……気ぃするとよ。農業のところから、あっちに行ったと」
レイラの説明を、希が裏付けをする。
ウルは「ようやく、目撃が……ありがと」と深く息を吐いて立ち去ろうとした。
レイラはウルが妙に焦っているのが気になった。
「ここは危険ではないと思いますし……飲み物でもいかがかしら?」
焦れば失敗することもありうる。頼まれたということからの責任からかもしれない。
「危険はないが、広いし、あいつらが何するかわからなぇ」
レイラはなるほどと思いつつ、少しでもリラックスして探せるように話を進める。
「そういう事なんですね。二人は森の外は初めてなんですか?」
「一度出かけたらしい。俺も知らねぇが……森の外に興味はあるし、冒険者が里に来た時、絡んでた……らしい」
「絡んでた?」
レイラは首をかしげる。
「ヒューマンやゴブリンとかは依頼の時に見たらしい」
希は「その時何かあったと?」と問う。
ウルは「また聞きだからよくわからない。まとわりついたってくらいしか」と素直に言う。好奇心があることや、他種族を恐れないことはいいことだろうけれども、まとわりつかれ方によっては問題が生じるかもしれない。
話を聞きながら希は、どう探すか考えていた。
「高いところに登って見渡せたら少し簡単やったけど……難しかね。こー人が多いと、髪色とかで判断できんし……どげんしよか……」
「いや、楽しみを中断して悪いから」
「いえいえ、同族ですし、せっかくですから、探すの手伝いますよ」
レイラが言うと、希も首を縦に振る。
「片っ端から出し物を巡るしかなかね? それとも食べ物やろか?」
「……あいつら、財布持ってねぇ……」
ウルが重大なことに気付いた。
「食べ物のあたりで回っていると、出会えるかもしれませんわね」
「おなかすいてしょんぼりしているかもしれんとね」
ということで、三人は飲み物を片手に話をしつつ、捜索を始める。
「エルフゆーんは灰色の髪色の子もおるんやねぇ。レイラちゃんみたく金色の髪やと思っとったばい」
「グレイオンスだって灰色だし、色々いるぞ、意外と……意外と?」
ウルは色々いると示したかったが、知り合いが金髪だったため尻すぼみになった。
レイラはウルがどのあたりの関係者かわかり、尋ねる。
「まぁ、灰火の……グレイオンスさんはお元気です?」
「年の割には動き回ってるし……こっちが心配にもなる」
「そういう事もありますね。帰郷する際は、お伺いしたいですね」
「おう」
希は「機会があったら、フィルエス大森林に行ってみようかなぁ」という。
「来るなら、歓迎する」
ウルは笑う。
「まぁ、俺が言うのもあれだけどな」
三人はのんびり探すのだった。時折、道が分かれていたら、別れて進んでみたりしつつ。
●珍獣?
御邑 奈月は姉の御邑 都と共に学園祭を歩く。
飲み物を買って出し物に向かおうとしたとき、奈月は手をつないで歩くエルフの子どもたちと目が合った。ヒューマンが多い中、エルフとういう点だけでなく、十歳くらいの年頃も目立つ。
「月ちゃん、何見てるのぉ~?」
都が進行方向ではないところを見ているため、視線を追ってみる。
「エルフさん見てたのか」
呼ばれた気がしたのか、手をつないだ二人は走ってくる。
一人はウサギの耳みたいに髪が揺れ、一人の髪はリスの尻尾のようにびょこびょこ跳ねる。
「こんにちは」
二人は頭を下げて挨拶をしてきたので、奈月と都も同じく丁寧にあいさつする。
子どもの一人が「服装からすると冒険者?」と奈月と都に尋ねる。
都が「そうだよ」と答えると、
「えっと、キツネさん見なかった?」
と、唐突に質問が飛ぶ。
奈月と都は「キツネさん?」と復誦。
エルフの子どもたちはお構いなく説明を続行する。
「ボクたちね、キツネさんと来たんだけど、キツネさんが迷子になっちゃたんだ」
「手をつなげって言ったのに、本人が迷子じゃだめだよね」
「それはそうだね」
都は相槌を打ちながらが、よくわからない情報を聞き流しつつ、整理していく。
奈月は都が応対してくれていたおかげで、一歩引いて考えることができていた。
「えっと……キツネさんってどんな人ですか?」
ハーフビーストであることや、名前など聞きだすことができた。
さらに、互いに名乗ったことで、リスの尻尾みたいな髪型がエキル、ウサギ耳みたいな髪型がラビトだということやフィルエス大森林から来たということもわかる。
「そーかぁ……そのウルさんって、はぐれちゃったんだねぇ」
「そうだよ!」
ようやく情報が共有された。
「別の出し物で見かけた覚えがあります」
奈月がウルの目つきが悪くて怖いと思ったから印象に残ってしまった。ただ、ウルのキツネ耳や尻尾はなごむポイントではあったのだけれども。
「なら、学園祭を回るついでに一緒に探そーか? ね、月ちゃん」
都の提案に、奈月はうなずく。
「え、いいの?」
エキルとラビトの声が重なる。
「二人のエルフさんは仲良しさんで、可愛くて、僕らみたいだよねぇ」
都が言うと、奈月が嬉しそうに照れる。
「手をつなごうか? エキルさんは月ちゃん、ラビトさんは僕と。これではぐれないよ」
都の提案にエキルとラビトは特に文句は言わない。楽しい予感がしているのだろう。
奈月は驚くが、頑張ることにした。初対面の子たちで緊張するけれども、困っている子たちを放ってはおけない。頼ってもらえているのだから、それには応じたい。
何より、都もいるし、学園祭だし、探すのも楽しいだろう。
エキルとラビトの視線は頼りにしているというだけでなく、好奇心もしっかりあった。
奈月や都の名前の雰囲気が違う事や初めて見た何かについて、あれこれ質問は飛んでくる。
「お耳丸いけど、どういう飾りを付けるの?」
「グレイオンスはここに着けてるよね」
この調子で子どもたちは話してくる。ちょっとで答えを考えると、次に移っているときがある。質問が自己完結しているのはなぜかわからないけれども、周りに多くの人がいるからかもしれない。
エキルとラビトの質問は都や奈月の外見などから始まる。その結果、奈月は(私が、出し物の珍獣になったみたいです)と思う。
都はエキルとラビトの質問は適度にうなずき、話を進めていた。聞き上手に徹しているようだった。
「いろんなことに興味あるみたいでかわいいエルフさんだなぁ」
とほほえましく見ているのだった。
●飴と空腹と
サイラスは学園祭を見物していた。
自身は鍛冶屋の店を構えているがゆえに、学園祭の出店は新鮮だ。それ以外にも研究展示などもあり、見て回る。展示は力作もあり、感心する。
そんな中、フィルエス大森林の灰火のとある里で会ったハーフビーストが速足で通り過ぎた。声を掛ける間もなかったが、向こうが足を止め戻って来た。
ウルの挨拶は「先日はどうもありがとう」だった。
サイラスは「いや、こちらはできる仕事しただけだ」と返す。
ウルは「頼まれてくれるのが嬉しい」と言った後、口ごもるが話を切り出す。
「学園祭を楽しんでいるところわりぃが……里でちび見た記憶ある?」
里の中には避難してきた人などたくさんいて、子どもがいたかどうかどの子どもかわからない。そのため素直に「わからん」とサイラスは告げた。
ウルは「実は、連れて来たちびどもが迷子になったんだ」と、かくかくしかじかと説明をした。
「これだけ人がいればわからないか」
「もし、見つけたら、俺が探していたから、入り口か宿に来いと伝えてくれないか」
「構わないが。残留思念感応でわかるかも?」
「わかる?」
「試してみる」
試してみると、色々、情報が散った。楽しそうな雰囲気はたくさんあった、場所には。
「……気にしておく。子どもたちの興味持ちそうなところ行ってみるとか?」
「農業の展示は見たらしいが、あとは……想像がつかねぇ……」
サイラスは出し物をいくつか勧めてみた。
ウルは「助かる」と礼を述べ、サイラスと別れた。
サイラスはそのあと、あえて、子どもが寄ってきそうなことをしてみることにした。
スペースを見つけ、そこで飴細工を作る。
シンプルな飴が形を変える。それは手品にも似て、興味を惹かれる。
そのため、学園生も足を止める。
しばらく飴細工していると、エルフの子どもたちが来た。
冒険者の連れも一緒だ。
「かっこいい!」
「すごーい」
「おじさん、里に来たことあるよね」
「そういえばそうだ。冒険者のおじさんだ」
同じ里、子どもたちは冒険者を記憶していたらしい。
「おじさん……か?」
「……お兄さん?」
「ごめんなさい」
「いや……それより、ウルが探していたぞ。入り口か宿で待ってろって」
その伝言に子どもたちが「もうちょっと遊ぶ」と訴える。
「ウルと合流した方がいいのでは?」
「でも、どこにいるかわからない」
建設的な提案は、現実をもって反論された。
都が「僕たちが送ろうか?」と代案を出す。
奈月がうなずき「そうすれば、きっと、心配も減ります」という。
サイラスはすべきことはしたため、片づけをしながら、話がまとまるのを待つ。飴細工や残りの飴があるため「飴食べる?」と子どもたちに問う。
お腹空いていた二人は「食べる!」と言い、飴をもらうと嬉しそうにもらった。
ミニビヒモーがやって来た。
「あ、あの……」
と声がするが、ミニビヒモーではなくその後ろから出て来たアンジェだ。
「ラビトさんとエキルさん……ウルさんが……探してました……」
「え、キツネさん、手当たり次第に話してる!」
「まるで僕たちが迷子みたいじゃないか」
エキルとラビトが怒るためアンジェは困惑する。
「ま、どっちかというと、子どもが迷ったんだろうな」
サイラスがつぶやくと、ウルから事情を聞いているアンジェが首肯した。
「いた、てめーら!」
ウルの怒鳴り声がした。
レイラと希がなだめる。
「怒ると逃げるかもしれないですよ?」
「そうそう、逃げたくなるとよ」
ウルがそれを聞き、動きを止めた。
実際は、奈月と都がラビトとエキルの手をつないでいるため、簡単に逃げられない。
それが見えたらしくウルはほっとした。
「……助かった……」
ウルは頭を下げる。
「方々に迷惑を掛けた、申し訳ない」
「キツネさんが迷子になるからだよ」
「てめぇらが迷子だ! いいか、カカオ調べたいなら、俺から離れるな」
エキルとラビトは顔を見合わせる。
「……」
「いいのくっついて」
「あ?」
二人はウルに両脇からくっついた。
「動けないよな、それ」
サイラスの指摘にウルが「ああ」と渋い顔をする。
「でも、手をつなぐも両側からにならない?」
都が指摘する。
結局、どうしても、ウルが困るらしかった。
なお、エキルとラビトも合流できたことでお礼を述べた。
そして、学園祭の本日の終了まで、皆それぞれ楽しむのだった。
マスターコメント
ご参加ありがとうございます。
探してくれる方、保護してくれる方、ありがとうございました。
情報というバトンをもらって、最終的にウルと子どもたちが合流というのを想定していましたが、関わった冒険者さんたちも含めて集合になりました。
手をつながれてしまえば逃げることはできませんね。
ご縁があれば、お会いしましょう。
イベントシナリオ易しい 報酬:無し6 / 4〜25人
2022年10月07日 15時04分30秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
投稿はありません