【樹謂】働くもふもふ大集合?

狐野径

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シナリオID:2381

オープニング

●物資輸送をする
 フィルエス大森林、灰火(ルイン)の里の一つ。
 入り口には馬車が止まり、物資が詰まれていた。
 食料や医薬品などである。

「情報不足! 爺様、おっそい」
 ナツキ・エルがイライラとしながら、物を積み、隙間を詰めていく。
「まぁ、迎えも兼ねての物資輸送だし」
 ハルシ・エルは馬の状況を確認しつつ、ナツキをなだめる。
 とはいえ、グレイオンスが戻ってこられる状況かすらわからない。
 それだけでなく、ハルシは心配する点もあった。
「……でも、いいの?」
 ナツキは「ん?」と顔をあげた。
「いや、何でもない」
「別に、里の境界をまたぐなって言われているわけじゃないし、私が実験して家燃したのが原因だし。そのあと、旅して勉強するってもめただけだし? 今回、何もできてないのも事実だけど!」
 ナツキの不安をハルシは感じた。いつもの何も考えていないような口調ではないからだ。
 故郷がある方向が帝国過激派の襲撃を受けたとなれば、木になって当然だろう。
「あ、でも、戦えるって思って行っていたら、もっと厳しかったかもしれないんだよね……知り合いが……」
「ナツ」
「あ、いや、うん。アンデッドにされてたんでしょ、あいつらが通り過ぎたところの人たち」
「……そだね」
「……もし行ってたら、冒険者や戦士の人たちの足を引っ張てたと思うし」
「そっか」
 ナツはしおれていく。
 ハルシはかける言葉を探していたがなかなか見つからない。
 そこにちょうど、ウル・ヘルバがやってきた。
「姐さんたち、弁当……ん? 何かあったのか?」
「ふおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお」
 気を使って声を掛けたウルに対して、ナツキはとびかかり頭を撫でまわした。
「なんで、あんた! 髪の毛ももふもふなの!」
「知るかよ!」
「そうよね、ハーフビーストだから、そこの毛は、キツネの毛。それは上質の香り」
「知らねぇよ!」
「刈っていい?」
「刈るなよ! 毛先そろえたのでいいならやる」
「いらないよ!」
 ハルシが何とも言えない顔で二人のやり取りを見ていた。
 そこで、気づいたのは、ウルの恰好。
 どう考えても一緒に来る気だ。
「……ウル、あなたは留守番」
「なんで!」
 ウルが不本意そうな顔になる。
「今、あちこちでダンジョンの被害者の遺体やら遺品やらが出てきているの」
「わかってる! 別に俺がいなくていいじゃないか」
「それに対して、ここの長たちは『冒険者に頼もうかしら?』とか悩む」
「悩んでも自分たちで決めるだろ」
「そう、そこに、ウル(毛玉)がいると、大変役に立つのよ」
「別にギルドに行くのは誰でもできるだろ」
 ハルシの説得にウルが納得しない。
 聞いていたナツキが「毛玉の決断早い」という。
 ハルシがうなずく。
「つまり、遺品を取りに来た人(エルフ)たちにとっても、雇われる冒険者にとっても、決断早い人がいる必要があるのよ!」
「……そういう事か!」
 ウルは納得した。
 グレイオンスがいるときは、グレイオンスに相談して里の人たちは決めていた。ウルからすればグレイオンスものんびりしていると感じるが、他の人たちよりは早いし、状況をわきまえる。性格もあるだろうし、年の功もあるのだろう。

「なら、グレイを連れてくればいい!」
「一応さ、あっちの状況っていうのもあるわけだよね?」
 聖鳥(メイルアイレ)の氏族は相当なダメージを受けている。族長が殺されたところであるため、指揮系統が不安定だ。
 個別で動けるとしても。

 ウルの耳としっぽがあからさまにしおれた。
「なんかさ、小さいころと全然変わらないよね」
「見た目だけだよ、大きくなったの」
 ナツキとハルシがうなずきながら話しているのだった。

●現地にて
 夜天(リシルド)にある、仮本陣。
 そこに到達するまでにハルシとナツキは、帝国過激派の爪痕の深さを感じていた。
 馬車が近づくと、周りにいたエルフや冒険者たちは、驚くが、二人が説明すると喜んで迎えてくれた。
 グレイオンスのいる場所まで二人は向かう。
「爺様、物資。何往復化した方がいい?」
 ナツキがグレイオンスに目録を渡す。
「ご苦労だったな」
「うん。あ、爺様、無事でよかったよ」
「……後方にいたからな」
 後方にいて無事であったのは、そこまでに敵が討たれていたからに他ならない。
 もしもの場合は、ここでこうして話などできない。
「……じゃ、私はここで」
「家族に会って行かないのか?」
「……何もできなかったのに!」
「そうか」
「うん」
「里の方はどうだった?」
「近くにダンジョンできて、驚いた」
「そうか」
「うん」
 沈黙が流れる。
「もう少しいるから、必要なものよろしく。あと、運ぶべきもの運ぶから」
「わかった」
 グレイオンスはナツキが必要なら相談するだろうと背中を見送った。
「――とて、色々してくれているのだがな」
 とつぶやいた。

 ナツキはハルシのいる馬車に行った。
 馬車を遠巻きに見るエルフの子どもたちを発見する。
「あれ気付いている?」
 ハルシに問う。
「まぁね」
 子どもたちの表情は落ち着きなさげだ。
 戦闘に直接巻き込まれたどうかにかかわらず、色々なことは聞いているだろう。それに、匂いが明らかに通常の森とは違うだろうから。
「こうなったら、色々癒しが必要なのよ!」
 ナツキが大きな声をあげた。
「もふもふ!」
「は?」
「もふもふがいればいいのよ!」
「……いや、それ、あなたにとっての癒しでは……」
「もふもふは正義!」
「いや、それは」
「もふもふは平和の象徴!」
「え、ええ……?」
「ということで、冒険者はここにいるのよ、ちょっと、もふもふを拝借できればいいの!」
「……え、ええー!?」
 ハルシはナツキが何を考えているかいまいち把握できず、困惑する。
 そんなか、ナツキは大きな声で周囲の冒険者に声を掛ける。
「ということで、冒険者のみなさーん! 自薦他薦問わず、働くもふもふをここに!」
 子どもたちが驚いた様子を見せたが、ちょっと表情が楽しそうになった――かもしれない?

解説

●目的・目標  自他推薦問わず、もふもふ(毛が柔らかでたくさんある感じ)と思われるもの、来て癒してほしいということ。  一応、子どもたちのアニマルセラピーを目的としている……らしい。 ●働くもふもふ?  たとえば、牧羊犬。冒険者と行動を共にする大鼬やリスやらゴリラやら。  むしろ、ご飯を食べる姿が愛らしいため、いるだけが働いていることである、ということでもOK。  ペットなら他薦と言えなくはない。  冒険者自身が働くもふもふを名乗るならば、自薦かもしれない。  なお、触られたくないときは逃げても問題ないし、状況によってはハルシによりツッコミが入る。  ペットなどの動物な場合は、噛みつきひっかきもOK、ナツキに対しては。  子どもたちには穏便にお願いしたい。  どういう働くもふもふか紹介していただけれると、子どもたちとの会話が弾むかも? ナツキはともかく……。 ●現地のNPC  ・ナツキ・エル エルフ女性、キャスター。  毛のある動物が大好き。先日、ビヒモーを撫でまわして、蹴られてもつつかれても諦めないという猛者。  ハルシには明確にいっていないけれど、一応、子どもたちのための行動。  ただ、乗ってきたら、どうなるかわからない。  ・ハルシ・エル エルフ女性、シューター。  ナツキが暴走しないのを見張るだけ。  ・エルフのちびっこたち 6人ほど。10歳前後の子に見える。  怖かったし、することあるとしても、少し息抜きが欲しいところ。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  無事、このような状況を迎えることができました。  そして、このようなシナリオになりました。  ……いえ、その、もふもふが書きたいと決戦シナリオの時から思っていたということが実はあったりします。  よろしくお願いします。

リプレイ

●もふもふ挙手
 カイン・ステラはナツキ・エルの声を聞き、連れの栗鼠のランに声を掛ける。
「もふもふ……ラン、力を貸してやってくれ」
 ランは「どーしよっかなー」という雰囲気。
「報酬は……新しいケープ製作ということで」
 魅力的な案を出されたランはコクリとうなずいた。

 大福はエルフの子どもたちもいるだろうから、少しでも元気づけたいと考える。
 そのために、狼の粽の身支度はきっちりしてやってきていた。もふもふの粽と戯れてもらえれば、子どもたちも元気になるはずだ!
 風呂及びブラッシングコースで、粽はふわふわのモッフモフになる。
「粽をもふもふしたらきっと皆元気になるのだ!」
 顔見知りであるカインが大福に気付いて声を掛けて来たので挨拶する。
 そして、ペット同士も挨拶する。

 パルドは黒い猫のショコラをつれ、ナツキの声に応じる。
 子どもたちの心休まる時間が作れたらよいと思う。
 子どもの視線を感じたので、ショコラの前足を軽く振る。
 ショコラへだけでなく、自身の耳や尻尾にも視線を感じる。
「冒険者が来ても珍しいことには変わりないか」
 自身がハーフビーストという点を考えると、大森林の奥の方に暮らすエルフで、小さい子どもとなるとより一層他種族は縁が薄いということは推測しやすいのだった。

 アンジェはナツキの声に立ち止まり考える。
「……アンジェ、にも、できること……、……今回は、ミニビヒモーさんの、出番みたいです……報酬は……おやつ……です」
 冒険者の仕事にいつもついてきてくれる頼もしい連れだ。
 十分働くもふもふなのだ。

●リスと遊ぼう
 ナツキの声から冒険者が集まったため、エルフの子どもたちはやってくる。
 早速、ランが、子どもの肩に乗る。その肩から肩に移り、挨拶する。
 生き物が肩に乗ったということから、その重みや温かさに、子どもたちは一瞬驚き、ほっとした顔になる。
「リスのランだ」
 カインがランの紹介をする。
 ランは子どもの頭の上に乗ると、そこの髪の毛で毛繕いをする。
「くすぐったい」
 子どもが嬉しそうに笑う。
「いいなぁ」
「触ってもいい?」
 子どもたちが口々に言う。
「順番にな」
 とはいうけれども、ランは子どもから子どもに移る。
 それを追いかけて子どもたちははしゃいでいた。
 カインは子どもたちに飴を配る。飴はカエルダーフラワーとカモミールのコーディアルを使ったもの。
 またその際、一人ポツンといる子はいないか見た。
 冒険者を遠巻きに見ていたり、近づいても輪に入れない子はいないようだった。

 ランを追いかけ、ひとしきり走り回って息切れを起こしているが、子どもたちは笑顔であった。
「ランにおやつあげてみるか?」
「あげる!」
 子どもが数人元気よく言う。
「これが一回分のおやつだから、分けて少しずつあげること」
 子どもたちはわいわいとおやつをあげる。
 ものおじせずあげるさまは安心して見られた。
 ランもとりあえずの報酬として、満足した様子だ。
「リスのブラッシング、してみるか?」
 希望する子には尻尾の毛並み整えを教える。
 どこかおっかなびっくりな子もおり、ランが「嫌」というように逃げようとする。そうすると、子どもはがっちりとつかんだ。
「こらこら、落ち着いて優しくしてくれ」
「だって逃げるんだもん」
「みんなも髪梳くとき、無理やりやられたらちょっと嫌だろ? ランもお年頃なんで、優しくしてやってくれ」
「はーい」
 子どもたちの返事を聞きながら、カインはここであったことの影響が自宅で出ることを考えていた。
 自宅にいる他のペットたちも年頃の女の子。もし、ランにとってここでの扱いについて不満があれば、頼んだカインにとばっちりが行く。ランだけでなく、彼女たちが、結託する可能性は高い。それにより、部屋中がどうなるか――考えるだけで怖い話だった。
 子どもたちとはこの辺の動物の話をしたり、カインからはランとの出会いを話したり過ごすのだった。

●もふもふ、ダブル
 オオカミである粽におおかなびっくりだったエルフの子どもたち。
 ただ、冒険者が連れている狼は特別だと理解できると、好奇心全開で近づいてきた。
「触っていい?」
「もちろんなのだ!」
 子どもたちは許可をもらうと、フワフワ毛並みに手を伸ばす。
「わあああ」
「もふもふ」
 楽しそうな声。
「粽は強くてカッコイイ狼なのだ!」
 大福が粽をアピールする。
 その間、子どもたちは、粽の首根っこにしがみついてみたり、背中によじ登ったり、遊んでいる。
「走るのも速いし、泳ぎもうまいのだ!」
「すごーい」
「いつも朝は大福を起こしてくれて、着替えも用意してくれるのだ」
「え?」
 子どもたちが困惑の顔で大福の方を見た。
「……べ、別に大福は自分でちゃんとできるのだ。赤ちゃんじゃないのだ」
 大福が反論するが、内容が「大福、赤ちゃん疑惑」に向かっていく。子どもたちは「そういう事なの?」「粽ちゃんが賢いだけではなかったの?」とささやき合っていた。
 大福は「え、っと」と話を変えるべく口を開く。
「粽の背中の毛は少し固いけど、おなかとほっぺの毛はフワフワだし、尻尾はもっふもふなのだ。枕にして眠るとぐっすり眠れるのだ」
「へぇ」
 子どもたちは大福の話を聞きつつ、粽をなでまくる。
「お世話するのだ! 毛は流れに合わせてブラッシングしてあげると喜ぶのだ」
 大福が解説すると、子どもたちはやってみる。
「耳の後ろも気持ちいいいところなのだ」
 色々と粽についてアピールをした。

 なお、もふもふタイム中、粽が「ウォッフウォウォウォ! ウォッフ、ウォーン!」など何か言っているときがあった。
 言葉が通じていないから「気持ちいいのかな?」とか「喜んでる?」など子どもたちに言われていた。
 粽の言葉の意味を要約するならば、大福について、
『このまん丸ほっぺにもちもち感とクリクリお目目、肉球もぷにぷになんだぞ。なぜか少しミルクの香りもするんだ。可愛いだろううちの大福は』
 という事になるのだった。
 確かに、大福はもふもふマックス。子どもたちの視線は大福にも注がれていた。 
 大福は粽の飼い主だと思い、粽は大福を子どものような感覚で見ているのか?
 似た二人と言えるのかもしれない?

●黒猫
 パルドは座るとショコラを見やすいようにした。
 すると寄ってきた子どもは地面に座って、ショコラをよく見えるように配する。
 触りたい、という雰囲気が漂う。
「猫のショコラだ、よろしくな」
 パルドは子どもたちを怖がらせないように優しく話す。
「触っていい?」
「構わない」
 子どもはそっとショコラの背中に触れる。
「おお」
「ふかふか、つやつや」
「あったかーい」
 子どもたちは嬉しそう。
「抱っこしてもいい?」
 パルドが「気を付けてな」と、ショコラを抱きかかえ、子どもに渡した。
 子どもの腕にはちょっと大きいかもしれないが何とか収まる。
「わー」
 ショコラはちょっと居心地が悪いらしく、パルドを見て何か訴えている。
 子どもの腕からずるずる落ちていた。
「ちょっと難しいか」
 パルドが引き取ると、膝に乗せ、その頭をなで、のど元をなでる。
「こうやって、下から手を持ってきて、のど元をなでてやると喜ぶ」
 ショコラは気持ちよさそうに目を細める。
 子どもが続いてやってみる。
 最初はうまくいかず、ショコラが何か訴えるけれども、徐々に子どもたちも慣れる。
 ショコラが気持ちよさそうに目を細めたら、子どもたちも嬉しそうな顔になった。
「首の周りは特に柔らかいんだ。ほぼ、毛、てくらい」
「うん!」
 しばらく子どもたちがなでているのに任せていた。
「ナツキ(さっきの人)が言っていたけど、働くの?」
「うーん、しいて言えば、自由にしているのが仕事かな」
「ええ?」
「遊ぶのと寝るのと、食べるのが好きな子だよ」
「仕事なの!?」
「じゃ、ボクたちもしてる?」
 子どもたちはわいわいと自分たちがしていることを言い始めた。
「十分偉いな」
 パルドが褒めると子どもたちは満足そうな顔になる。
「そうだ、おやつあげてみるか?」
「あげる!」
 パルドがおやつを取り出すと、ショコラの目はそれを追う。
 入れ物から出して、子どもたちに分けようとした。
 ショコラが「なーう」と鳴き何か訴える。
「早くちょうだいっておねだりだな」
「僕が先!」
「あたし!」
 子どもたちがもらったおやつを突き出す。
 パルドが順番だという間もなかったが、ショコラが適宜順番で食べていた。
 食べ終わると、ショコラが満足そうに毛づくろいを始めた。
 子どもたちがそれをまねをしたり、眺めたりしていた。
 再びパルド自身にも熱い視線が注がれている。
 耳を動かすと、感嘆の声が上がる。
「触ってみるか?」
「い、いいの」
 パルドが頭を下げ触りやすくすると、耳に触れる。
「違うんだね」
「すごーい」
 など、子どもたちは感想を述べていた。自分の耳との違いを確認後は触るのはやめた。
 動物との触れ合いから、種族についてなど話が変わっていくのだった。

●これでもミニ
「おっきー」
「もふもふー」
 子どもたちが見慣れぬ動物に群がった。
 ビヒモー自体が寒い地域の生き物。
 アンジェは「ミニビヒモー……です」と教える。
「ミニ?」
「大きいよ!」
 アンジェは子どもたちの勢いに負けそうになる。
 そこは勇気を振り絞り、
「ビヒモーは……もっと……大きいんです……」
 と教えた。
 子どもたちは「本当」「大変だ!」と叫ぶ。
「ミニビヒモーさん……の背中にも……乗れますよ?」
 アンジェが言うと「乗りたい」と子どもたちが口々に言う。
「順番……です」
 誰が先に乗るかあれこれ言い合いになるが、アンジェが見守っていると自然に決まった。
 登りやすい台からミニビヒモーの背中に乗ると、一定の場所を一周して戻ってくる。
 それを希望者に行った。ミニビヒモーは静かにそれに付き合う。
「ふかふか」
 子どもたちは楽しそうだ。
「ブラッシング……できます……よ?」
「やる!」
 子どもたちは楽しそうに、ブラシを持ってミニビヒモーを手入れする。
 届かない部分もあるけれども、先ほど使った台に登って頑張ってやってくれる。
 ミニビヒモーは子どもに鼻を当てることがあった。子どもはびっくりしていたけれども「お礼かも?」と嬉しそうだった。
 アンジェは戦闘が近くであったことから子どもたちに問う。
「…皆、けがは……してないですか?」
「うん!」
「……良かった……です」
 必要ならヒールを掛けて治すことも考えていた。
 子どもが「このもふもふ、いつも一緒なの?」と質問してきた。
「アンジェが冒険者になってから、一緒についてきてもらってます」
「へぇ」
「移動の時に荷物を運んでもらったり……戦闘の時には安全なところで待っててもらったり……一人じゃないから……安心、です」
 子どもたちは話を聞きながら、ミニビヒモーの毛に顔をうずめていた。
「あ、ミニビヒモーさん……まだ、名前……付けてないんですけど……」
 と言った瞬間、子どもたちが口々に名前を言い始めた。
「ミビー!」
「ミモー!」
「アミークス(友達)!」
「うーんと……そだソキウス(相棒)」
 などなどアンジェが圧倒される。
 ミニビヒモーはミニビヒモーで、ここにいる個体はアンジェにとって大切な一頭。だから、ミニビヒモーでもいいとは思う。一方で個別の名前があってもいいとも考える――など、説明しようとしていたけれども、悩みを吹き飛ばすように、寄り添うように、子どもたちが言ってくれた。
 勢いは怖かったとしても、温かいものが満ちた。
 そして、ミニビヒモーはアンジェの腕に鼻を当て、何か言ってくれているようだった。

●その他
 子どもたちが冒険者と楽しそうに動物と触れ合っているのをナツキは、必死に耐えていた。
 自分も触りたいという欲求は大変強くあるものの、子どもたちのためという意識も実際本当にあったからだ。
「ぐぬうううううううう」
「ナツ、頑張ってる」
 ハルシ・エルがその様子を見て、あきれるけれども感心していた。
 もふもふタイムがひと段落したため、パルドが親切に声を掛けた。
「ナツキさんもうちの子もふるか?」
「い、いいのっ!」
 ナツキの興奮が伝わり、パルドは一歩下がった。
 カインも「うちのランも」と声を掛けるが、ナツキの様子を見てためらいが生じる。
 ランにはナツキの頭に乗ってもらって、危険そうなら退避させよう、と決心した。
 ナツキは顔を明るくして「嬉しいっ! 遠慮なく」となぜかパルドの頭をなで始める。
「……」
 自分がなでられている理由がわからないパルド。非常に困惑して、ハルシに助けを求めるような視線を向けた。
 ハルシから「嫌なら、突き飛ばしていい!」と助言が来た。
 ナツキが「なんで!」と抗議の声をあげ、パルドを解放した。パルドは彼女を無理に突き飛ばさずに済んだ。
「そうだよね! 動物撫でるの我慢しなくていいんだよね!」
 ナツキは笑顔でパルドの腕からショコラを取り上げまずぎゅっと抱きしめたのち、そのまま頭に乗ったランを素早く捕獲、粽の首根っこにしがみつき、引きずるように、ミニビヒモーに引っ付く。この一連の動作は全く隙が無く、動物たちが逃げる間もなかった。
 凍り付く冒険者たち。
 唖然とする子供たち。
 怒りをためる動物たち。
 ハルシが淡々と「グレイオンス(爺様)が見てる」という。
 ナツキが動きを止めた。
 その瞬間、動物たちは逃げた。
 ショコラはパルドの肩に乗り、ナツキを警戒する。
 ランはカインに何か文句を言っているようだった。
 粽は大福のそばに行き、何かやり切った顔をする。
 ミニビヒモーが戻るとアンジェが慌てて、けががないか確認した。
 なお、グレイオンスは外に出てないし、見てもいなかった。

 大福が持ってきた細めのロープを取り出し、
「大縄跳びをするのだ」
 と提案する。縄の両端は大福と粽がそれぞれ持つ。
「子供も大人もエルフも、もふもふも皆入るのだ。何回続くか挑戦なのだ!」
 子どもたちと冒険者たちは集まる。
「……ミニビヒモーさん……も?」
 アンジェはどうしようかと考えるが、子どもたちがぐいぐい引っ張るので大縄に加わった。
 大人たちでも手すきの者で興味を持ったものは来た。
 ふてくされるナツキを促し、ハルシも入る。
「粽、準備はいいのだ? せーの!」

 楽しそうな声が響く。
 多くの物を失った状況でもある中、一歩踏み出す力があふれるようだった。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございます。  エルフの年齢イメージしづらいのわかります。子どもは子ども、若者は若者、爺様はじい様で、よいと思います? 最終的には個人差があります。  なお、ミニビヒモーさんの名前、流れであれこれ言っています。名前つけるかどうか悩むのもわかります。これだって思ったのが見つかるといいですね。  ご縁があれば、またお会いしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ易しい 報酬:少ない4 / 4〜8人

2022年08月15日 14時11分14秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アンジェ

    …あの、…アンジェ、です。 よろしく、お願いします…。(ぺこり) ミニビヒモーさんに、子供たちの相手をお願いしようと、思います…。

  2. カイン・ステラ

    カイン・ステラ、よろしくな。 栗鼠のランを連れてく予定。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0