【若木】物騒留まらない跳種

広大野人

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シナリオID:2332

オープニング

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 もともと、植物の品種改良を主とする研究者であったトレイシーは、ふと思う事があった。
 食虫植物に『意思』があるのかないのか……彼ら――と表現していいのかどうかは兎も角、虫を捕らえる仕掛けが何らかの反射によって作動する。そこに『意思』というものは本来ないのではないかと……。
「つまりさ。冒険者が地中に植物の根が伸びているんじゃないかって調べていたよね。あれは『円種』には外れだったけれどこの『苗木』には、有効だと思うんだ」
 得意気に話しているトレイシーに対して、のこのこと研究の最前線に出て来たシュナン・ボートンは真っ青な顔を浮かべていた。
「そ、それで……俺達はどうなるんだ?」
「まぁ……タイミング良かったと思うよ? エクエスさんが合流する予定だった冒険者達を連れて戻って来たら、ね」
 3人は斥候が目撃したという『苗木』を確認する為に、都市ガークハーグから南に位置する荒野にやって来ていた。
「冒険者達の到着が遅れたら?」
「少なくとも動かなければ安全という事は、証明されている訳だ。ところで、シュナンさんは一蓮托生って言葉、知っているかい?」
「知らねぇよ……って、まぁ、大体の意味は想像つくけどな……」
 二人は並んで立っている。
 どちらかが動けば『円種』に察知されて二人纏めて、あの世行きだ。
 その時、比較的大型の渡り鳥が羽を休める為に優雅に舞い降りた。地上が地獄と化しているとも知らず、哀れな鳥――それはトレイシーの目には食虫植物に誘い込まれるような羽虫に思えた。
「シュナンさん、あれ見て」
 トレイシーが指さした直後、地表を数歩跳ねるように移動した渡り鳥に向かって大地を走る『円種』が1体向かって来た。
 鳥は危険を察知して軽く飛び上がり離れた所に着地をする。
 直後、飛来してきた円種が鳥に直撃した。
「……信じたくねぇが、やっぱりガークハーグの方角から飛んで来たな」
 視線を向けた先はシュナンの故郷であるガークハーグ……ではなく、黒い霧だった。
 位置的には辛うじてガークハーグの都市が見える所らしいが、どんよりと不気味に広がる黒い霧に遮られて何も見えない。
「となると、『円種』を放っている本体はガークハーグにあるという事だよ。で、私達が見ている『苗木』は……そうだね、『分身樹』とでも名付けようか。仮説でしかないけれど、『円種』が発芽して成長したのが『分身樹』だと私は思うよ」
「その本体と『分身樹』の関係って何だ?」
「さっき言ったじゃないか。冒険者が土の中を調べたと……つまり『円種』は根を伸ばしている訳じゃないけれど、『分身樹』は恐らく、根を伸ばしている。それで地表の動きを察知していると」
 研究者の仮説にシュナンは分からないように首を傾げた。
「それと飛来した円種はどんな関係があるのだ?」
「『分身樹』は言わば、本体の目。射出能力範囲内の獲物を感知する為のね。『分身樹』の根は本体と繋がっている……とズバリ、推測しているのよ」
「なるほど、それなら正確な射出も頷ける……って、そんな状況で冒険者が来て大丈夫なのか!?」
「事前に伝える術はないけれど、まぁ……大丈夫じゃないかな」
 微笑を浮かべてトレイシーは振り返った。
 まだエクエスと冒険者達の姿は見えないが、それでも、妙な安心感があった。
「必ず間に合うって、私は『信じている』からね」

●
 シルトラース帝国北部鎮守都市オルセン太守のコンラート・マフダルは、ある報告書を尊大な姿勢を保ちながら読み終えていた。
「帝国軍へ協力するという『約束』は達成したか」
 ポンっと束を傍に控えていた配下に投げ渡す。
 報告書には指示通りに動いているという。今の所、都市の奪還を目指している訳だが、障害が多い事、冒険者達の協力を得る為に、更なる資金が必要になる事が記されていた。
 ここで打ち止めにしても良い……が、威厳ある太守としての存在を示す為には、都市の一つや二つ、簡単に奪還せねばならぬとも思う。
「いかがなさいますか、コンラート様」
 配下の女性が訊ねてくる。
 コンラートはわざとらしく組んだ足を入れ替えた――子供のように短い足からは威厳の欠片もないけれど。
「資金は捻出しろ。報告書にあった研究員と冒険者、優秀であれば引き込むのも悪くはないだろうしな」
 オルセンは絶賛、人手不足だ。
 もっとも、その事情はオルセンだけではないだろうが……コンラートは為政者として、人材の大切さをよく理解していた。
 特に研究員などはおいそれと見つかるものではない。おまけに植物に関する専門分野の持ち主だ。オルセン周辺の厳しい気候に合わせた穀物や野菜の品種改良はこの先、絶対に必要な事なので、今すぐにでも欲しい所である。
「それと……その研究員、トレイシーと言ったな。絶対に死なすなと厳命しておけ。あと、人物像を確認したい。その方法も考えて手配しておくように」
「畏まりました」
 配下の女性がただ仰々しく応えるのであった。

解説

●目的 『分身樹』討伐及び『円種』の撃破、並びにNPCの保護 ●状況 地形:荒野 天候:快晴、無風 スタート開始時、保護対象とは50ヘクス離れている事とする。 分身樹は保護対象から10ヘクス北の位置。円種は確認されている数は2体で分身樹の周辺を走り回っている。 ●NPC トレイシー:研究員。非授恵者だが緊急時用の『神実の力』を隠し持っている。 シュナン:帝国の商人。体格は良いが戦えない。 エクエス:冒険者の剣士。スタート位置は冒険者達と一緒。 ※保護対象のトレイシーとシュナンは指示があるまでその場を動く事はありませんが、冒険者を狙った敵の範囲攻撃に巻き込まれる可能性はありますのでご注意下さい。 ●敵 都合上、『分身樹』と呼称するクリーパー。 1体 人の背丈ほどに成長している樹木型のクリーパー。『円種』が発芽して育った個体であり、冒険者を感知すると枝での叩きつけや、小さい種のような物での射撃攻撃を繰り出してくる。 都合上、『円種』と呼称するクリーパー。開始時2体。 ・大きさは50cm~1m程度で個体差があり、ぐるぐると激しく地面の上を回って移動する。 ・おおよそ10へクス前後の範囲内の振動(足音)を感知して突撃してくる。 ・攻撃方法は『体当たり』『ツタのようなものでの鞭攻撃』『自爆(裂開)』など。 ・『自爆(裂開)』の場合、ダメージと共に自爆地点を中心とした直径3ヘクスに黒い霧のようなものを撒き散らす(バッドステータス扱い)。 ・『分身樹』が存在している限り、ランダムの間隔で遠方より『円種』の超長距離射撃が発生する。盾や武具などの硬いもので受け止めた場合、自爆する可能性がある。 ●その他 エクエスとコンラートはシナリオに紐付けされていますが、掲示板への挨拶や質問への回答は致しません。

マスターより

 おはようございます。当依頼にて49作目となった広大野人です。  【若木】連作の3作目となります。種から成長した『分身樹』の討伐とNPCの二人を保護する事が目的となります。敵の特性、オープニングを読み込んでいただき、注意して挑んでいただければと思います。  オープニングにコンラート君登場していますが、リプレイ内に登場する事はありません。

リプレイ

●
「コレ、控えめに言って大ぴんちってやつだよねー……」
 荒野の先、遠くに見えるトレイシーとシュナンの二人の状況にアルマ・ヴァレンタインが手を翳しながら言った。
 『円種』が2体ほど、周囲をぐるぐる走り回っている事も確認できる。
「今度はトレイシーさんがピンチなのですかー!?」
 驚きの声を挙げたのはミア=リゼルだった。
 どうも、彼女の周辺の知り合いは一難去ってまた一難がやってくるらしい。
 アルマが頷きながら応える。
「シュナンさんも、かな……。二人は『円種』がすっ飛んできて危ないっていう事を理解(わか)ってるだろうけど」
 前回の教訓が早くも活かされている形だ。
 足音からの振動で存在を感知しているようなので、動かなければ『円種』に襲われる可能性は低い……が、いつまでその状態でいられるかは別だ。
「あわわわ! すぐに助けに行きましょう!」
 グッと拳を握って力説するミアにルベア・ベルニも同意した。
「危険だと分かっても、リスクを冒すようになったのも、『信じている』事の証拠なのかしらね」
 そうなった原因の一つが自身にもあるのではないかと思うと、どこか、むず痒いけれど。
 一歩進み出たロイ・アウレアもトレイシー達の姿を注視する。
「何時からこの状態なのか……緊張や疲労で限界を迎える前に助けなくては」
 少なくとも数刻は余裕で過ぎているだろう。
 真剣な表情で二人を見つめるロイは台詞を続けた。
「どうやら、『円種』だけではないようですね」
 それはルベアも見えていた。トレイシー達の奥に、樹木のような不気味なクリーパーが大地に生えているのだ。
「……で、あの樹は何? 例の幽界樹っぽい存在?」
「類似の可能性はあるな」
 セリオス・オーガストが強弓を構えて答える。
 見えているのが、天霧りに消ゆる幽界樹(ミスティアニ・アストラキル)に関係するクリーパーかもしれない以上、十分に警戒する必要があるだろう。
 エミリア・シバが試しにトレイシー達に手を振ってみるが特に動きでの返しはみられなかった。
「おねえさん達が見えても、トレイシーちゃんとシュナンちゃんがこちらに来られないのは、うかつに動けない、まずいって状況とかかしらね?」
「そうだろうな。二人を保護しつつ、クリーパーを撃破しなければいけない訳だ」
「問題は、どうやって……よね」
 仲間達に視線を向けて言ったエミリアの言葉に、全員が深く頷くのであった。

●
 戦闘が開始される前、冒険者達が話し合った作戦内容をロイが爆音鳴響(サウンドボマー)によって、トレイシーとシュナンに届ける。
 ちゃんと声は聞こえたようで手を挙げて応えた二人を確認し、アルマがエーテルの波動を高め、仲間達に解放した。
「支援の効果時間内が勝負かな」
 それだけ支援の効果が高い……という意味よりも、作戦がブルーフレアの効果時間中で達成されなければ、別の手を考える必要があるという事だ。
 ルベアとエミリアの二人が頷き合うと、エーテルを踵から噴出させながら、宙を文字通り駆け出した。シーフだからこそできる特殊なスキルの力……地面に触れないで移動できれば『円種』には認識されないという弱点を突いたものだ。
 同時に、ロイとセリオスが左右に展開した。
 シーフ組の囮になる為だ。能力で感知されないと言っても、着地する場面は存在する以上、狙われる可能性は否定できない。
「可能なら樹木っぽいクリーパーの注意も引きたいな」
 ロイの台詞と視線の先にある存在の動きを警戒するセリオス。
「まずは救助対象の保護が優先、かっ!」
 セリオスはわざとらしく威圧するように強く地面を踏みしめて進む。
 今の所、『円種』の方にも動きは見られない。感知できる範囲に入ったら向かって来るだろうから、その時、救助対象を巻き込まなければ良いのだ。
 ミアとアルマの二人はやや遅れながら、先に進む二人のシーフを追いかける形で進む。
 遥か先、街を包むように広がる真っ黒な霧が不気味に見えた。
「……この2体の『円種』どこから沸いてきたのでしょうか?」
「ボクも気になっていたんだよ」
 エクエスの話によると、『円種』数体を誘引しながら冒険者達との合流地点に向かったという。もしかして誘引しきれなかった存在かもしれないが……どうも、違和感がある。
 それなりの距離を詰め、いよいよ、ルベアとエミリアの二人が救助対象の二人に近づく……という時だった。空を裂くような不気味な高音が響いた。
「ロイ!」
 既に『円種』と交戦状態に入ったセリオスが、警告と共に仲間の名を叫ぶ。
 不測の事態に備えていたロイも、状況を理解すると驚きを隠せない。
「『円種』が飛んで……いや、あの軌道はむしろ、射出か?」
 大轟音と共に新たな『円種』が地面に直撃した。
 そこには、ロイがロープで繋いで引っ張っていたぬいぐるみがあった場所だ。『円種』の囮になるだろうかと思ってロイが仕掛けたものである。
 初見がぬいぐるみだったから良かったものの、備え無しでまともに受けたら、授恵者といえども無傷では済まなかったはずだ。
 地面にめり込むように沈んだ『円種』が奇怪な音と共に動き出した。
「そろそろ反撃時か」
 矢を番えるとロイは飛翔してきた『円種』に狙いをつける。
 その様子を確認し、セリオスもエーテルを高めた。新手が出現すると分かった以上、救助後には速やかに敵を撃破しなければ、敵の数が増えていくからだ。
「俺達に構わず、行け! 飛んでくるのはこちらで捌く!」
 チラリと視線を向けてきたルベアに叫ぶ。
 ルベアは深く頷くと最後の距離を詰めて、トレイシー達に合流した。
「担いで退避するよ」
「お姫様抱っこが絵になると思わないかい?」
 ニヤっと口元を緩めたトレイシーの身体を容赦なく、ルベアは肩に担いだ。
「しょうがないけれどさ、もう少し気を付けて欲しいかな……危ない所には、特に」
「忠告、素直に受け取っておくさ……ありがとう、ルベア」
 一方のシュナンの方は、エミリアが抱える。
「お、俺は普通に背負って貰っていいから」
「お姫様抱っこが嫌なの?」
「りょ、両手が塞がると、色々、困るだろ!」
 という建前で叫ぶので、仕方なく、エミリアはシュナンを背負う。体格の良いシュナンではあるが、授恵者であるエミリアにとっては特段、抱えないという程ではない。
「それじゃ、少しだけ空の旅を楽しんでね、シュナンちゃん」
 エアーライドでの移動は高く飛び上がる訳ではないが、一般人からすれば空中に浮いて移動するという事自体、なかなか体験する事は無いだろう。
 悲鳴をあげるシュナンと肩に担がれながらも顔を上げてクリーパーの観察を続けるトレイシーが、ルベアとエミリアの両名と共に真っ直ぐ、退避していく様子を確認し、ミアがホッと息を漏らした。
「怪我は無いようですね」
 必要であれば回復(ヒール)や身代り(スケープセイント)を考えていただけに、無事な姿に安心する。
「ミアさん、念のため、ガークハーグからの射線上に障害を設置しておこう」
 エーテルを高めながら光縛封の準備をしていたアルマからの呼び掛けにミアも頷く。
 『円種』が黒い霧に包まれた都市ガークハーグから飛んで来たのは確認済みだ。射程や射角がどの程度かは分からないが、少なくとも、二人が並べて光縛封を敷けば、直撃を防げるはず。
 そして、その予想は的中した。
 トレイシーとシュナンを抱えた二人が移動を終えて着地して次の移動の為に体勢を整えていた僅かな間を狙って『円種』が再び飛翔してきたのだ。
 だが、『円種』は荒野に呼び出された光の柱に直撃する。
 衝突した際の轟音と共に『円種』が爆発して黒い霧のようなものが広がるが、付近には誰もいないので何の影響もない。
 トレイシーが再び担がれながら、樹木のようなクリーパーを指さした。
「恐らく、分身樹から伸びた根が地表を感知している。あれを打ち倒すんだ」
「狙われたのは……多人数の方かな。あの樹木型のクリーパーが感知できる範囲が思ったより広いのかもしれない」
 アルマがここまでの経過を分析した結果を告げる。
 どのような原理かまでは分からないが根を通じて得た振動のうち、少しでも人数が多そうだと認識した場所に向けて『円種』を射出しているようだ。
(それ以上に……もしかして……)
 不意に脳裏へと浮かんだ言葉を飲み込むアルマ。
 もし、トレイシーが言うように、『分身樹』の根で感知していたとしたら……それが本体と、何らかの方法で繋がったとして、ここまで正確な射出が出来るというのだろうか。
「トレイシーさんとシュナンさんは私(ボク)が見ていますので」
 エクエスの申し出にエミリアは頷く。
「任せたわ、エクエスちゃん」
 ニッコリと笑うと獲物を手にして目標となる『分身樹』を見つめる。
 あれを討伐しない限り『円種』の飛来は止まらないのだ。
「ルベアちゃん、行けるかしら?」
「もちろん。けれど、『円種』はどうするの?」
 『円種』を殲滅させてから『分身樹』に臨むか、増援を阻止させる為にも先に『分真樹』を倒すべきか……。
「『円種』はオレ達が引き受ける」
「こちらは遠距離攻撃で援護もできるからな!」
 ロイとセリオスの二人がそれぞれ、引き絞った矢にエーテルを込めつつ放った。
 次の『円種』がどのタイミングで飛んでくるか分からない以上、妥当な判断だろう。
「回復は私が支援しますから、行きましょう!」
「『円種』が出す黒い霧の悪影響はボクが解除するよ」
 二人のヒーラーがそれぞれに宣言する。
 『分身樹』が黒い霧を噴出させるかどうか不明だが可能性は高い。射撃の援護があると言ってもシーフ二人で接近戦を挑むので、回復役の存在は必要不可欠だ。
 意気込む冒険者達に向かってトレイシーが忠告する。
「『分身樹』は『円種』が発芽したものだと思う。特徴は引き継いでいる上に、能力が成長していると見ていいはずさ」
「ありがとう、トレイシー。私は王子様じゃないから華麗には倒せないけれど、出来るだけ早く排除してくるわ」
 苦笑を浮かべてルベアは言うと、シーフらしく、颯爽と駆け出すのであった。

●
 結局、『円種』の射出はそれから二度程発生したが、いずれも高い回避力を誇るルベアとエミリアを狙ったものだったので大事には至らなかった。ロイとセリオスの射撃に加え、アルマとミアからの支援を受けて、早急に『分身樹』の討伐に成功した。
「残った『円種』を逃したが……一先ず、目的は達成か」
 セリオスが手にしていた矢を筒に戻して、『円種』が消えていった荒野の奥を見つめる。
 殲滅できなかったのは残念だが、狙いを付ける必要がなければ、幾らでもガークハーグから飛んでくるのだ。人里も近くにはないから、当分の間、問題にはならないはずだ。
「囮作戦が上手くいって良かった。オレ達の動きも資料に加えられるのかな?」
 疲れているであろう二人に馬を連れてくるロイ。
 ここから安全な場所まで、少し距離があるので馬に乗れるようにと気を遣った訳であるが、素直に従うようなトレイシーではなかったようだ。
「もう少し調査してからだよ!」
 研究者魂という奴なのだろうか。
 荒野の中を歩き出したトレイシーの脇にアルマが並ぶ。
「無事で良かったけど、大変なのが出てきたねー。ガークハーグにもあれと同じのが一杯いるのかなぁ」
「行ってみないと分からないけど……私が思うに、本体の根の範囲外に『分身樹』が存在する意味がある以上、意外と都市の中はいないかもしれないよ」
 その話にエミリアがハッとする。
 『分身樹』を倒してしまっては根を確認できないのではないと思ったからだ。一応、根っこがある事は把握している。ただし、戦闘中だった事もあり、広範囲を調べる事ができなかったのだ。
「倒したら塵になって消えてしまったから、きっと根も消えているだろうけれど……また確認する必要はあるかしら?」
「あぁ、是非ともお願いしたいね。多分、根は無くなっているだろうけど、土の中に存在していたのだから、痕跡はハッキリと分かるはずだよ」
 根があった場所に空洞ができているという事だ。
 エミリアが意識を集中させて、地中を確認するとトレイシーの言った通り、植物の根のような空間が一面に広がっていた形跡が判明した。
 その結果を受けて、トレイシーが口元に指先を当てて思案しつつ、『分身樹』が消えた辺りへと向かう。
「クリーパーはエーテルを奪うという原則に沿えば、『円種』も同様。ある程度のエーテルを蓄えたら、発芽したんじゃないかな。根を伸ばし、本体と接合すれば、より広い範囲を狙えるようになるだろうから」
「一際大きい根が一つ、ガークハーグに向かっているみたいだから、やっぱりそこに本体があるのね」
 黒い霧に包まれている都市の方をみつめて言ったエミリアの言葉にルベアは複雑な心中を見せるような表情を浮かべる。
「ガークハーグ、ね。そこに本体が在るって分かったら、帝国軍も黙ってはなさそうだけど……」
 チラっと視線をシュナンに向ける。
 大柄な商人は帝国軍に協力している身だ。軍の動きについて何か知っているかもしれない。
「レイウェスト殿下がどの様に采配されるかは分からないが……少なくとも、諸都市の奪還は帝国に所縁のある者達の悲願。勝算があるのなら兵を出してくれる可能性もある」
 その口ぶりはまるで兵が出る前提のようにも思える。どうも、この商人、まだ何か隠していそうだ。悪人ではなさそうではあるけれど。
 護衛の為に横に並んでいたミアが首を傾げた。
「勝算といっても、あの黒い霧では……」
 帝都を含む幾つかの都市の奪還が進まないのは、天霧りに消ゆる幽界樹(ミスティアニ・アストラキル)からの悪影響があるからだ。
 都市を覆うあの霧には、授恵者といえども手出しができない。つまり、現状だと、勝算どころか、戦いにもならないのだ。
「まぁ、その当たりは……色々と解決策も考えている人がいるらしいからな。とにかく、どこもそうだろうが、人手が足りてないんだ。ガークハーグの奪還作戦、都市に居座っているであろうクリーパーの討伐は準備が出来次第、依頼に出すから待っていて欲しい」
 言い訳のように冒険者達に告げるシュナンの話を聞きながら、興味深く分身樹が消滅した場所を検分している研究者の姿をルベアは見つめた。
(……よく考えたら、復興に向けてという意味では、トレイシーも見過ごせない人材なんじゃないかしら)
 組織(ソーン・クリエ)から離反させただけだったが、彼女の運命に……いや、彼女がこれから関わるである研究を通して、より多くの人々に大きな影響を及ぼす事になるのかもしれない。
 そんな風に思われているとは知らず、トレイシーは眼鏡の位置を直しながら背筋を伸ばす。
「色々と情報も得た事だし、暫くは研究に没頭するかな。冒険者達のおかげで五体無事だった事もあるしね」
 冒険者達の活躍により、彼女が隠し持っている『神実の力』を使わず済んだ事が、後日、大いに役に立つ事になるのだが、それはまた別の話である。

マスターコメント

 お疲れ様でした&ご依頼にご参加いただき、ありがとうございました。  ポイントとしては、『円種』の特性を理解しつつ、どうやって安全にトレイシー達を救出するか……という所でしたが、スキルと行動を活かした冒険者のチームプレイが上手く合致した形になったと思います。  文句なしの『大成功』かと! トレイシーに『神実の力』を使わせなかった事で、別の連作に良い影響も出るかな~とかなんとか。また、今後の展開……黒い霧に包まれたガークハーグをどう攻略するつもりなのか……その辺りも含め、今後の展開も追いかけて頂けると幸いです!  それでは、改めて、依頼へのご参加、ありがとうございました。また機会があれば冒険者の方々のご参加の程、お待ちしております。
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人

2022年07月30日 21時28分00秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ルベア・ベルニ

    シーフのルベアよ、宜しく。 さて…目下の問題は ・私たちは状況開始時点では分身樹の役割を知らないこと ・超長距離射撃の射程(=分身樹の『目』がどこまで届くか)がわからないこと …かしらね。 役割の方は前回『円種』は根を張ってなかった、でも今回の分身樹は明らかに… っていう感じで推測しちゃえると思うけど。 射撃の射程の方は……流石に50hexってことはないと思いたいところ。 それだとシューターの人でも射程負けしちゃうしね…。 一応、個人的には最初のラウンドで20hex分距離を詰めて確認できる、とは言っておくわ。 (サブ:移動+ホライゾナルジャンプ、メインも移動) 極力足音を立てないようにするにはエアーライドも2回分使うことにはなる、かな。 割と体を張るのは自覚してるから、やるなら自分でも見切り持っていくし、 ブルーフレアとか使ってもらえるならその後に動いた方がいいとは思ってる。 まぁそれ以前に、他に何かいい案が出たらそれはそれで。

  2. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 位置関係は冒険者→(50Hex)→保護対象→(10Hex)分身樹だっけ… 『円種』ドカーンもあるし保護対象のお二人と直線状にならないよう、 すこーし迂回するように駆けつける感じになるのかなあ ひとまずブルーフレアは持っていく予定なので開幕使用できるよー もう1枠は光縛封にしようかと思うんだけど 保護対象のお二人を直接囲ってる間(3らうんど)に『分身樹』を仕留めにかかるか 衝立みたく前方設置で『円種』を防いでる間に距離とってもらうのとどっちがいいのかなあと どこまで離れれば安全圏なのか分からないから超長距離射撃の射程が気になるー…

  3. ミア=リゼル

    ヒーラーのミア=リゼルです。よろしくお願いしますね。 アルマさんのおっしゃる通り、分身樹の攻撃の射線上にトレイシーさんたちが入らないように近づく必要がありますね。 こちらの特性は光縛封と…これは、囲うにしても衝立のようにするにしても、アルマさんの光縛封が破られた時に追加で使用する予定です。そのどちらかなら、盾がわりの光縛封を置いている間に距離をとっていただくのがいいかな…と思いますね。 あとは、もしもの時のためのスケープセイントを。 ルベアさんが一気に近づくのならば私も…さすがに一息で20Hexとはいきませんが、回復が届く範囲まで詰めようと思います。

  4. ロイ・アウレア

    シューターのロイです。宜しく。 先ず、スキルに詳しくないので、抜けた事を話してたら申し訳ないです。 2人の元に辿り着けるのはシーフ系だけだろうな…と なのでオレが出来るのは『円種』の囮になることかな。 例えば弓で何かを飛ばして、獲物が来たと勘違いさせられたら その間はNPCへの注意を逸らせるよね? ついでに、飛ばした何か紐をつけて…猫を釣る如く引き寄せたらどうだろう? 職が綺麗に、シューター2、ヒーラー2、シーフ2、と別れた上に 救助対象も2なので、どうかな…なんて考えたよ。 単純すぎるかな…。

  5. エミリア・シバ

    顔出しが遅れたわシーフのエミリアよ。 とりあえずまず、保護対象の二人をどうするかを決めた方がいのかしらね。 動かないでいてもらうのか、その場から離脱させるのか。 離脱させるなら例えば、おねえさんもエアーライド+移動系スキル(疾風足orホライゾナルジャンプ)の用意はできるから、ルベアちゃんと二人でエアーライドで接近して一人一人担いで離脱とかできたりしないかしらね? ルール的な手番を考えて先手必勝も持って行って、接近するときは手番を極力遅くして、離脱するのに次ラウンドも使う場合は今度はできるだけ早く手番を回して離脱、って感じも出来るし。 動かないでいてもらうなら、光縛封の案もいいでしょうし。 迂回する場合は大きくめに迂回してもいいとは思うわね。 飛んできた円種が前回までのものとすると飛んできたらある程度走り回るようだし…… 後は気になるのは長距離スキルの射程よねぇ。 とりあえず、どの距離までが安全かとかも調べたいところだけれども……。 汎用スキルは離れた位置からでも意思疎通できるように救助対象にテレパスで質問して超聴覚で答えを拾うとか思ってたのだけれど、テレパスの効果を誤解していたかもしれないので質問中なのでそれ次第かしら。

  6. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、遅くなった、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず離脱させるにしてもそうでないにしても早急に保護対象の所までたどり着かんとだからシーフ二人に先行してもらったほうがいいだろうな。 ロイ案でやるなら俺と二手に分かれて囮か 相手は振動で感知するようだからやるなら炸光矢のようなもので振動させてとかなら囮になるだろうか

  7. ロイ・アウレア

    NPCは助けに向うまで動かずに居て貰って ルベアさんと、エミリアさんが辿り着いて抱え逃げてくれたら…と思ってます。 そのフォローと、超遠距離攻撃からのカバーでアルマさんとルベアさんがって流れしか思い浮かばない。 (攻撃が来たら皆で光縛封の中に入り身を守り、また走るとか。) セリオス、考慮してくれてありがとう。 オレ達は先ず円種2を(可能なら分身樹の注意も)引き離して倒すのと その後は分身樹の注意(ランダム攻撃の的)になりつつ接近、射程に入れたら攻撃… が、思い浮かぶんだが、他の手があれば是非に聞きたいし、合せさせて下さい。

  8. ミア=リゼル

    ふむふむ、なるほど…承知しました。 ではええっと、私は円種の感知範囲外から…といっても、こちらの手持ちのスキルの射程があるので、ある程度近づく形にはなるかと思いますが、そこから支援を行いますね。 私は、他に良い感じの案はちょっとまだ思いつかなくて… おそらくぎりぎりまで考えていると思いますが、作戦の主幹に影響しないような個人の行動の範囲に済ませますね。みなさんの行動を阻害してしまうといけないので…! 何かして欲しいことや、ちょっと勘違いしていることがあったら教えてください。

  9. アルマ・ヴァレンタイン

    わわ、間が空いちゃってごめんねー 保護対象お二人の留まるか退避するかも 光縛封で囲っちゃうか射線を塞ぐ衝立にするかも現地で見てみないと何ともだし ちょーっとズルいかもだけど見てから戦術眼(3だけど…)でもって判断するー… みたくぼかした感じのプレにしようかなあと もう1枠は超視覚で遠方の『円種』超長距離射撃の発生をできるだけ早く把握して どっち方向に飛んでくるか伝えるのでもやろうかなーと テレパスは受け側もセットしてないとそもそも伝わらなかった気もするー…?

  10. ロイ・アウレア

    >戦の主幹に影響しないような個人の行動の範囲に済ませますね。 ぶっちゃけ、オレも全体の動きが見えないので…どう動けば良いか判らずだったので 『こう言うイメージ』と提示したけど、それが絶対とも思ってないのと そろそろ書き上げないと不味い時間なので アルマさんの言う様に、ぼかした感じのプレにしようと思います。 一応『こう言うイメージ』は提示した上で 皆さんの行動と現地状況に合せる内容で提出しますね。

  11. エミリア・シバ

    うーん、とりあえず 前述通り、汎用で疾風足エアーライド先手必勝を持って行って、救助対象を一人担いで逃げれるようにするわね。 行動としては……おねえさん自身はスタート地点から接近して『円種』超長距離射撃が飛んでくる距離を把握して、それからNPC救助をとか考えていたけれど、現場でそれなりにごまかせるように書いておくわ そうそう、テレパスはアルマちゃんもありがとう、改めて読んだときに別の解釈もできてしまいそうだったので、念のために詳しい人(運営)に聞いてみたので、今回はもっていかないわ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0