幸せが始まるよ
眞石ユキヒロ
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シナリオID:2256
オープニング
●両親への報告
(私を育ててくれた尊敬するお父さん、命と引き換えに私を産んでくれたとても強いお母さん)
辺境都市群冒険者ギルド職員、シカのハーフビーストのツェレンは墓の前で目を閉じ、心の中で両親に報告する。
(私は同棲している彼氏――アーキルと結婚式を挙げます)
ツェレンはリザードマンである彼氏、アーキルとの間に起こった誕生日の出来事を思い出す。
(アーキルの件では冒険者さんにいっぱい助けてもらったんだ。だから結婚式には冒険者さんたちも呼ぶんだよ。楽しみだな)
風がツェレンを洗うように吹き抜けていく。ツェレンは目を開き、両親の眠る墓に穏やかに微笑んだ。
(アーキルと一緒に幸せになるからね、お父さん、お母さん。……ずっと見ててね)
●与太話
辺境都市群冒険者ギルド。
「ふっふふーん♪」
今のはライリー・ベルではない、ツェレンだ。
ツェレンの後輩、兼、ドゥジン信徒のライリーは、鼻歌交じりに笑顔で書類仕事をこなす先輩を真顔で凝視していた。
ツェレンの笑顔にギルド職員たちは動揺しているが、普段のやや険のある表情よりはよほど親しみやすいということでスルーしている。
(ま、まぁ、先輩はそろそろ結婚式ですし? 浮かれてても全然おかしくないですし?)
ライリーはそういえば最近は「ダメな恋人に振られた主人公がソイツの結婚式の後に理想的な異性と出会ってその日のうちに宿で……」って展開のドゥジンシが一部で流行ってるらしいな、などと余計なことを考えながら手を動かす。というか余計なことを考えないと手を動かせないというか。先輩の全身からにじみ出るハッピーオーラへの困惑に負けかけているというか。
そういうドゥジンシも書いてみようかなと考えた瞬間、どこかで聞いた「書けば出る」という迷信を思い出す。
(あたしにはまず無さそうだな、そういうの)
それより出席用のドレスを借りなきゃな、と思いながらライリーは真顔で目の前の書類を片付けていった。
●結婚式当日
水上都市アキュアリスタ。
湖畔に立つ式場にて、ツェレンとアーキルが結婚式を挙げる当日。
式場にはアーキルの親族やギルド職員だけでなく、冒険者も呼ばれていた。
晴れ渡る空の元、ガーデンウェディングが執り行われる。
純白のウェディングドレスを纏ったツェレンはネイビーのタキシードに包まれたアーキルのたくましい腕に手を添えて、白いアイルランナーとテラリウムのランタンで飾り付けたバージンロードを一歩一歩踏みしめるように歩んでいく。
バージンロードの行き着く先にはツェレンの誕生花である勿忘草と、アーキルの誕生花である瑠璃唐綿で作られた緑滴る円形のアーチが存在する。
その前に二人で立ち、列席者の方を向いて二人は誓いを口にした。
「ワタシ、アーキルと」
「私、ツェレンは」
「「皆様の前で結婚式を挙げられることを心より感謝し、ここに結婚の誓いを行います」」
誓いの言葉は恙無く終わり、二人は互いの指輪を交換する。それからアーキルがツェレンのベールを上げ、誓いを分かち合うように優しくキスをした。
●幸福の裏側で
ライリーを誘拐したハーフリングの男――ティボーは式場の中でせっせと料理をサーブしていた。
(やっぱり普通に働くのが一番なんですよね)
幸せそうなツェレンとアーキル。二人を取り囲むギルド職員。各々楽しげに振る舞っている冒険者たち。
(あんなことに加担した僕をこの程度の労働で許してくれるなんて。冒険者ギルドの皆さん、人が良すぎるといいますか……)
いくら給金が高かろうとあんな依頼は受けるべきではなかったと反省しながら、ハーフリングとしては身長の高い男は次から次へとできたての料理をテーブルに運んでいった。
(私を育ててくれた尊敬するお父さん、命と引き換えに私を産んでくれたとても強いお母さん)
辺境都市群冒険者ギルド職員、シカのハーフビーストのツェレンは墓の前で目を閉じ、心の中で両親に報告する。
(私は同棲している彼氏――アーキルと結婚式を挙げます)
ツェレンはリザードマンである彼氏、アーキルとの間に起こった誕生日の出来事を思い出す。
(アーキルの件では冒険者さんにいっぱい助けてもらったんだ。だから結婚式には冒険者さんたちも呼ぶんだよ。楽しみだな)
風がツェレンを洗うように吹き抜けていく。ツェレンは目を開き、両親の眠る墓に穏やかに微笑んだ。
(アーキルと一緒に幸せになるからね、お父さん、お母さん。……ずっと見ててね)
●与太話
辺境都市群冒険者ギルド。
「ふっふふーん♪」
今のはライリー・ベルではない、ツェレンだ。
ツェレンの後輩、兼、ドゥジン信徒のライリーは、鼻歌交じりに笑顔で書類仕事をこなす先輩を真顔で凝視していた。
ツェレンの笑顔にギルド職員たちは動揺しているが、普段のやや険のある表情よりはよほど親しみやすいということでスルーしている。
(ま、まぁ、先輩はそろそろ結婚式ですし? 浮かれてても全然おかしくないですし?)
ライリーはそういえば最近は「ダメな恋人に振られた主人公がソイツの結婚式の後に理想的な異性と出会ってその日のうちに宿で……」って展開のドゥジンシが一部で流行ってるらしいな、などと余計なことを考えながら手を動かす。というか余計なことを考えないと手を動かせないというか。先輩の全身からにじみ出るハッピーオーラへの困惑に負けかけているというか。
そういうドゥジンシも書いてみようかなと考えた瞬間、どこかで聞いた「書けば出る」という迷信を思い出す。
(あたしにはまず無さそうだな、そういうの)
それより出席用のドレスを借りなきゃな、と思いながらライリーは真顔で目の前の書類を片付けていった。
●結婚式当日
水上都市アキュアリスタ。
湖畔に立つ式場にて、ツェレンとアーキルが結婚式を挙げる当日。
式場にはアーキルの親族やギルド職員だけでなく、冒険者も呼ばれていた。
晴れ渡る空の元、ガーデンウェディングが執り行われる。
純白のウェディングドレスを纏ったツェレンはネイビーのタキシードに包まれたアーキルのたくましい腕に手を添えて、白いアイルランナーとテラリウムのランタンで飾り付けたバージンロードを一歩一歩踏みしめるように歩んでいく。
バージンロードの行き着く先にはツェレンの誕生花である勿忘草と、アーキルの誕生花である瑠璃唐綿で作られた緑滴る円形のアーチが存在する。
その前に二人で立ち、列席者の方を向いて二人は誓いを口にした。
「ワタシ、アーキルと」
「私、ツェレンは」
「「皆様の前で結婚式を挙げられることを心より感謝し、ここに結婚の誓いを行います」」
誓いの言葉は恙無く終わり、二人は互いの指輪を交換する。それからアーキルがツェレンのベールを上げ、誓いを分かち合うように優しくキスをした。
●幸福の裏側で
ライリーを誘拐したハーフリングの男――ティボーは式場の中でせっせと料理をサーブしていた。
(やっぱり普通に働くのが一番なんですよね)
幸せそうなツェレンとアーキル。二人を取り囲むギルド職員。各々楽しげに振る舞っている冒険者たち。
(あんなことに加担した僕をこの程度の労働で許してくれるなんて。冒険者ギルドの皆さん、人が良すぎるといいますか……)
いくら給金が高かろうとあんな依頼は受けるべきではなかったと反省しながら、ハーフリングとしては身長の高い男は次から次へとできたての料理をテーブルに運んでいった。
解説
●目標
・ツェレンとアーキルの結婚式を楽しむ
●できること
・食事を楽しむ
ビュッフェスタイルです。好きな席に座って良いです。メニューは以下の通りです。
フルーツサラダ/ナポリタン/マルゲリータ/パン/ボウズ/ケーキ/フルーツゼリー/生ハムメロン/水/葡萄ジュース/エール/百合茶
・出し物をやってみる
盛り上げるようなことを企画してみるのもありです!
自分の特技を存分に活かして誰よりも楽しみましょう!
・参加者との会話
他PCさんとの交流ができます。
自分たちの恋愛話や結婚話などもいかがでしょうか?
・NPCとの会話
ツェレン、アーキル、ライリー、ティボーに話しかけることが可能です。
・お菓子&ぬいぐるみトスに参加
ツェレンとアーキルは全員参加を想定していますが、参加しないことも可能です。
お菓子はツェレンが作成したクッキー、マフィン、マカロン。ぬいぐるみはアーキルが作成したうさぎ、くま、いぬ。
特に希望がない場合、結果は1D6で決めます。
●NPC(ツェレン、アーキルはいつもよりセリフ多めです)
・ツェレン
辺境都市群冒険者ギルド職員、兼、花嫁。シカのハーフビーストでウォーリア。
結婚式なのでいつもより雰囲気が柔らかい。こんな日でも酒を飲ませると大変なことになる。
・アーキル
ツェレンのカレピこと彼氏。リザードマンのキャスター。真面目だが大酒飲み。
「誕生日なのに彼氏が来ないぃ……!」にてツェレンにプロポーズした。
・ライリー・ベル
ツェレンの後輩、兼、ドゥジン信徒。ボルドーのドレスを借りてきた。
「ライリーVS誘拐犯VS……?」にて誘拐されたが冒険者たちのおかげで危険な目に遭わずに済んだ。よって比較的心が平和。財布は平和じゃない。
・ティボー
上記シナリオでライリーを誘拐したハーフリング男性。ウォーリア。現在は償いとして辺境都市群冒険者ギルドの手伝いも行っている。
ライリーになんとなく避けられているのは仕方ないと思っている。
●状況
ガーデンでの挙式が終わり、式場内での披露宴が始まりました。
各自好きなテーブルに座っていただいて構いません。基本は四人掛けですが、詰めれば八人座れます。
料理は場内の中央に置かれています。すぐに補充されますので好きなだけ取っていっていただいて構いません。
マスターより
冒険者の皆様、当シナリオをご確認いただきありがとうございます。
おはこんばんにちわ、眞石ユキヒロです。
こちらはツェレンとカレピことアーキルの結婚式シナリオとなっております。
「誕生日なのに彼氏が来ないぃ……!」が結婚のきっかけとなっておりますが、こちらにご参加いただいていなくても、当シナリオへの参加は歓迎です。
何か楽しい出し物をしてみたい! 恋愛トーク好き! などありましたらお気軽にご参加くださいませ。
質問があれば冒頭に【質問】と書いて相談卓に投稿すればツェレンかライリーが答えられる範囲で答えます。
リプレイ
●
水上都市アキュアリスタ、湖畔の式場。
辺境都市群冒険者ギルド職員、ツェレンと彼氏、アーキルの結婚式は挙式から披露宴へと移ろうとしていた。
だが、その前に。
「今から新婦ツェレンが作ったお菓子、新郎アーキルが作ったぬいぐるみのトスを行います!」
ツェレンからの宣言に参列者がざわめく。結婚や恋愛に関連することなら遠慮したいと思っているサイラスは眉をひそめた。
(お祝いとかは食べたり飲んだり騒いだりとかはセーフ。娯楽とか祝い事を楽しむのは悪いことじゃない)
「こちらは新郎、新婦からのお集まりいただいた皆様への感謝の気持ちを込めた品となっております。お気軽にご参加いただけると嬉しいです」
続いてアーキルが呼びかける。なるほど、感謝の気持ち。ブラックスーツをキッチリと纏うサイラスは考える。
甘いものは好きだし、ぬいぐるみなら店に飾るのも悪くないのかもしれない。ペットのヤンチャ被害に遭うかもしれないが。
ならば甘いもの、甘いもの……。考えるだけで表情の険はすっかり取れてしまった。
「こういう席ですしブレイドさん、エスコートお願いいたしますね? ……ふふ」
桃色のパーティドレスをオシャレに纏った東雲・更紗が、小さくしなやかな手を差し出す。
この日のために猫耳のように跳ねる髪の癖を活かしたヘアアレンジなどもしっかりと考え、丁寧に髪を梳いてセットしてきた。
「エスコート……自分とでは正直サマにならんだろうが、誘ってもらったからには承ろう」
ブラックスーツを着こなしたブレイドが、節くれ立ったたくましい手で更紗の体温を受け取る。
目出度い日だ。普段は無表情の彼だが、今は少し気を緩めている。
柔らかい雰囲気を纏う二人は手を重ねたまま、最前列で空いた手を宙に伸ばす。
一所懸命に背伸びする更紗をチラリと見て、ブレイドは珍しく口端を上げた。
(お菓子&ぬいぐるみトス、楽しそうですね! 勿論参加します!)
可愛らしいバイオレットのパーティドレスをなびかせ、シェルリア・リトヴァールもトスに参加する。
(お二人が作ったものなんですね、素敵ですー!)
種類は違えど彼女も作る側に立つこともある。だからこそ尚更興味を引かれる催しに手を伸ばした。
チョコレート色のパーティードレスがサシャ・テーリングの穏やかな雰囲気を引き立てていた。
(さて、どの品が私の手元にやってくるのでしょうか?)
サシャは顔をほころばせ、握手を求めるようにそっと手を差し出す。
●お菓子&ぬいぐるみトス!
「それでは皆様、こちらをどうぞ!」
ツェレンとアーキルがカゴいっぱいに用意した感謝の品が宙を舞い、それぞれの手に収まる。
サイラスはマフィンのふわりとした感触にニヤリと笑う。
潰さぬよう優しく掴んだまま、サイラスはその巨躯からは想像もつかないほど軽い足取りで式場に向かった。
この後は新郎新婦の挨拶、乾杯、ケーキ入刀・サーブ、ビュッフェ形式の食事、余興だそうだ。
(折角だしおれも何か出し物考えとくかなぁ)
サイラスはマインドセットを確認しながら、出し物に使えそうなスキルを吟味していく。
更紗とブレイドは、奇しくも同じ品を手にした。セピア色の生地で作られた、手のひらサイズのくまのぬいぐるみだ。
「お揃いですね」
茶色い瞳を驚きで丸くして、更紗はブレイドを見上げた。
「まさか、同じ品が飛んでくるとはな……」
青い瞳を見開いて、ブレイドは自分の手元のくまと、更紗が手にしたくまを見比べた。
偶然にもお揃いの品を手にすることとなった二人は、顔を見合わせる。
「エスコートをお願いした後にこの偶然は、なんといいますか……」
結婚式という状況もあってか、更紗の言葉に若干の照れが混じる。それからはにかみを浮かべた。
「……自分はこの品を大切にさせてもらうぞ」
ブレイドはそんな更紗を微笑ましく思いながら、自分でも気付かぬまま口元を緩ませた。
「可愛いですわー」
サシャは星やリンゴを象ったアイシングクッキーを歓迎するように優しく抱きとめる。
おめでたい品でもあるし、デコレーションも凝っている。すぐに食べてしまうのはもったいない。
せめて絵として残してから大切にいただこうと考え、サシャはクッキーの入った袋を抱いたまま式場へ向かった。
シェルリアの手の中に飛び込んできたのは、オフホワイトの生地で作られた手のひらサイズのいぬのぬいぐるみだった。
黒いビーズの目とシェルリアの紫の瞳が合う。
(汚れてしまったらいやですから、このまま袋の中に入れておきましょう!)
シェルリアはにこりと微笑んで、はやる気持ちを抑えながら式場へと歩を進めた。
●
式場には勿忘草と瑠璃唐綿で作られた大小のアーチが飾られ、白いクロスを掛けられた円形のテーブルの上にも勿忘草と瑠璃唐綿をこんもりと飾り付けた花瓶が置かれている。
「改めて、私たち二人の仲を取り持ってくださった冒険者の皆様に感謝を申し上げます」
「そうでなければ今頃ワタシたちは……いえ、これは祝いの席で言うようなことではありませんね、ハハッ」
「そうですね。今はこうして皆様に囲まれて大陸一幸せな……」
ツェレンとアーキルの挨拶には「冒険者たちへの感謝」も多量に含まれていた。
その話の最中に、ツェレンの瞳が涙でキラキラ輝く。
その輝きを認めた瞬間、サシャの脳裏にこれまでのツェレンとの思い出が駆け巡り、瞳の端に涙が浮かぶ。
(どうか末永くお幸せに……)
妄想と現実、どちらの世界であっても愛が有るか否かが大切。サシャは改めてそう感じた。
(ツェレン様もアーキル様も幸せそうです……!)
シェルリアは挙式を振り返り、素敵な結婚式は乙女の憧れだと再確認した。
(ドゥジンのシチュ的にも色々覚えておきたいです)
そして一方で、今後の活動のためにも今日の光景をしっかり覚えておこうと考えるのであった。
●お食事! 歓談!
乾杯、ケーキ入刀・サーブも終わり、お食事・歓談タイムがやってきた。
(食い放題。有難く頂戴してくぜー)
サイラスはここぞとばかりに甘いものを確保していく。フルーツサラダ、ゼリー、葡萄ジュース、生ハムメロン……。
(お代っつーか、お礼? に余興は気合い入れてやろっと)
そのためにはまずエネルギー補給だと、サイラスはフルーツサラダの柑橘類にフォークを突き刺した。
酸味と甘みを味わいつつ、自分のグラスに聖霊節の星を注いでいく。
甘いものは良い、酒も良い。
サイラスの近くのテーブルにて冒険者たちが会話をしている。
「ライリーさんの誘拐事件? があったとは本当でしょうか?」
「はい。私やサシャ様、サイラス様も解決に尽力しました!」
「それは……大変だったな」
更紗の質問にシェルリアが答え、ブレイドが労る。
「その、ライリーは誘拐犯をどう思っていますの?」
サシャは隣に座るライリーをまっすぐに見つめ、神妙な面持ちで質問した。
「改めて、力を依頼解決のために使う冒険者さんたちを尊敬しましたし、そういう意味ではティボー……さん? に感謝……はしてないないな、うん。誘拐とか普通に怖かったし」
サシャはライリーが許すなら一度はティボーを許すつもりだった。二度目はない。
しかしライリーのそれは玉虫色の回答だ。まだ結論づける段階にない。サシャはひとまず保留、ということでこの件を納めた。
「折角こういう場ですし、皆さまのご結婚観……を伺ってもよろしいでしょうか?」
更紗は空気を変えるべく新たな話題を投下した。
「私は本当に好きな人と結ばれて、周りにも祝福してもらえるような結婚をしてみたいですね!」
シェルリアは合わせた両手を頬にあて、キュッと目をつむり弾ける声音で答えた。
「自分は……考えたこともなかった、な」
顎に手を当て考え込むブレイドを横目で見て、別のテーブルでケーキをむさぼるサイラスはぼんやりと思う。
(結婚ねぇ。おれは結婚する程好きな相手とか魅力を感じて忘れられないって相手に会う気がしないのと、ホラ、人間を愛して人間を救ってみたいなのって英雄みたいじゃないか? 竜には相応しくないというか、そんな奴は気持ち悪いじゃん?)
水を差す気はないから、そんな本音は聖霊節の星と一緒に飲み下して。サイラスは再び控えめな甘さが癖になるケーキに取りかかる。
「ブレイド様の恋愛話……やはり触……」
サシャが開いた口を両手で覆い隠しながらも、ギラついた瞳を大きく見開きブレイドに向ける。
「それは忘れてくれ」
ブレイドは冷や汗をかきつつも視線を逸らして、周囲からの期待をいなした。
●
もはや結婚とは無関係の話題で盛り上がる冒険者たちのテーブルに、ツェレンとアーキルが挨拶にやってきた。
「おめでとうございます。今日の日を迎えられ私も本当に嬉しいですわ……」
安堵した様子のサシャが、二人に祝いの言葉を述べる。
「ステキな式にお招きいただきありがとうございます! どうぞ末永くお幸せに♪」
更紗も上機嫌で一礼し感謝と祝いを二人に伝える。
「ツェレン様、アーキル様、ご結婚おめでとうございます! どうぞ末長くお幸せに!」
シェルリアも元気に祝いの言葉を口にする。
「本当に素敵なお式に披露宴でいいですよね、憧れます……!」
それから両手を組んで、うっとりと瞼を閉じる。言葉には力強さと乙女心が満ちていた。
「カレピ来ない事件は自分も含めてドタバタしたものだが置いておくとして……とてもお似合いだ、おめでとう」
ブレイドは落ち着いて、けれどいつもよりは多少浮かれた雰囲気で二人を祝った。
「「本当に、ありがとうございました」」
ツェレンとアーキルの感謝が被る。そして顔を見合わせてクスクスと笑い出す。
良い雰囲気の中、サシャは和柄のラッピングペーパーに包まれた箱を取り出した。
「こちらはお祝いの『褪野切子「彩」』ですの。お酒の種類に合せ、使って頂けたら嬉しいですわ」
お酒という言葉に、ツェレンの顔が一気に赤く染まる。
「あああ、ありがとうございます!」
「大切に使わせていただきます」
慌てるツェレンの横で、アーキルが深くお辞儀をする。
この調子だとツェレンは今日はお酒を自粛するのではないかとサシャは推察し、それならばと緊張を少し緩めた。
(以前のようにお酒を隠す必要などはなさそうですわね)
●余興!
「さぁて、どっちが本物でしょーか!」
サイラスは真欺牢を用い、自分の分身を作成した。
見事な精度の分身に、観客から驚き、感心の声が上がる。
「答えは……コッチだぜー!」
分身を消したサイラスは鳥獣戯で見栄えのする四足歩行の魔獣を出した。標的は花の輪の向こうに置いた木人。
無論ツェレン、アーキルからの許可は取ってある。
(一人サーカスくらいはできるようにならねば、ってなー!)
花の輪の向こうの木人に向かい一直線に飛んで行くエーテルの魔獣の動きに、新郎新婦も参列者も等しく見入り、口笛を吹いたり拍手をしたり、それぞれの方法でサイラスの出し物を賞賛した。
「自分は手品をさせてもらう」
まずは定番のコインを増やすもの、選んだカードを当てるものを披露する。
それぞれアーキル、ツェレンに試したが、双方びっくりしながらも笑顔を見せてくれた。
「それではこれが最後だ……」
ブレイドはあらかじめ様々な方法で手懐けておいたハトをシルクハットから飛び立たせた。
ハトたちはツェレンとアーキルを祝福するかのように二人の周囲をくるくると回る。
平和かつ美しい光景に、参列者の表情も穏やかで優しいものに変化していった。
「私も記念としてこのようなものを用意いたしました」
更紗は今日の結婚式の様子を描いたイラストを公開した。参加者全員がキッチリ収まった記念の一枚だ。
「ありがとう、ございます……!」
受け取ったツェレンが涙ぐみ、その肩をアーキルが抱いた。
その反応に参列者から複製を求める声が飛び出す。更紗は思わぬ好評にならばあと数枚描いてみようと張り切るのだった。
「ライリー、これを何とか……幸せな形に……」
珍しいことにサシャがライリーに助けを求めた。いつも助けてくれるサシャに何かお返しがしたいと思っているライリーは目を輝かせ、サシャの手元の紙を見る。
紙の上には肩を寄せ合うツェレンとアーキル。アーキルになんだか熱っぽい視線を向ける友人の姿が描かれていた。
「いけませんっお式に三角だなんて……。これで円に近……いえっそうじゃないですっ」
ライリーが観察する間にも、サシャの手で周囲に人が付け足されていく。
「でしたら全員の間にそれぞれ特別な関係がある、ということにするのはいかがでしょう?」
二人の危機(?)を察知したシェルリアが妙案(?)を出す。そう、全員に特別な関係があるなら全員に特別な関係があることが普通になる。
ライリーも頷いているし、もうそれしかない。サシャはシェルリアの提案通り、今日の萌えをなるべく美しい形で残すべく、素速くペンを動かし可能な限り表情を修正した。
その様子をシェルリアもニコニコと見守っている。
果たしてこの絵は新郎新婦に見せるべきなのか。サシャは疑問に思ったが、それはひとまず保留にした。
●お見送り!
「本当はもっとお礼をしたいのですが……それはまたの機会に」
これまで幾度となく自分を助けてくれた冒険者たちへの感謝で、彼らを見送るツェレンの緑の瞳はキラキラと輝いていた。
アーキルも妻と同じように、現在を作る手伝いをしてくれた冒険者たちへの深い感謝を述べた。
(何だかんだ楽しかったなー)
マフィンを手にしたサイラスは、甘いものを詰め込んだ腹を一撫でして。
(さて、この絵はどうしましょうか……)
クッキーを手にしたサシャは、穏やかな笑顔の裏に今日描いた絵を隠して。
(知人の結婚式。自分には縁のないものかと思っていたが、そうでもなかったのだな……)
くまのぬいぐるみを手にしたブレイドは、慎重に更紗の手を引き。
(ふふっ、描いたものを喜んでいただけるのはやはり嬉しいですね)
同じくくまのぬいぐるみを手にした更紗は、ブレイドにしなやかな手を預け。
(今日の素敵な結婚式の知識を活かせるよう、今後も頑張ります!)
犬のぬいぐるみを手にしたシェルリアは、うきうきと元気よく帰路についた。
水上都市アキュアリスタ、湖畔の式場。
辺境都市群冒険者ギルド職員、ツェレンと彼氏、アーキルの結婚式は挙式から披露宴へと移ろうとしていた。
だが、その前に。
「今から新婦ツェレンが作ったお菓子、新郎アーキルが作ったぬいぐるみのトスを行います!」
ツェレンからの宣言に参列者がざわめく。結婚や恋愛に関連することなら遠慮したいと思っているサイラスは眉をひそめた。
(お祝いとかは食べたり飲んだり騒いだりとかはセーフ。娯楽とか祝い事を楽しむのは悪いことじゃない)
「こちらは新郎、新婦からのお集まりいただいた皆様への感謝の気持ちを込めた品となっております。お気軽にご参加いただけると嬉しいです」
続いてアーキルが呼びかける。なるほど、感謝の気持ち。ブラックスーツをキッチリと纏うサイラスは考える。
甘いものは好きだし、ぬいぐるみなら店に飾るのも悪くないのかもしれない。ペットのヤンチャ被害に遭うかもしれないが。
ならば甘いもの、甘いもの……。考えるだけで表情の険はすっかり取れてしまった。
「こういう席ですしブレイドさん、エスコートお願いいたしますね? ……ふふ」
桃色のパーティドレスをオシャレに纏った東雲・更紗が、小さくしなやかな手を差し出す。
この日のために猫耳のように跳ねる髪の癖を活かしたヘアアレンジなどもしっかりと考え、丁寧に髪を梳いてセットしてきた。
「エスコート……自分とでは正直サマにならんだろうが、誘ってもらったからには承ろう」
ブラックスーツを着こなしたブレイドが、節くれ立ったたくましい手で更紗の体温を受け取る。
目出度い日だ。普段は無表情の彼だが、今は少し気を緩めている。
柔らかい雰囲気を纏う二人は手を重ねたまま、最前列で空いた手を宙に伸ばす。
一所懸命に背伸びする更紗をチラリと見て、ブレイドは珍しく口端を上げた。
(お菓子&ぬいぐるみトス、楽しそうですね! 勿論参加します!)
可愛らしいバイオレットのパーティドレスをなびかせ、シェルリア・リトヴァールもトスに参加する。
(お二人が作ったものなんですね、素敵ですー!)
種類は違えど彼女も作る側に立つこともある。だからこそ尚更興味を引かれる催しに手を伸ばした。
チョコレート色のパーティードレスがサシャ・テーリングの穏やかな雰囲気を引き立てていた。
(さて、どの品が私の手元にやってくるのでしょうか?)
サシャは顔をほころばせ、握手を求めるようにそっと手を差し出す。
●お菓子&ぬいぐるみトス!
「それでは皆様、こちらをどうぞ!」
ツェレンとアーキルがカゴいっぱいに用意した感謝の品が宙を舞い、それぞれの手に収まる。
サイラスはマフィンのふわりとした感触にニヤリと笑う。
潰さぬよう優しく掴んだまま、サイラスはその巨躯からは想像もつかないほど軽い足取りで式場に向かった。
この後は新郎新婦の挨拶、乾杯、ケーキ入刀・サーブ、ビュッフェ形式の食事、余興だそうだ。
(折角だしおれも何か出し物考えとくかなぁ)
サイラスはマインドセットを確認しながら、出し物に使えそうなスキルを吟味していく。
更紗とブレイドは、奇しくも同じ品を手にした。セピア色の生地で作られた、手のひらサイズのくまのぬいぐるみだ。
「お揃いですね」
茶色い瞳を驚きで丸くして、更紗はブレイドを見上げた。
「まさか、同じ品が飛んでくるとはな……」
青い瞳を見開いて、ブレイドは自分の手元のくまと、更紗が手にしたくまを見比べた。
偶然にもお揃いの品を手にすることとなった二人は、顔を見合わせる。
「エスコートをお願いした後にこの偶然は、なんといいますか……」
結婚式という状況もあってか、更紗の言葉に若干の照れが混じる。それからはにかみを浮かべた。
「……自分はこの品を大切にさせてもらうぞ」
ブレイドはそんな更紗を微笑ましく思いながら、自分でも気付かぬまま口元を緩ませた。
「可愛いですわー」
サシャは星やリンゴを象ったアイシングクッキーを歓迎するように優しく抱きとめる。
おめでたい品でもあるし、デコレーションも凝っている。すぐに食べてしまうのはもったいない。
せめて絵として残してから大切にいただこうと考え、サシャはクッキーの入った袋を抱いたまま式場へ向かった。
シェルリアの手の中に飛び込んできたのは、オフホワイトの生地で作られた手のひらサイズのいぬのぬいぐるみだった。
黒いビーズの目とシェルリアの紫の瞳が合う。
(汚れてしまったらいやですから、このまま袋の中に入れておきましょう!)
シェルリアはにこりと微笑んで、はやる気持ちを抑えながら式場へと歩を進めた。
●
式場には勿忘草と瑠璃唐綿で作られた大小のアーチが飾られ、白いクロスを掛けられた円形のテーブルの上にも勿忘草と瑠璃唐綿をこんもりと飾り付けた花瓶が置かれている。
「改めて、私たち二人の仲を取り持ってくださった冒険者の皆様に感謝を申し上げます」
「そうでなければ今頃ワタシたちは……いえ、これは祝いの席で言うようなことではありませんね、ハハッ」
「そうですね。今はこうして皆様に囲まれて大陸一幸せな……」
ツェレンとアーキルの挨拶には「冒険者たちへの感謝」も多量に含まれていた。
その話の最中に、ツェレンの瞳が涙でキラキラ輝く。
その輝きを認めた瞬間、サシャの脳裏にこれまでのツェレンとの思い出が駆け巡り、瞳の端に涙が浮かぶ。
(どうか末永くお幸せに……)
妄想と現実、どちらの世界であっても愛が有るか否かが大切。サシャは改めてそう感じた。
(ツェレン様もアーキル様も幸せそうです……!)
シェルリアは挙式を振り返り、素敵な結婚式は乙女の憧れだと再確認した。
(ドゥジンのシチュ的にも色々覚えておきたいです)
そして一方で、今後の活動のためにも今日の光景をしっかり覚えておこうと考えるのであった。
●お食事! 歓談!
乾杯、ケーキ入刀・サーブも終わり、お食事・歓談タイムがやってきた。
(食い放題。有難く頂戴してくぜー)
サイラスはここぞとばかりに甘いものを確保していく。フルーツサラダ、ゼリー、葡萄ジュース、生ハムメロン……。
(お代っつーか、お礼? に余興は気合い入れてやろっと)
そのためにはまずエネルギー補給だと、サイラスはフルーツサラダの柑橘類にフォークを突き刺した。
酸味と甘みを味わいつつ、自分のグラスに聖霊節の星を注いでいく。
甘いものは良い、酒も良い。
サイラスの近くのテーブルにて冒険者たちが会話をしている。
「ライリーさんの誘拐事件? があったとは本当でしょうか?」
「はい。私やサシャ様、サイラス様も解決に尽力しました!」
「それは……大変だったな」
更紗の質問にシェルリアが答え、ブレイドが労る。
「その、ライリーは誘拐犯をどう思っていますの?」
サシャは隣に座るライリーをまっすぐに見つめ、神妙な面持ちで質問した。
「改めて、力を依頼解決のために使う冒険者さんたちを尊敬しましたし、そういう意味ではティボー……さん? に感謝……はしてないないな、うん。誘拐とか普通に怖かったし」
サシャはライリーが許すなら一度はティボーを許すつもりだった。二度目はない。
しかしライリーのそれは玉虫色の回答だ。まだ結論づける段階にない。サシャはひとまず保留、ということでこの件を納めた。
「折角こういう場ですし、皆さまのご結婚観……を伺ってもよろしいでしょうか?」
更紗は空気を変えるべく新たな話題を投下した。
「私は本当に好きな人と結ばれて、周りにも祝福してもらえるような結婚をしてみたいですね!」
シェルリアは合わせた両手を頬にあて、キュッと目をつむり弾ける声音で答えた。
「自分は……考えたこともなかった、な」
顎に手を当て考え込むブレイドを横目で見て、別のテーブルでケーキをむさぼるサイラスはぼんやりと思う。
(結婚ねぇ。おれは結婚する程好きな相手とか魅力を感じて忘れられないって相手に会う気がしないのと、ホラ、人間を愛して人間を救ってみたいなのって英雄みたいじゃないか? 竜には相応しくないというか、そんな奴は気持ち悪いじゃん?)
水を差す気はないから、そんな本音は聖霊節の星と一緒に飲み下して。サイラスは再び控えめな甘さが癖になるケーキに取りかかる。
「ブレイド様の恋愛話……やはり触……」
サシャが開いた口を両手で覆い隠しながらも、ギラついた瞳を大きく見開きブレイドに向ける。
「それは忘れてくれ」
ブレイドは冷や汗をかきつつも視線を逸らして、周囲からの期待をいなした。
●
もはや結婚とは無関係の話題で盛り上がる冒険者たちのテーブルに、ツェレンとアーキルが挨拶にやってきた。
「おめでとうございます。今日の日を迎えられ私も本当に嬉しいですわ……」
安堵した様子のサシャが、二人に祝いの言葉を述べる。
「ステキな式にお招きいただきありがとうございます! どうぞ末永くお幸せに♪」
更紗も上機嫌で一礼し感謝と祝いを二人に伝える。
「ツェレン様、アーキル様、ご結婚おめでとうございます! どうぞ末長くお幸せに!」
シェルリアも元気に祝いの言葉を口にする。
「本当に素敵なお式に披露宴でいいですよね、憧れます……!」
それから両手を組んで、うっとりと瞼を閉じる。言葉には力強さと乙女心が満ちていた。
「カレピ来ない事件は自分も含めてドタバタしたものだが置いておくとして……とてもお似合いだ、おめでとう」
ブレイドは落ち着いて、けれどいつもよりは多少浮かれた雰囲気で二人を祝った。
「「本当に、ありがとうございました」」
ツェレンとアーキルの感謝が被る。そして顔を見合わせてクスクスと笑い出す。
良い雰囲気の中、サシャは和柄のラッピングペーパーに包まれた箱を取り出した。
「こちらはお祝いの『褪野切子「彩」』ですの。お酒の種類に合せ、使って頂けたら嬉しいですわ」
お酒という言葉に、ツェレンの顔が一気に赤く染まる。
「あああ、ありがとうございます!」
「大切に使わせていただきます」
慌てるツェレンの横で、アーキルが深くお辞儀をする。
この調子だとツェレンは今日はお酒を自粛するのではないかとサシャは推察し、それならばと緊張を少し緩めた。
(以前のようにお酒を隠す必要などはなさそうですわね)
●余興!
「さぁて、どっちが本物でしょーか!」
サイラスは真欺牢を用い、自分の分身を作成した。
見事な精度の分身に、観客から驚き、感心の声が上がる。
「答えは……コッチだぜー!」
分身を消したサイラスは鳥獣戯で見栄えのする四足歩行の魔獣を出した。標的は花の輪の向こうに置いた木人。
無論ツェレン、アーキルからの許可は取ってある。
(一人サーカスくらいはできるようにならねば、ってなー!)
花の輪の向こうの木人に向かい一直線に飛んで行くエーテルの魔獣の動きに、新郎新婦も参列者も等しく見入り、口笛を吹いたり拍手をしたり、それぞれの方法でサイラスの出し物を賞賛した。
「自分は手品をさせてもらう」
まずは定番のコインを増やすもの、選んだカードを当てるものを披露する。
それぞれアーキル、ツェレンに試したが、双方びっくりしながらも笑顔を見せてくれた。
「それではこれが最後だ……」
ブレイドはあらかじめ様々な方法で手懐けておいたハトをシルクハットから飛び立たせた。
ハトたちはツェレンとアーキルを祝福するかのように二人の周囲をくるくると回る。
平和かつ美しい光景に、参列者の表情も穏やかで優しいものに変化していった。
「私も記念としてこのようなものを用意いたしました」
更紗は今日の結婚式の様子を描いたイラストを公開した。参加者全員がキッチリ収まった記念の一枚だ。
「ありがとう、ございます……!」
受け取ったツェレンが涙ぐみ、その肩をアーキルが抱いた。
その反応に参列者から複製を求める声が飛び出す。更紗は思わぬ好評にならばあと数枚描いてみようと張り切るのだった。
「ライリー、これを何とか……幸せな形に……」
珍しいことにサシャがライリーに助けを求めた。いつも助けてくれるサシャに何かお返しがしたいと思っているライリーは目を輝かせ、サシャの手元の紙を見る。
紙の上には肩を寄せ合うツェレンとアーキル。アーキルになんだか熱っぽい視線を向ける友人の姿が描かれていた。
「いけませんっお式に三角だなんて……。これで円に近……いえっそうじゃないですっ」
ライリーが観察する間にも、サシャの手で周囲に人が付け足されていく。
「でしたら全員の間にそれぞれ特別な関係がある、ということにするのはいかがでしょう?」
二人の危機(?)を察知したシェルリアが妙案(?)を出す。そう、全員に特別な関係があるなら全員に特別な関係があることが普通になる。
ライリーも頷いているし、もうそれしかない。サシャはシェルリアの提案通り、今日の萌えをなるべく美しい形で残すべく、素速くペンを動かし可能な限り表情を修正した。
その様子をシェルリアもニコニコと見守っている。
果たしてこの絵は新郎新婦に見せるべきなのか。サシャは疑問に思ったが、それはひとまず保留にした。
●お見送り!
「本当はもっとお礼をしたいのですが……それはまたの機会に」
これまで幾度となく自分を助けてくれた冒険者たちへの感謝で、彼らを見送るツェレンの緑の瞳はキラキラと輝いていた。
アーキルも妻と同じように、現在を作る手伝いをしてくれた冒険者たちへの深い感謝を述べた。
(何だかんだ楽しかったなー)
マフィンを手にしたサイラスは、甘いものを詰め込んだ腹を一撫でして。
(さて、この絵はどうしましょうか……)
クッキーを手にしたサシャは、穏やかな笑顔の裏に今日描いた絵を隠して。
(知人の結婚式。自分には縁のないものかと思っていたが、そうでもなかったのだな……)
くまのぬいぐるみを手にしたブレイドは、慎重に更紗の手を引き。
(ふふっ、描いたものを喜んでいただけるのはやはり嬉しいですね)
同じくくまのぬいぐるみを手にした更紗は、ブレイドにしなやかな手を預け。
(今日の素敵な結婚式の知識を活かせるよう、今後も頑張ります!)
犬のぬいぐるみを手にしたシェルリアは、うきうきと元気よく帰路についた。
マスターコメント
ご参加いただきありがとうございました!
楽しい式となりましたので大成功です!
今回は結婚式にまつわる称号を差し上げたいと思います。
御自分が結婚する、もしくはどなたかの結婚式に参加するときなどにお使いいただけると嬉しいです。
勿論、面白い使い方があったらそれを教えていただければ以下略。
改めて、ご参加いただきありがとうございました!
眞石ユキヒロでした。
ショートシナリオ易しい 報酬:少ない5 / 4〜8人
2022年06月25日 00時41分42秒 公開
大成功
相談掲示板
ツェレンさま、アーキルさま、ご結婚おめでとうございます。 祝いの席に同席させて頂けて嬉しゅうございます。 皆様と一緒に楽しい1日を過ごせるよう、させて頂きますね。 先ず禁酒…でしょうか? アーキルさまはともかくツェレンさまは…避けて頂けたら良いような気はしますが… もし何か事起きましても、後にお二人らしい挙式と笑い話になるのかしら…。 それなら止めない方が…とも、悩ましいですわ。