【帝国】黒い草人
おおくまねこ
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シナリオID:2255
オープニング
「……」
草人マックスは突然立ち上がった。彼はクリーパーであり、言葉を持たない生き物だったが、確かに感じることがある。
幽界樹が呼んでいる。
「マックス……どうしたんだい、マックス……」
ミードラは微睡みながら、マックスへと声をかける。だが、目覚めることはなく、マックスは彼女の体を抱きかかえ、家の外へと出た。
「おい、何をしている」
だが、ミードラを抱きかかえたままいずこかへ向かおうとしているマックスに声をかける者がいた。名はヴィクター。冒険者ギルドから彼を監視すべく派遣されていた職員である。
「本性を現したのか、怪物。その老人に危害は加えさせんぞ」
「……」
マックスは眠ったままのミードラを地面に放り投げると、全身の体積を増大させた。
●
「緊急依頼です! 草人マックスを監視していたギルド職員が遺体で発見されました! 同居人のミードラさんも行方不明です! ただちに捜索をお願いします! また、草人マックスを発見した場合、『処分』をお願いします!」
奇しくもこのすぐ後にエスタルは大パニックとなり、人探しどころではなくなるのだが、この時出された依頼そのものは有効なものとして処理されることとなった。
解説
マスターより
リプレイ
冒険者達は一旦ミードラの家の前に集まったが、既にそこにミードラの姿はなかった。
「……大事になってるみたいだけど、この依頼を受けたからにはやり遂げないと。向かった方角はどっちかな?」
アルシエラ・ライゼルが言った。現場で目を凝らしてみると、老女らしき足跡と、マックスらしき人物の足跡がある。死亡したというギルド職員の亡骸は見当たらない。すでにクリーパーに喰われてしまったのだろうか。
「ミードラさんの死亡の可能性が高いと言われても、生存の可能性があるなら急いで追いましょう!」
トーラはミードラの足跡を辿ることで、行方を追うつもりだ。
「追うならミードラの方だな。彼女が生きているならどこかに隠れているかもしれない。見落としがないよう注意してくれ」
セリオス・オーガストは建物の隙間などにも目を凝らし、彼女がどこかに隠れていないか、徹底的に調べ上げるつもりだ。
「マックスは草人だよな。なら木の方向に向かう奴を探せばいい。俺はもう遠方の方に行っていないか探してみる」
サイラスは魔力で作り上げた焔の翼を使い、民家の屋根の上によじ登った。
「目標はミードラさんの捜索です。黒いクリーパーの相手をしていたらキリがないですし、交戦は避け追跡を優先しましょう!」
トーラの言葉に冒険者達が頷く。
冒険者達は手分けし、ミードラおばあさんの捜索を開始した。
●発見
「地下水路の入口は……ダメだ、近寄れそうにないな。他を探そう」
海神・江流は地下水路の入口を一瞥した後、民家の屋根へと身を躍らせた。彼の肩の上には、カイン・ステラから預かった栗鼠のランが乗っている。ランはカインとは視覚を共有しているため、カインは彼を通して江流と同じ風景を見ることができるのだ。
「まだ市街地にいることを祈るしか――ん?」
江流の超視覚は市街地を徘徊していた一体の黒いクリーパーの姿を捉えた。
「あいつ……!」
「まさか……!」
江流とカインが叫んだのはほぼ同時だった。
江流とランが目視している黒い装甲を纏った大きなカエルのクリーパー……その口から、枯れ枝のように細い人の脚が二本飛び出していたのだ。
「あのサンダルは見覚えがある! たぶんばーちゃんだ……! ミードラおばあちゃん!」
カインはすぐに江流のいる位置に向かって駆け出した。
「あれか!? もし人違いだったとしても、見過ごすわけにはいかないよな」
江流は屋根から飛び降りながら、カエルの背中を切りつけた。
「おい、デカブツ。その人を置いて行ってもらおうか」
●
江流が投げ上げた閃光塗弾により、冒険者達は再び合流した。冒険者達はなんとかカエルのクリーパーを仕留め、その腹から犠牲者を引きずり出した。やはりミードラだった。
「どうだ、アルシエラ?」
「傷は治したよ。意識が回復するかどうかはおばあちゃんの生命力に賭けるしかないかな……」
ミードラにヒールをかけた後、アルシエラは心配そうに彼女の顔を覗き込んでいる。
「起きて、母さん」
カインはミードラへと何度も呼びかける。もちろんカインはミードラの息子ではないが、息子の呼びかけならば、ミードラの意識が戻るのではないかと考えたのだ。
「ごほっごほっ!」
ミードラは息を吹き返した。
「マックス……?」
「おはよう、ばあちゃん。マックスじゃなくてごめん」
カインは泣き笑いの表情を浮かべた。
「私は夢を見ていたんだ……あの子は、私の息子じゃあ、なかった……悪いが、もう少し、寝かせておくれ……」
ミードラは悲しそうに微笑むと、再び目を閉じた。
「ばあちゃんを連れて帰らなきゃ」
カインはミードラを背中に担ぐと、冒険者達は力強く頷いた。
●黒い草人
冒険者達がギルドへと戻ろうと急いでいた。だが、前方に不吉な人影を認め、皆が身構える。
「あれは――」
まるで冒険者達を待っていたかのように、通路のど真ん中に黒い草人が立っていた。その全身は禍々しい黒い装甲に包まれ、殆ど以前の面影はない。江流やカインがかろうじて、彼を判別できたのは、虚ろな瞳に見覚えがあったからであった。彼こそが、ミードラと同居し、ギルド職員を殺害して地下へと消えた草人マックスに相違ない。
「マックス……! ばあちゃんを追ってきたのか!」
カインが叫ぶ。黒い草人は無言のまま、肥大化した両腕を広げ、冒険者へと近づいてくる。
「……」
「カイン、ばあさんを安全な所へ連れていけ」
玉虫色のエーテルを纏った鎖を手にしたサイラスが一歩前に出た。
「彼は私達が止めるよ」
アルシエラは閃光塗弾を構えた。
「ありがとう、頼む」
仲間達に礼を言い、カインはミードラをおぶったまま、後ろへと下がり始めた。恐らくマックスはミードラを狙っている。どこか安全な場所に逃がす必要がある。
「随分黒くなったな……そこにいたら邪魔だ。おばーちゃんを家にかえしてくれよ」
一瞬で間合いを詰めた江流はその腕の腱を切り刻んだ。その瞬間、ビキビキとマックスの黒い装甲が様相を変え、マックスの装甲が鋭角化していき、昆虫に近いシルエットへと変化した。
「外見が変わった……!?」
「……」
痙攣のような予備動作の後、マックスの両腕の触腕が爆発的に増殖し、冒険者達へと襲い掛かる。凄まじい速度で唸る触手は一瞬にして江流を5回打ち据えたが、江流は全ての攻撃を躱し切った。
「……」
一瞬の間の後、今度はマックスの胴体の体積が爆発的に増大した。マックスは蛇のように伸びた胴を高速で縮め、江流を無視してカインの元へと走ったが、セリオスの放った巨大な光の矢が直撃し、マックスの動きはそこで止まった。
「こいつがマックスか……!」
渾身の力を籠めて放たれたはずのバスターアローを受けても、マックスはピンピンしていた。続いてトーラの放った魔法攻撃が命中した。今度は効いたのか、マックスがのけぞり、黒い装甲は植物を思わせる様相へと変化した。
「やはり草人は危険な存在だったんですね……」
杖を突き出した姿勢のまま、トーラは残念そうに呟いた。
一緒に暮らす人が幸せそうなのを見て、害がないとしたらそれを狩る事が良いことなのかという迷いもあったが、草人の凶行を聞いてやはりという思いと共に残念な気持ちがある。それに、この草人は既にギルドの職員を殺害してしまったという。見逃すことはできない。
「黒い草人……」
アルシエラは閃光塗弾を投げると同時に、マックスへとグラビティボルトを打ち込んだ。あまりダメージはないようだったが、重力波に囚われたマックスの動きが鈍り、波打っていた触手の動きが少し緩慢になった。
「ぶっちゃけ草人も黒殻とどっちも人間が素材だろうし素材一欠片すら要らないから仕掛けるなら殺せばいいや」
クリーパーや魔獣の素材を集めるのが趣味の彼としては珍しい呟きをしながら、サイラスは万力鎖を伸ばし、マックスへと叩きつけた。
●決着
「ばあちゃんの息子のマックス、はじめまして」
ミードラとランを民家に隠し、戻って来たカインはマックスへと語りかけてみた。彼の中に、僅かでも人間性が残っていることに賭けてだ。だが、マックスの猛攻は止まることはなかった。帰ってきたのは、激しい触手での攻撃と、ただ敵を排除せんと荒れ狂う、クリーパーの本能のみであった。
「さっきのカエルと同じか。物理と魔法で交互に攻撃すればいいみたいだな」
江流はサイラスの鎖に反応し、マックスが魔法防御を強化した瞬間を狙って攻撃した。
一呼吸の間の三連撃。だが、マックスの形態変化は恐ろしく早く、二撃目が命中した時にはすでに対物理強化形態へと変形が終わっていた。
「……! まずいぞ、他のクリーパー達に感づかれたようだ」
セリオスは攻撃の矛先を変え、民家の陰から飛び出してきた甲虫のような姿の黒いクリーパーへと鋭撃を放った。マックスほど頑丈ではなかったのか、黒いクリーパーは一撃で頭部を砕かれ、絶命した。
「物理と魔法で交互に攻撃すればいいんですね! クリーパーが集まってくる前に急ぎましょう!」
急加速したトーラはあっという間に民家の壁をよじ登り、マックスのいる建物の隣の建物の屋根の上に立った。そこから杖を向け、マックスへと魔法を撃ちこんだ。
「草の向こうで居眠りしてねぇで、人間の最期の意地見せろや!」
「触手の射程はあまり長くない……! 押し切れるかな」
カインは魔弾を、アルシエラは風読みの矢を浴びせた。カインの叫びにも、マックスは無反応だ。
「ウオオオオオ!」
突然、マックスの胴の体積が増大した。直後、マックスは民家の屋根の上へと移動し、長い触手で地上にいるカインを狙った。うねる触手がカインの肌を二度切り裂く。
「がはっ……! マックス、お前の母ちゃんはお前に死ねと言わねぇし、お前も母ちゃんに死ねと言わねぇだろ!」
額から血を零しながら、カインはマックスへと問いかけ続ける。
(やっぱり、材料はただの死体か)
サイラスはマックスの触手の範囲に入らないよう慎重に間合いを図りながら、万力鎖を振り回した。再び鎖が叩きつけられ、マックスの脚の肉が抉れる。だが、人間のように派手に出血はしなかった。
「そんな能力もあるのか……逃がすわけにはいかんな」
江流はホライゾナルジャンプでマックスを追いかけ、三連撃を打ち込んだ。先ほどと同じように二撃目以降は強化装甲で弾かれたが、ダメージは確実に入っている。
「逃がさん!」
セリオスはマックスの逃げた屋根の上へと矢を放つ。トーラ、カイン、アルシエラも遠距離攻撃を仕掛け、物理と魔法の波状攻撃でマックスの体がみるみるうちに削れていく。
「……?」
マックスは再び体を伸ばして高速移動しようとしたが、うまく行かず、一瞬動きが止まった。アルシエラのグラビティボルトが、彼の変形機構に異常を生じさせていたのだ。
「江流! そいつを屋根から叩き落としてくれ。殺界で逃げんように拘束する」
サイラスは江流へと呼びかけながら、殺意の壁を展開した。
「了解」
江流はマックスの背後に回り込むと、マックスに体当たりした。バランスを崩したマックスは屋根から落下していく。江流は自分も落下しながらマックスを追いかけ、空中で三度切り付けた。
そこから先は一方的な展開だった。江流の動きを捉えられず、アルシエラのグラビティボルトとサイラスの殺界に捉えられたまま遠距離攻撃でつるべ打ちにされたマックスは冒険者達の猛攻を受け、ついに限界を迎えた。
「……」
マックスは最後まで無感動な表情のまま、さらさらと土に還っていく。
「結局、クリーパーはクリーパーでしかない、か」
どこか寂しそうに呟きながら、江流は刀を鞘に納めた。
「ばあちゃん!」
カインは大急ぎでミードラを回収し、背中に担いだ。息はあるが彼女の眠りは深く、まだ意識を取り戻す様子はない。
「早くばあちゃんを安全な場所に移さないと。……この状況じゃ、今は冒険者ギルドが一番安全か……」
カインは複雑そうな表情で呟いた。
「そうだな。急いでギルドに戻ろう。恐らく総力戦になる」
頷きながら、セリオスが言った。
こうして、冒険者達はミードラおばあさんを無事に救出し、幽界樹攻略作戦の準備で慌ただしくしている冒険者ギルドへと帰還したのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2022年06月24日 23時14分05秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! ミードラさんの安否がかかっているので、生存の可能が低いとしても急いで捜索しないといけませんね。 黒い草人の特性を考えると、物理と魔法両方の攻撃手段を用意しておいた方がいいでしょうし、わたしは杖か魔弓を持って魔法攻撃が出来るようにして行こうと思います。 魔法攻撃が得意な人の参加が増えるようであれば物理攻撃に変更も可能です!
カイン・ステラ、よろしくな。 生存の可能性が低くてもばあちゃんは捜索しておきたいよな。 生きていればそれに越したことはねぇけど…。 俺の場合は射撃中心になるが、基本は援護かな。 BS狙えるかは判らないが。 あと、幸運の星は取得してるんでつけてく。
っと、成立してたな。 海神江流だ。宜しくね。 一先ず早期にマックスを発見する必要ありと。 南へ向かっているってのはPL情報かな。進路が予測できればそれを踏まえて回り込めれば追いつくのはそう難しくなさそうだけれど。 他の敵も数が多いからホライゾナルで強行突破できる体制にはしておくか。 俺の場合はトリプルファングへの依存度が高いんで、物理攻撃になっちまうかな。 トーラさんの魔法攻撃に頼らせてもらう感じになってしまうかな。 幸運の星は取得検討しておくね。
>クリーパーの進行方向 決戦シナリオのサイドストーリーってあるんで、あちらの情報も参照する限りだと、『地表、地下で戦闘が行われているエスタル市南部では無く~』とあるんで、マックス以外の草人が住民攫って地下水道に向かったなら、南部への動きは目立つと思うし、南への予測そのものは(南に進行するのがPL情報でも)いけるんじゃねーかと思う。
No.5
サイラスだ、ギリギリだが とりあえず幸運の星持ち込みとサブ火力程度の魔法を使う予定。
・・・ん、ぎりぎりな顔出しで済まないシューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえずまずは見つけないと話にならんな。 俺も幸運の星はあるのでそれと看破ホークアイで探索仕様にするつもりだ それと同中の敵は極力避けるべきといったところか
今参加したシューターのアルシエラだよ。 よろしくね。 今、付与型なんだけどBS付与の空きはあるかな。 重撃射以外な感じ? 攻撃はペットのオオカミかオオイタチのサポートも使っていくつもり。
幸運の星は取得できたので持参。 カイン君と、一応俺も、前のイベントシナリオ「【帝国】エスタル料理選手権」でミードラとマックスと会ってるから超視覚を用意しておくね。 あとは発見した時の情報共有をどうしようか。 閃光塗弾を空に投げるとかすれば合図になるかな?
>スキル 汎用は幸運の星と看破。 特性はエーテルリンクと捜波で、同行のペットは栗鼠。 屋外での捜索だからホークアイと風読み2・精密3で残り1枠はまだ検討中。 命中低下を狙うか、それとも…ってとこ。 >江流 悪いんだが、俺のランに江流の肩を貸してやってくれ。 機動力なら江流の方が確実にいい。 そこから捜波で範囲を広げたい。 あと連絡手段は閃光塗弾で大丈夫じゃないかなと思う。
>カイン 教えてくれてありがと。 ペット外してBS重視で真ハーツベインショットとグラヴィティボルトでいこかな。 命中低下か回避低下だね、どっちか空いてる方持ってくね(今は命中にしてある) 私の閃光塗弾は道中の敵とかミードラさん救出用に使うよ。 幸運の星と超視覚セットしてみた(まだあんまり色々ない)
幸運の星は習得していないので用意して貰えるのは助かります! わたしは代わりに看破で痕跡などを探してみますね。 BSは相手の攻撃回数が多く、回復も兼ねるので命中低下は助かりますね。
あ。『伸びるボディ』がホライゾナルジャンプと同等の効果らしいですけど、制限(回避と移動に制限がかかっていないこと)も同じなら、回避や移動へのペナルティで使用を封じることが出来るかもしれませんね。
待機使って物理と魔法、交互に当たる様に調節予定 通常攻撃は物理と魔法どちらか選べた気がするから、タイミングによってはそれも選ぶ様にも一応してあるよ
>カイン君 了解だ。ランは栗鼠だったね。 移動力と捜索範囲とうまく噛み合ってくれるといいんだが。 現状、魔法攻撃を構えられるのはトーラさんとサイラスの2人だけかな? よく考えたら、トリプルファングを使っても初撃で属性変更がかかって、後の二撃はカス当たりになってしまいそうだ。 と思ってヒーラー武器を用意はしてみたんだけど移動が落ちるのはちと拙いかなと思い直し。 もう少し考えてみる。 >アルシエラさん 通常攻撃で魔法と物理と選べるのは”魔法攻撃の値がある武器を装備している場合”だけど大丈夫かな?
>魔法攻撃 それなら、さっきスキル構成伝えたが、俺が回るよ。 一応キャスター系の備えはあるし。
>カイン君 ありがとう。 それじゃ俺の方はダメージは最低保障のみで割り切って、移動6が出せるように作っておこう。
あ、ちなみにその分ホークアイはなくなるのと、BS関係は頼む。
では、シーフ武器なら腱撃3が用意できるからそれを持っていこうか。 【命中低下:20%】のBSがうまく行けば入るはずだ。
>える あ、武器に魔法攻撃がないとだめなんだね、ありがと。