【酔頸】還れなかった兵士達
革酎
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シナリオID:2166
オープニング
シラー砂漠に拠点を置くバルバロイ達からリーンエス王国の内地領を守っているのは、主として西方辺境伯アクファリテ家や、その寄り子貴族達である。
しかし王国政府は、全ての対バルバロイ戦を西方辺境伯とその寄り子貴族達に丸投げしている訳ではない。大規模な侵攻に対する防衛戦や、継続的な戦力投入が必要と判断された場合には、内地の貴族達からも兵力(大半は各貴族家が供出する私有兵力)を掻き集め、対バルバロイ戦に当たらせるということは珍しくなかった。
基本的にこれらの内地貴族供出の兵力は任期を終えれば、それぞれの故郷へと帰還する。
だが中には敢えて地元には戻らず、西方辺境伯や寄り子貴族達の領地に留まる者も居た。彼らは戦場で経験した死の恐怖に精神を苛まれ、平穏な日常生活を送れなくなった者が少なくなかった。
職業軍人ともいうべき騎士や常備兵であっても、戦場で命を落としかねない様な状況に陥れば、相当なストレスを覚える。
全ての騎士や兵が精神的訓練を受けていれば何の問題も無いのだろうが、実際のところは分からない。中にはそういった訓練を一度も受けたことが無いという者も居た。
そんな彼らが、獰猛な勢いで迫ってくる命知らずの蛮族と相対すれば、そこで味わう絶望感は計り知れないだろう。
無事に戦場を生き延びたとしても、彼らの心に植え付けられた死の翳は、ちょっとやそっとでは拭い去ることが出来ない。彼らは数時間おき、或いは数分おきに蘇ってくる恐怖に怯え、普通の日常生活もままならぬ状態に追い込まれていった。
西方辺境伯やその寄り子貴族達は彼らを帰還不能兵と呼び、その対応に当たる現地の役人達は帰還不能兵の対処に手を焼いている。
帰還不能兵達も、本心では故郷に帰りたい。しかし彼らの記憶に焼き付いた死の恐怖や、友や肉親を戦場で救えなかった強い罪悪感が、平穏な日常生活への復帰を妨げていた。
西方辺境伯の寄り子貴族のうちのひとりヘルマス・ジーロー伯爵は、領都セズンの私設兵団駐屯所から上がってきた奇妙な報告を受けて、ふと眉をしかめた。
王国騎士ジョバンナ・ムーシャレスが、セズンのスラム街で遺体となって発見されたというのである。
ジョバンナはセズンに於いて、帰還不能兵の生活支援や帰還に向けた心のケアなどの為に、精力的に働いていた心優しい女性だった。そのジョバンナが無残にも、何者かに殺害されたらしい。
自邸の書斎でこの訃報に触れたジーロー伯爵は怒りに震えた。帰りたくても帰れない、死の恐怖に怯えて暮らす帰還不能兵達を何とか励まそうとしていたジョバンナを、一体誰が殺したというのか。
「すぐに犯人捜索に着手せよ。冒険者ギルドにも協力を求めるのだ」
ジーロー伯爵の指示で、セズンの冒険者ギルド支部にも犯人捜索及び討伐の依頼が発出された。
●路地裏の陰謀
セズン冒険者ギルド支部の受付ロビーで、冒険者であり吸血鬼ハンターでもあるロレッタ・レーゼンはジーロー伯爵家からの直接の依頼票を掲示板上に発見した。
つい先日、西方辺境伯領からここセズンへと移動してきたばかりで、次の依頼は何を受けようかとまだ物色している最中だった。
依頼票には王国騎士ジョバンナ・ムーシャレス殺害犯の捜索及び討伐と記されているが、備考欄に、帰還不能兵がここ最近、次々と行方不明になっている事実も書き添えられていた。
(何か、関係があるのか……?)
ロレッタはジョバンナ殺害と、帰還不能兵達の行方不明問題が裏で繋がっていると直感した。
その夜、地味な色合いのフード付きマントを頭からすっぽりと被ったロレッタは、帰還不能兵が路上生活者と化して数多く屯しているスラム街の一角へと足を向けた。
「あんた、見慣れない顔だな」
音も無く路地から路地へと歩を進めていたロレッタだが、とある辻でひとりの中年男性から声をかけられた。彼も帰還不能兵のひとりらしい。長年の路上生活の為か、全身が酷く汚れていた。
「悪いがここはもう、縄張りが一杯だ。自分の生活圏が欲しけりゃ、他を当たった方が良い」
その中年男性はロレッタを帰還不能兵と勘違いした様だ。
しかしロレッタは、然程に人数が多くない状況に内心で小首を傾げた。これだけ隙間が多いのに、縄張りが一杯というのはどういうことであろう。
「いや、まぁ実際のところは見ての通り、隙間だらけなんだけどさ……ただ、消えた連中がもし帰ってきたら、ひと悶着起こるかも知れないよ」
中年の帰還不能兵曰く、少し前まではこの狭い路地に十数名の路上生活者が居た筈なのだが、気が付けばひとり、またひとりと行方をくらましているとの由。
ロレッタは依頼票の備考欄に記載されていた一文を思い出した。
(帰還不能兵が次々と行方不明になっている……ここでも、同じことが起きているのか)
その時、路地の奥で複数の気配が動いた。見ると、薄汚れた格好の集団が、妙な足取りで近づいてくる。
しかし中年の帰還不能兵は、集団の先頭を歩く人影に笑顔を見せた。
「おぉ、ギャドじゃないか。お前、どこ行ってたんだ?」
ギャドと呼ばれた人影はまるで応答しない。ロレッタの鋭い嗅覚は、この集団が人間ではないと警鐘を鳴らしていた。
「逃げた方が良い。あの集団は……アンデッドだ」
「え? アンデッド?」
ロレッタが見たところ、このアンデッドはいずれも食屍鬼と呼ばれるゾンビの一種だ。どの姿も路上生活者らしき汚れた衣服を纏っているところを見ると、行方不明になっていた帰還不能兵達であると見て良さそうであった。
「ここで何かが起きている様だな……逃げるぞ」
ロレッタの実力ならば斃せないことも無かったが、この中年帰還不能兵を巻き込む訳にはいかない。ロレッタは彼の手を引き、裏路地から大通りへと一気に走った。
逃げる最中、この中年帰還不能兵はサヴェックと名乗った。
解説
マスターより
リプレイ
リーンエス王国ジーロー伯爵領都セズンの冒険者ギルド支部は夜であろうとも、窓や玄関扉は基本的に開けっ放しである。町全体が一年を通して気温が高く、陽が沈んでも汗ばむ程の暑さの為だ。
そんな中、シグモルの神徒ロゼットは間借りした休憩室の一角で、殺害された王国騎士ジョバンナ・ムーシャレスに関わる資料と格闘していた。
「ジョバンナは帰還不能兵の生活支援に当たっていた……」
生前のジョバンナの活動記録や彼女自身の生い立ちに関する資料、更には遺体発見時やその後の捜査に関連する文書を徹底的に洗い直す。
現地に出向いての聞き込みも重要だが、その前に予め分かっている事実に目を通すことで、思わぬヒントを見出だすことが出来るかも知れない。
遺体発見時の様子、防御創の有無、致命傷の原因と傷痕から推測される凶器の形状等から、犯人像と動機を割り出そうという訳だ。
だが、調べれば調べる程に違和感が際立つ。ロゼットは、単純な殺人事件として捜査して良いものかと幾分の疑問を抱き始めていた。
「彼女を殺害したのは、帰還不能兵のアンデッド、かしら……それとも……」
ロゼットは必要な情報を数枚のメモに書き留めると、木椅子から腰を上げた。
深更を迎えたセズンは、意外と明るい。この常夏の領都には歓楽街が多く、明け方まで営業している店舗があちこちに溢れているからだ。
その一方で帰還不能兵が屯するスラム街は常時薄暗く、場所によっては全くの闇に覆われるという有様だ。楽しげな観光客で賑わう明るい街並みを一歩外れれば、そこは戦争の記憶の溜まり場となっている。何とも皮肉な話だった。
「帰還不能兵に女性騎士の殺害か……厄介な問題が余計に厄介になりそうだな」
スラム街で帰還不能兵の現状確認を進めていたケン・Z・ブラッドリーの面が渋い色に染まる。どのくらいの人数がいつ頃から姿を消しているのかを訊いて回ったが、まるで要領が得られない。どの帰還不能兵も周辺の状況に対しては、無頓着な者ばかりであった。
「蛮族との戦いで心にダメージを受けた兵士さんを支援していた騎士の方が殺害されて、更に兵士さんが次々と行方不明に……現場は同じみたいですし、無関係ではなさそうですね」
手土産のメロンパンを、路地裏のそこかしこで寝転がる帰還不能兵達に配りながら話を聞いていたルアンナ・ミュラーも、彼らの仲間意識の希薄さに多少の驚きを禁じ得ない。
(路地裏にホームレスみたいな方がたくさん……全員、帰還不能兵なんでしょうか)
同じ戦場で命を懸けた者達だが、今の彼らは己の心の傷に抗うのが精一杯で、他人の安否にまでは気が回らないというのが正直なところなのだろう。
寧ろ、人数が減ってくれた方が支援物資や炊き出しの食料に多くありつけるという不謹慎な考えを披露する者まで居た。同じスラム街に住んでいるからといって、お互いが親しいだろうというのはその場で生活したことの無い者の想像に過ぎなかった。
「これじゃあ怪しい人影が居たかどうかなんて、分かる筈もねぇかなぁ」
ルアンナと同じく、ワインやパンなどを配り、その引き換えとして情報を引き出そうとしていたサイラスも若干の肩透かし感を覚え、やれやれとかぶりを振った。
但し、ジョバンナに対してはどの帰還不能兵も好感を抱いていたらしく、彼女が殺された事実を告げると、心の底から残念がる者が少なくなかった。
しかし中にはジョバンナの死という事実から戦場での恐ろしい経験を思い出し、発狂寸前かと思える程に怯えて喚き散らす者も居た。
「ジョバンナさんが殺された件については、濁した方が良いかも知れませんね」
とは、フリーダ=ブロムヴィストの弁。
犯人はヤ何とかさんではないが大きな裏があるのは間違い無い、というのが今回フリーダが得た啓示らしいのだが、当然ケンやルアンナには何のことだかよく分からない。だが情報収集が重要という点では、他の面々とも意見が一致していた。
尤も、
「恐怖や罪悪感に対しては強い導きや信仰が有利に働きます」
というフリーダ特有の天啓とやらは、今のところ不発である。少なくともここに居る帰還不能兵達は信仰から安らぎを得ようとする者が皆無で、今後の生活という即物的な意識だけを抱いている者が大半であった。
「しかしどうやら、スラム街のどの区域でも万遍無く間引かれているのは間違い無さそうだな」
ケンの意見には誰も異論を挟まない。行方不明者は特定の場所から一斉に姿を消しているのではなく、スラム街のそこかしこで、比較的目立たない形で少しずつ人数が減るといった具合に、誰も気にしない形で徐々に行方知れずとなっていた。
誰もその所在を気にしない帰還不能兵を、下手に騒がれぬ様に上手く拉致するならば、これ以上の方法は無いだろう。
●謎の怪人
大通りとスラム街の中間に当たる路地で、ハヤト=ガラン=ヴォルファングは帰還不能兵サヴェックの手を引く狼の半獣人娘ロレッタ・レーゼンと合流していた。
「この匂い……やっぱり間違い無かったな」
ロレッタと再会を果たしたハヤトは心底嬉しそうではあったが、ロレッタが小汚い中年男の手を引いている姿を見た時には若干、もやっとした気分が胸中に湧き起こってきた。
それでも、ロレッタとサヴェックの後方に数十という数のアンデッドが迫っている光景を見ると、その表情が瞬時に歴戦の冒険者のそれへと変貌したのは流石だといって良い。
ロレッタとサヴェックが口早に状況を説明すると、ハヤトは愛用の得物を鞘から抜き払いつつ、小さく鼻を鳴らした。
「消えた帰還不能兵達がアンデッドになってるだぁ? 何だか一筋縄じゃ行かなそうな任務になっちまったな……」
アンデッドの群れが食屍鬼と呼ばれるゾンビの一種であると分かった以上、このまま放置する訳にもいかないだろう。ロレッタもハヤトという心強い援軍を得て、ここで初めて反撃に転ずる腹を固めた様だ。
サヴェックを後方に退かせたハヤトとロレッタは脅威的な機動力を発揮して、まずは屍の群れの最前列を崩しにかかった。
そこへ戦闘音を聞きつけたケン、サイラス、ルアンナ、フリーダといった面々が合流してきた。
「ちぃ……こいつら帰還不能兵で作られてやがる。ここで仕留め切らねぇと、面倒になるな」
太刀を抜いて屍の一部を狭い路地へ誘導し始めたケン。
その一方でロレッタは、ノコギリ鉈を構えたルアンナに不思議そうな面持ちを向けた。
「魔獄の、珍しい武器を持っているんだな」
「そういえば……これをお見せするのは、初めてでしたね」
一瞬苦笑を浮かべたルアンナだが、まずはこのゾンビ共を始末するのが先だ。
フリーダも咆哮を放って屍の群れを自身に引き付けつつ、範囲攻撃を軸にして一気呵成の殲滅を試みた。
「けど、上手いこと考えたもんだな。帰還不能兵なら姿を消したって誰も気にせんだろうし、ゾンビも浮浪者も見た目はそう変わらんから、気付かんうちに歓楽街近くまで集団で送り込んだりで、テロにはうってつけだよなぁ」
フリーダが壁となってくれているお陰で手数に余裕が出来たサイラスは、殺界で一部の屍を足止めし、一気に距離を詰めて次々と仕留めてゆく。
「オンカラカラ、オンカラカラ、ウンハッタ」
不意に奇妙な呪文の様な声が響き渡る。すると、屍の群れの動きが一変した。ゾンビ共は集団で渦を描く様に歩き始め、冒険者達をその隙間の細い空間内に挟み込もうとした。機動力の有無に関係無く、どの冒険者も通路上の空間を移動せざるを得なくなるが、その空間そのものが死角を生み出す格好となった。
当然ながらゾンビ自体にこの様な複雑な連携は無理だ。何者かが操っている筈だ。
見ると、黒装束の男がゾンビの群れの向こう側で両手を奇妙な形に組んで立っている。冒険者達は咄嗟に、その男が帰還不能兵達を拉致し、ゾンビに作り替えた張本人であると悟った。
シャルガネ風の衣服と黒髪黒瞳、そして黄色に近い肌。噂に聞くシノビの様にも見えたが、どこか趣きが異なる様にも思える。
「さっきから妙な臭いが紛れ込んでたが、てめぇが犯人か!」
手近のゾンビ数体を斬り伏せながら、ハヤトが叫んだ。しかしこの屍迷路を突破しなければ、間合いを詰めることも出来ない。
「こういう時は一気に纏めて仕留める技を持っている方が有利です」
ルアンナが、膨大な魔力の破壊波を撃ち出してゾンビ共を強引に蹴散らしてゆく。同時にフリーダとサイラスも、光塊による一撃を振るい、謎の術者の間に立ち塞がる死者の群れを一気に薙ぎ払った。
「全く……後味悪い真似をさせてくれるぜ」
狭い路地に誘い込んだ十数体のゾンビの首を斬り落とし、首謀者との直線状に空間を確保したケンが一気に走った。
同時にハヤトとロレッタも、謎の男との間合いを詰める。謎の男は歯噛みした。
「ぬぅ……我が八卦の紋陣を破るとは……ッ!」
男は更に別の呪文を唱え始めた。が、リンビョウトウジャカイチンと声を繋いだところでハヤトとケンの刃が男の脇腹と喉を捉え、最後にロレッタの長刀が心臓を貫いた。
男は血溜りの中に斃れ、そのまま息絶えた。
するとゾンビ共はそれまでの緻密な連携が崩れ、ただ本能のままに蠢く憐れな死者と化した。
後はこの屍達を葬るだけ――となった時、不意に大通り方面から悲鳴が上がった。サヴェックだった。
●裁かれるべきは
数体の屍が今まさに、サヴェックに迫ろうとしていた。
ところがそこに、横合いからロゼットが飛び出してきた。サヴェックを半ば押し倒す様な格好でゾンビの攻撃から守り切ったロゼットだったが、この直後、思わぬ事態が生じた。
「て、てめぇ! この蛮族野郎! 俺と勝負か!」
この時サヴェックはまるでひとが変わったかの如く、鞘から特徴的な刃の小剣を引き抜き、ロゼットの喉元を突こうとした。
が、ロゼットは完全に予測していた。難無く刃を躱し、サヴェックの得物を握る手を逆に掴んで動きを封じてから、腹に一撃を喰らわせて失神させた。
「やっぱり……そういうことだったのね」
ロゼットは気絶したサヴェックを路地に横たわらせてから、背後に迫っていたゾンビ共を愛用の祭棍で一気に薙ぎ倒した。
「やっぱりって、一体どういうことなのでしょう?」
フリーダがゾンビを数体仕留めつつ、不思議そうに小首を傾げた。だがロゼットは、まずはこのゾンビ達を弔ってからとかぶりを振った。
今、冒険者達の前で蠢いている屍達も、いわば憐れな犠牲者なのだ。彼らを再び死の床に就かせ、その上で真相を話す、とロゼットは低く応じた。
それから十数分後、その場の全てのゾンビは斃され、ロレッタが呼びに走った伯爵の私兵団が、これらの遺体をセズン郊外へと運び出す段取りとなった。
冒険者達は漸く、ロゼットからの説明を受ける段になった。
「ジョバンナの死に顔はとても優しくて、それはまるで、自らの突然の最期を受け入れる様な表情だったらしいわ」
そして致命傷となった刃の形状は、サヴェックの武器のそれと完全に一致するのだという。
まさか、とルアンナとハヤトは顔を見合わせた。先程のサヴェックの反応が、全てを物語っていた。
「恐らくジョバンナはさっきと同じ様に、サヴェックをゾンビの群れから救ったんだと思う。その時……サヴェックは自分が蛮族に組み敷かれた時の記憶が蘇って、咄嗟にジョバンナを刺してしまったのよ」
ジョバンナは授恵者ではない。急所への刃は致命的な一撃となって、彼女を即死させたことだろう。
サヴェックはその後もしばらくは戦地に居ると錯覚し、スラム街を彷徨った。帰還不能兵は喧嘩沙汰が多い為か、血まみれになっていても誰も気にしない。誰も彼もが、その時のサヴェックを戦地の記憶が蘇ったヤバい奴だと認識し、近寄ったり事情を聞こうともしなかっただろう。
勿論サヴェック自身にも、自分に優しくしてくれたジョバンナを自らの手で刺し殺したという認識も記憶も無かった。
ただ気が付いたら、ジョバンナが誰かに殺されていた、というぐらいにしか思わなかったに違いない。
「殺人じゃなく……事故だったんですね」
ルアンナは気の毒そうに、今も尚、ただ気を失い続けているサヴェックを眺めた。確かに犯人を見つけるには見つけたが、まさかこの様な形で特定することになろうとは。
「やり切れねぇな……サヴェックだって、国を守る為に命懸けで戦った戦士だ。好きで帰還不能兵なんかになっちまった訳じゃねぇ。ジョバンナもそれを分かってたから、サヴェックを恨まずに、ただ静かに自分の死を受け入れたんだろう」
ケンは、己が授恵者として覚醒したことに感謝する想いだった。もしそうでなければ、ケン自身もいずれはサヴェックと同じ悲劇をどこかで味わうことになったかも知れない。
「サヴェックさんは、どうなるのでしょう?」
フリーダの問いに、誰も答えることが出来ない。サヴェックがジョバンナを殺害したことは事実なのだ。如何に神経を病んでいたとはいえ、王国騎士殺害という責任は重くのしかかる。
説明を終えてから、ロゼットは大きな溜息を洩らした。
「余りに悲惨な事件だわ。殺した方も、殺された方も、いわば戦争の犠牲者だものね」
「けどよぉ、この件に限っていえば、裁かれるべきはサヴェックじゃなくて、あの術師じゃねぇの? そもそもあいつがゾンビを作らなきゃ、ジョバンナがサヴェックに殺される切欠なんかも発生しなかったんだろうし」
サイラスは、血の海に沈む謎の敵に視線を走らせた。結局、正体は掴めなかったが、あの男は何者だったのだろう。
冒険者ギルドに引き返した一同は、ジーロー伯爵邸に事の顛末の報告に走っていたロレッタと合流した。
「相変わらず面倒なことにはよく巻き込まれるな、君は」
「いや、今回は私が自分で首を突っ込んだクチだからな」
呆れるサイラスに、ロレッタは苦笑を返した。だがその美貌が、すぐに緊張で引き締まった。ロレッタはジョバンナが生前、王都グランスパーダ在住時に手掛けていた調査案件についての資料を、冒険者ギルド経由で取り寄せて貰っていたらしい。
そこに、気になる報告結果が記されていた。
「天陽道という組織を調べていたらしい。帝国過激派、メドゥの指先、更には太信党とも繋がりがある連中らしいが……」
何より気になったのは、この天陽道なる組織が吸血鬼ロジェイル・アルトミーを顧客として暗躍していた時期があったという点である。
不気味な予感が、漂い始めてきた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2022年05月30日 02時00分20秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず話術とかで交渉したりして情報集めるとかが主かなー 後は状況的に死霊術師いそうだな
ロゼットよ。よろしくね。
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 アンデッドがいる以上は死霊術師がいる可能性は十分考えられますね。 となるとジョバンナ様の殺害は犯人にとって都合が悪かったから、 口封じないし目撃者封じで殺害されたと見てもよいかと思います。 何にせよまずは帰還不能兵達から情報を集めていく形にしようかと思います。 1人位は行方不明になった知り合いとかについて知ってそうな気もしますし。
キャスターのルアンナです、よろしくお願いします。 ジョバンナさんを殺害した犯人は、ホームレス同然になってしまった兵士さんを素体にアンデッドを作っている死霊術師かと。 支援の為にスラムを出入りしているジョバンナさんが邪魔だったとか、フリーダさんが言っているように都合の悪い事、例えば兵士さんをアンデッド化させる決定的瞬間を目撃されてしまったとかが動機だと思います。 スラムが現場になっているのはもう分かっている事ですし、私もロレッタさんを追うようにしてスラム入りしようと思ってます。
ウォーリアーのケンだ よろしくな アンデットが出てる以上それを作ってるやつはいるだろうし、アンデットのもととなる人も結構いるってのは厄介だよな とりあえずは聞き込みでどれくらいの人が最近見なくなったとか調べないとな 途中でロレッタらが襲われてるところに遭遇したら助けて情報共有してどの地域から人が減ってるとか予想してさらに調べていく感じかな?
サヴェックという人から、路上生活者が姿を消している 場所を聞き出して、そこと騎士ジョバンナが殺害された 現場が同じなようなら、ふたつの事件に関係を疑えそうね。 アンデッドの大群、大勢が犠牲になるまで発覚しなかったなら、 犯行は日中じゃなく、目立たない場所で夜間に行われていた 可能性もあるかな。夜間の張り込みにも備えておいた方が良い? 必須なスキルも無さそうだし、エンライトぐらい入れておくわ。
おーっす! ギリギリになっちまってすまねぇな、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ジョバンナを手にかけた犯人は死霊術師かはたまた吸血鬼か… 何にしても未知の敵だっつーから気を引き締めてかねーとだな!!