【羅盤】帝国お料理コンテストなのだ!
椿油
コメント 2
シナリオID:2021
オープニング
●祭りを作らないか
「帝国が盛り上がりに欠けてるりゆーが分かったのだ。お祭りがないのだ!」
少年ラバンはヴィントに滞在している冒険者ギルドの受付嬢に言った。
「……と申しますと?」
「楽しくなれば帝国の人達はもっとゆかいなお顔になるのだ!」
実に子供らしい提案。だが、言う事は尤もかもしれない。今、帝国は再興している最中なのである。住民の士気が上がれば、これ以上皇子にとって喜ばしい事はないんじゃなかろうか。
「それで、どのようなお祭りを?」
受付嬢は筆を手に取った。
「お料理コンテストなのだ!」
「お料理……作物が足りるでしょうか」
主に小麦が足りるか、やや心配ではあった。『・小麦』と書いた受付嬢。
「えーっと、小麦はがんばる必要あるけど、チョコとかチーズその他もろもろ持ち込みオッケーにしとくのだ!」
「家畜の副産物でカバー可能な範囲もありますからね」
ミルクや卵などはこちらから新鮮な物が提供できるだろう。何せシルトラースは牧畜が盛んなのである。
「あとあと、コンテストって言うけど賞品とか賞金は用意しないのだ。負けたらくやしー気持ちになっちゃうのだ、拍手でお祝いして参加してくれてありがとーのお礼を払うだけで充分なのだ!」
「ようするに、これをひとまず依頼の形にするという事で宜しいですか?」
「してくれるのだ!?」
ラバンはぴょんぴょこ跳ねて喜んだ。
「まぁ、いずれ大会運営組織が必要になった時は資金を用意しておいて下さい」
「うんえーそしき……。まぁがんばって稼いでおくのだ」
これでもラバンは冒険者、依頼を選べば普通に稼げるだろう。
「それじゃあ、小麦をがんばって下さいね?」
「知り合いのおにーさんとおじちゃんを頼ってくるのだ! ついでに会場作るお手伝いしてもらうのだ」
果たして男三人で会場が作れるだろうか。受付嬢は訝しんだ。
「……まぁ、あの少年に期待しておきましょう」
●一週間後
「めどが立ったのだ!!」
ラバンが受付嬢に報告しに来た。結構早いなと思いつつ、受付嬢は依頼書を取り出して見返す。
「卵、ミルク、肉、魚、その他調味料は大会側で用意。食材持ち込み可能という事にしておきました」
「色々おまけしてくれたのだ? うれしーのだ!」
「それで、会場はどこに?」
「ゲルを借りる事になったのだ。小麦も用意ばっちしなのだ!」
「……今回は関係ないですけれど、資金はどうなりました?」
「じゅ、順調なのだ」
まだまだかかりそうだな、と思いつつ。受付嬢はハンコを押した。
「今回はラバンさんからの依頼という事にしておきますからね」
「……じゃあ今払うのだ」
小さな冒険者からすまないと思いながらも依頼料を受け取り、受付嬢はふむ、と考え込んだ。
「そういえば、メインの審査員は誰にします?」
「ラバンとおねーさんなのだ」
「えっ、私?」
こうして、受付嬢が巻き込まれつつお料理コンテストの開催が決まったのであった。
「帝国が盛り上がりに欠けてるりゆーが分かったのだ。お祭りがないのだ!」
少年ラバンはヴィントに滞在している冒険者ギルドの受付嬢に言った。
「……と申しますと?」
「楽しくなれば帝国の人達はもっとゆかいなお顔になるのだ!」
実に子供らしい提案。だが、言う事は尤もかもしれない。今、帝国は再興している最中なのである。住民の士気が上がれば、これ以上皇子にとって喜ばしい事はないんじゃなかろうか。
「それで、どのようなお祭りを?」
受付嬢は筆を手に取った。
「お料理コンテストなのだ!」
「お料理……作物が足りるでしょうか」
主に小麦が足りるか、やや心配ではあった。『・小麦』と書いた受付嬢。
「えーっと、小麦はがんばる必要あるけど、チョコとかチーズその他もろもろ持ち込みオッケーにしとくのだ!」
「家畜の副産物でカバー可能な範囲もありますからね」
ミルクや卵などはこちらから新鮮な物が提供できるだろう。何せシルトラースは牧畜が盛んなのである。
「あとあと、コンテストって言うけど賞品とか賞金は用意しないのだ。負けたらくやしー気持ちになっちゃうのだ、拍手でお祝いして参加してくれてありがとーのお礼を払うだけで充分なのだ!」
「ようするに、これをひとまず依頼の形にするという事で宜しいですか?」
「してくれるのだ!?」
ラバンはぴょんぴょこ跳ねて喜んだ。
「まぁ、いずれ大会運営組織が必要になった時は資金を用意しておいて下さい」
「うんえーそしき……。まぁがんばって稼いでおくのだ」
これでもラバンは冒険者、依頼を選べば普通に稼げるだろう。
「それじゃあ、小麦をがんばって下さいね?」
「知り合いのおにーさんとおじちゃんを頼ってくるのだ! ついでに会場作るお手伝いしてもらうのだ」
果たして男三人で会場が作れるだろうか。受付嬢は訝しんだ。
「……まぁ、あの少年に期待しておきましょう」
●一週間後
「めどが立ったのだ!!」
ラバンが受付嬢に報告しに来た。結構早いなと思いつつ、受付嬢は依頼書を取り出して見返す。
「卵、ミルク、肉、魚、その他調味料は大会側で用意。食材持ち込み可能という事にしておきました」
「色々おまけしてくれたのだ? うれしーのだ!」
「それで、会場はどこに?」
「ゲルを借りる事になったのだ。小麦も用意ばっちしなのだ!」
「……今回は関係ないですけれど、資金はどうなりました?」
「じゅ、順調なのだ」
まだまだかかりそうだな、と思いつつ。受付嬢はハンコを押した。
「今回はラバンさんからの依頼という事にしておきますからね」
「……じゃあ今払うのだ」
小さな冒険者からすまないと思いながらも依頼料を受け取り、受付嬢はふむ、と考え込んだ。
「そういえば、メインの審査員は誰にします?」
「ラバンとおねーさんなのだ」
「えっ、私?」
こうして、受付嬢が巻き込まれつつお料理コンテストの開催が決まったのであった。
解説
【目的】
お料理コンテストに参加して、楽しむ!盛り上げる!
【用意されている物】
小麦粉、ミルク、卵、調味料、季節の木の実や肉と魚が用意されました。
いずれも新鮮です。肉は家畜の肉で、魚は帝国ダンジョン産です。
木の実は甘い物から酸っぱい物、苦い物まで色々な味が用意されています。
《現地調達》という選択肢もありますが、調達出来るかは物と量によります。
例:芋が欲しい!→帝国は芋作もしているので近くの農家から調達できます
例:大根が欲しい!→若干時間がかかりますが恐らく調達出来ます
例:サボテンが欲しい!→砂漠が近い距離に無いので恐らく調達できません
もちろん、持ち込みも歓迎です。
チョコ(カカオ)やチーズ、酒などは持ち込みの方が便利かもしれません。
審査は帝国の一般市民の方々の試食による一般審査と、ラバンと受付嬢さん(フィラさんと言います)のメイン審査があります。
なんかすごい物を作るとメイン審査の二人からコメントが貰えるかもしれません。メシマズスキルを使って作るとそっち方向のオブラートに包んだコメントが発生する可能性が高いです。
どんな料理になろうが、会場が盛り上がれば成功です。
マスターより
椿油です。フェスティバルが無ければ作ればいいじゃない。というわけで何とか開催にかぎつけたお料理コンテストです。帝国の方々を喜ばせてあげましょう!
受付嬢のフィラお姉さんが肉と魚を足した分ラバン君が多めに依頼料を支払ったのはここだけの秘密です。
皆様のアツいお料理プレイング、お待ちしております。
リプレイ
●お料理コンテスト開幕
ラバンは集まった冒険者達にぺこりと礼をする。そして、手の平を見つめながら主催として発言し始めた。
「えーと、このたびは、お料理コンテストのご参加、えーと、まことにありがとうございます、なのだ」
受付嬢のフィラはそれを見て、もういいですよとばかりに発言権を奪って続きを言い始める。
「大会の審査はお集まりになった住民の皆さんによる一般審査と、我々2名による審査とさせて頂きます。今回、優勝賞品等はございませんが皆様の美味しい料理が完成する事を期待しております。準備は良いですか? それでは……始めッ!!」
ゴングの代わりに薬缶がカンカンと鳴らされた。
――いざ、お料理開始だ!
●ビーフシチューのパイ包み
サイラスが作るはビーフシチュー、それもパイ生地で包んだもの。
「骨と、野菜と……お、セロリもあるな。よし」
ビヒモーの脛や肋の肉と骨を、ニンジンやタマネギと共に煮込んでブイヨンのベースを作り始める。セロリは、香辛料コーナーに用意されていた。
「時間かかるけどしゃーない、出来る所まで煮込むか」
幸いにも朝から夕方、夜にかけて調理時間は用意されている。朝早くから煮込み始めたサイラスは、少しだけ春の帝国の寒さを感じながらもブイヨンのベースをグツグツ、コトコトと煮込んでいた。そして、煮込む合間にパイ生地を作る。時間との勝負であった。
「間に合えばいいけどなー……」
そう言いながら生地をこね、たまに鍋を見るサイラス。どうなるだろうか?
●チョコレートケーキ
フリーダ=ブロムヴィストは、他とは嗜好を変えてケーキ作りに挑戦していた。
(恐らく、皆様美味しい料理を中心に出してきてくれるでしょうから)
卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせ、そこに綺麗に砕いたチョコレートとココアパウダーを入れて混ぜる。少しずつ、生地がチョコ色になり始めていた。
形を整え、竈に入れる。焼き上がるまでの間は、木の実選びだ。
「甘味と酸味、半々ぐらいが丁度いいでしょうか」
チョコ生地に合う木の実を、試食込みで選定しつつ 余ったチョコをトッピング用に形づくっていくのだった。
●オムレツ
「つまるところ炊き出しなのだ。それでいいと思うのだ」
シルトラースは牧畜が強いとアピールする機会。ストレガ・L・リベルガストラは、大量の卵と、ジャガイモとタマネギを確保し、ニンニクとチーズを探すついでに竈の存在を確認しておいた。
「まずは下ごしらえからなのだ」
鶏肉を塩と香草で臭みを消し、細切りに切っていく。ジャガイモの皮を剥いて、角切りにした後煮込み始める。さっと火が通った所で、湯から上げて冷ます。その間にタマネギをみじん切りに、ニンニクを薄く刻んでおいた。
「後はこれも」
木の実。これもワンポイントに欠かせないだろう。酸味強めである。食べやすいサイズに切っておいた。
そしてミルクとバターをシャカシャカと混ぜ、火にかけながら卵を加えて卵液を作る。ここで竈に薪を投入し、竈が暖まるまでにフライパンに脂を塗っておいた。
「ここからが良い所なのだ」
フライパンで切ったジャガイモとタマネギとニンニクを炒め始め、肉を投入。一気に良い香りが広がる。酸味のある木の実、そして塩と香草も加えて一気に仕上げていった。全てが良い感じに仕上がったら、皿に移して作っておいた卵液と、溶かしたチーズを加え、竈にシュートした。
●豚肉のチーズピカタ等々
コハクは本来食べ専である。だが作る方も実は上手かったりする。
「一人一品とは言われてなかったし、いいわよね」
豚肉の筋を切って、塩胡椒で味付けをしていく。衣の卵には小さく細切りにしたチーズを加えてチーズ衣を作った。豚肉に小麦粉をまぶし、チーズ衣をた~っぷりつけたら、油を熱しておいたフライパンで弱火でじっくり焼いていく。
そして、それと同時進行で作っていたのが白身魚のムニエルだ。同じく塩胡椒をと小麦粉をまぶしたダンジョン産の魚をさっとバターを敷いたフライパンに通していく。なお、塩胡椒を振る際に二品焼くので手が塞がっていた為、塩胡椒の瓶を念動力で浮かせパフォーマンスしながら作っていた。会場からはおぉと声が上がった。
(ムニエル用にタルタルソースでも作るかなー……あ、もう出来ちゃった)
さて一方こちら、様子を見に来たラバン君。
「おぉー、おいしそーなこれは何なのだ?」
「ビーフシチューてか、まだブイヨンだけど」
煮込んでいるサイラス。若干足りないだろうとまだまだ煮込んでいる。
「ビーフシチュー! それじゃあおねーさんが作ってるこれは何なのだ?」
「チョコレートケーキですよ」
フリーダの手にはクリスタルシュガー。これから砕く所らしい。
「おさとうなのだ……! こっちは卵の匂いがするのだ!」
「察しがいいのだ。これはオムレツなのだ」
ストレガは竈をジッと見つめてオムレツの様子を伺っていた。
「わーい! じゃあこっちは?」
「チーズピカタとムニエルよ。結局全員に聞くのね」
コハクのキッチンには、密かにもう一品の材料があったがラバンは気づかない。
「食べるのが楽しみなのだ!」
ニッコリと笑ったラバンであった。
●仕上げていくシェフ達
時刻は昼過ぎ。
「んー、もうこれでいいか」
何回か味見したのち、サイラスは次の工程に入った。ザルで骨などの出汁ガラをすくい、あらかじめ切って処理しておいた肉を炒め、ブイヨンと混ぜ合わせる。少し煮込んだらニンジンとジャガイモも入れ、柔らかくなってきたらタマネギとワインを入れ、さらに煮込む。ビーフシチューは煮込む時間が命だ。
「あと2欠片ってとこか?」
チョコや木の実を入れて、細かいコクと風味の調整をしつつ。ようやく出来上がったビーフシチューを容器に移し、パイ生地で蓋をして焼き始める。
(ひょっとしなくても一番最後だなこりゃ……)
朝早くから調理していたが、時間のかかる料理だったので仕方ない。出来ればあと数日は欲しい所だったかもしれない。
「綺麗に仕上がってきましたね」
砕いたクリスタルシュガーとチョコ細工を乗せ、木の実を飾り付けていくフリーダ。
「上手く出来たでしょうか……?」
帝国の紋章を象ったチョコ細工の周りには、白いチョコ細工が煌めいている。再興を願うイベントに相応しいだろう。
「よし。もう出来上がったのだ」
オムレツを竈から出すストレガ。
「熱いうちに食べるといいのだ」
そして集まったお客の数を見て、なんと更にオムレツの追加を作り始めた。
「出来上がった人から食べていいのかしら」
コハクは手元の卵と砂糖を見つめながら聞く。
「あっ、どーぞお食べ下さいなのだ! 審査員も食べるのだ!」
「では皆様、冷めないうちにお食べ下さい」
受付嬢フィラが取り分けていった。
●帝国のグルメ
「じゃあ、まずオムレツから頂くのだ! はむっ……おいしいのだー!!」
「それは良かったのだ。興味がある者はレシピを渡すので挙手して欲しいのだ」
ストレガはレシピを配りに回りつつ、既に無くなりそうなので次のオムレツを持ってきた。
「とても柔らかいですね。肉と野菜が卵に包まれて……」
フィラも思わず頬を抑えている。
「柔らかい卵がポイントなのだ」
「ラバンもこれ作りたいのだ!」
「それじゃあレシピをあげるのだ」
ラバンは一生懸命レシピとにらめっこしたのち。
「……大事に取っておくのだ!!」
と微笑んで誤魔化した。
(まだラバン君には難しかったんですね……)
フィラは察していた。
豚肉のチーズピカタを食べると、ラバンは驚いた。
「これ、卵だけじゃないのだ! チーズ入ってるのだ!」
「ええ、だからチーズピカタって言うの」
「あーそういう事なのだ、納得なのだ! じゃあこっちのムニエルはムニが入ってるのだ?」
「……ムニエルはムニエルよ」
ムニエルもほんのりスパイシーな味付けがラバンの口に合ったようで、パクパク食べていく。
「こらこら、皆さんの分が無くなりますよ」
フィラが叱ると、ついうっかりという顔で舌を出してテヘペロするラバンだった。
「それにしてもこれを同時に作り上げるとは。非常に美味しいです」
「ありがとう」
そう言いながら、コハクは密かに卵と砂糖とバターを混ぜた物を作っていた。パウンドケーキである。
「ようやく出来たわー」
サイラスがビーフシチューのパイ包みを持ってくる。かなりの大きさだ。ラバンがパイを突き破ってみると、ビーフシチューが出てきた。
「わぁ、トロトロしてるのだ! よだれが出ちゃうのだ~」
「食べてみ? 若干煮込み足りないかもだけど」
「いただきまーす! はむ……はむ……美味なのだ!! おやさいとお肉がごろごろなのだ!」
「コクがありますね」
フィラも満足して食べている。
「あ、そう? それなら良かったけど」
「皆さん、チョコレートケーキですよ!」
帝国チョコ細工の付いたチョコレートケーキを持ってきたフリーダ。
「わぁ! 上にもチョコレートたっぷりなのだ!」
「スポンジもチョコです」
「チョコざんまいなのだ!」
帝国シンボルの部分はラバンとフィラがちょっとずつ食べ、残りはお客さん達へ。
(おいしくなーれ、おいしくなーれ……出来た)
「あれ? 何作ってるのだー?」
「デザートよ」
コハクの手からパウンドケーキが突如出て来たので、ラバンは更ににっこりした。
「わーい! おいしいのと甘いの尽くしなのだ!」
「食べ過ぎないで下さいね」
「わ、分かったのだ」
フィラに念押しされたラバンであった。
●一般審査とメイン審査とコハクのグルメ
「このビーフシチューのパイ包み? だっけ、凄くないか? 朝からずっと作ってただけの味出てるよ」
「そうねぇ、とっても美味しいわ」
「わしゃあオムレツが気に入ったのう、レシピも貰ってしまったわい。なぁ婆さん」
「作るのはあたしなんですからね爺さん、ケーキ二つもとっても美味しいですよ」
「お母さん、もっとチョコレートケーキ食べていい?」
「はいはい、食べ過ぎないでね……パウンドケーキも美味しい!」
「ラバン君は一番美味しいと思った物はありますか?」
フィラが問う。
「んー、ビーフシチューはとってもトロトロしてたし、オムレツもホロホロだし、チョコレートケーキも甘かったし、チーズピカタはサクサクしててムニエルはシンプルイズベストでパウンドケーキもぜーんぶとっても美味しかったのだ」
「……そうですね。甲乙つけがたい程、全て美味しかったですね」
「つまりそういう事なのだ! おねーさんラバンの事分かってるのだ!」
「偶にはこういうのも悪くない……なんて」
コハクは取っておいた自分の分を食べながら、うんうんと頷いていた。
日が傾きかけ、全員のお腹が満たされた頃。
「というわけで、審査結果を発表します。どの料理もとっても美味しい物でした。皆さん、とても素晴らしい料理を作って下さいました」
「参加してくれたお礼にラバンが作った帝国メダルがあるのだ! 受け取って欲しいのだ!」
手作りの『ていこくめだる』と書かれたバッジを受け取った、冒険者達。
「お、おう……?」
「ありがとうございます」
「手作りのメダルとは粋なのだ」
(どうしようかしらこれ)
「ご参加ありがとうございましたなのだ!」
ラバンとフィラがぺこりと頭を下げ、コンテストが終わった所で、ストレガはキッチンへと向かっていた。
「勿体ないのだ。これだけ食べる者もいるなら使わねば」
何と余った食材を使い、追加で料理を作り始めた。
「おぉ~!! まだまだ食べられるのだ!?」
「その通り。もう一回食べられるのだ」
お料理コンテストの余韻は、夜まで腹が満たされる程続いたという。
ラバンは集まった冒険者達にぺこりと礼をする。そして、手の平を見つめながら主催として発言し始めた。
「えーと、このたびは、お料理コンテストのご参加、えーと、まことにありがとうございます、なのだ」
受付嬢のフィラはそれを見て、もういいですよとばかりに発言権を奪って続きを言い始める。
「大会の審査はお集まりになった住民の皆さんによる一般審査と、我々2名による審査とさせて頂きます。今回、優勝賞品等はございませんが皆様の美味しい料理が完成する事を期待しております。準備は良いですか? それでは……始めッ!!」
ゴングの代わりに薬缶がカンカンと鳴らされた。
――いざ、お料理開始だ!
●ビーフシチューのパイ包み
サイラスが作るはビーフシチュー、それもパイ生地で包んだもの。
「骨と、野菜と……お、セロリもあるな。よし」
ビヒモーの脛や肋の肉と骨を、ニンジンやタマネギと共に煮込んでブイヨンのベースを作り始める。セロリは、香辛料コーナーに用意されていた。
「時間かかるけどしゃーない、出来る所まで煮込むか」
幸いにも朝から夕方、夜にかけて調理時間は用意されている。朝早くから煮込み始めたサイラスは、少しだけ春の帝国の寒さを感じながらもブイヨンのベースをグツグツ、コトコトと煮込んでいた。そして、煮込む合間にパイ生地を作る。時間との勝負であった。
「間に合えばいいけどなー……」
そう言いながら生地をこね、たまに鍋を見るサイラス。どうなるだろうか?
●チョコレートケーキ
フリーダ=ブロムヴィストは、他とは嗜好を変えてケーキ作りに挑戦していた。
(恐らく、皆様美味しい料理を中心に出してきてくれるでしょうから)
卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせ、そこに綺麗に砕いたチョコレートとココアパウダーを入れて混ぜる。少しずつ、生地がチョコ色になり始めていた。
形を整え、竈に入れる。焼き上がるまでの間は、木の実選びだ。
「甘味と酸味、半々ぐらいが丁度いいでしょうか」
チョコ生地に合う木の実を、試食込みで選定しつつ 余ったチョコをトッピング用に形づくっていくのだった。
●オムレツ
「つまるところ炊き出しなのだ。それでいいと思うのだ」
シルトラースは牧畜が強いとアピールする機会。ストレガ・L・リベルガストラは、大量の卵と、ジャガイモとタマネギを確保し、ニンニクとチーズを探すついでに竈の存在を確認しておいた。
「まずは下ごしらえからなのだ」
鶏肉を塩と香草で臭みを消し、細切りに切っていく。ジャガイモの皮を剥いて、角切りにした後煮込み始める。さっと火が通った所で、湯から上げて冷ます。その間にタマネギをみじん切りに、ニンニクを薄く刻んでおいた。
「後はこれも」
木の実。これもワンポイントに欠かせないだろう。酸味強めである。食べやすいサイズに切っておいた。
そしてミルクとバターをシャカシャカと混ぜ、火にかけながら卵を加えて卵液を作る。ここで竈に薪を投入し、竈が暖まるまでにフライパンに脂を塗っておいた。
「ここからが良い所なのだ」
フライパンで切ったジャガイモとタマネギとニンニクを炒め始め、肉を投入。一気に良い香りが広がる。酸味のある木の実、そして塩と香草も加えて一気に仕上げていった。全てが良い感じに仕上がったら、皿に移して作っておいた卵液と、溶かしたチーズを加え、竈にシュートした。
●豚肉のチーズピカタ等々
コハクは本来食べ専である。だが作る方も実は上手かったりする。
「一人一品とは言われてなかったし、いいわよね」
豚肉の筋を切って、塩胡椒で味付けをしていく。衣の卵には小さく細切りにしたチーズを加えてチーズ衣を作った。豚肉に小麦粉をまぶし、チーズ衣をた~っぷりつけたら、油を熱しておいたフライパンで弱火でじっくり焼いていく。
そして、それと同時進行で作っていたのが白身魚のムニエルだ。同じく塩胡椒をと小麦粉をまぶしたダンジョン産の魚をさっとバターを敷いたフライパンに通していく。なお、塩胡椒を振る際に二品焼くので手が塞がっていた為、塩胡椒の瓶を念動力で浮かせパフォーマンスしながら作っていた。会場からはおぉと声が上がった。
(ムニエル用にタルタルソースでも作るかなー……あ、もう出来ちゃった)
さて一方こちら、様子を見に来たラバン君。
「おぉー、おいしそーなこれは何なのだ?」
「ビーフシチューてか、まだブイヨンだけど」
煮込んでいるサイラス。若干足りないだろうとまだまだ煮込んでいる。
「ビーフシチュー! それじゃあおねーさんが作ってるこれは何なのだ?」
「チョコレートケーキですよ」
フリーダの手にはクリスタルシュガー。これから砕く所らしい。
「おさとうなのだ……! こっちは卵の匂いがするのだ!」
「察しがいいのだ。これはオムレツなのだ」
ストレガは竈をジッと見つめてオムレツの様子を伺っていた。
「わーい! じゃあこっちは?」
「チーズピカタとムニエルよ。結局全員に聞くのね」
コハクのキッチンには、密かにもう一品の材料があったがラバンは気づかない。
「食べるのが楽しみなのだ!」
ニッコリと笑ったラバンであった。
●仕上げていくシェフ達
時刻は昼過ぎ。
「んー、もうこれでいいか」
何回か味見したのち、サイラスは次の工程に入った。ザルで骨などの出汁ガラをすくい、あらかじめ切って処理しておいた肉を炒め、ブイヨンと混ぜ合わせる。少し煮込んだらニンジンとジャガイモも入れ、柔らかくなってきたらタマネギとワインを入れ、さらに煮込む。ビーフシチューは煮込む時間が命だ。
「あと2欠片ってとこか?」
チョコや木の実を入れて、細かいコクと風味の調整をしつつ。ようやく出来上がったビーフシチューを容器に移し、パイ生地で蓋をして焼き始める。
(ひょっとしなくても一番最後だなこりゃ……)
朝早くから調理していたが、時間のかかる料理だったので仕方ない。出来ればあと数日は欲しい所だったかもしれない。
「綺麗に仕上がってきましたね」
砕いたクリスタルシュガーとチョコ細工を乗せ、木の実を飾り付けていくフリーダ。
「上手く出来たでしょうか……?」
帝国の紋章を象ったチョコ細工の周りには、白いチョコ細工が煌めいている。再興を願うイベントに相応しいだろう。
「よし。もう出来上がったのだ」
オムレツを竈から出すストレガ。
「熱いうちに食べるといいのだ」
そして集まったお客の数を見て、なんと更にオムレツの追加を作り始めた。
「出来上がった人から食べていいのかしら」
コハクは手元の卵と砂糖を見つめながら聞く。
「あっ、どーぞお食べ下さいなのだ! 審査員も食べるのだ!」
「では皆様、冷めないうちにお食べ下さい」
受付嬢フィラが取り分けていった。
●帝国のグルメ
「じゃあ、まずオムレツから頂くのだ! はむっ……おいしいのだー!!」
「それは良かったのだ。興味がある者はレシピを渡すので挙手して欲しいのだ」
ストレガはレシピを配りに回りつつ、既に無くなりそうなので次のオムレツを持ってきた。
「とても柔らかいですね。肉と野菜が卵に包まれて……」
フィラも思わず頬を抑えている。
「柔らかい卵がポイントなのだ」
「ラバンもこれ作りたいのだ!」
「それじゃあレシピをあげるのだ」
ラバンは一生懸命レシピとにらめっこしたのち。
「……大事に取っておくのだ!!」
と微笑んで誤魔化した。
(まだラバン君には難しかったんですね……)
フィラは察していた。
豚肉のチーズピカタを食べると、ラバンは驚いた。
「これ、卵だけじゃないのだ! チーズ入ってるのだ!」
「ええ、だからチーズピカタって言うの」
「あーそういう事なのだ、納得なのだ! じゃあこっちのムニエルはムニが入ってるのだ?」
「……ムニエルはムニエルよ」
ムニエルもほんのりスパイシーな味付けがラバンの口に合ったようで、パクパク食べていく。
「こらこら、皆さんの分が無くなりますよ」
フィラが叱ると、ついうっかりという顔で舌を出してテヘペロするラバンだった。
「それにしてもこれを同時に作り上げるとは。非常に美味しいです」
「ありがとう」
そう言いながら、コハクは密かに卵と砂糖とバターを混ぜた物を作っていた。パウンドケーキである。
「ようやく出来たわー」
サイラスがビーフシチューのパイ包みを持ってくる。かなりの大きさだ。ラバンがパイを突き破ってみると、ビーフシチューが出てきた。
「わぁ、トロトロしてるのだ! よだれが出ちゃうのだ~」
「食べてみ? 若干煮込み足りないかもだけど」
「いただきまーす! はむ……はむ……美味なのだ!! おやさいとお肉がごろごろなのだ!」
「コクがありますね」
フィラも満足して食べている。
「あ、そう? それなら良かったけど」
「皆さん、チョコレートケーキですよ!」
帝国チョコ細工の付いたチョコレートケーキを持ってきたフリーダ。
「わぁ! 上にもチョコレートたっぷりなのだ!」
「スポンジもチョコです」
「チョコざんまいなのだ!」
帝国シンボルの部分はラバンとフィラがちょっとずつ食べ、残りはお客さん達へ。
(おいしくなーれ、おいしくなーれ……出来た)
「あれ? 何作ってるのだー?」
「デザートよ」
コハクの手からパウンドケーキが突如出て来たので、ラバンは更ににっこりした。
「わーい! おいしいのと甘いの尽くしなのだ!」
「食べ過ぎないで下さいね」
「わ、分かったのだ」
フィラに念押しされたラバンであった。
●一般審査とメイン審査とコハクのグルメ
「このビーフシチューのパイ包み? だっけ、凄くないか? 朝からずっと作ってただけの味出てるよ」
「そうねぇ、とっても美味しいわ」
「わしゃあオムレツが気に入ったのう、レシピも貰ってしまったわい。なぁ婆さん」
「作るのはあたしなんですからね爺さん、ケーキ二つもとっても美味しいですよ」
「お母さん、もっとチョコレートケーキ食べていい?」
「はいはい、食べ過ぎないでね……パウンドケーキも美味しい!」
「ラバン君は一番美味しいと思った物はありますか?」
フィラが問う。
「んー、ビーフシチューはとってもトロトロしてたし、オムレツもホロホロだし、チョコレートケーキも甘かったし、チーズピカタはサクサクしててムニエルはシンプルイズベストでパウンドケーキもぜーんぶとっても美味しかったのだ」
「……そうですね。甲乙つけがたい程、全て美味しかったですね」
「つまりそういう事なのだ! おねーさんラバンの事分かってるのだ!」
「偶にはこういうのも悪くない……なんて」
コハクは取っておいた自分の分を食べながら、うんうんと頷いていた。
日が傾きかけ、全員のお腹が満たされた頃。
「というわけで、審査結果を発表します。どの料理もとっても美味しい物でした。皆さん、とても素晴らしい料理を作って下さいました」
「参加してくれたお礼にラバンが作った帝国メダルがあるのだ! 受け取って欲しいのだ!」
手作りの『ていこくめだる』と書かれたバッジを受け取った、冒険者達。
「お、おう……?」
「ありがとうございます」
「手作りのメダルとは粋なのだ」
(どうしようかしらこれ)
「ご参加ありがとうございましたなのだ!」
ラバンとフィラがぺこりと頭を下げ、コンテストが終わった所で、ストレガはキッチンへと向かっていた。
「勿体ないのだ。これだけ食べる者もいるなら使わねば」
何と余った食材を使い、追加で料理を作り始めた。
「おぉ~!! まだまだ食べられるのだ!?」
「その通り。もう一回食べられるのだ」
お料理コンテストの余韻は、夜まで腹が満たされる程続いたという。
マスターコメント
皆さんの料理がとても美味しそうで書いていてとても楽しかったです!
最初から順位を決めない大会だったのですが、全部1位で良いと思います。
また次回のシナリオのご参加、お待ちしております!
ショートシナリオ易しい 報酬:標準4 / 4〜10人
2022年04月07日 23時38分08秒 公開
大成功
相談掲示板
No.1
サイラスだ、まだ人集まってはいないがよろしくなー とりまビーフシチュー辺り狙おうかと
ん、出発できるのだ。 ストレガなのだ。よろしくなのだ。 何作るかは検討中。