【夢魅】夢から醒めても
広大野人
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シナリオID:1983
オープニング
和装の部分甲冑を着込んだリィミアが海風を正面から受けていた。
剣士エクエスを通じ、外洋に出る為に必要な帆船の手配が済んだからだ。冒険者への依頼費用と合わせて、かなりの額になったが……。
「その王国騎士には一度、お逢いしたいものだ」
万が一、財宝が見つからなかった場合も返済の必要は無いし、財宝が見つかっても権利を請求しないという。
普通は裏があるのではないかと疑うだろうが、夢を通じてエクエスの記憶を垣間見た今となっては、それは些細な事だとも感じている。
なぜなら、エクエスの存在が確かであれば、今回の費用など比べ物にならない程の意味が生じるからだ。
「流石に無条件ではないようでしたが……集落としては良かったのですか?」
『眠り姫』が心の中で思っている事なぞ知らず、そのエクエスが訊ねる。
後援者である王国騎士イェルド・ルリンからの条件は、集落への協力依頼だったからだ。
「みすぼらしい一つの集落で出来る程度なら問題はないでござろう」
リィミアはそう答えたがイェルドが求めている本質を理解していた。
集落はシノビとして活躍している者も存在しているのだ。
期待に応えられるかは別だが……何より、まずは貧しい集落を救う事が先決。
「そういえば、まだ聞いていなかったのですが、財宝が眠る島はどこにあるのですか?」
コゴウジ家が本来守り通すはずだった財宝。
それの在り処を『眠り姫』リィミアは知っている……という話で、夢想の宝玉の試練に挑んだのだ。
「実は……」
そう言って、リィミアは懐から一つの巻物を取り出した。
横から覗き込むエクエス。そこには地形が記されている。
「これは失われた海図」
「海図は……」
「そう。財宝の在り処を示す海図は失われたとされた……表向きは。だけど、ここに存在している。理由はただ一つ、この海図が誤っているとされたから」
だから、海図自体が無くなったとしたのだ。
「海図が間違っていたら、意味がないのでは?」
もっともなエクエスの質問にリィミアは微笑んだ。
「もし、海図が正確だったとしたらどうでござろう?」
「まさか……島が沈んだとかでしょうか?」
「いや、それなら島跡が見つかっても不思議ではないでござろう」
謎かけのような話にエクエスは首を傾げる。
海図は正しい、島が沈んだ訳ではない……残された可能性は、ただ一つだった。
「……島が移動したのですか?」
「ご名答でござる」
リィミアは巻物を大事に仕舞った。
そして、手配していた船を指差す。
「エクエス殿は、浮き鯨を知っているでござろうか?」
「いえ……初耳です。鯨なのですか?」
「正確には鯨の名がついた大型魔獣だ。海面を漂いながら生息していて、ごく稀に南の海で見かけるらしい」
それはリィミアが『眠り姫』になる前、とある漁村で耳にした伝説だった。
好意を抱いた騎士の気を引きたくて家出をした王女はある島に隠れた。
王女は待ち焦がれ続ける。幾日も幾年も――しかし、いつまで経っても騎士は迎いに来ない。
なぜなら、王女が島だと思っていたものは浮き鯨の背だったから。
王国から遥か遠い場所で、王女は誰にも知られずにこの世から去ってしまうのであった。
「……この伝説を聴いた時に分かったのでござるよ」
「つまり、財宝を隠したのは巨大な浮き鯨の背だったと?」
エクエスの返しにリィミアは頷いた。
「確認したら、ある周期で浮き鯨が見られるそうだ。もっとも、島という程、大きくはないらしいが……ただ、可能性があるなら、そこにしかないでござろう」
財宝を積んだ船は酷い嵐の中、島を見つけたとされる。
それが魔獣の背だと分からなかった可能性はある。普段、生息しない海域に嵐で流されて来たとすればあり得ない話ではないはずだ。
●夢から醒めても
出航した冒険船は航路を南東に向けて進んでいた。
最新の海図で島が無い場所を重点的に探索する。
「…………」
エクエスが甲板で遠くの風景を眺めていた。
どこまでも続く水平線と雲一つない青空を、エクエスは初めてみる。
(それとも、過去の私は見ていたのだろうか。この海を……)
失われた記憶の欠片を『夢想の宝玉』に求めていたが、然したる収穫は得られなかった。
結局、自分が何者なのか、分からないままだ。
その雰囲気を察したのかリィミアが水夫に指示を出しつつ声を掛けて来た。
「浮かない顔だ。記憶の事でござろう」
「はい。記憶の手掛かりとなるヒントも見つからなかったので」
「前にも訊いたが、それでも訊かないのかい?」
リィミアは『夢』の内容を覚えている。
それ故に、希望すれば詳細まで伝える事ができるのだ。
けれど、エクエスはそれを希望しなかった。そもそも、夢が『正しい記憶』とは限らない事もある。
「良いんです」
「なぜ?」
その問いにエクエスは深呼吸をして潮の香りを確かめてから答えた。
「自分自身が何者だったとしても、そこにもう意味が無いと思うからです。私は誰かの剣であればそれで……」
「なるほど。ただ、君を大切に思う人が、君の事を知りたいと思うなら、その時はどうすればいいでござろうか?」
思いもしなかった次の質問に、エクエスは僅かに考える。
そして、にこやかな表情を浮かべるのであった。
「リィミアさんが話しても良いと判断した人であれば、私の夢の事を伝えてもいいですよ」
その人が仮に、エクエスの正体を知っても離れていくような事はないと、信じているから。
●宝の島
目指していた島が見つかったのは偶然だったのか、それとも運命だったのか。
その日の探索を諦めかけたその時、海図上、何もない場所に『島』が見えたのだ。
「あれが……浮き鯨ですか?」
不思議そうに島に視線を向けるエクエス。
パッと見、確かに島だ。普通の島と違う点は、島が移動している事と真っ黒い身体の一部が見えている事。
「姿形から伝え聞いた浮き鯨で間違いないでござろう。群れは形成していないようだが……」
「近づいたら襲ってきたりしませんよね」
「明らかな敵意を感じさせなければ大丈夫ではないだろうか。狂暴な存在なら逆に目立つでござろう」
例えば、邪竜のように人類にとって凶悪であれば、その存在は広く知られているはずだ。
なにより伝説では王女の家出先になっている。脚色されている可能性はあるが、浮き獣は大人しい生物かもしれない。
「それにしても、なぜ島……なんでしょうかね?」
「謎は多いものだ、エクエス殿。調査や研究を重ねれば分かる事もあるだろうが、今は財宝の確保が先だ」
おまけに浮き鯨は移動しているので、次遭遇できるかどうかは誰にも分からない。
リィミアは上陸の準備を指示する。
相手が何者か分からないのだ。最低限の人数で乗り込んで、出来る限り財宝を見つけて来るようだろう。
「見た所、木々や下草で生い茂っているようだから、調べるのは大変かもしなれない」
地面を掘ったと思ったら魔獣の背肉を抉っていた……なんて事にならないように注意は必要だろう。
それに、財宝が無事に埋まっているとは限らない。
長い年月の間に自然と露出する可能性もあるし、財宝が入れてあった箱が跡形もない場合もある。
「潮の流れも早いし、陽が暮れるのも近い……何とか少しでも多く財宝を回収できるよう、皆には頼みたい」
冒険者達に向かってリィミアはそうお願いするのであった。
解説
マスターより
リプレイ
「全てが広くなってく……」
太陽の光を反射して輝く純白の髪を揺らし、アルシエラ・ライゼルが浜辺から水平線を望む。
海が初めてという事もあるが、見渡す限り海しかない今の景色に圧倒されているようだ。あの果てまで届くような武器があったら凄い事だなと思わず考えてしまう。
連れてきた相棒の狼も同じ気分なのか、小さく唸りながら足元に身体を寄せた。
「冒険者としては初仕事だね、とりま進めていこ、シア」
戦闘は想定されていない依頼なので軽装で来ている。
島を文字通り、『足』で回って可能な限り調べるつもりなのだ。
時間があれば釣りなんてものもしてみたいが……という考えを止め、気を取り直してアルシエラは軽々と駆け出した。
一方、どっしりと道具類を抱え込んで島に降り立った水着姿のサイラスは冷静に周囲を見渡す。
「なるほど……」
案内人であるリィミアから話を聞いていたが、浮き鯨の背は想定以上に『島』だった。
降り立った浜辺は真っ白な砂だが、視線の先、生い茂っている緑を支えている地面は土のようだ。
試しに透視してみるが、浮き鯨の背は見えない。
「つまり、それだけ堆積しているからか。それだけではなく、草木も腐葉土になっているようだな」
流石に岩は見当たらないが、軽石程度なら流されて来たり、嵐で乗り上げている可能性は十分にある。
道具を用意しておいて正解だ。
「一先ず、早期に情報を落とし込むか」
そう呟くと、サイラスは一人、繁みの奥に向かって分け入っていくのであった。
●
海岸線から近い場所に自生している椰子の幹からロープで舟を固定したリィミアは船番だ。
全員で調査している間に帰りの舟が流されたら笑い話にもならない。
「リィミアはここで待っているでござろうか」
その台詞にアルマ・ヴァレンタインが意気揚々と拳を掲げた。
「いよいよ財宝の眠る島……島? に、アタックだね!」
この依頼の為にしっかりと準備をしてきた。
財宝は嵩張るだろうし重いと思うので収納にも気を配り、更に伸び放題の下草を刈る道具も持ち込んでいる。
「準備万端だよ!」
「頼もしい限りだ、アルマさん」
ロイ・アウレアが舟に繋いだロープを確認しつつ言った。
数多くある冒険者達への依頼の中、そもそも宝を探す案件は少ない方だろう。気の知れた仲間がいるという事だけでも頼もしいものだ。
「鯨の島だけでもロマンある事だが、更に財宝ときた。少年の頃のように浮かれてしまうね」
口元を緩めてロイはリィミアへと告げる。
彼女はそれに笑顔で応えた。根っからの冒険気質なのかもしれない。
楽しめそうな気分になっているのはエミリア・シバも同じだった。
海風に揺れる長髪を手で抑えながら、島をみつめる。
「大海原で宝を探す! うん、『冒険』って感じよね!」
「皆さんが楽しそうだと、私も同じような気持ちになれます」
当初は自信無さ気だったエクエスが合わせた。
この広い世界を旅する事があったら、きっと、今、感じているような気持ちなのかもしれないと思い至る。
「まずはどこからいきますか? エミリアさん」
「そうね……最初は軽く島全体を把握してからね」
時間は限られているのだ。調査を効率良く回すためにも全体の把握は必須だろう。
高くそびえ立つ樹木に向かってエミリアとエクエスの二人は駆け出した。
その様子を視界に入れながらミア=リゼルが感動のあまり目を見開いていた。
「おおきい……くじらさんって、こんなにおおきいのですか?」
正確に言うと、鯨の名がついた魔獣ではあるのだが……。
遠くに丘のような瘤が見えて、ミアはぐぐっと目を凝らして見つめる。
「財宝も気になりますけど、くじらさんも気になります!」
伝承として語り継がれる程の存在だ。
しっかりと『挨拶』はしておかないといけないだろうから。
●
浮き鯨の体表が露出している島の先端にミアはやって来た。
動物交感は相手が動物だと有効ではあるが……相手は魔獣だ。
(……聞こえますか……聞こえますか……くじらさん)
一先ず、敵意が無い事を伝えなくてはいけない。
ミアの感情は確かに届いたような……気がするが、相手から返事はなく、受け取れた感情は会話が成立しないようなものだった。
(あ……分かります。私も湯船に浮かんでボーとするの、好きです)
流入してくる浮き鯨の感情は、ただただ堕落したものだけだった。
浮き鯨からすれば少女一人の存在なぞ、海鳥と変わりはしないのだろうか。
(少しだけ……お邪魔します……)
そんな気持ちを伝えて、ミアは遠く水平線をボーと眺める。
楽しく会話が出来れば良かったが、これもまた経験だろうか。
砂浜ダッシュを続けていたアルシエラは、あっという間に島を一周した。
島自体は大き目の屋敷ほどだから、海岸線だけを巡るのは意外と時間が掛からなかったのだ。
「収穫もそれなりにあったね、シア」
相棒に呼びかけ、バックパックに入れた財宝を不可思議空間に移す。
アルシエラが見つけた財宝のほとんどが小さい金の塊だった。
大きさや形状は様々だが、純度の高い金というのは分かる。
「掻き集めるだけでも時間が掛かりそうだ」
宝箱から流れ出てしまった分なのかもしれない。
財宝を収めてある箱なのだから頑丈な作りになっているはずだ。それでも壊れてしまうというのはそれだけ長い年月が経過したとも考えられる。
「よし、シア。潮の満ち引きで侵食した地形を重点的に探してみようか」
小さな金の塊の匂いを撫でながら嗅がせた。
アルシエラはスキルと相棒の嗅覚を活かして財宝を探すつもりなのだ。
「浮き鯨の伝説の話が本当なら……この辺りにも何かあるはずだ」
スコップ片手にサイラスが周囲を確認していた。
今、彼が居る場所は果樹が乱立している。甘い香りを周囲に漂わせており、住み着いた小鳥が楽しげに鳴いていた。
「果物の種子を渡り鳥が運んだか」
鳥の糞に残った種が芽を出して、育つ……口に出せば簡単な事だが、実際は気の遠くなるような月日の結果なのだろう。
伝説には家出した少女が長く住んでいたらしい。
となると食料の類は必ず必要だ。遭難した船員達も食料を求めここまで来た可能性はある。
「これだけ巨大な魔獣だ。怒らせると面倒だからな」
透視の能力を行使しつつ、サイラスは地面を掘り進めた。
きっと、このどこかに宝箱の一つや二つ、あると信じて。
高い樹木から見た島の全景を地図に落とし込んだエミリアは、エクエスに地図の配布を託し、財宝の探索を続けていた。
(浮き鯨ちゃんも魔獣とはいえ生物。宝を隠した時よりも成長している可能性はあるし……)
推理しながら進む場所は島の中央部分。
もっとも標高が高い場所でもある。
(泳ぐ事を考えれば頭に近い前方や大きい尾びれの方にはあまり期待できない?)
リスクを分散させる為に島のあちらこちらに財宝を隠しただろう。
長い年月の中で地中から露出してしまった分は、箱が風化して中身が流出したと考えられる。それはつまり、地中に残っている分は、リスクが少ない場所だと推測できた。
(回収を考えたら特徴ある場所付近に埋めそうよね……)
島の中央部分に立ったエミリアは周囲の木々を見つめた。
そして一番樹齢がありそうな樹木に狙いを定めるのであった。
下草や地表に零れ落ちた、あるいは流れた小さい金の塊を集めつつ、ロイは地質を確認していた。
「やはり、岩や石などの硬いものはない……島全体が砂と土と腐葉土で出来ているようだ」
浮き鯨が島を作ったとしたら、気の遠くなる時間が掛かっただろう。
きっと、長命なエルフよりも更にもっと長くだ。
「それにしても、低い位置を見る時点でアルマさんが有利だね……」
屈めていた腰を伸ばして軽く叩きながらロイは苦笑を浮かべた。
同じ姿勢で集中すると疲れてしまうのは仕方ない事だ。背の小さいアルマが頼りになる。
「背も低いから目線も低いからね! 地面に落ちているものの収集ならお任せだよ!」
下草や木の根の隙間に落ちている小金塊をアルマはあっさりと見つけ話を続ける。
「仮に掘って隠したとすれば周囲の地層と違いが出てくるかとは思っているけど……」
それにしては年月が経過し過ぎただろうか。
だが、アルマの何気ない台詞にロイが閃いた。
「地層……砂と土しかないのなら、石は、宝石の可能性が高いか……流出した財宝の一部は雨水と共に低い場所へと流れたとしたら、水跡によっては堆積し易い場所もあるはずだ」
「それも考慮すれば、狙いをもっと絞る事ができるんだよ!」
二人は顔を合わせて頷くと水が流れた跡も探すのであった。
そして、その推測は正しく、流れ出た宝石類を地中より発見するのであった。
●
結局、冒険者達の調査は日が暮れるまで続けられた。
見つかったのは宝箱が十数箱。そして、背負い袋が数袋分となる小さい金塊と宝石類だった。
出発直前、サイラスは浮き鯨の頭先でちょっとしたお礼をしていた。
「意図せず財宝を背負っていた。もしくは、守っていたのかもな」
気持ちを推察するだけ無駄な事だとは分かっているが、そんな言葉を流す。
そして、小舟へと向かって泳ぎ出すサイラス。
海の中を、リィミアから聞いた竜化した自分をイメージしながら。
(夢を覚えていないのは、残念か……いや……)
その夢想の竜が目指すべき姿かどうかは分からない。
もしかして、目指しているものでもないかもしれない。あるいは、そう遠くない未来に訪れる姿なのかもしれない。
(夢から醒めても、追い続けるものだな)
きっと、それはサイラスだけではない。
『夢魅の宝玉』を通じて夢を見た冒険者達、全員に言える事なのだろうから。
夢の内容をリィミアに聴かない選択をしたエクエス。
その話をアルマは当事者から聞きつつ、ゆっくりと頷いていた。
「大切にしたい相手のことを知って自分のことも知ってもらうのって、とってもステキなことだと思うよー?」
「私はもっと相手の事を知った方が良いのでしょうか?」
首を傾げたエクエスにアルマはにんまりと笑う。
「知って欲しくはない事もあるかもだけど、そこはお互いの信頼関係かな」
「なるほど……ところで、アルマさんは夢の内容を聞いたのですか?」
そんな返しに聴いた話を思い出すアルマ。
「なんだか、ものすごーく恥ずか死するような事言ってた気がするけど……うん」
『夢魅の宝玉』の試練では、とっても良い夢を見た気がしていただけに、リィミアから聞かされた話は気恥ずかしくなる内容だった。
夢の中で対峙した未来の自分との決別の事だ。
(ボクは信じ続けられるよ……)
夕日でキラキラと輝く海の上を見つめながら、アルマは心の中でそう呟くのであった。
「リィミアさん、お土産ですよ」
財宝が詰まっているであろう宝箱をリィミアに渡すロイ。
彼女は満面の笑みを浮かべながら感謝と共に受け取った。
「ありがとうございます」
「それと……実は聞きたい事が。エクエスさんの夢を」
正体を知っても何も変わる事は無いとは思う。
それでも、知っておく必要があると思うからだ。そこへ軽い足取りで現れたエミリアも告げた。
「エクエスちゃんの夢については、聞けるなら一応聞いておきたいとは思うわね」
あの剣士が人類の敵になるようなレベルでなければ、大切な存在である事に変わりは無い。
また、塔の件もあるし、リスクは確認しておくべきと考えていた。
リィミアは二人の申し出に深く頷いた後、声を落として夢の内容を話し出す。
クリーパーとの戦いで散った事、本体は宝剣である事、そして、剣に成った理由が存在した事……。
「……以上でござろか。ここからはあくまでもリィミアの推測だけど……」
一区切りした彼女の台詞は重々しかった。
どんな言葉にすべきか、悩んだようにも見える。
「エクエス殿は、名も無き神々の一柱かもしれない。遥か昔、ある『約束』の為に、自身を剣と化した、神……だ」
「伝承は真実だった……という訳ね。それで、エーテルに惹かれてクリーパーが寄ってきていたと……」
エミリアが思い返すように台詞を紡いだ。
一方のロイはやや深刻そうな表情を浮かべる。
「正体が神であっても、エクエスさんはエクエスさんで、オレは人間味の溢れる人だと思う……だが、もし、神という話が真実で、それが広く知れ渡ったら……」
この混迷の時代。力や象徴に縋りたい人は沢山いるだろう。
エクエスが望まない方向に祭り上げられる……なんて事は容易に想像できるのだから。
探索のアシスタントに、下草を食べさせていた羊を舟に載せて、ミアは一息ついた。
箱や袋に入り切れなかった小さな金塊や宝石が眩しく光を反射している。
「ミア=リゼル……」
羊を撫でながら少女は無意識に言葉を発していた。
頭の中に過るのは、『夢魅の宝玉』が魅せた夢。覚えている夢もあれば覚えていない夢もある。
夢だから、どこまで正しいか分からない。
(先生がくれた名前は、とっても馴染みがあって……だから、大切にしていきたい)
自分自身が何者で、これからどこに向かうのか。
名前をくれた先生は今、どうしているのか。
悩みは途切れる事がない。
(エナハルトさんやルベアさんは、記憶を失う前の私が大罪人だったり、生まれが汚れていたとして……それでも受け入れてくれるのでしょうか?)
浮き鯨もゆっくりと動き出した。
大海原をあてもなく彷徨う浮き鯨は、どこか自身に似ているのではないかと思う、ミアであった。
彼方へと去っていく浮き鯨を最後までアルシエラは見届けていた。
浮き鯨がなぜ島を背負っているのか、その理由は上陸しても皆目見当つかなかったが。
「……鍛えているって訳じゃないみたいだ」
「世の中に謎は沢山ある。それを一つひとつ解明していくのも冒険者の役目でござろう」
依頼主であるリィミアは横に並び立つ。
黒く長い髪が夕日に当たって、輝いているようにも見えた。
「そういえば、ござるっていう語尾は、シャルガネのなまりなのかな?」
思わぬ疑問にリィミアが首を傾げて微笑を浮かべた。
「リィミアの家系に伝わるものでござるよ。慣れないから、時々、素がでるのだけれども」
「そうなんだ」
「『眠り姫』という呼び方も……本当はリィミアの事ではなくて一族に伝わる伝説の話。永遠に眠り続ける乙女の話でござるよ」
伝承や言い伝えは、幾らでも形を変えるようだ。
今も、そして、これからも。
「浪漫ある話だね」
「伝説によると乙女の髪は、アルシエラ殿のように純白だったらしい。もしかしたら、縁がある者かも……でござろうか?」
アルシエラに含みのある笑いを向けるリィミア。
いつかきっと今回の冒険が伝説になる日が来たら、果たして、その伝説はどんな話になるのだろうか。
そんな風に思いながらアルシエラは浮き鯨が消えた海の彼方をみつめるのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人
2022年03月19日 07時09分10秒 公開
相談掲示板
ミア=リゼルです。よろしくお願いしますね。 成立することを祈りつつ… ひとまず敵意がないことを伝えるため、動物交感などは試してみたいところですね。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 明日まで成立に不足してたらフレンドさんに声をかけてみるよー 汎用はたくさん持ち帰れるようにマジポケ(小舟だし載貨重量が心配…)と 専門さんじゃないけど地中や障害物を除けて探すのに透視をもってく予定だよ 生物は透過しないから浮き鯨さんの背中まで掘って傷をつける心配も減るー…といいなあ
シーフのエミリアよ、よろしくね。 おねえさんはどうしようか迷っているけれど、とりあえず看破と探波系は持っていく予定。 汎用のもう片方はアルマちゃんの案が有効そうに思えるので透視かマジポケとかにしようかと悩んでいるわ
なるほどマジポケ…大きめの箱などや縄などで一括りにする必要はありますが、効果的だと思います。持ってたかな…かな…可能なら私も持っていきますね!
シューターのロイです。宜しくお願いします。 眠り姫(エクエス)の話を聞かせて貰う約束をしたままに成ってたので 良い機会と参加させて貰いました。 双波とマジポケは持つとして、後は何が役立つか…出発まで考えますね。
無事に4人になっててよかったー 道具は荷物を括ったりするのと埋まってる箱をくっ付けて引き上げやすいように 母蜘蛛糸のロープと、バックパックにここ掘れ用にシーフズツールか かばん2枠にして副武器に道具箱を持っていこうかなと思ってるよ
シューターのライゼルです。 初依頼となります。宜しくお願いします。 捜波とマジカルポケットを覚えます。 アイテムはアルマさんの言うものを買っていきます。
満員になってよかった、あらためてみんなよろしくねー 〆切も伸びたっぽいし無事にたくさん持ち帰れるよう頑張ろうね だいたいこれまでに書いた内容でプレイングかきかき中
No.9
サイラスだ、よろしくなー とりあえず透視とかで行く予定
書き込めました…!(ずっと繋がらなくて プレイングを書いていて、私はそんなにたくさんは見つけられなそうだな(工夫が思いつかなかった)…と思ったので、動物交感と幸運の星を持っていこうと思います。困った時の幸運の星!
アルシエラさんは初依頼ということで。これもなにかのご縁、楽しみましょうね!
ミアさん、繋がって良かったですね。 オレも数時間だが「ヤバーーッ」と成ってました。 ログインしないと、出来ないでは雲泥の差…どれだけ依頼が好きなのか(笑) アルシエラさん、初めましてとヨロシク! 今回、先ずは地表に流れ出ている財宝を探そうと思います。 金や宝石なら輝きが違うだろうから、明るい時間帯や或いはエンライトと言った光を当てつつ歩いたら発見率が上がらないかと思ってます。 そして発見できたら、そこから大元を辿ろうと。 例えば、長い時間を掛け風雨で運ばれたなら、地面の傾斜(高低)と水の流れた跡を辿り 地面から一部が露出した宝箱が見つかれば早いが……ん…そうだな……浮島でも地下には水が溜まると思うので 大雨が降ると水の噴出す場(痕跡)があるなら、そこから押し出されたかも?とか 双波で奥を確認し、掘る事を考えてます。 実際は何が正解か判らないので、皆さんが考える上でヒントに成れば良いなと話しました。 っと『リスクをどの程度まで許容するかは参加者同士でのすり合わせ』ですが クジラを脅かしたり傷つけないよう、掘る際はポイントを絞り進めたいと思ってます。
(話し方調整しました) ん……ありがとう、ミア、ロイ。よろしくね。 私は武器防具を外して、満ち潮で探索できなくなりそうな海岸線をダッシュで探して行こうとおもう 相棒の狼のシアもいるから横並びに一緒に砂浜駆けるよ
おねえさんも昨日書き込みにきてかけなくてかなり焦ったわ。 無事に人も集まったようで何よりね、よろしくお願いするわ。 とりあえずおねさんは一応、調査回収の調査のほうを主にしてみようと思ってるわ。 1日延びたのでもう少し何かできないかを考えてみるつもり。
エミリアさんも書き込めてよかった。白紙になるかもと思って焦った先日… >ロイさん はっ、そうでした、出発が伸びていたんでした…! 安定して接続できるようになったようですし、本当によかった。 そう、すり合わせがありましたね。 私のプレイングは、下草に隠れた部分から何か見つかった、という感じなので危険は少ないと思います。 >アルシエラさん 潮汐変化については盲点でした…!時間経過で探索できなくなる場所もありそうですね。…夕日をバックに相棒と砂浜を駆ける姿…絵になりそうです。