ザ・グレート・ムコ

革酎

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シナリオID:1944

オープニング

●魔界より参上
 シャルガネ居住区の、とある豪雪地帯。
 その一角に、竹之山町という少しばかり大きな集落がある。この竹之山町とその周辺の幾つかの集落では、毎年旧正月に『旦那投げ』と『墨塗り』という奇祭が執り行われている。
 旦那投げとは文字通り、妻を持つ夫が雪深い斜面に放り投げられるイベントだそうだ。
 主に新婚の夫が大勢の若い衆に担ぎ上げられ、新雪が降り積もった柔らかな斜面に投げ出されることで、夫婦の幸せを祈願するものなのだという。
 その由来は、娘を他所の村の男に取られた腹いせに、村の若い衆がその婿を投げたことが習慣化し、今では新婚夫婦の通過儀礼としてお祭りになっているとの由。
 最近では投げられる側の立場の制限が緩和される様になってきており、独身者や女性でも、希望すれば投げて貰えるのだとか。
 そして墨塗りとはこちらも文字通り、墨を塗るのだ。それも顔面に。
 一説によれば、この地方の神を祭った神社の境内で注連縄や正月飾りを燃やし、無病息災を願いながら残った墨で顔を塗ったことに由来するのだという。
 旦那投げも墨塗りも、近年はやや観光イベント化している部分もあり、外部からの観光客も自由に参加可能という風潮になってきている。
 という訳で、他所からやってきた冒険者でも、希望者は誰でも参加することが出来るという話であった。

 ところがこの1222年の旧正月では、異変が生じた。
 旦那投げと墨塗りに、ひとりの奇妙な男が出現した。彼は町内のあちこちの祭りを引っ掻き回しているのだという。
 男の名は、ザ・グレート・ムコ。
 妙なニンジャスタイルで、具足には愚零闘婿という刺繍がよく目立つ。顔面は墨で真っ黒に塗りたくられているのだが、右の頬には妻の反転文字、そして左の頬には夫という文字が白塗りで描かれている。
 ザ・グレート・ムコは祭りの参加者の顔面に口から漆黒の毒霧を吹きかけて目つぶしを敢行し、視界を失った憐れな犠牲者を担ぎ上げて、その豪快なパワーで無理矢理、雪の斜面上に放り投げるらしい。この投げ方が独特且つバラエティーに富んでおり、投げられた者は地元の若い衆に投げられるよりも、この男に投げられる方が楽しいという口コミをあちこちにばら撒く始末であった。
 竹之山町のお祭り運営委員はザ・グレート・ムコに仕事を奪われた町の若い衆からの苦情を受け、すっかり悩んでしまった。
 町の若い衆の仕事と尊厳を守る為には、ザ・グレート・ムコは排除した方が良い。だがザ・グレート・ムコの夫をぶん投げるスタイルは非常に斬新で、観光客受けが良いらしく、彼を一方的に排除するのは、それはそれで町の収入に影響を与える可能性が少なくなかった。
 ザ・グレート・ムコの投げ方は主にスープレックス系とスラム系の二種に分かれるそうだが、強敵と見做した相手にはシュミット式バックブリーカーで身動きを封じた上で、灯篭に駆け登っての月面宙爆でノックアウトする様だ。
 勿論本当にノックアウトする訳ではなく、相当に手を抜いているので、月面宙爆を喰らった方はこれもひとつのエンターテイメントだと受け入れている者が大半らしい。
 お祭り運営委員は悩みに悩んだ末、町の若い衆の放り投げか、ザ・グレート・ムコの投げ技か、どちらが楽しいのかを観光客からヒアリングすることにした。
 勿論、そのヒアリング対象には竹之山町を観光に訪れた冒険者も含まれていた。
 ちなみにザ・グレート・ムコは、
「俺は魔界の住人だ。お前達全員を、地獄に投げ込んでやる」
 などと嘯いている模様。

解説

状況:  PCの皆様は観光その他諸々の用事で竹之山町を訪問し、奇祭『旦那投げ』と『墨塗り』に参加してみようということになったところからスタートして頂きます。  町の若い衆のお世話になるのか、ザ・グレート・ムコの毒霧を浴びた上で投げられるのか、いずれかを選択して下さい。  特にご希望なら、両方に投げられるというのもアリです。  ザ・グレート・ムコに投げられる場合は、何故か実況中継が入るかも知れません。 NPC:  ザ・グレート・ムコ、竹之山町の若い衆、お祭り運営委員といったひとびとが登場します。

マスターより

 皆様、こんにちは。  シャルガネ居住区のとある地方を舞台にしたショートシナリオRをお届けします。  リクエストして頂いたのは御覧の様にお祭りなのですが、革酎個人の好みを強引に捻じ込みまして、多少プロレスライクにしてあります。  普通のお祭り的日常風景の他、昭和~平成のプロレスシーンにノスタルジーを感じた皆様にも楽しんで頂ければと存じます。  それでは、もしご縁があればご参加のご検討宜しくお願い致します。

リプレイ

●ムコとマッチョ
 シャルガネ居住区の雪深い大型集落、竹之山町。
 その旧正月に、数名の冒険者が訪れた。奇祭として知られる『旦那投げ』と『墨塗り』を楽しむ為だ。
 カミンル・マオはまず旦那投げに参加しようと思い立ち、祭り会場である雪の斜面へと足を向けた。
 会場には大勢の観光客や祭りスタッフが居並ぶ一方で、雪にまみれた何人もの成人男女が笑顔で真っ白い斜面を登ってきている。きっと、投げられた後なのだろう。
「じゃあ早速、僕も……」
 イケメンに投げて貰おうと瞳を輝かせていたカミンルの笑顔が、やや引きつった。
 確かに複数のイケメン祭りスタッフが斜面の降り口前に並んでいる。彼らが旦那投げの投げ役なのだろう。
 しかし、何か妙だ。
 投げ役達はいずれ劣らぬイケメン揃い。そこまでは良いのだが、何故上半身裸なのか。それも陽によく焼けた小麦色の肌を剥き出しにして。
 そう、彼等はイケマッチョだった。ボトムスは黒のスラックス、首元には蝶ネクタイ、そしてサスペンダーというマッチョフルなスタイル。何だか、とてもイケナイ空間に踏み込んでしまった様な気がする。
 聞けば闖入者ザ・グレート・ムコに対抗する為、竹之山町の若い衆も投げ役となるスタッフに改革を施したのだという。その結果としてこのマッチョゴーラウンド、且つ超絶ぱわふりゃあなスタイルに至ったとか。
「さぁ、盛大に投げて下さいませ~」
 シルク・メイプルリーフが心底楽しそうに、イケマッチョ達に担ぎ上げられていた。その豊満な乙女の体躯がイケマッチョ達の豪快且つ繊細なスローイングで雪の斜面へと舞う。
 きゃああああという甲高い悲鳴も、至極楽しそうであった。
「フェッア~プゥレイでぇ切ぃり抜ぅけぇて~、おーとこっの、根性~、見ぃせてぇやれぇ」
 次いで意気揚々と歌い上げながら投げられようとしているのは、アルマ・ヴァレンタインだった。
 機嫌が良いのも当然で、このイケマッチョ達の誕生にはアルマも一枚、噛んでいたからだ。
 曰く、虎の根性に加えて愛と友情のツープラトン理論を説いたアルマに随分と感動した町の男衆が考えに考え抜いて誕生させたのが、このイケマッチョ革命なのだという。
「折角複数人居るんだから、競うなッ! 持ち味を活かせッ!」
 アルマの熱弁に、男達は動いた。動いた結果が、マッチョゴーラウンド。
 何か違うだろうと思わなくも無いが、カミンルは順番が廻ってきたので取り敢えず投げて貰うことにした。
 イケマッチョ達に担ぎ上げられた瞬間、背中がぞくぞくした。
 体は野郎、頭脳は乙女。その名は、冒険者カミンル。
「俺が天国に連れてってやるぜ」
 イケマッチョのひとりが耳元でそんな囁きを漏らしてくれたものだから、クリエスター級のエクスタシー。出来れば他のイケメンの居るところに投げて欲しいカミンルだったが、投げる先は雪が深く積もった斜面である為にその願いは叶わなかった。
 が、投げられるまでに少々時間があった為、彼らの筋肉から立ち昇る漢の香りを十分に堪能出来た。
「何だかエラい楽しそうだな」
 甲高い悲鳴だか喜声だかを上げながら放り投げられたカミンルを、町の男衆に混ざって投げ役を引き受けているサイラスが、幾分不思議そうに眺めていた。
 つい先程、サイラス自身も投げられたばかりだが、投げる側の諸々の心境や、祭りの起源となった事情を考えると、これは是非投げる側にも立たねばならぬと妙な使命感に奮い立たされたらしい。
「え……あの赤いひとはお祭りのスタッフさんじゃないんですか? 乱入者って、そのままにしてて大丈夫なんです……?」
 旦那投げの投げられ客の列の最後尾に並んでいたルアンナ・ミュラーが、祭り会場に現れた真紅のニンジャスタイルに怪訝な視線を投げかけた。
 その男が噂に聞くザ・グレート・ムコであることは、すぐに分かった。ところが祭りのスタッフも運営委員会もザ・グレート・ムコの出現には然程意を介さず、粛々と祭り運営に力を注ぐのみである。
 代弁したのは、サイラスだった。
「あー、何でも町の男衆も運営委員も、ザ・グレート・ムコとは正面切って旦那投げ勝負に打って出ることにしたらしいよ」
 その説明に、それで良いんですかとついつい小首を傾げたルアンナ。しかし、当事者達が納得しているのであれば問題無いのか、とも思う。
 想像するに、アルマの説いたフェアプレイとツープラトン理論が余程に浸透しているのだろう。それにザ・グレート・ムコもひとびとに直接的な危害を加えている訳でもなさそうだし、ということで、ルアンナも深く考えるのはやめることにした。

●狂気、雪プロレス
 さぁやって参りました、ここ竹之山町は旦那投げ特設リング。
 雪深い純白のマットを設営しているのはサイラスだ。男衆と共に四つの灯篭を6メートル四方の仮想バトル空間の四隅に打ち込んだぞ。コーナーポストと化した灯篭達は互いに縄で繋がれ、戦いの火蓋が切られるその時を今か今かと待っている。
 おぉっとここで真紅のニンジャ、ザ・グレート・ムコの入場だ。赤コーナーからゆっくりとゆったりと、不気味な足取りでリングイン。顔面を彩る漆黒の隈取ペイントはもうお馴染みだ。それなのに観客席から湧き起こるこのどよめきは一体どういうことだ。
 対するは煩悩の伝道師メイプルリーフ、そして小さな桃色弾丸ヴァレンタインの凸凹ユニット。二対一の変則マッチを要求だ。さぁ一方のムコ、親指で喉元を掻っ斬るポーズで挑発だ、受けて立ってやるとのサイン。
 ここでサイラスが試合開始を告げる鐘の音を鳴らしたぞ。メイプルリーフとムコが組み合おうかという、静かな立ち上がりだ。
 おぉっとここで乱入者の登場だ。カミンル・マオがトップロープを飛び越えて突っ込んできたぞ。カミンルボンバーを果敢に仕掛けるも、あぁっと躱された、躱された上に毒霧だ。漆黒の毒霧がマオの顔面に炸裂だ。
 マオが吼える、吠えている。怒り沸点、怒髪天、マオが怒りに吠えている。僕はどうなっても知らんぞと吠えている。あーっとしかし、サニーラリアットも不発、不発だ。今日のマオはツイてない。やることなすこと何から何までムコの想定範囲内なのか。
 おやおやマオが、ボディスラムの態勢に持ち上げられたぞ。マオが悲痛な叫びを上げている。変なところを触んないでと羞恥心全開だ。お嫁に行けなくなっちゃったらどうするの。マオは乙女、付いてるモノは付いてるが乙女、このピンチは如何ともし難い乙女の危機。
 いやいや違った、これはボディスラムじゃないぞ。シュミット式バックブリーカーだ。マオ、ダウン。マオ、ダウン。ムコはニュートラル灯篭に駆け登って、月面宙爆炸裂だ。
 さぁここでレフェリーのジョー高橋(仮名)が駆け寄ってカウントだ。1、2、3。無情なる鐘の音が鳴り響く。マオ敗退。サイラスに引っ張り出されてマオ敗退。
 代わって入ったレフェリーのミスター樋口(仮名)が本部席に試合続行の要請だ。本部席のサイラスと、何故かルアンナ・ミュラーも一緒になって頷いている。試合成立、試合は成立したぞ。
 ムコは暖気完了、ステップも軽やかだ。逆に寒い中待たされたメイプルリーフとヴァレンタインは動きにキレが無い。二対一でもこれは圧倒的不利だ。
 ここはもう短期決戦しかない。メイプルリーフのタックルはしかし、躱された。躱された上にバックを取られた。これはジャーマンか、ジャーマンで投げ捨てるか。おぉっとここでメイプルリーフ気を吐いた。逆にバックを取り返した。あぁっとしかしムコの変形スピニングバックエルボーがメイプルリーフの横っ面を強襲、これは投げられない、そしてムコが再びバックを取った。メイプルリーフにジャーマン炸裂。投げっぱなしのジャーマンだ、これは効いたぞ。
 メイプルリーフの脳天が雪深いマットに突き刺さった。メイプルリーフ、ダウン。メイプルリーフ、ダウン。ここでムコが観客に向かって喉を掻っ斬るポーズ。
 おぉっとその間にメイプルリーフ、跳び起きた。ネックスプリングで軽やかに跳び起きた。この女、まだまだ終わっていない――が、あぁっとここでまた毒霧炸裂だ。振り向いたムコ、メイプルリーフのナックルパートを機敏に察知、漆黒の毒霧がメイプルリーフの美貌を襲ったぞ。この奇祭は旦那投げだけじゃない。墨塗りも忘れちゃいけない。メイプルリーフ、毒霧という形で墨塗りの洗礼を浴びたぞ。
 視界を奪われたメイプルリーフにシュミット式バックブリーカー、メイプルリーフ、再びダウン。その間にムコが走る、ニュートラル灯篭に走って、月面宙爆炸裂だ。
 さぁミスター樋口の高速スリーカウントが入るが、おぉっとここでヴァレンタインがカットに入った。メイプルリーフに覆いかぶさるムコの背中に一発ストンピングだ。ミスター樋口、ヴァレンタインにコーナーへ戻れと指示するも、ヴァレンタイン戻るフリしてそのまま縄へ飛んで助走をつけた。ムコにタックル、あっとしかし、ムコは待っていた。突っ込んできたヴァレンタイン、そのまま受け止められてぐるりと四分の三回転、ケブラドーラ・コンヒーロが鮮やかに決まったぞ。
 ここで再び月面宙爆かと思いきや、またまた乱入者だ。今度はサイラスだ。サイラス、リングインだ。

●真紅の対決、そして
 それにしてもサイラス、何という大きさだ。まさに歩く人間山脈。ひとりと呼ぶには余りにも大き過ぎ、ふたりと呼ぶには人口の辻褄が合わない。
 迫るサイラス、逃げるムコ。逃げた先はニュートラル灯篭、一気に駆け上ってミサイルキックが飛んできた。サイラス躱せず大の字だ。さあムコはどうする。縄に走った。中段縄に飛び乗って、そこからの月面宙爆ならぬ超高速の獅子宙爆だ。
 ここでカウントが入るかと思いきや、サイラス豪腕発揮だ。リフトアップの如く両腕でムコの体躯を軽々と持ち上げて、跳ね飛ばしたぞ。
 両者立ち上がる。先にバックを取ったのはサイラスだ。メイプルリーフのかたき討ちだ、投げ捨てジャーマン炸裂だ。
 ムコ、ダウン。ここで初めてムコ、ダウン。サイラスは両腕広げて、大いにアピール。勝者は俺だ、サイラス様だ。
 旦那投げ、その起源は寝取られ男の復讐だ。大事な村娘を余所者に寝取られた男達の、悲しく切ない復讐だ。復讐ならば投げて当然、当然至極のワンダーランド。
 だが逆はどうだ。投げられるということは即ち、嫁を貰って幸せ絶頂。投げられた方はいわばハッピー、超ハッピー。嬉し恥ずかし男の勲章。ならばその幸せを分かち合おう。
 サイラス未だ想い人居らず、恋人居らず、だからこそ気楽にスローライフだ。スローはスローでも、slowではなくthrowの方だ。
 あぁっとしかし、サイラスも遂に投げられる側だ。ムコ起き上がる。サイラス気付かない。サイラス、知らずの内にバックを取られ、おぉっとしかし、これはジャーマンじゃない。
 タイガースープレックスだ。タイガースープレックス85だ。右手でハーフネルソン、左手でその右手首を掴むスリーパー形式、これはサイラス受け身が取れない。サイラス一気にリング外、雪の斜面へと真っ逆さまだ。
 リング上はムコの独壇場だ。最早ここは魔界。誰もムコを止められないのか。
 いやいや、まだ最後の望みが残っているぞ。一縷の望みだ。真打登場、その名はルアンナ・ミュラーだ。
 炎のニンジャと紅の魔女。純白の銀世界で実に鮮やかな真紅の対決。
 ミュラーは魔女だ、魔法使いだ。リングの常識は通じない。ならばムコ、毒霧で機先を制するか。おぉっとしかしミュラー、魔術で対抗か。雪嵐が舞い起こり、漆黒の毒霧は文字通り雲散霧消。敵が霧ならこっちは霞だ、ミュラーの霞はひと味違う。
 掟破りの毒霧返し、ムコこれは堪らない。己の霧がまさかの目潰し、ムコの視界を奪った。
 さぁミュラーどうする。紅の魔女、ここで敢えて肉弾戦だ。自ら縄へ飛び、助走をつけてのケンカキックだ。ムコ堪らずもんどりうって場外へ。そこは斜面、雪山の斜面。ムコは血だるまならぬ雪だるまだ。
 勝ったのはミュラーだ、最後までリングに立っていたのはミュラーだ。
 観客はミュラーの大合唱、ミュラーコールに町が沸く。
 敗れたムコ、リング内に戻ってきたぞ。おっとその場で、正座だ。ムコだけじゃない、メイプルリーフも起き上がって正座だ。ふたり向き合って正座だ。お互いに手をついて頭を下げ、健闘をたたえ合った後はにじり寄ってハグだ。
 何という清々しさ、何というスポーツマンシップ、戦い終わればノーサイド。
 ミュラーが両者を立ち上がらせて、ふたりの手を取って高々と天に突き上げる。会場を大いに沸かせた戦士達こそが勝者だ。そして祭を楽しんだ者達も勝者。皆が勝者。楽しめれば、それで勝者。

●様式美とは
 当初、ルアンナは旦那投げや墨塗りの破天荒な内容に心底驚いていたが、こうして実際に参加してみると、その楽しさが身に沁みてよく分かった。
「しっかし、あの毒霧ってただのイカ墨だったんだね。かなり想定外」
 墨塗りを終えて顔が真っ黒になったルアンナの傍らで、サイラスが袋に集めた毒霧の液状物を覗き込み、苦笑を浮かべていた。ルアンナがムコに聞いたところによれば、塩分たっぷりのイカ墨だから、顔面に浴びた被害者は目に塩が滲みて痛くなり、瞼が開けていられなくなるだけという至極単純なからくりだった。
「まぁでも、洗い流せば良いだけですし、そういう意味では無害ですね」
 いいながらルアンナは、男衆と談笑するムコを遠目に眺めた。出現当初は互いにいがみ合っていたらしいが、今では一緒に祭りを盛り上げようという仲間意識が芽生えている様にも見える。
 そのムコを眺めながら、ルアンナはシルクがいい放ったひと言を思い出していた。
「美味しそうな匂いがしますね。フライドチキンでも食べてましたか?」
 リング上でシルクがムコに問いかけたこの台詞、一体何を意味するのだろう。ルアンナはシルクの真意が読み取れず、未だに首を傾げ続けている。
 分からないといえば、アルマも不思議な台詞を吐いていた。アルマは羊皮紙を丸めて即席のメガホンを作り、ムコに対して何やらういていた。
「お前、ヒラタだろッ!」
 一体どちらのヒラタさんなのかは分からないが、兎に角アルマはムコを指差して、その様に叫んでいた。
 アルマの説明によれば、シャルガネのどこかに強覆面一号、二号という冒険者だか山賊だかよく分からないコンビが徘徊している、らしい。ジェネラル・ワカマツという人物の下で働いているらしいが、そのうちのひとりの正体が、ヒラタさんかも知れないとのこと。
 アルマは正体不明の敵と遭遇すれば取り敢えず、お前ヒラタだろ事件をけしかけているとか、いないとか。
 お約束(セオリー)とは、そういうものだ。
 様式美というやつだ。

マスターコメント

 皆様、ご参加ありがとうございました。  予告通り、恐らくアニエピカ史上初の実況中継式リプレイをお届けします。少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:無し5 / 4〜6人

2022年03月05日 17時36分09秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. No.1

    シスターシルクです おもいっきりぶん投げていただけると聞いて!!

  2. ルアンナ・ミュラー

    ええ!? なんで参加してるの私なんですか背後さん!! 投げられる人ならもっと他にいたでしょう! 隠し子さんとか!! 「(自分のリクシナだと宣伝してるので隠し子で参加するのは)ダメです。」 そんなあ…(´・ω・`)

  3. ルアンナ・ミュラー

    むー、ちょっと不本意ですが…。 ルアンナです、お祭りを盛り上げましょうね。

  4. アルマ・ヴァレンタイン

    アルマだよ、どーぞよろしくねー 『旦那投げ』に『墨塗り』なんて本当に奇祭って感じがするねー でもまあアレなご神体をソイヤウォーカー!するよりはマシ…なのかなあ せっかくだから両方に投げられたりして楽しんでこようかなと思ってるよ

  5. No.5

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず普通に普通にの。

  6. カミンル・マオ

    カミンル・マオと申します。 皆よろしくねー!カミンルとでもマオとでもかみるんでも好きに呼んでください。 僕はまず、町の若い衆のお世話になる(意味深)を実行した後 ザ・グレート・ムコさんに接近しようかなー。 ところでこの人イケメンなんですか??? なんで大事な情報がないんですか?????? 黒塗りだから?黒塗りがいけないんですか!!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0