【闇症】静かなる対立と、魔獣退治と……?

菊華 伴

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シナリオID:1918

オープニング


●闇の中にて
 深い闇に、蝋燭の明かりがともる。そして、一人の女性が静かに告げる。
「……様、若者達の多くが……」
「聞き及んでおります。しかたありません、時代の流れですよ」
 その言葉に、周りのエルフたちは騒めき、顔を見合わせる。だが、女性は穏やかな笑顔でこう言った。
「でも安心なさい。貴方がたはいままでどおりで良いのです。若者たちは流行り病にかかったようなもの。すぐに貴方がたの考えを受け入れるでしょう」
 その言葉に、エルフたちは安堵の表情を浮かべる。……いや、一部の者は恍惚とした表情にも見える。
(これで、よいのです)
 女性はにっこりとほほ笑んだ。

●戻らない『彼女』
 冒険者たちはある日、エレガミオにある冒険者ギルドに集まっていた。出迎えたのは眼鏡をかけたゴブリナのギルド職員、タバサだ。
「みなさん。今回は私の依頼を受けて下さりありがとうございます」
 タバサは深々と頭を下げる。今回、冒険者たちは『ポップ孤児院に戻らない院長へメッセージカードを届け、様子を見てくる』という依頼を受けた。
「故郷である大森林での異変は、落ち着きつつあると報告書を貰っています。しかし、『落ち着いたら戻ってくる』と言っていたユアン先生が戻ってこないのがやはり心配で……」
 表向きはタバサからの依頼だが、正しくはポップ孤児院の子供達からの依頼であるらしい。彼らは報酬を出せないが為、代わりに孤児院出身のタバサが依頼を出したようだ。
「無事であるならば、手紙が欲しいのですが……。子供達も心配していますし……」
 幸い、エレガミオを拠点としている冒険者や近所の人が孤児院の子供達の面倒をかわるがわる見てくれているので孤児院の方の心配はしなくていいようだ。しかし、やはり心配である。
「どうにか手伝ってもらえませんでしょうか?」
 タバサの言葉に、一同は頷いた。

 ――これが、数日前の事である。

●戻れない理由
 大森林の『エルタニン』里。
 そこに到着した冒険者たちが見たのは、どこか剣呑な雰囲気だった。前にここを訪れた者がいるならば、空気が少々ギスギスしている事により気付くだろう。
 行きかう人々の表情はぎこちなく、なんとなく互いに距離を置いているようにも見える。
「皆さん、ちょうどいい所にいらっしゃいましたね」
 その声で振り返ると、ユアン・イェーガーが少々困った顔でそこにいた。彼女は一同を仮の住まいに案内した。

「私は、この里から嫌な気配を覚えた為調査の為に残ったのです」
 そして、異変があれば依頼を出すつもりで準備していたという。本当ならばタバサ宛にも手紙を出した筈なのだが、と困惑していた。
 ユアン曰く、この村は現在2つに分かれて静かに争っている状態なのだという。それは『授恵者のみを移住者として受け入れる』考えを持つ者と『授恵者も一般人も関係なく幅広く受け入れる』考えを持った者だそうな。
「古くからの者は前者、比較的若い人が後者になります。中立の者も極僅かにいますが、多くがどちらかの意見を持っていますね」
 と、ユアンは真剣な顔でそう言った。
 まだ里の会議でのみの論戦状態で里の住人同士の争いはないようだが……、ユアンの表情は優れない。
「……正直なことを言うと、里の人々の様子とか……冷静になってみたら私が幼い頃からなんかおかしい気がして……」
 授恵者として目覚めたから気付けたことかもしれない、と彼女は小さな声でこういった。

 ――この里の人間たちは、何者かに洗脳されているような気がするんです。

●コトヌシ・エルタニンは警戒する
 しばしの沈黙の後、戸をノックする音が聞こえた。ドアを開けると、一人のエルフが緊張気味に佇んでいた。
「ユアンの所に冒険者さんがいると聞いて来たのです。少しお時間いただけますか?」
 青い瞳と痩せた身体が特徴的なエルフの男性……コトヌシは、ユアンに招き入れられ、一礼する。
「コトヌシさん、どうしたんですか?」
 やや不安げに問うユアンに、コトヌシは真面目な顔で口を開いた。
「実は、父と喧嘩してしまいましてね。父は『授恵者だけを受け入れる』と言って聞かないのです。私としては、この里をもっと発展させたい。その為にも幅広く移住者を募集したいと思っているのですが……」
 先日来てくれた冒険者たちの話を聞き、考えを改めた者も多いらしく、コトヌシは比較的若い世代のエルフたちと共に準備委員会を設立した。だが、それが気に食わなかったのか、父親から里長代理を解任させられたそうな。
「そして、これはつい最近なのですが……この里全体に、嫌な気配が漂っているように感じるようになりました」
 コトヌシは、至極真面目な顔で、苦々しい物を絞り出すようにそう告げた。

 その時、再び戸をノックする音がした。不思議に思いユアンが窓を見ると、日傘をさした白い髪のエルフが、にっこり微笑んでいた。
「どなたですか?」
 ユアンが不思議そうに……されど、表情を僅かに引き締めて問うと、コトヌシが僅かに眉を顰めながら一同の前に立つ。
「アルダナブ殿、何の用でしょう?」
 アルダナブと呼ばれた女性は、コトヌシとユアンににっこりと微笑みゆっくりと顔を近づける。
「冒険者達は来たのかしら? ユアンさんを通じて来てもらう手筈になっているけれど」
「その冒険者ならば、今ここに来ています」
 コトヌシに紹介された冒険者達が一礼すると、アルダナブは笑顔で一同に会釈した。
「よかった。魔獣退治の依頼を受けてくれるのね」
 その話に顔を見合わせる冒険者達だが、コトヌシは冒険者たちに頷いて「そういうことにしておいてくれ」と頼む。
「今、説明しようとしていた所です」
「なら、私が直接話そうかしら」
 コトヌシが対応しようとするも、アルダナブは軽い足取りでユアンの家に入り込むと依頼を話し始めた。

 内容は、中堅の冒険者数名がいれば対処できそうな魔獣退治だった。
 アルダナブが家を出た後、コトヌシはユアンと頷き合うと深呼吸を1つすると冒険者たちに向き直る。
「まずは、この件を利用して村の調査も行って頂きたく思います。カモフラージュできるかもしれませんから」
 つまりは、秘密裏に村の調査も行って欲しい……という事に他ならない。
 冒険者達はコトヌシとユアンからの依頼に顔を見合わせた。もしかしたら、自分たちはこの里の負の部分に刃物を入れ込むかもしれない、と。



解説

エルタニンの異変を解決するべく調査していたユアンでしたが、彼女一人ではなかなか結果は出ていない模様。しかし、今回は『魔獣退治』の依頼が飛び込んできました。皆さんにはそれに便乗し村の様子の調査も行っていただきます。 >ユアンの故郷『エルタニン』の現状  現在は『授恵者か否か関係なく、幅広く移民を募集しよう』と考える若者達と頑なに『授恵者のみを住まわせよう』とする年長者たちが静かに対立している模様。しかし、ユアンが観察していると、年長者たちの様子がおかしいように思えてきたようです。  今回は魔獣退治の依頼が入っています。「被害状況などは村人から聞いて欲しい」とアルダナブが言っていますので、魔獣について聞くついでに村について調査してみましょう(ただし言葉選びに注意しましょう) PL情報 魔獣自体は中堅冒険者が数名いれば倒せるほどの力量です。 リプレイでも戦闘シーンはあまり描写されません。プレイングは村の調査に絞っても大丈夫です(むしろ怪しまれぬよう村の調査に全力を尽くして下さい)。 >エルタニンについて 総人口300人程の里です。里の中央に里長の屋敷と里の話し合いに使う集会場があります。人々の住まいはこの里長の屋敷(及び集会所)を取り囲むように立っており、所々に細長い(全長1.5m程)石灯籠のようなものがあります。その内数本は蝋燭を立てる場所の代わりに赤く光る石が設置されています。長曰く魔除けだそうですが……。 ユアンは比較的集会所に近い所にある家を借りています。 >人々について 比較的若い年代のエルフ達は冒険者達に協力的で、里の発展の為にも『授恵者か否かに関わらず移住者を受け入れるべき』と考えています。 高齢のエルフ達は調査協力に関しては疑問の目を向けるので注意が必要です。怪しまれると長へ報告しに行きます。彼らは『授恵者だけを受け入れ、困難を受けてもらう代わりに衣食住を保障する』考えに固執しているようです。 >登場NPC(ユアン以外) コトヌシ・エルタニン 里長の息子だが、最近は『移民問題』で仲違いをしている。調査には協力的。 最近、この里に満ちる嫌な空気が気になり始めた。 PL情報:彼は無自覚の授恵者です(土地の浄化能力に目覚めました) アルダナブ 白い髪のエルフの女性。里長に近い人物のようで、村の人々から敬われている。彼女は日中外にいる時、常に日傘をさしているようだ。今回、魔獣退治を冒険者に依頼する。

マスターより

おまたせしました。エルタニンを舞台とした連作第一弾! はたして、ここでは何が起こっているのか……。皆さんの調査にかかっています。 まずは村人と話したり、村を歩いてみる事から始める事をお勧めしますが自由にプレイングをかけてください。 ユアン「どうか、お願い、します……!」 ※今回、質疑応答はありません。

リプレイ

●潜む影を暴く
「お久しぶりだねー♪ 孤児院のみんなもちょっと心配してたけど、聖霊節は楽しく一緒にお祝いしてきたから事が落ち着いたら顔を見せてあげてねー」
 ハーフリングの少女、アルマ・ヴァレンタインにそう言われ、ユアン・イェーガーは少し申し訳なさそうに頭を下げた。その傍らにコトヌシがいることに気付いた彼女は「コトヌシさんもお久しぶりだよー」と手を振ると、彼もまた申し訳なさそうに頭を下げる。
 ユアンは孤児院の子供達から貰ったカードを読み、少し寂しげにつぶやいた。
「おかしい……ですね。私は、何度か、孤児院に手紙を送った筈なのです、が……」
「何通ぐらい? 音信不通になってしまった、と聞いたけど」
 ユアンの言葉に、「すとーきんぐでもされてる?」と小首をかしげる。ユアン曰く、3回ほど手紙を出したが返事がなく、不安に思っていたらしい。
「村の雰囲気が悪いと暮らし難いよね。……私の赤い瞳を気にされた記憶もあって気になってたの」
 エルシー・サリバンもこの村を過去に訪ねた事がある。その時から引っかかるものがあり訪ねてくれたらしい。「早く解決して孤児院へ顔を見せに行かなきゃね」と言えばユアンは「えぇ……」と小さく頷いた。
 エルシーの言葉にアルマもまた反応する。そういえば前のお手伝いのときは赤いおめめの人にご執心だったっけ?」と気づいていたらしい。コトヌシは僅かに眉を顰め、小さく頷いた。
「私が覚えている範囲でも、何故かユアンさんと同じ赤い瞳の方に執着しやすいのです。理由はわかりませんが……」
 コトヌシの言葉を受け、ユアンは手で少しだけ開いて見せる。と、確かにピジョンブラッドに例えられそうな赤い瞳があった。
(でも、何故赤い瞳の者に……?)
 エルシーの胸に疑問が過ぎる。
「派閥争いは貴族社会や学園でもお馴染みだけど、此処では何が起きているんだろうね……。あの雰囲気と言い、先ほど聞いた事といい、気がかりだね」
 緑色の瞳を細め、ジュスト・ヴェルジーもまた少しため息交じりに言う。傍らのアステルもまた、この異変が気になっている様子だった。
「まずは、調査をしよう。俺も、色々気になっているから」
「そうだね。まあこんなご時世だから移住の授恵者に厄介事を押し付けたいのも分からなくはないけど」
 ジュストの言葉に相槌を打ったアルマは、ぴん、と人差し指を立てた。
「授恵者限定にこだわるのも気になるから、魔獣退治にかこつけていろいろ調査してみないと……だね!」
 6人は、どんな調査方法で行こうかと簡単に話し合い、早速動き始めた。

 その頃。一人の里の人間が冒険者の様子を見ていた。
 彼はしばし一同を見ていたが、僅かに首を傾げてその場を去った。

●里の中へ
「魔獣の生態は知られてない事が多いので未知の能力が及ぼす健康被害が無いかを調べさせてね。健康診断の結果でその人に合う常備薬ともアドバイスできると思う」
「それは、勿論。授恵者様の願いとあれば」
 エルシーは、優しく微笑んで頭を下げる。彼女を覚えていた里の住人は、彼女の申し出に快く応じた。その上彼女が「以前、熱心に移住のお誘いも受けたので、暮らし易さとかも聞かせて欲しい」と付け加えれば、舞い上がったかのように饒舌になる。
 エルシーの作戦は己が持つ〈医療・薬学〉の知識から脈をはかり、身体測定などを行って直接触れる理由付けをし、〈エンパシー〉を使う事だった。
 魔獣についての話を聞く際はそこまで感じなかった違和感が、村への勧誘話になったとたん膨れた。僅かに見た眼はほんのりとぼんやりとしたように見え、僅かな多幸感が滲み出るのだ。
(……どういう、こと?)
 熱に浮かされたような反応。そして、妙な歪(ひずみ)を覚えるのだ。
(喜びと……欲望? まるで獲物を狙うような雰囲気がする)
 エルシーは不思議に思い、比較的若いエルフにも同じことを行う。と、今度は先程感じたような感情を感じなかった。
(……すごく気になる)
 エルシーは、ユアンから移させてもらった地図に印をつけ、記録をつけた。

 その頃、アルマは村を歩いて見て回りつつ当たり障りのない話題から魔獣の被害や分かってる特徴などを聞いていく。
「それで、どんなかんじなの?」
「俺が見たのは、そうだな……猫をすごく大きくしたような奴だったな! 親父の足に爪が掠めたんだが、結構酷い怪我でさ」
 と、少年は傍らに立つ父親の足にできた傷を見せながら言った。
(大きい猫みたい……すばしっこいかもしれないし、足音を立てづらいかもね)
 アルマがメモを取りながら考えつつ〈残留思念感応〉を使うが、感じ取る事が出来たのは目の前の親子が「アルマみたいな頼れる人になりたい」という感情ぐらい。
(うーん、洗脳されているかも~って話もあるし何か掴めるといいなとは思ったけど……)
 肩透かしをくらったような気がしたアルマだが、とりあえずもう少し試してみようと考え直すのだった。
 この時を、彼女は後に……後悔する事になる。

(さて……)
 アルマとは反対方向から里を巡り、ジュストもまた魔獣についての情報を集める体で話を聞いていた。対象は、只人視点では年長でも見た目が若々しい森人の場合そうだと判別できないと判断した為年少、年長問わずである。
 彼は誰に対しても礼儀正しく振る舞い、巧みな〈話術〉で魔獣退治に来た冒険者を装う。勿論、言葉選びも慎重に行い露骨に探るような真似はしなかった。その上「まずはアルダナブ様から詳しい目撃場所や被害状況といった情報は里の者達から直接聞くように言われているので」と説明すれば、すんなりと話を聞くことができた。
 魔獣の情報は後から照らし合わせた結果、アルマが得たものと大体同内容のものだった。しかし里の人々はジュストの立ち振る舞いに感心し、「他にもいろいろ聞いて欲しい」と言ってくれた。
(これは、好都合だな)
 ジュストは内心で頷きながらそれとなくこう切り出した。
「そう言えばだが……、この里や近辺で活動する上で気を付けなければいけない場所や行動、対象はあるかな? 俺は余所者であるという自覚があるし、無知故に里の方々と不要な軋轢を生みたくないんだ」
 里の人々は少し考え……ややあって女性が「他の人にも伝えて欲しいのだけど……」と里長の家の後ろにある倉庫は里の重要な役目の者だけしか入れない事、墓周辺はなるだけ静かにする事、里の中の石灯篭はお守りだから壊さない事の3点を教えてくれた。
(あからさまに怪しい)
 とくにそう感じたのは、彼自身も気になっていた里内の石灯篭みたいなものである。光源を置く場所に赤い石が置いてあり、シンプルなデザインながらちょっと近寄りがたい印象がある。
「これのこと?」
「えぇ。それは、けっこう昔に置かれたものでね。当時の里長が悪いモノから里の人間を守る為に立てたものと聞いているんだ」
 彼はそう言うと灯篭の前で手を合わせる。と、僅かに顔が恍惚としたように見えた。だが、次の瞬間には元の顔に戻っている。
(……これは……)
 ジュストは、僅かに項の毛が逆立つような気がした。だが、それでも笑顔で話を聞いていた。だが、ここで小さな悲鳴が上がる。嫌な予感がして駆け付けると、アルマが別の石灯篭の傍で身を屈めていた。
「どうした?」
「さっきまでこの近くで里の人と話していたの。でもその人勧誘しかしてこなかったから……。その人が離れてから〈残留思念感応〉を使ったら……」
 アルマは僅かに青くなった顔のまま掠れた声で言った。
「なんか、ぼんやりとだけど……『授恵者たちを使い潰せ』と言っているように感じた」
 幸い、そこにいたのはジュストだけのようだった。彼はアルマを立たせると「少し休もう」と一旦ユアンの家へ戻る事を提案する。が、アルマは首を振った。
「もうちょっと待って。誰も来ていないうちにこの石について調べたい」
 と〈地質学〉の知識をもって調べてみるアルマであるが、違和感を覚えるだけで他の事は解らなかった。
(うーん、ヤバイ儀式の触媒に使われたりしてるシロモノじゃないかどうか調べたかったんだけれども……)
 しかし、〈残留思念感応〉ではほんのりと危険な何かを感じた。あの石灯篭の石が関係している可能性は高い、とアルマが培った冒険者としての勘が告げる。
 だが、人の気配を感じたジュストはアルマが少々疲労しているようにも見えた為一旦ユアンの家へ帰ろう、と提案。アルマはそれに素直に従った。
 だが……二人は知らなかった。この時近くの家に身を潜めた里の者が、そっとその場を立ち去った事に。

(けっこう骨が折れるわね)
 エルシーはアステルに手伝ってもらいながら調査を続けていた。
 彼女は地図を広げ、現状の調査結果を振り返る。そこには『授恵者のみ受け入れる』『授恵者も一般人も関係なく』を色分けて記載されていた。
(石灯籠は確かに気になっていたけど……、確かに近くに住んでいると若い人にも影響が出ている傾向にあるね)
 全体的に見れば年齢が上がるにつれて『授恵者のみを受け入れる者』が増えていく傾向にある。だが、うっすらと石灯籠の近くに暮らす者がちょっと多い気がする。
 〈エンパシー〉を使った時に感じた時の事も大きく分かれた。比較的若いエルフたちは村の事を憂えているような感情を読み取れた。だが、年齢が上がるにつれて会話内容が勧誘話中心になりがちになり、一種の恍惚的なものを感じるのだった。
 普段の暮らし方が健康被害を起こす事があるので、一日の行動や集会に行く回数など月の行動や主に使う井戸や食品についてなども聞きたかったが流石に魔獣との関係が薄いためか怪訝な顔をされ詳しく聞くことが出来なかった。
 エルシーはなんとなく辺りを見渡し……里の中にある石灯籠を見つけるとしばし観察。
(赤く光る石の付近に住む人は『授恵者のみ』が多いなら、赤石が思念を誘導する力があるかも……とは予測していたのよね。ほんのり影響はありそうだし……。それとも、赤石は単純に監視塔の役目?)
 水源や食品の汚染や、鼻炎持ちの考えが染まってないなら、お香とか匂いで篭絡する系とかも考えられたのだけど……と考察を巡らせているとユアンが様子を見に来てくれた。
「調査の方はどう、ですか?」
「そうだね……」
 エルシーは話そうとしたが里の人の誰が見ているかわからない、と感じ一路ユアンの家に向かう。
 彼女は聞けなかった生活習慣などの件について話すと、ユアンは自分の調べた範囲ではそれらはあまり関係がなさそうだ、という事を教えてくれた。
「やはり、石灯籠が関係あるのかな?」
 エルシーは小さく呟きつつ、相棒たるリスを撫でた。

 アルダナブの診察もしたかったのだが、彼女は姿を現さなかった。里人に案内された家を訪ねたり、リスを放ったりしてみたものの、彼女の姿は見つける事が出来なかった。なんだか嫌な予感を覚えた彼女だが、アステルに呼ばれる。なんでも、退治対象となる魔獣がでたらしい。彼女はため息交じりに首を振り、魔獣退治の準備へと移行する事にした。

●闇の中で
 冒険者達が魔獣退治に向かったころ。
 闇の中で何人ものエルフたちが話し合いをしていた。その内容は、冒険者達が魔獣退治の情報収集を行っている事、このまま村にいてもらう為にどうするか、という事が主だった。
 だが、一人のエルフがぽつり、という。
「その魔獣退治に来たはずの一人が、あの石灯籠に触れようとしていました。あれは守りの筈です。なにかあるのでしょうか?」
 それを聞いた上座の女性は、少し思案し……僅かに口元を綻ばせる。
「教えて。その冒険者はどんな姿をしていたの?」
 女性は、赤い唇をそっと綻ばせた。

●魔獣の牙よりも恐ろしい物
 冒険者達が現場に向かうと、そこにいたのは3~4メートルほどもある狼のような魔獣だった。口の周りを赤黒く染め、音を立てて肉を貪る様は聊か恐ろしく見える。
 だが、集まった冒険者達は皆手練れであり、案内したユアン含め授恵者である。
「コトヌシさんは、下がっていてください」
 の言葉にコトヌシは静かに頷き、大木の陰に隠れる。

 魔獣との戦闘は、5分もしないうちに終わる事が出来た。
「おつかれさま」と言いながら亡骸を検めていたアルマは……ここで魔獣が食べていた者に気付く。そして込み上げてきた吐き気をどうにか堪えた。
 不思議に思った他の冒険者たちが覗き込むと……そこには、干からびたエルフのような物が横たわっていた。
「酷いな……。ユアンとコトヌシは見ない方が」
「いえ、見せてください」
 ジュストの制止を振り切り、コトヌシが駆け寄る。と、彼はその遺体を険しい表情で見た。そして、しばし黙祷を捧げると、エルフの見開かれた瞳をそっと伏せてやった。
「エルタニンの、住人です。……でも、干からびていますね。まるでなにか搾り取られたような」
 その言葉にアステルも表情を険しくし、コトヌシに離れるよう告げる。その隙にエルシーが干からびたエルフの首筋に何かが嚙みついたような跡があるのに気付いた。
「これってまさか……」
 彼女のつぶやきから先は、一同同じことを考えた。

 ――まさか、吸血鬼がこのあたりにいる……?

「うーん、このあたりなら里の人もいなさそうだしそれぞれ調査した事を纏めたらどうかなって」
 アルマはそう提案し、6人は集まった情報を元に考える。エルシーが調査し、印をつけた地図を地面に広げ、ジュストとアルマが聞いた話を纏めると、やはり怪しいのは例の石灯籠である。
「あからさまだね。あれを壊さないように、というのが……。媒体とみたほうがいいかもしれない」
「それになんかこう、授恵者を使い潰せって言っているような雰囲気があったんだよね。逆に罠かと思えちゃう」
 ジュストとアルマが口々に言い、エルシーも深く頷く。
「年齢が高い人の方が『授恵者のみを受け入れる』姿勢を見せがちだけど、この石灯篭の近くに暮らす人はその思想の影響を受け始めていたり、迷ったりしている印象があった。やっぱり、無関係じゃない」
 彼女の言葉にアステルが頷くと、ユアンとコトヌシは顔を見合わせる。
「最近になって、違和感を覚えるようになったけれども……、確かにあの石灯籠は気になっていた」
「そう、ですね。私も……授恵者となってから、あの石灯籠に違和感を覚えるようになったんですよね」
 二人の言葉に、ジュスト達は次の調査方針が固まったような気がした。

 冒険者たちが魔獣の皮を剥ぎ里に戻ると、里長とアルダナブたちが待っていた。彼らは冒険者たちに感謝し、「是非ゆっくりしていってほしい」とご馳走を用意してくれた。
 エルシーが食べた限り、特におかしい点は無かった。一同はとりあえずご相伴に預かるも……、確かに、この村を蝕む何かがあるのだな、と仄かに感じ取っていた。

(終)

マスターコメント

おまたせしました。菊華です。 今回は手分けして調査した結果、怪しい部分がはっきりと浮かび上がりました。 村人たちの一部には怪しまれてしまったようですが、目的は果たせましたので成功です。 次回はどのような展開になるのか。 また縁がありましたらよろしくお願いします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準4 / 4〜8人

2022年03月07日 08時46分06秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ジュスト・V・ケレス

    俺で四人目、これで依頼成立かな。 というわけでキャスターのジュストだ。 よろしくね。 今回は魔獣退治を装っての村の調査依頼ということだし、魔獣についての話を聞くついでにこの里で過ごすにあたっての注意事項的なものがないかや、石灯籠のようなものについても聞いてみようかな。 近づいて欲しくない場所とかあるかもしれないし。 聞くのは若い人達の方が聞きやすいみたいだけれど……正直エルフの人って外見で年齢読めないからなぁ。 一応高齢の方と話してもあ怪しまれないようにあれこれ聞くのはあくまでも無知から里の人達に迷惑を掛けたくないからって言う理由付けはしておこうと思う。 汎用スキルに関しては話術、あとは魔術知識を持っていこうかなと。 しかし洗脳とは穏やかじゃないね。 魔術や呪術的なものなのか、薬や話術などを組み合わせた思考誘導的なものなのか……少しでも情報が得られると良いんだけれど。

  2. アルマ・ヴァレンタイン

    成立だねー ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 今回は調査までだからアンチ・サイとかで 「破ぁ!!」はダメなんだね… ひとまず村をぶらつきながら残留思念感応でなにか拾えたらなーって思ってるよ もう1枠であからさまに怪しい赤い石を調べたいところだけど 魔法知識はもってってもらえるみたいなのでLv1だけど地質学で 怪しい用途に使う鉱石だったりしないかとかチェックでもしてみようかなと

  3. エルシー・サリバン

    シューターのエルシーだよ。成立に感謝!ヨロシクね。 以前のイベシナで赤い目だとお誘いを受けて気になったので、理由も含め探ろうと思うの。 >魔術や呪術的なものなのか、薬や話術などを組み合わせた思考誘導的 とても同意だよ。 時間を掛けて染まってるなら集会場に行く都度に薬や香を焚かれたとか 精神感応で染められたとか、飲食(井戸)とか、思いつくのを出来るだけ確認しようと思うの。 使用スキルは手分けできる方が良いと思うので、皆のに合せて変更するね。 今の候補は、医療・薬学とエンパシーで現状を探ろうかな?と 別の汎用も使いたいと思ってるので、被ってるなら教えてね。 >アンチ・サイとかで 「破ぁ!!」 ジャマーやアンチ・サイで正気に戻るならそれはそれで解決出来て良いと思うの。 その場合は1名だけお試し解除で、誘導してる大元を探るのが仕事に成るのかな?

  4. ジュスト・V・ケレス

    考え中も含めて現在表明が出ている汎用スキルは以下のようなものになるかな。 今の所ばらけてるし、人、物、場所それぞれにアプローチ出来ると思う。 アステル嬢やこれから参加してくれる人が持参スキルに悩むようなら、超嗅覚や超聴覚などの感覚系スキルがあると薬品や香などの匂いに気づけたり、声を潜めた会話なども拾えるから良いかもしれないね。 【持参予定汎用スキル】 ・ジュスト 話術、魔法知識 ・アルマ 残留思念感応、地質学 ・エルシー 医療・薬学、エンパシー

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0