【鍛道】鍛えた道の先【求和】
崎田航輝
コメント 6
シナリオID:1917
オープニング
「色々と動いてくれたみたいだな」
恩に着るぜ、と。
静かな声で冒険者達に労いを向けるのは、鍛冶師ダックル・エンビエント。
窓の外、西側の彼方に荒野を望むそこは――ドワーフ王国ではなくリーンエス王国の冒険者ギルドだ。
前回の調査によって、ソルスの居場所が明らかになった。その事について……王国のギルドともまた、新たに共有された情報があるからだという。
「ただの弟子の失踪と思ってたものが、同盟やらゴールディやらを巻き込んでるらしいと知って驚いたもんだが……今度は、王国とはな」
「――それも、大きな規模の争いに関連しているようです」
ダックルに応えて告げたのは、ギルドの職員の青年だ。
それは他でもない、ソルスの現在の所在地――ソームダリアで起こっている事なのだといった。
●計画
その情報を齎したのは、件のソームダリアが存在する、王国西方の土地レッドラントの領主――ヒゼンベルク・メルべ伯爵。
彼に力を貸す冒険者達によって、そこで内乱が計画されている事が明らかになったのだと、ギルドの青年は語った。
「この内乱は、計画的な紛争です」
企みをしているのはヒゼンベルク伯爵の弟、クロックワード・メルべ。
兄を陥れ、自身が一帯の管轄権を手に入れようという謀略らしいのだ。
「クロックワード氏の裏にも別の黒幕がいると思われていますが――現状、クロックワード氏のもとに多くの兵力があるようです」
クロックワードは現在、ソームダリアで出兵を目前にしている。
このまま計画が始まれば、クロックワードは南西から招いた勢力と激突するだろう。
そうしてメルべ家の管轄地内に甚大な被害を齎した上で……責任を兄をなすりつけ、自身は鎮圧の手柄をもって権力を得る事になる。
「多くの領民を犠牲にするであろう、惨い計画です」
そして、このクロックワードの戦力に武器を売っている張本人こそ――鍛冶師ソルスなのだと言った。
「ソルスはソームダリアにて直接、武器を作ってクロックワードの勢力に渡しています」
だけでなく、ソルス自身もまた、戦力の一部として出兵に加わるようなのだという。
或いは自身の武器の出来を、自分自身で確かめる――そんな思惑があるのかも知れない。
「……そうか」
ダックルはそう静かに呟いた。
もう多くは語らない。ソルスが何をやっているのか、どこに向かっているか――それは前回の冒険者達の働きで判っていた。
だからダックルはただ、瞑目する。
自分がソルスを正しい道に導けなかった事を後悔しているのだろう。
それでも、小さく呟く。
「まだ、戦いは始まっていないんだろう」
「ええ。だからこそ内乱となる前にこちらでソルスを抑える――それが、皆さんへの依頼となります」
そう、ギルドの青年は冒険者達へと向き直っていた。
●戦いへ
現在、ソームダリアに集まっている兵力は多い。
それでも、ヒゼンベルクに協力してきた冒険者や、別口の依頼からレッドラントに関わってきた冒険者達が、この作戦では同時に動いてくれるという。
「敵は大軍とも言えますが、その戦力の多くはそちらに任せる事が出来ます」
こちらはソルスの相手に集中出来ると言った。
「それでも……敵はソルス一人ではないでしょう」
ソルスは南ソームダリアという市街地に拠点をおいて活動していた。地下に工房も構えていたようで……武器輸出組織の構成員がいる事も間違いないだろう。
だけでなく、ソルスはおそらく非常に用心深い。
「クロックワード氏の事を仲間でなく、あくまで“客”として捉えていたなら、ソームダリアの兵力だけに頼らなくても良いよう、傭兵なども招いている可能性もあります」
最大限の警戒をもってあたるようお願いします、と言った。
ただ、もしソルスがそれだけ用心深いのであれば……こちらには得る事もあるという。
「ソルスはクロックワード氏に魂を売り渡した訳ではないでしょう。自身に不利益がないかどうか、寧ろクロックワード氏の周りの事をよく調べていたかも知れません」
ソームダリアというクロックワードの懐の中で、短くない時間を過ごしていた。
自分の客がどういう人間で、何を考えているのか。
危険な計画に力を貸すのなら、それを知ろうとしない訳はないだろう。
或いはソルスは――非常に客観的な目で内乱計画を把握している可能性もある。
「もし、ソルスを捕らえる事が出来たなら……クロックワード氏の裏にいる黒幕も含め、内乱に与する者達の全容が判る可能性もあります」
その為にも勝利を、と。
青年の言葉に、ダックルも最後に冒険者達を見た。
「あいつは、自分が間違ってる事も理解出来てねえのかも知れねえ。打ち方を間違った剣みたいによ」
もしそれで命を落とす事になっても、それはソルス自身の責任だ。
「それでも……あんた達なら、あいつをまだ救える。そんな気がするんだ」
だから頼むと、ダックルは素直な思いを言葉にしていた。
●鍛冶師
ソルスは親のいない子供だった。
小さい頃から雑居房のようなところに押し込められて、単純な労働力として鍛冶工房で働いていた。
そこは休む事も逃げる事も許されない場所だった。
逆らえば、暴力を振るわれる。だからソルスに選択肢は無く、奴隷のようにあらゆる仕事をこなしていった。
そんなある時、不法な取引の廉で工房の管理者が捕まった。
ソルスは自由になったが、生き方を知らなかった。野に放り出されたまま食うにも困り、犯罪に手を染め、そしてまた多くの争いに巻き込まれてゆく。
治安の悪い地下の僻地で、誰も信用する事は出来なかった。
だから工房での経験を唯一の拠り所に、自分の身を守る為の武器を自分で作り、日々を生き抜いてゆくしかなかった。
そうして長い放浪を経て、ソルスは鍛冶師ダックルの元に行き着いた。
そこで働く事になったソルスは、すぐに鍛冶の腕が認められた。そこは能力を活かす事で正当な評価を受ける、そんな環境だった。
けれどその安寧とダックルの人柄をこそ、ソルスは信じなかった。
幼い日々の心の摩耗が、ソルスに人への信頼を失わせていた。
ただ、それでもダックルがこちらの事を考えているとは判っていた。
だからソルスも、自分の考えを理解してもらえれば判り合えるかも知れないと考えた。
自分が自分で居られる証明は、作った武器の鋭さだけだ。
だからソルスは一層、武器の鋭さを追求した。
危険な行いに武器が使われる事は気にしなかった。それは武器が優秀な証で、自分の存在が証明される瞬間でもあったから。
今はダックルと仲違いしてしまったけれど、いつかそれも含めて判ってもらえる、と思った。
誰にも共感した事はなかったし、誰からも共感される事はなかった。
でもダックルほどの鍛冶師なら、と。
故にソルスは武器を打つ。
「これで、ひとまずは完成か」
自分の弓で使う鏃を見て、ソルスは頷く。
今作れる限りの、最高の鋭さ。それを実戦で確かめる機会も、もうすぐだった。
解説
マスターより
リプレイ
砂煙が上がり、彼方の遠景を隠す。
ソームダリアからの出兵開始後、荒野の各所で戦いが続いていた。
その勝敗もつき始めてゆく中――冒険者達は南ソームダリアへと侵入している。
「いよいよソルスの野郎をとっ捕まえられんな!」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングはその敵影を探しながら、待ち侘びた時が来る事に好戦的。
並ぶカイン・ステラは好対照に……静かな頷きを返している。
静寂の市街、このどこかに確かにソルスは居るのだから。
「首根っこ捕まえて、ダックルんとこ連れてくぞ」
「ええ」
応えながら、視線を巡らせるのはロゼット。ソルスの用心深さを鑑みれば、襲撃にも十分な備えはしてあるだろうと警戒をしていた。
そして直後には、その考えが正しかったと理解する。
「……伏せて」
皆を止めて、声を潜める。
「射手よ。あの建物上に隠れてるわ」
斜め上方に見える屋根。そこに確かに弓を持った男の姿を捉えていた。
セリオス・オーガストは僅かに顔を出し、天眼も発揮して一帯を観察する。
「横の建物にもいるな。道には短剣を持った男が複数……誰かを守るような陣形だ」
「ここで誰かと言ったら、一人だろうな」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが太刀の柄に手を掛けて言えば、皆も頷く。
海神・江流は傍の建物の裏手へ。敵陣に対して横側に移動し、奥の方向を窺った。
すると――
「見えたぞ」
微かに人影が垣間見える。
それは幹部らしき二人に護られて、地下から姿を現す青年。
『異常はないか』
『はい、今の所は』
そう会話を交わす、その声にハヤトは頷いていた。
「ソルスの声だ。間違いねえ」
その後方には魔術師らしき傭兵が控えているのも見える。
市街の中から盤石な状態で出兵する算段なのだろう。
だが、まだこちらに気づいていない。
それがこちらにとっての最大のアドバンテージ。
「行くぞ」
セリオスは迷わず建物の上へ。敵陣を見渡せる位置で素早く弓弦を引いていた。
そこへ番えるのはエーテルで形成した、煌々と瞬く光弾。
瞬間、放たれたそれは敵の前衛を豪速で越えて……ソルスの面前に着弾し爆裂。一気に煙幕を広げていく。
ソルスを中心に視界が通らなくなり、敵方の慌てる声が響く。
それが、開戦の合図だった。
弓を持った敵はワンテンポ遅れて、ようやくセリオスの姿を発見する。
が、その頃にはハヤトが建物の上から駆け始めていた。
一つの建物を跳び、また別の建物へ。宙を翔けるが如く、敵前衛も煙幕も飛び越えて――敵後衛、術師の背後へ降り立ってゆく。
「……!」
術師はとっさに振り返り、杖を突き出そうとするが――ハヤトは既に攻撃態勢。まずは術師の腕を回し蹴りで払って。
「うるぁ!」
止まらず後ろ回し蹴りで顎を打つと、更に忍刀で一閃。上半身を斬り抉り、一気呵成に気絶寸前にまで追い込んだ。
傍にはもう一人の術師がいたが――
「助太刀するよ」
そちらへ舞うような跳躍で、江流がひらりと舞い降りてくる。
その術師は杖に魔力を溜めようとしていたが……こちらも江流の方が疾い。素早く脇差を抜き放つと、宙に描いた光印を膚に刻みつけて集中を乱した。
結果、術師の放った魔矢は不完全燃焼。江流へ深い傷を残さない。
「こっちはこのまま、相手をしておく」
「ああ!」
江流に応えたハヤトもまた、面前の術師の魔矢を跳んで回避。降下しながら斬打の応酬を浴びせて意識を奪っていた。
同時、江流もまた攻勢に移り……刃を縦横に奔らせて。鋭くも美しい流線を描いた剣撃で、血潮を散らせて術師を弱らせてゆく。
よろけた術師は、煙幕に遮られて容易に助けも呼べない。
ならばと魔矢で抵抗しようとするが――
「遅い」
と、そこへ建物上から鏃の先を向けているのがセリオス。
瞬間、神速の射撃。鋭くも正確無比な二連射で躰を穿ち、術師の意識を奪っていた。
江流はセリオスに軽く頷きを返す。
「これで後ろは片付いたな。あとは――」
呟きと共に、煙幕の方へと視線をやっていた。
その頃前線では、弓持ちの敵が後方の様子を窺おうとし始めていた。
が、視界が通らぬ状態では現状の把握も出来ない上に――
「相手はこっちだぜ」
前方からカインが弓を引いている。
番える矢に、陽炎の揺らめくようなエーテルを纏わせて。刹那、カインは放った一矢で一人を穿ち、その知覚を撹乱させていた。
その間隙に道を駆けてゆくのがロゼットとアルベルト。
「まずはあれを叩くぞ」
と、アルベルトが視線を向ける先には短剣を持った二人。
遠く離れていない場所に更にもう一人がいるのを発見すると――アルベルトは太刀に燦めくエーテルを凝集させて、一刀。
眩く輝く剣閃を奔らせ、弾けた衝撃で三人を纏めて巻き込んでゆく。
「さあ来い、貴様達を殲滅するぜ!」
アルベルトが言葉を投げると、三人はふらつきつつも応戦しようとする。
だがそれよりも早くそこへ滑り込むのがロゼット。
収束させたエーテルを明滅させながら、棍を突き出して――刺突で短剣持ち一人を早々に気絶させた。
同時にロゼットは油断なく、上方にも注意を払っている。
「気をつけて」
「ああ」
アルベルトも建物上へ視線を向けていた。
すると予想通りに、二人の弓持ちがこちらへ矢を向けてきている。
ただ、一人は狙いが鈍っていた為、アルベルトが飛来した矢を難なく回避。もう一矢も体を掠めるに留めた。
けれど――
「……へぇ」
それでもアルベルトは感心の声を零す。
触れた程度でも、相応に体力を持っていかれた。確かに鏃は鋭く……これがソルスの作った武器という事なのだろう。
だがアルベルトは、高い体力でまだまだ健常。すぐに再びの範囲攻撃を放ち、短剣持ち二人を気絶させた。
そしてその頃には――
「上の敵はやっておくから、そのまま下の敵の相手は頼む」
と、カインが言いながら次の矢を引いて射撃。風で加速させた一矢で、狙い違わず弓持ちの一人を倒していく。
他の弓持ちは自然、カインを狙うが……カインは間合いを取りつつ被弾数を抑えていた。そして同時に――大鼬のファを建物に隠して進ませている。
目指す先は、ソルスだ。
(……居たな)
ソルスは煙幕を抜け出し、周囲を確認している所だった。
類を見ない造形の弓矢を携えてはいたが……積極的に打って出てくるつもりはないらしい。
(用心深いのは事実だな)
それでも攻勢に加われば厄介だろう。
ならば――
「倒せる相手を先に、だな」
カインは走りながら矢撃。弓持ちの足を貫いて建物から滑落させ、気絶させていた。
この調子なら数の差を覆すのもすぐだろう。
「そっちはどうだ」
「丁度、現れたぜ」
応えるアルベルトの面前に、道を駆けてきた短剣持ちが三人。
迷いなくこちらに攻め込んでくるその切っ先もまた、確かに鋭く。アルベルトとロゼットは一撃ずつを受け、その衝撃の重さを実感した。
だが直後にはロゼットが自身を癒しの光で包み……棍の先からもまた清らかな輝きを投射して、アルベルトを即座に回復させている。
「悪いな」
言いながら、アルベルトは既に反撃態勢。
相手の剣の鋭さに、欠片の怯みもなく。
「貴様達は、ただ剣に頼った戦いをしてるだけさ」
それでは本物の剣士には決して敵わない。
アルベルトはそれを誰よりも知っているつもりだから――刹那、一撃。輝く斬撃を拡散させ、短剣持ち全員を穿った。
そこへロゼットも打撃を加え、一人ずつ沈めてゆく。
その頃にはカインもまた弓持ちを落とし――敵の前衛を全滅させていた。
●刃
「……挟まれた、か」
前後の戦況を見取り、ソルスは呟いている。
年若い青年という風貌に、無垢な空気。その中にあるのはしかし、どこまでも用心深い色だ。
出した結論は幹部に傍を護らせて戦線を離脱するというものだった……が。
「行かせはしない」
その頭上から声が響く。
ソルス達の動きを見逃さず、既に弓弦を引いている――セリオス。
幹部達がはっとする、それよりも先にセリオスは弦を弾き……射撃。研ぎ澄まされた輝きを宿した一矢で幹部の足を貫いていた。
血飛沫と共にその一人がよろけると――ハヤトも肉迫。
「逃げられると思うなよ! うるぁ!」
跳躍しながら蹴りを叩き込み、幹部を地に転がせる。着地しながら拳打と斬撃も加え、そのまま気絶させていた。
もう一人の幹部は斧を握り迎撃態勢を取るが……アルベルトもそこへ切り込んでいる。
甲高い音が響かせ、幹部は斬撃を斧で受けた。ならば上等と、アルベルトは更に剣を振るって追い込んでいく。
「……っ」
ソルスはそれを目の当たりにして間合いを取ろうとする、が。
「いってきますも言わないで家出した馬鹿弟子って、兄さんか?」
行く手を塞ぐように、カインが道の先に立っていた。
横道からも、ロゼットが合流してくる。
「ソルスね」
「……」
向けられた言葉に、ソルスは視線を巡らせると……問答には応じずその場で壁に跳躍。建物の屋根へ登っていた。
そこから弓を引こうとする、が。
直前にカインが射撃。ソルスの腕先を掠めて矢を取り落とさせていた。
それからカイン自身も建物の上へ。
「迷子の3歳児と対して変わんねぇ目だな」
「……お前達は、何だ」
ソルスは一歩引きながら、ただ警戒の様相を見せる。
だからロゼットは言った。
「ダックルさんの頼みよ。彼、王国へ来てるの」
「――」
その名にソルスは一瞬だけ目を見開く。
それでも直後には眉根を寄せて新たな矢を番えていた。
「ダックルは俺の武器を認めなかった。今の俺の居場所は、あの場所にはない」
そして躊躇いなく引き絞る。
ただ、その前に江流が高く飛び上がって面前にまで近づいていた。ソルスはそれでも矢を放つが――江流はすんでで避けて零距離に迫る。
「喰らわないさ」
一瞬だけ見えた鏃には、敢えて貫通をさせない細工と、限界まで鋭利に研がれた無数の返しがついていた。
如何な結果を生むかも考えず作られた、強力に過ぎる武器。だから江流は脇差を奔らせ、もう撃てぬように弓弦を斬り飛ばす。
「研ぎ澄まされた刃にはそれを納める鞘が必要なんだ」
「……っ」
惑うソルスに、江流は正面から瞳を向けた。
「武器にそれがなけりゃ、向ける相手どころか……使い手や、守りたい人すら傷つけるただの凶器にしかならない。刃は技術、鞘は心だ。その矢には、それがない」
「……。ダックルも、同じような事を言っていた」
だが、と。
ソルスはそれでも矢だけを握って抗おうとする。
「強さ以外の何かを考えて、最強の武器が作れるはずがない」
「だったら、その矢が本当に最強なのか?」
いや違ぇな、と。
横合いから跳ぶのは、ハヤト。
「真の武具ってなぁ使い手の身体の一部だ。身体の一部ってこたぁ、使い手の意志そのものなんだよ!」
ただ鋭いだけの武器なんて、所詮道具にしか過ぎないのだ、と。
ハヤトはその矢を両断しながらソルスへ殴打を叩き込んでいた。
「テメェの目指す先には、魂込めた一振はねぇのかよ!?」
「がっ……!」
ソルスは衝撃に転がり、建物から滑り落ちてゆく。
その頃には、アルベルトも幹部を追い詰めていた。
幹部も最後まで抵抗姿勢を見せていたが……結局、戦士としては一流ではなかったのだろう。アルベルトはその、鋭利なだけの斧を太刀で払い――反撃の一閃で斬り伏せる。
幹部が体力を失って崩折れると、アルベルトは目を向けた。
「終わったぜ」
「こっちもだ」
応えた江流は道に降り立ち、ソルスへ声をかける。
「不可欠な鞘がなければ……あんただって結局、自分の武器で傷つく。武器を作る人間なら、それが判るだろうに」
「……なら、どうすればいいんだ」
ソルスは弱々しく立ったまま、掠れた声を零す。
だからロゼットは口を開いた。
「貴方には、師匠がいるでしょう?」
「……」
「会いたい、話を聞きたい、説教したい、色々と言ってたわ」
ああ、と、カインも声帯模写でダックルの言葉を再現してみせる。
「『その真実をちゃんと知りてえ』……ってな。お前の師匠、お前のこと探す為に俺らに頭下げたよ」
それから歩み寄り、目線を合わせた。
「こんなガキに“どんな思いで頭下げてると思ってる”って言われても、知るかよってとこかもしれねーけど。お前だってお前のこと話してないなら、お互い様だよな」
「……、俺は……」
「お前がどんな道歩いてきたか分かんねーけど、お前が鍛え上げたその術には言葉が足りない。だってお前、自分のことだってよく分かってないだろ」
だから迷子の3歳児なんだ、と。
カインの言葉に、江流も頷いて声を継ぐ。
「そうだ。理解できない、して貰えないと投げ出していい程、あんたはダックルに言葉を尽くしてない」
そして――ダックルは、あんたの鞘をあんたと一緒に作れなかった事を悔いている、と。
「……、ダックルが……」
ソルスは小さく呟いて、俯く。
「だが……今更、戻れない」
「さてな。お前の感性的にダックルは今までの道にいた奴と同じか?」
カインはそう言ってみせた。
「ダックルは待ってるさ。だから、一回ガチで叱られてこい」
そして自分が誰なのか知ってこい、と。
ロゼットも「ええ」と頷いた。
「鍛冶には込める思いが大事……ダックルさんの言葉だそうね。彼はよほど貴方を、思いを込めて鍛え育てたいみたい」
だから、帰りましょう、と。
その言葉に――ソルスは弦の切れた弓を手から落として、投降の意思を示した。
セリオスが配下達を捕縛して、戻ってくる。
「市街に他の戦力はないようだ」
「じゃ、これで戦いも終わりだな」
ハヤトは荒野の方を見やる。
クロックワードはヒゼンベルク側に戻り、剣士団は敗北に終わっている。ソームダリア勢力は勢いを失い――戦いが収束していた。
内乱の企ては、阻止された。
冒険者達が謀略を挫き、勝利したのだ。
戦闘の事後処理が進む中、皆も市街から外に出ると……ロゼットが遠くに立つ人影に気づく。
「心配で、ここまで来てくれたみたいね」
それが誰かは、ソルスにも判っているようだった。
ここでは珍しい、ドワーフの姿――ダックルだ。
冒険者達はソルスを彼へ引き渡し、後は任せる事にする。ソルスを小突いて、それから頭に手を置く……そんなダックルの姿を、皆は遠目に眺めていた。
「もう、大丈夫だろうな」
カインの言葉に皆は頷く。
裁かれるべき行いについては、裁かれる。そして、鍛冶師としての第一歩をようやく踏み出していく事だろう。
アルベルトは見回す。
「内乱計画の内情についても、あいつは色々知ってるんだろ?」
「あの調子なら、知ってる事は話してくれるだろうな」
江流も言って軽く息をついた。
全てが明らかになるのも間もなくだろう。
いつしか砂塵が晴れてゆく。皆は覗いた青空の眩しさに瞳を細めて――今行うべき事の為に、歩き出していった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜8人
2022年02月24日 21時25分31秒 公開
相談掲示板
カイン・ステラ、シューターだ。 よろしく。 今のところは後方から遠距離攻撃持ちを狙っていく予定。 ソルスは色々吐いてもらわないといけないことあるんで、捕縛ということでいいよな?
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は今回、地上で『幹部』と『配下(短剣持ち)』と闘う予定だ。 とは言え、必要とあれば建物上に行くつもりだ。 >ステラさん ソルスは、生け捕りで良いと思うぜ
シーフの海神江流だよ。今回はよろしく頼むね。 建物への上りは母蜘蛛糸のロープを持ち込んで見ればスキルなしでもスムースに行けるんじゃないかと思うんで持ち込んでみるつもり。 敵の構成見る限りでは壁歩き的なスキルを持ってるかどうかわからんけど、持ってないならこれだけでも敵に対して戦場の切り替えで不利にはならないと思う。 今の所味方にヒーラーが居ないし、術師を早めに潰したい気はするかな。 壁歩きケチった分でホライゾナルジャンプ持ち込むんで、敵の前衛をパスして突っ込める筈。 魔乱印も持ち込んで敵の火力、回復力を下げておきたいところだね。
遅くにゴメンなさい。ヒーラーのロゼット、お手伝いするわ。 回復系は用意していくから、そちらは任せてちょうだい。 相手は弓持ち多数だから、戦闘開始は敵味方の距離が 20スクエア以上から始まるくらいの気持ちでいましょう。 >標的 カインが射撃武器持ち、アルベルトが配下(短剣)と幹部、 江流が術師を狙ってるわね。私は配下から順に狙っていくわ。 >母蜘蛛糸のロープ ゴムみたいに伸びるなら、特に降りるのは楽そうね。 切られたら落下だから、周囲に敵がいないかは気をつけて。
おーっす! 遅くなっちまってすまねぇ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 術士が厄介だろーから俺も江流と同時に魔術師から潰しに動くぜ。 その後はソルス狙いで捕縛に動く予定だ! 壁歩きが無くても何とかなっちまいそうな気もするから俺もホライゾナルジャンプあたりで対応すんぜ!
・・・ん、顔だし遅くなってすまない。シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえずソルスが弓持ちかつ指示を出すのを見ると分断したほうがよさそうだから最初に濃煙でソルスの視界を塞いで指示を出せないようにして、その間にハヤトたちが魔術師をつぶしてもらえば有利にはなりやすくなりそうか。 そのあとは俺は天眼で戦場を見つつそれぞれの援護に動こうと思う。 あとは碁盤目状の街だから場所がわからなくなりそうとも思えるから位置感覚を持っていくつもりだ。