素描~狼男殺人事件

瀬川潮♭

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シナリオID:1854

オープニング

●真犯人?
 エラトゥーン都市同盟のどこかの町のどこかの屋敷で。
 ソファの並ぶ応接室では暖炉の火が静かに燃えていた。
 その静寂を破るように、誰かが口を開いた。
 似顔絵師の授恵者、ロデ・ラークである。
「もしかして……この町に人狼伝説なんか残ってないですか?」
「人狼……まさか、今回の犯人は狼男だとでもいうのか?」
 ロデを雇った館の主人は意外な言葉にパイプを取り落としそうになるのだった。

●あらまし
 事件は数日前に起こった。
「う、うわっ!」
 朝日も昇らぬ未明の薄闇の中、町の往来で若い男性の死体が発見されたのだ。
 第一発見者は農家の老人。市場に野菜を出荷する途中で気付いた。
 被害者男性は大工見習いの男性。身よりはなく、弟子入りした大工の親方宅に住み込みで働いている。
 ちょうど、満月の夜だった。
 死因は、獣と思しき存在に首をかみ切られたことによるものと見られている。ほかに外傷はない。
 このため、町の近くの森に出没するオオカミが町に入り込んだものと守衛兵は判断。田舎の小さな町なので警察組織である衛兵は少なく、すぐに住民有志による自警団も組織された。
 しかし町中の捜索や周囲の山狩りもむなしく、オオカミは発見されなかった。
 森に出没するオオカミは毎年、近辺の森を群れで移動している。
 今年はオオカミの目撃情報は少ない。
「オオカミの仕業ではないのではないか?」
 そんな声もあがるが、被害者の外傷から人の仕業ではないと誰もが認識している。さりとて、ほかに人を襲って首に噛みつくような獣は思い当たらない。魔獣などとも縁のない地域だ。
 事件は迷宮入りした。

●ロデと冒険者たち
 ロデがこの町にいるのは、この町の名士の一人が冒険者街の一角にある帽子屋の主人と親しかったから。その帽子屋は似顔絵師としてロデを雇っている主人で、茶飲み話としてロデと冒険者が「吸血鬼殺人事件」のあった屋敷で事件を解決していることを得意客に話していたためだ。
「ロデさんや。ちょっと冒険者ギルドに話を通して屋敷の警護に行ってきてくれんか」
 となったわけで。
 タイミングは事件直後。
 警護を依頼した町の名士は、町はずれの小高い丘に屋敷を構えていた。町なかと森の捜索で人が出払う中、屋敷の立地から特別に護衛や捜索をする人員を欲したのは自然な流れだ。それだけの財力もある。
 ロデたちが到着した時はすでに事件発生から数日経過していた。
「オオカミや獣の仕業ならまだ油断はできない」
 妻と娘息子もいるため、館の警備と犯人捜しをお願いされた。
 そして事件のあらましとその後の調査を聞き終わったとき、ロデが言ったのだ。
「もしかして……この町に人狼伝説なんか残ってないですか?」
 と。

「主人は狼男の存在を否定したが、一応調べてみた方がいいかもしれない」
 屋敷の警備は一人で、ほかは自由に捜査してくれて構わないと言われているので自由に動けるからだ。
「オオカミの仕業なら自警団の捜査で見つかる。それよりこのまま犯人がすでに町周辺を離れていた場合、落としどころが必要になる」
 ロデ自身、田舎町の名家から家出した身。最終的に住民の疑心暗鬼が残り治安が乱れたことを目の当たりにした。
「時が解決した時のためにも、少し住民にも分かるように調査しよう」

 こうして、人狼探しが始まった。

解説

 殺人事件のあった小さな町で、存在しない人狼の調査をして「狼男が流れて来て一人を殺して満足してどこかにいったのかもしれない」という雰囲気を作ってください。 【注意】  真犯人は不明のままの結末になりますが、事件の真相は「流れてきた狼男による犯行で、犯行後すぐに町を出た」です。この事実が証明されることはありません。  上記の【注意】を踏まえて、町の下記を調査・聞き込みしてください。 ・町に多数ある宿屋の宿泊者調べ ・町の図書館にある文献調べ ・町の飲食店で来客によそ者がいなかったかの聞き込み(バスタなど飲食可) ・町の過去に詳しい老人へ言い伝えなどの聞き込み ・町の問屋など物流関係者への外部流入者の聞き込み ※すべてを網羅する必要はなし また、屋敷を守って息子に剣の稽古をつけたり、屋敷近くの森を探索することもできる

マスターより

 ふらっと、瀬川です。  相変わらずタイトル詐欺的な内容ですが、冒険者がスムーズに介入できる殺人事件というとこういうのかなぁ、と。 【重要】 Q:この依頼で何を楽しめばいいの? A:真相究明ではなく問題解決のための行動を楽しみ、結果としてそれが受け入れられることがやりがいとなります  つまり、「どうせ迷宮入りだから」と何もしなければ「冒険者の事件解決に向けた活動が住民に受け入れられなかった」ために、依頼として失敗します。やったことにより住民が安心できれば成功で、やりがいとなります。  逆に、 ※デートしながらや食べ歩きしながら捜査もできる  ということです。  解説以外にも行動案があり、妥当であればその行動も描写されます。

リプレイ

●
「どう思う?」
 サイラスが町の名士の屋敷の門柱に背中を預けて腕組みしたままつぶやいた。横目で仲間の様子をうかがう。
「死亡原因は獣のアギト。それ以外の証拠からは人間の仕業。……だから犯人は人狼!」
 隣に立つ甍・ヒネモスが背の高いサイラスを見上げて元気よく言い切った。
 ん?
 そうでもない。
「……みたいな?」
 甍、言葉を続けて濁し、いたずらっぽく笑った。これに釣られたかサイラスも、にやり。
 これにフリックが言葉を加えた。
「まぁ……はっきり分かる原因は獣の噛み傷だけ。そのほかはな……」
 現状の確定事項である。サイラスも無言で頷いた。
「夜中だもんねぇ~。僕だったら大きな音がしても起きないかなぁ~」
 その横でのんびりした声が。
 御邑 都である。
「えと。……姉、の都……は、一度寝ちゃうと……」
 都の隣には妹もいる。名は、御邑 奈月。黒羊のぬいぐるみを抱きしめている。
「月ちゃん、なに言ってるのぉ~」
 姉の言葉の方が早かった。別に奈月の口をふさごうとしたり言葉を遮ろうとした意図は全く感じられない。二人にとってはごくごく自然な会話の流れのようで。
「なかなか起きない? 分かる分かるー」
 甍、猫尻尾とアホ毛をぴきーんと立ててひらめくと口を挟んだ。奈月は無言でこくこく。
「そっとしといたほうが良かったんじゃねぇか?」
 フリックは首に巻いたマフラーで口元を隠してこっそりと突っ込んだ。
 が、しかし。
「だよねぇ~。フカフカお布団の中、気持ちいいからねぇ~」
 明るく同意する都に頷く甍を見て、まあいいかと思い直したり。
 一方のサイラス。
「音か……」
 鼻先を上げて空を見やり、考えた。
 そこでロデ・ラークが門から出てきた。
「昼食はメイドさんにキャンセル入れてきたから。……じゃ、これからは各自自由行動ということで」
 町に繰り出し捜査開始である。

●
 そして現場の往来。
「ま、現場百篇って言葉もあったっけ?」
 ロデがそう言って頭をかいているのは、結局ほぼ全員がここに来たためだ。
「犯人は現場に戻る、ってのもあったような気もするしねー」
 甍は頭の後ろに両手を組んで周りを気にしている。
「しかし、人狼ってホントに居るんかね?」
 そう呟いた時、誰か来た。
 老婆である。
「……祟りじゃ、奴はかの村の祟りじゃ! あくまで着た切り増えよ服……。その者蒼き衣を纏いて、そこら辺に降り立つべし」
 ぶつぶつ呟いて去っていく。周りにいた村人は「またあのおばあちゃんが妄言を」など囁きあっている。
「ビンゴ。ちょっといってくる」
 甍、ピンときて調査に乗り出す。
「人狼かぁ」
 見送ったサイラスもそう呟いた。
 まさか誰も「欲しい」という感情が隠れているとは思わないだろう。
「欲しい、とか?」
 あ。
 ロデ、ダイレクトアタックした!
「なぜだ?」
「ペットを連れてるし」
 ロデ、サイラスの連れてきた狼……いやいや、これは犬である。狼の被害が疑われるとことにそんなデリカシーのないことはしない。
「ペットならコレで十分。……聞き込みをしてくる」
 サイラス、そのまま背を向けた。
「じゃ、俺はこっちに聞き込みを」
 言葉少なに伝え、ロデも行く。

 残されたのは都と奈月の姉妹である。
「えと。……先ずは、事件、現場を……」
 奈月がスカートの裾を地面に触れないよう畳み込むようにしてちょこんとしゃがみ込んだ。
 でもって、地面に顔をぐぐーっと寄せるように注視したかと思うと、しゃがんだまま体を揺するように小さく前進する。
「月ちゃん、何調べてるのぉ~? 僕も手伝うよぉ~?」
 都もスカートの裾を畳みこむようにしてちょこんとしゃがんだ。まだ何を手伝っていいか分からないので奈月より真剣ではないしゃがみ方になっているが。
「……え? 何を……調べて、いるのか……です、か? ……え、と……」
「そーかぁー……足跡を調べてるのかぁ~。なら、僕も真似してみようかなぁ~」
 奈月から話を聞いて目的がはっきりすれば、一生懸命。都、看破を用いながら頑張る。
「……」
 奈月も都のやる気を見て、頑張る。
 なお、事件からは数日が経過している。
 いくら奈月が残された足跡などの痕跡から大まかな身長や歩幅を割り出そうとしてもさすがに無理があった。
 が、都の看破はしっかりとした結果を見つけた。
「何だろう……毛かな……これ?」
 都が地表に残る一本の毛を発見した。
「……犬や猫……と違って硬いかなぁ~。抱っこして寝てもふかふか感がないかもだねぇ」
 毛をつまみ上げて分析する。寝心地とかで判断するあたりあやふやな印象だが、こと都が言うと間違いがなさそうである。
 そして奈月はピンときた。
「……!」
「あれ? 月ちゃんが驚いてる、けど……?」
 奈月、立ち上がる。
 そして続いて立ち上がった都の手を取った。
「思い、ついたことが……あります……」
 そのまま手を取って二人一緒にどこかへ移動した。

●
 そのころ、フリック。
(……村人が欲しいのは「安全」だろうな)
 どこかに向かいながら思う。
(もちろん、犯人や事件の真相がはっきりするに越したことはねえが……)
 無理な時もある、と思ったところで足を止めた。
 自警団の詰所に到着したのだ。
「おお、あんたは屋敷の主人が依頼した冒険者だったね」
 フリック、無言で頷く。根回しはしっかりしてあるようだ。
「村の中で『隠れられそう』なところはないか?」
「狼が、かい? 村の中は散々調べた……」
「いや、じん……人が、だ」
 人狼はまだ伏せた。
「それは住民の誰かが犯人だということか? 死因の噛み傷からありえんし、被害者に襲われる動機もない」
 自警団、従って狼に襲われたとしか考えられん、と説く。
 ただ、町の名士からの肝煎りだ。自警団はフリックに好意的である。
「まあそれでも外部からの犯行ということもあり得る。狼にしても人にしても身を隠しそうなところはちゃんと調べたがな」
「分かった。ありがとう」
 それだけで辞した。もとより議論のために来たのではない。
(調べてんのは承知の上さ)
 何かあるなら、すでに出ている。
 出てこないとすれば、目線の差か?
 そう思考を巡らせたときに、無邪気に遊ぶ村のちびっ子に目が行った。
「なあ。かくれんぼで絶対に見つからないところって、あるか?」
 そう聞いた。
 子供は大人が意外と気づかないところにも目端がきく。
 聞く価値はある、との判断だ。

 一方、サイラスは町はずれの鍛冶屋を訪れていた。
「どうされました?」
「冒険者兼鍛冶師だ。事件の情報収集をしている」
 応対した弟子にそれだけ告げると、親方らしき人物が出てきた。頑固者のようで、口元がひん曲がっている。
「ウチに聞きに来ても何もねぇぞ? 同業者に教えるこたぁ何もねぇ」
 睨まれた。
「同業以外、耳で聴き分けて打ってるのを知る者もいまい。……事件の夜、変わった物音を聞いてないか?」
 サイラス、手短に聞いた。
 ほう、と親方。口元に微笑が浮いた。
「変わった物音はなかったな……それより、おい。客人に紅茶と焼き菓子を出せ」
 弟子に指示する。気に入られたようだ。
 ちなみに気に入ったといえば。
「すまない。この町特産の焼き菓子はあるか?」
 サイラス、町の焼き菓子屋を訪れていた。鍛冶屋を辞したのちスイーツ食べ歩きに出発したのだ。
「あらまあ、この町は初めて?」
「そうだ。さっき茶菓子にいただいたら美味くてな」
 店員にそう言って会計。手が触れた時にエンパシーをしてみるとかなり好意的だ。
「あと、事件のことで聞くが……」
 捜査を進めていく。

 別の場所で、甍。
 現場で妄言を吐いていた老婆を追って、実家まで来ていた。
「ウチのおばあちゃん? 確かに夜に徘徊することもあるけど、あの晩はおとなしかったですよ」
 家族の応対がはっきりしているのは、すでに自警団からも聞き取りされていたから。
「青い服を着た人を見たのかと思ったんだけどなー」
 甍、しれっと言って反応を見る。
「月夜の晩ですから青く見えるのかもしれませんね。青い染料の服を着る人なんてこの町にはいないのに」
「それはどうしてかな?」
「古い時代、青い旗印の軍隊に酷い目に遭わされたことがあったから。……それより、あの晩は本当に徘徊してないんです」
 んー、と考えた甍。礼を言って聞き込みを打ち切った。
 で、次に訪れたのは町の宿屋だった。
「事件前後に『青い服を着た』泊り客がいなかったか、ですって?」
 女将が復唱した。
「そう。事件前に来て、事件後にそそくさ帰った客とか、居なくなった客とか……」
「この時期にふらっと来る人は少ないからねぇ。それに、常連の行商人さんなら住民感情に配慮して青い服ってのはまずないし……」
 めぼしい成果はなかった。
 ただ、冒険者が思いもよらない目線で捜査している、という噂は広まった。

 捜査は続く。
 ところ変わって、町の図書館。
「……ん」
 奈月が黙々と文献に目を通していた。
 集中力は高く、周囲で物音がしようと動じない。まるで姉に都が一度寝ると爆音が響いても……
 あ。
 奈月、ずり落ちたメガネに指を当てて直した。
 一瞬だけ集中を切らした時、姉の都がやってきた。
「月ちゃん月ちゃん、ほかにもあったよぉ……」
 両手に本の束を抱えている。
「ほらほらぁ、町史に町の伝奇に……ちょっと範囲を広げて、この地域一帯の記録もあるよぉ」
 都、どさりと奈月のそばに本の山を築く。
「……こ、この中……に、人狼伝説……があれば……」
 結構な量だが奈月、くじけない。
「大変だよねぇ。僕も一緒に調べるよぉ~」
 こうして姉妹仲良く並んで座って、文献を調べる。
 あまりの可愛らしさに、書庫整理をしていた司書のおばさんが声をかけてきた。
「あらまあ、熱心だこと。何か調べもの?」
「うん。僕と月ちゃん、この町に人狼伝説がないか調べてるんだよぉ~」
 外向的な都がにこぱと顔を上げておしゃべり。どちらかというと聞き取りから得られる情報の方が多そうだ。
 対して、奈月。
「……! 狼……被害が、本当に……多い」
 内向的だが資料検索はお手のもの。関連項目からも幅広く情報収集している。

 こちら、フリック。
「あら? 先も猫ちゃんみたいな女の子が宿泊客のことを聞きに来たねぇ」
「ああ……」
 宿屋に聞き込みをすると先に甍が来ていることを知った。
「甍が客のことを聞いたんなら、オレは住民の動向が知りたい」
「村人を疑ってんのかい?」
 宿屋の女将、驚く。
「そうじゃねぇ……そうではなく、『いま町にいる人間は信用できる』って証明が欲しくてね」
 外から来る人がどう思うか聞けるのは宿屋だろ、とここに来た理由を伝える。
「そうねぇ。当時は常連客ばかりだから意味はあるわねぇ。……ただ、そうしたお客さんも特に町で変わった様子はないって言ってたわね」
 女将は冒険者たちの多角的な捜査に感心していた。
 フリックのこうした調査は宿屋以外に問屋などにも及んだ。

 ところで、サイラスのスイーツ食べ歩きはどうなったか。
「別に食べ歩いているわけではないがな」
 あ。
 突っ込まれた。
 なお、このセリフは地の文に対してのものではない。
「ちぇー、残念」
 どうやら甍と出会ってしまい、聞き込みの途中で購入した焼き菓子の折り詰めを見られて突っ込まれたようで。
 で、甍が続けて聞く。
「それじゃなんで自警団の詰所に?」
「確かめたいことがあってな」
 どういうことかというと。
「さすがに遺体は親族に返して埋葬も終わってるよ。……まあ、記録は残してるから対応はできるけど」
 遺体の検分目的だ。
「知りたいのは噛み傷の角度だ。丸太はあるか?」
 サイラス、丸太を用意してもらうとそれを立てて置き……
「皆、十分離れろ……噛み痕はワイバーンで申し訳ないがな」
 三叉槍「月紅」を掲げ魔法攻撃!
 鳥獣戯だ。
 ワイバーンの姿を再現した攻撃で丸太が吹っ飛ぶ。
「上からの攻撃だとこんな跡が付くが……」
 自警団を振り返る。
「ああ。そんな感じで上からのしかかってたような感じだ。下からではなかったな」
「遠くから跳躍してれば足跡も残りにくい、ってことかー」
 ふうん、と甍も納得する。

●
 で、その日の晩。
「狼男の決定的な材料もない、か」
 館の応接室でロデがため息をつく。気分を変えるため、目の前にあるサイラスのお土産に手を伸ばした。
「……はい」
「月ちゃんがあんなに調べたんだから間違いはないんだよぉ~」
 申し訳なさそうに小さくなる奈月に、むしろ胸を張っている都。ロデに他意は全くないが、二人の性格だろう。
「ただ、傷口は人のモノではない」
「のしかかった感じだから人の跳躍力じゃないよね~」
 サイラスと甍が言う。
「そして、当時町にいた誰もに怪しい動きはなかった……つまり、夜のうちに町に入り、夜のうちに出た、か」
 フリックが考え込むように結論付けた。
 で、改めて顔を上げる。
「どうすんだ?」
 その時、館の主人がやってきた。
「ロデさん、すまない。自警団の人が話があるようだ」
 主人に続き、自警団の数人が応接室に入ってきた。サイラス、焼き菓子の量を増やす。
「狼男について調べていたようだね」
「そうですね」
 聞かれたロデ、慎重に答えた。
「……いましたか?」
「いや」
 慎重。
「……それ、利用させてもらっていいですか?」
 自警団の方から切り出した。
「いいんですか?」
「いやもう、手詰まりでね。これ以上、自警団の捜査人数を増やしておけない。みんな日常生活がある」
 どうやらすでに音を上げる寸前だった様子だ。
「あなたたちの調査に好意的な住民が多くてね。さすが外からの目線を持っている人は違う、と」

 サイラスは鍛冶屋の親方を思い出した。
 甍は宿屋の女将の様子にピンときた。
 フリックはちびっ子たちの顔が浮かんだ。
 そして、都と奈月は図書館の司書が思い当たった。

「オオカミを調べる山狩りでも、何も出なかった。これから被害がないなら、落としどころが欲しい」
「何か口裏を合わせましょうか?」
 ロデ、奈月や甍がそうした考えがあることを事前に聞いていた。
 が、断られた。
「いや、噂のままで終わらせたい。狼男が便利なのは、月夜の晩だけ自警団の夜警人数を増やせばいいだけだから」
「分かりました。では『人狼が流れて来てたまたま』とのうわさで」
 ロデの言葉に自警団は満足した。
「はい。月夜の晩は着るものも蒼く見えることもある、くらい説得力のあるあやふやさで」
 自警団、甍を見てにやり。
 この時、フリック。ひそかに微笑していた。
「それが一番、いい」
 満足そうに、焼き菓子に手を伸ばす。

 実際、その後に被害はなかった。
 住民はロデたちに対し「あれだけ調べてくれたのだから」と感謝したという。

マスターコメント

捜査活動、お疲れ様でした。 誠実な捜査は町民にも理解され、安心につながったようです。 真実は闇の中にならざるを得ない中で、皆さんが輝いていれば幸いです。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜6人

2022年02月04日 10時57分35秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. フリック

    フリックだ、キャスターやってる。 ……っても、挨拶時点じゃオレしかいねぇか。 ま、「まだ中に殺人犯がいるかも?」じゃ不安だしギスギスするよなぁ。 一番重要なのは「もうここにはいない」ってところか……

  2. 御邑 奈月

    え、えと…。 み、御邑 奈月…です。よろしゅく…お願い、しまふ…。 そ、その…姉と一緒に行動…します。 気になった、事柄を…中心に…色々してみたい…と…。

  3. 甍・ヒネモス

    みなさん宜しく、イラカだよ。 「犯人捜し」、じゃなくて「住民が安心できる落とし所」探しね。 たぶん最終手段は 事件の関係者(自警団含む)と口裏合わせして 「隣町で犯人捕まったらしい」 って噂を流して住民の不安を取り除く方法かな?

  4. フリック

    >犯人が捕まったという噂 んー、そうすりゃもう「ここでは事件が起きない」という話にはなるが……どんな奴だったのかとか興味をそそっちまわないか? 「もう捕まってる」なら危険はないから踏み込んで調べようって奴もでるかもだし、被害者はこの村の人間だ。償いをさせろ、って話になるかもしれねぇ。 冒険者をぽんと雇えるレベルの名士もいるなら、その辺の手配を求められたらやるかもだしな。 まあ、別に「ここで事件を起こしたやつ」と特定せずに「狼男みたいな魔獣だか何だかがどっかで退治されたという噂を(村に来るまでに)聞いた」ぐらいならありか? あとは、疑心暗鬼を起こさず、住民が安心できる、となると「村の人間以外が(現在も)潜んでいる様子はない」「村の人間にも怪しいところはない」ってところじゃねぇかなぁ。 村の外の存在が犯人なら戻ってくることもあるのでは?って話だけが厄介だが……「狼男の伝説」でふわっと「縄張りをつくるより尻尾を掴ませないようにどこまでも流れていくタイプの存在」みたいな話をうろ覚えって感じで流すとか……

  5. 甍・ヒネモス

    あー、言葉足りんかったねー。 事件関係者や自警団と口裏合わせってフリッツの言う「事件に踏み込んでくる人への対策」なんよー。 その手の人らって先ずは事件関係者や自警団に接触してくるじゃん。 その段階で即真実を全部伝えて嘘の協力者側になってもらうの。 害意も悪意も全く無い、住民の為の優しい嘘なわけじゃん。 冒険者が調べた結果、至った手段って説得理由も有れば全然いけるって。

  6. フリック

    >口裏合わせ あー、いや、自警団って「オレ達が安心させるべき村民」側だよな? だから自警団に「口裏合わせ」するなら、「事実」として「犯人は隣(じゃなくても他所)で捕まった」という話をしなきゃならんし、そしたら自警団としては確認したくなるんじゃないかと思ってなー。 OP読むに「犯人・事実は実際には明らかにはならないだろうけど、それが禍根にならないようにしてほしい」ってのは、村の名士や自警団側ではなくて、そこに頼まれたロデの思惑だろうし。 なんで、「(この件の犯人かは分からないが)どっかでそんな感じのやつが捕まったらしい」って噂話ぐらいまでじゃねぇかな、って。 噂だから何処の話かも正確にわからないし、この村の事件の犯人なのかもわからない。でも村にはもういないっぽいしどっかに流れたなら、そういうこともあるかもしれない。 そんぐらいで。 そういう話を割合積極的に自警団や有力者の耳に入れる、ぐらいならいけると思うぜ。

  7. 甍・ヒネモス

    んー、最後にどうまとめるかはともかくとして、 みんなで真面目に動けばそうそう悪い結果にはなんないのよ~。 まぁ気楽にいきましょ♪

  8. フリック

    ん、まあそれもそうか。 ぐだぐだ言って悪かった。

  9. No.9

    サイラスだ、よろしくなー 死体発見現場辺りから探そかなと。 後は噂なら扇動や話術なんかで最後の方やれるかなと

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0