誰よりも大切な貴方と、いつでも傍に在るように
真柄 葉
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シナリオID:1848
オープニング
――咲くは白亜の神殿、氷の華。
――――時空を越えて輝く、希望の光。
――――――ふたつ、御手に希がうもの。
――――――――それは世界を祈り続けた男が植えた一輪の花であった。
そんな伝承が残る辺境都市群北部の街『カサルヴァ』。
人口1000人ほどのこの街は、かつて神具『氷の華』が収められた『冷脈の遺跡』の見物客でにぎわう観光都市であった――。
「ほっっんと、ありがとうございました!!」
天下の往来でハーフリングの女性『フェト=ネト』が額を地面にこすり付けんばかりの勢いで頭を下げた。
「ま、まだお祭りの本番は先ですから。どうか顔を上げてください」
そのあまりの勢いに、礼を向けられたコルネリウス・アーラの方が驚く。
コルネリウス達冒険者は、依頼を受け『カサルヴァ』の観光アドバイザーとしてこの地を訪れていた。
観光の目玉であった神具『氷の華』が破壊されてすでに一年余り。失われた観光資源はもう戻ってこない。
魅力を失った街からは、観光客の足音が消え、閑古鳥が鳴いた。
観光客に戻ってきてもらおうと、観光大使であるフェト=ネトが陣頭に立ち色々とやってみたが、どれも失敗に終わる。
街の人々の視線も冷たくなり始め、いよいよ後がなくなったフェトが最後の綱と頼ったのが冒険者達だった。
「どうよ、おばちゃん!」
「ああ、そうだね。とても綺麗だ」
「でしょ! きっと観光の目玉になるはずよ! これなら絶対観光客も戻ってくるわ!」
「まぁたあんたは。まだお客が戻ってきたわけでもないのに、よく言うよ」
露店のおばちゃんに呆れられながらも、フェトは確かな手ごたえを感じていた。
視線を移せば街の通りを埋め尽くす『氷花』達。
透明な氷に封じ込められた色とりどりの生花。
美しいままに時を止めたフロストフラワー。
雪の結晶を模した氷の彫像達が彩を添え、そこはまるで氷の花畑の様であった。
街を彩る『氷花』は、冒険者達が提案し設置したもの。
今は失われてしまった神具『氷の華』を思い浮かべられるように。
それは確かにここにあったと、知らしめるように。
フェトから『氷の華』の欠片を見せられたコルネリウスは、真っ先にこのアイデアを思い付いた。
失われてしまったのなら、新たな花を咲かせばいい。
その名の示す通り、氷で出来た花達を。
コルネリウスが語るアイデアに、フェトは聞き惚れた。
瞳を閉じて頭の中でその情景を思い描いた。
陽の光を受けてキラキラと輝く氷の花。夕焼けに赤く染まった大樹氷。
星々の下で輝く、『氷の華』の子供達。
これなら必ず観光客は戻ってきてくれる。フェトはコルネリウスの話に確信した。そして決意した。このお祭りは必ず成功する――いや、成功させると。
「明日、追加のお花も届くはずですから、街はもっと華やかになりますよ」
「うぅ……! 楽しみです! この殺風景な街がどんな風に生まれ変わるのか!」
殺風景で悪かったねと露店のおばちゃんの冷ややかな視線を浴びつつ、フェトは再びコルネリウスに頭を下げた。
●
日は進み、祭前日。
本番は明日であるのにもかかわらず、噂を聞き訪れた観光客で街は昔の賑わいを取り戻しつつある。
「宣伝って、こんなにすごい効果があったんですね……」
賑わう街並みを見て、フェトは呟いた。
観光都市を謳っていたかつてのカサルヴァが返ってきたと、喜びに震えている。
「そうですね。お客様を呼ぶ為の最大の障害は、その行事やその場所を『知らない』という事だと思います。興味を持ってもらえるかどうかは、受け取った側の気持ち次第になりますけど、そもそも知ってもらわないとその判断さえしてもらえません」
相変わらず大袈裟だなと思いつつも、コルネリウスはフェトと共に街を歩く。
祭りの準備の最終調整に入っている仲間達に手を振りながら、コルネリウスは自ら営む花鳥園で得た知識と経験をフェトに話して聞かせた。
「もちろん、ただ言いふらせばいいっていうものではありません。情報を必要としているだろう人を選んで、お声をかけるんです。街往く人全員に声をかけていたら日が暮れてしまいますからね。
例えば今回のお祭り。これは家族連れより恋人同士向けのイベントですから、自ずとターゲットも絞れるわけです」
コルネリウスの話す内容を、フェトは一言一句逃すまいと取り出したメモに書き込んでいく。
そんな様子を微笑ましく思いつつ、コルネリウスは改めて街の様子を見た。
初めて訪れた時の寒々としていた街の様子は、もうどこにも見えない。
通りは『氷花』で彩られ、日の光を受けキラキラと輝いている。
どんよりと暗かった街の人達に顔には笑顔が浮かび、訪れた観光客達からはすでに絶賛する声が零れていた。
閑古鳥が鳴いていた宿からも、観光客で部屋が埋まったと嬉しい報告を受けている。
この調子だと街から少し離れた温泉も、きっと賑わってくれるだろう。
「今夜の点灯式が楽しみですね」
「はいっ! もう大成功です!」
「まだ始まってませんってば」
ググっと拳を握り瞳に炎を宿らせルフェトに、コルネリウスは苦笑する。
なるほど、露店のおばちゃんはこういう気持ちだったんだと、小さなフェトを見ながら感じた。
こうして冒険者達がプロデュースした氷の花のお祭りの準備は整った。
氷の花に彩られた街並みは、ロスガリアのどの街よりも美しく輝いて見える。
コルネリウスの、そして仲間達の想いを乗せた氷の花の祭典は、いよいよ明日、本番を迎える――――。
解説
マスターより
リプレイ
誰もが息を飲み、その光景を見つめていた。
「とても素敵な点灯式でございましたね」
「ええ。確かにあれなら目玉として十分機能してくれそうですね。元々観光都市であったので素地はあるでしょう、これを維持し話題提供を続ければ復活もそう遠くはないかもしません」
点灯式を終え、宿に戻ったネーヴェ・グラヌローザとキーゼは、用意された部屋に向かい廊下を歩く。
「そんな事よりも、僕はネーヴェの不意打ちの方に驚きましたが」
「ふふ、たまには私からというのも悪くございませんでしょう?」
「そうですね。ですが、やられっぱなしもなんですので、お返しを」
と、キーゼはネーヴェに顔を寄せた。
「――っ。もぉ、人が見ていますよ」
「そう言いますが、祭会場の方が多かったと思うのですが?」
廊下をすれ違う従業員や客達から視線やら歓声を送られ、ネーヴェは照れ気味に抗議するが、キーゼは何食わぬ顔で彼女の手を引いた。
滅多に泊まる機会のない高級宿にテンションが上がったハル・チフ。恋人のエルシー・サリバンを連れ宿の中を探検していた。
「なに、そのコートがどうかしたの?」
「ふえっ! えっと……」
石造りの高級宿をあちこちと連れまわし、ハルはとある場所で足を止める。
「えっと、エルに似合いそうだなって思ったのです」
「えっ私に?」
そこは宿の中に用意されていた小さなお店だった。
開け放たれた衣装棚の中には、揃いのコートが掛かっている。
「素敵だけど……お祭りの本番は明日だよ?」
と、エルシーが少し困ったように聞いた。
そう、明日は祭本番。きっと楽しい事が沢山待っているだろうし、お金も沢山使うだろう。今ここで散財するのは……。
「これなら学園にも着て行けると思うです。プレゼントするので、買っていいです?」
「えっ! だめっ!」
「だ、だめ……ですか」
「あっ違うの! プレゼントしてくれるって気持ちは嬉しいんだけど……これはなんか違う」
しゅんと大きな耳が垂れるのを見て、エルシーが慌てて弁明する。
「コート素敵だし欲しいと思うよ、でもこういう生活必需品的なものは自分で買いたいの。だからさ、一緒に買わない?」
「一緒に……?」
「うん。ダメ……?」
「だめ――なわけないのです! 嬉しいです! プレゼントは別の機会にするのです!」
不安気に問いかけるエルシーに、ハルはぶんぶんと頭を振った。
●
「はぁー! 最っ高!」
豪華な寝台にボフンと身を投げたサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。
恋人のハヤト=ガラン=ヴォルファングと共に高級旅館を隅々まで堪能し、部屋に入ってはその豪華さにまたまた驚いた。
「いやぁ、フェトには感謝だな! 仕事で来てこんな豪華な所に泊れるとはな!」
サフィラの横にダイブしたハヤト。仰向けに天井から吊るされた豪華な照明に手を伸ばす。
「明日はお祭りだし、温泉もあるっていうし、朝食も美味しいって噂だし!」
「ああ、宴はまだまだ終わらねぇ!」
「わはは、宴じゃ宴じゃーー!!」
「はっはっ、酒を持てー!!」
寝台の上でテンション高く笑いあう二人。
ひとしきり笑った二人に、ふと沈黙が降りた。
「……ハヤト」
「……サフィラ」
互いの名を呼び、視線を絡める。
二つの距離が縮まり、合わさった。
「……ねぇ」
「黙って任せとけ」
再び重なる唇。
「消すぞ」
「……うん」
ハヤトの投げたナイフが灯りを倒し、部屋に闇が訪れた――。
ガラスが嵌められた窓から街を見下ろす。
点灯式の火は落ちてしまったが、月明かりが氷花達を照らし出していた。
「心配ですか? 祭の事が」
「……はい、少しだけ」
絡ませた指に力が籠められる。
指に注意を向けたら、今度はグッと引き寄せられた。
不意打ち気味の抱擁に、コルネリウス・アーラが視線を上げれば――。
「――まだ不安ですか?」
「……ドキドキしています」
温もりが引いていく唇を押さえながら、イズレンディル・パラリムの微笑む顔を見る。
「それはきっと期待に胸が高鳴っているのですね。よかった、ネリーの心から不安が消えてくれて」
重ねていた指をほどき肩に回された。
「ディリー、ありがとうございます。いつも気遣ってくれて」
肩に回された手に自分の手を添える。
「……成功しますよね」
呟いたコルネリウスの長耳に、唇が触れた。
「もちろんですよ。ネリーがあれだけ心を砕いたのですから」
凛としたイズレンディルの声が心に染み入っていく――。
「……そろそろ休みましょう。明日も早いですから」
手を繋ぎ直し寝台へと向かう。
「それでは、おやすみなさいネリー」
寝台へ潜りイズレンディルが灯りに手をかけた。
「……ディリー」
「どうしました……?」
灯の向こうでコルネリウスの声が不安気に揺れている。
「……一緒に眠っても良いですか?」
恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見ている。
「もちろんですよ。今日は一緒に眠りましょう」
あの温泉宿では彼女が先に眠りにつくのを待った。その寝顔を見守るために。
だけど今夜は共に眠りにつこう。夢の中で出会えるように――。
イズレンディルは灯の向こうへ手を伸ばした。
●朝
「おぉ? またまた大量だね」
「おうよ! 食い放題だしな、全部平らげる勢いで食うぜ!」
「あはは、でもほどほどにね? 皆も食べたいだろうし」
「そういうサフィラだってなかなかな『山』だと思うぞ?」
「そ、そう? これくらい普通だよ……ね?」
そう言って二人は周りの机を見渡す。
「……あ、あれ?」
「……サフィラ、こう考えるんだ。これは『補給』だと! 失ったエーテル力を補充しているのだと!」
「失ったって……ちょ、ハヤトっ!?」
何を失ったのか感づいたサフィラが耳を赤く染めた。
「賑やかですわね」
「祭に備えて減った体力を回復しているのでしょう。必要な行動です」
ハヤト達のやり取りを隣の机で聞いて居たネーヴェとキーゼ。
「あなたが言うと……いえ、なんでもありません。それより、そちらの料理のお味はいかがですか?」
「悪くないですね。食べてみますか?」
「よろしいのですか? では――――え?」
ありがとうございますと頭を下げフォークを伸ばそうとしたネーヴェの前に、突然料理が伸びて来る。
「味が混ざるといけませんからね」
「……ふふ、そうですわね」
差し出されたキーゼのフォークに、ネーヴェはぱくりと食いついた。
「大人数での食事は懐かしいですね」
「ディリーはいつも旅をしていますから」
イズレンディルとコルネリウスは、同じ皿をシェアしながら言葉を交わす。
仲間達の楽しそうな会話を聞きながら、昨日までの仕事を思い出す。
また仕事の話ばかりと少しご立腹な彼女を宥めながら、甘い焼き菓子でご機嫌取り。
それくらいで誤魔化されませんと言いつつも、彼の差し出した焼き菓子にフォークを伸ばす。
祭本番の華やかさを思い浮かべながら、二人は食事を進める。
「「皆、おはよー!」」
ハルとエルシーが仲良く手を繋ぎながらレストランに現れた。
「皆もう食べてる。ハル、私達も頂こうよ」
「う、うん……ねぇ、エル」
「うん?」
「なんだか皆……昨日と雰囲気違わないです?」
なんとなく感じる艶やかな空気。ハルは仲間達を見渡し首をかしげた。
(あんまりそういうこと言わないの!)
(え、え、え?)
エルシーはハルの手を引く。
「何食べようかな。ねぇ、ハル、シェアして食べない?」
「え、あ、うん。いいですよ。その方が色々食べられそうなのです」
「それじゃ決まりね」
エルシーはハルの手を引き、料理の並ぶテーブルへ向かった。
●祭本番
宣伝の効果もあって、街には予想を超える人々が押しかけている。
「すごい、大成功ですね!」
「はい、本当に……よかった」
「ほら、皆さんの顔を見てください。どれも素敵な笑顔をしています。これもネリーが頑張ったからですよ」
イズレンディルは握った手に力を込める。ようやく顔を上げてくれたパートナーへ、労う様に微笑みかけた。
「夜とはまた違った趣がありますね。太陽に照らされる氷の花は、本当の花畑の様ですわ」
ネーヴェはキーゼと連れ立ち、陽の光を受け輝く祭会場を歩いていた。
「冬はどうしても花の数が少なくなりますが、こうして氷の花が彩れば――――キーゼさん?」
「どうかしましたか?」
「いえ、先ほどから街を見ず私ばかり見つめているものですから」
「当然でしょう。氷など見ていても何も楽しくありませんからね」
「もぉ、せっかく皆で作りましたのに」
じっと見つめてくるキーゼに、ネーヴェは苦笑を返す。
「あら? あれはホットワインですか。キーゼさん、いかがですか?」
と、ネーヴェはキーゼの後ろにワインの露店を見つけた。
「ふむ、ホットですか」
「あら、お気に召しませんか?」
「いえ、普通のワインであればこの氷で器を作るのも面白いのでは、と思ったもので」
ホットなら溶けますね、と露店へ足を向けるキーゼ。
「……やっぱり、キーゼさんは機転の塊ですわね」
そんなキーゼを、ネーヴェは嬉しそうに追いかけた。
街に夜の帳が下り、灯りの幻想的な光が、氷の花畑を照らし出した。
「すごーい! 点灯式よりキラッキラだ!」
光源が増しキラキラ具合がアップした花畑を前に、サフィラは興奮気味にはしゃぐ。
「確かに綺麗だな。こういう幻想的な雰囲気も似合ってる」
「うん! 氷の花を照明で照らす案は大正解だね!」
「ちげーよ。俺が言ってるのはお前の事だ、サフィラ」
そう言ってハヤトがサフィラの手を引いた。
「……ふえっ!?」
突然腕の中に抱かれ、サフィラは戸惑う。
「み、皆見てるよ……」
「氷の花見るのに忙しくて誰も見てねぇよ」
背中に回された手は、小柄なハヤトからは想像もつかない程力強い。
サフィラはお返しだとハヤトの背に手を回し力を込める。
「……ありがとう、ハヤト。キミでよかった」
二人は雪が降りだし、更に幻想的になった花園の真ん中で、互いの温もりを確かめ合った。
「やっぱり夜は冷えるのです」
「うん、コート買って正解だったね!」
エルシーとハルは、お揃いのもこもこコートに身を包み、夜の氷の花畑を楽しんでいた。
「お昼も素敵でしたけど、夜はとても幻想的です……」
「うん、何だか違う世界に迷い込んだような、不思議な気分になっちゃうね」
互いに手を繋ぎ光が映し出す氷花に魅入る。
「ねぇ、ハル」
「はい?」
「私にはまだまだ知らない事がいっぱいあるんだ」
「はい、僕もです」
「……これからも、一緒に見て、聞いて、感じて……覚えてくれる?」
「……一緒にいっぱい見て、聞いて、感じて……僕達の形を探していくのです。きっとこの広い世界のどこかに――――ううん、僕達二人でそれを作っていくのです」
「ハル……」
「その為にもまず――」
潤む瞳で見つめてくる幼馴染の髪をそっと撫でたハル。
「エルのこの綺麗な髪に似合う氷の華飾りを探さないとですね!」
「え……?」
突然の提案に、エルシーは目をぱちくりさせた。
「約束したのです。プレゼントするって」
そんなエルシーに微笑んだハルは、そっと顔を寄せた。
「ハ、ハルっ!?」
「早くしないと売り切れてしまうです! エル、急いで!」
驚くエルシーの手を引き、ハルは露店へと駆け出した。
●星雪の湯
雪原にぽかりと沸いた温泉は貸しきり状態。
「ハヤト、見えてるー! すっごいよ、あれ北壁山脈だよ!」
「ああ、見えてるぞ! ばっちりな!!」
誰もいない温泉に浸かり、衝立越しに相手と話す。
「(月が)おっきいねー! まん丸だよ!!」
「ああ、でっかいな……! 本能にビンビン来るぜ……!」
「う、うん? (雪も)キラキラ光を反射して……なんだか、食べたくなってくるね!」
「た、食べ、たく……!!」
「食べ……え?」
ハヤトの急上昇していくテンションに違和感を覚えたサフィラが振り返る。
「……まぁ、予想はしてたけど」
そして、静かに前を隠すと、湯から上がり洗い場へ。
「いいのか……! いいんだな、サフィラ!」
既に衝立の頂上に足をかけたハヤトに。
「いいわけあるか! こらーー!!」
サフィラ渾身の風呂桶がクリティカルヒットした。
「ここの景色は、私が目覚めて最初に見た景色に似ています」
男女を分ける衝立に背を預け、ネーヴェが呟いた。
「そういえば記憶喪失と仰っていましたね」
衝立を挟んだ反対側でキーゼが答える。
「なるほど、貴方にとってこれが原初の光景ですか」
「そう、ですね……少しだけ怖さを感じてしまいます」
「何もない白い世界が怖い」
「……はい」
ネーヴェの声が沈んでいた。
「しかしそれは、ある意味では幸運かもしれません」
だからキーゼは言葉を重ねる。
「え……?」
「貴方のその白い世界に、これからどのような色を乗せる事もかなう。これからも二人で色々な景色を描いていきましょう」
「……キーゼさん」
ネーヴェは潤んだ声音で呟く。
「そろそろ上がりましょう……あなたの顔が見たくなりました」
「ええ、喜んで」
ネーヴェの湯上りの音に合わせ、キーゼも立ち上がった。
「素晴らしい景色でしたね。またネリーと新しい景色を一緒に見る事が出来ました」
「はい。……でも、姿が見えないのに同じ景色を見てるって、何だか不思議な感じがしました」
二人きりの入浴を終え、帰路につく。
「距離があると流石に冷えますね。ネリー寒くないですか?」
何時しか雪がちらつきだした。
イズレンディルはコルネリウスの肩を抱き声をかける。
「ディリーがこうして一緒に居てくれますから」
彼の腕の中で彼女は微笑む。この時間がずっと続けと願う様に。
「ネリー、ずっと一緒ですよ」
「ど、どうしたんですか、突然」
まるで心の中を読まれたかと思えるタイミングで囁かれた言葉。
「どうしてでしょうか。なぜか今言わなければいけない気がしました」
おかしいですねと笑うイズレンディルの顔を、コルネリウスはじっと魅入る。
「ディリー、キス……しても良いですか?」
立ち止り彼の頬を両手で包んだ。
「どうぞ」
蕩ける様な笑顔に引き寄せられ、二人は唇を重ねる。
「……ディリー、ずっと大好きです……愛しています」
「私もです。ずっとネリーを愛しておりますよ」
吐き出される吐息が温かい。囁かれる言葉が心地いい。
互いの気持ちが心に染み入ってくる。
二人はどちらからともなく二度目のキスを交わすと、額を合わせ微笑み合った――。
満天の星空と、輝く氷華が彼等を祝福する夜は、こうして更けていく……。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年01月29日 05時56分13秒 公開
相談掲示板
氷華と温泉です! 自己紹介は不要な気もしますが、改めましてコルネリウスです。よろしくお願いします。 とても素敵なお祭りになりそうで楽しみですね。 二泊しても良いようなので、やりたい事によって決める形になるでしょうか。 皆で過ごす時間があっても良いなとも思いますけれど、主にペア同士で過ごす時間は多くなるでしょうか?
皆様お世話になっております、ネーヴェです。今回はどうぞ宜しくお願い致します。 コルネさんはお誘いをありがとうございました。とても素敵なお祭りで、今から回るのが楽しみですわ。 ペア行動が多くなりそうでは御座いますが、どこかで皆様ご一緒の時間も取れれば嬉しく思います。 朝食のビュッフェが名物とありますから、そのタイミングですと集まり易いでしょうか……? 勿論、他の場面でも構いませんけれども。
とても綺麗な場所だね―! コルネリウスさん、お誘いありがとう!皆さまも宜しくお願いします。 朝食を一緒に取るの賛成。1日の予定を話しつつとか? もちろん私も他の場面も歓迎するよ。 どんな風に過ごそうかなって、考えるだけで楽しいね。
わぁ!氷と花のお祭りだなんて幻想的! どう過ごそうか、考えるだけでワクワクするのです。 改めまして、ハル・チフなのですよ! 素敵なご招待に感謝です! エルと過ごす時間も楽しみですし、朝食御一緒できるのもいいですね! ビュッフェスタイルとかでしょうか? 僕はいつも先にいっぱい料理を取ってしまって 後であれもあったのかーって後悔するタイプなのですよ。 よろしくお願いします、なのです!
コルネリウス氏はお誘いありがとうございます。 他の方々もよろしくお願いします。 どこかで集まることに異論はありませんよ。
おーっす! コルネは誘ってくれてあんがとな♪ みんなも今回もよろしくな!! 俺もみんなで集まって何かすんのは賛成だぜ! カップル同士の時間とみんなで一緒にワイワイの時間両方あっていいと思うしよ!
ひとまず、朝食の際に他の方々も一緒する流れで組んでおきますね
はい、朝食は皆さんご一緒する流れで良いでしょうか。私もそのようにプレに記載させて頂きますね。 出発も近いですし、皆さん良い時間が過ごせますように!