雪百合騎士団・強化合宿~真冬のデスロード~

おおくまねこ

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シナリオID:1842

オープニング

●メイア・ブードキャンプ
「みんな、明けましておめでとう。今年もよろしくね」
 ベールコート領主の館の一室にて。雪百合騎士団長メイアは勢揃いした騎士達の前でぺこりと一礼した。そして定例会議が始まる。1月の定例会議は先月の活動報告に加え、昨年の雪百合騎士団の活動を総括する重要な会議なので全ての騎士が集まっていた。

「――こんなところかしら。では最後に、来週から行われる『強化合宿』の参加者を発表するわね」
 メイアの言葉を聞き、騎士達の間に緊張が走る。この時期の『強化合宿』といえば、雪百合騎士団の伝統行事の中でも一、二を争う厄ネタ。強化合宿は定期的に行われる体力測定の成績不審者(BMI高めの者も含む)や素行不良の者(と、少数の自ら参加を志願した者)を対象として行われる。ようは補習なのである。

「名を呼ばれた者は起立しなさい。――エルディア」
「チッ……やっぱり今年もか……」
 雪百合騎士団で一、二を争う問題児エルディアはぼやきながら立ち上がった。
(まあ、アレはアレでスリルがあるからいいけどさ。監督役の目をいかに誤魔化してサボるかってのも合宿の醍醐味だからな)

「次に、ユリーシア」
「は、はいっ」
 続いて名前を呼ばれたのは今年入団したばかりの新人であるユリーシアだった。彼女はエルディアのように素行が悪かったから選ばれたわけではない。単純に、体力測定の数字があまりよろしくなかったのだ。

「……今回の対象者は以上十七名です。名前を呼ばれなかった方で自主的に参加したいという方は後で名乗り出て下さい。あと、私は別件で参加ができないので、肉体強化の専門家であるリザードマンの方に教官として来ていただく予定です。実戦経験豊富なとても厳しい方だそうです。それと、冒険者の方にも募集をかけようかと」
「えっ?」
 メイアが発した以外な言葉に、合宿の対象になった騎士達は口をあんぐり開けた。
「その方が、皆もやる気が出ると思いますから。教官と冒険者さんたちの言うことをしっかり聞いて、訓練に励むように!」
 メイアはそう言って、天使のように微笑んだ。

●
 そして合宿当日。約二十名の雪百合騎士団員と冒険者たちはベールコート郊外にあるキャンプ場に集まっていた。教官のリザードマンは壇上に立ち、皆の前で挨拶をした。

「訓練教官ノターバスダ。メイア氏ノ依頼デ、コノ合宿ノ教官ヲヤルコトニナッタ。健全ナ精神ハ健全ナ肉体ニコソ宿ル。死ヌ気デトレーニングシテ、立派ナ竜ニナルノダ!」
(私ら、別に竜になりたいわけじゃないんだけどな……)
 騎士達は誰もがそう思った。
「返事ガ聞コエナイゾ、雌豚ドモ! 返事ハ『サー・イエス・サー』ダ!」
 2メートルを超える巨漢リザードマンであるターバスが物凄い迫力で怒鳴ると、騎士達はすくみあがった。
「「サー・イエス・サー!」」

(あわわ、凄く怖そうな人だなあ。サボってたら怒られそう……)
 ユリーシアは教官の迫力にたじろぎつつ、コテージの壁をちらりと見た。木製の壁に貼り出された紙には、以下のような文言が並んでいる。

 一、教官や監督の指示に従い、訓練に励むこと。
 二、決められた時間以外の食事は控えること。
 三、就寝時間は守ること。
 四、訓練中は指定のユニフォームを着用すること。
 五、キャンプ場からの逃亡は禁止とする。
 ※上記のいずれかのルールに対する違反行為が発覚した場合、該当者は似顔絵付きでベールコート内の騎士団駐屯書に一週間罪状を掲示されるものとする。

解説

目標:雪百合騎士団の強化合宿(一週間)を監督する。あるいは合宿に参加する。 舞台:ベールコート郊外、湖があるキャンプ場 依頼人:雪百合騎士団長メイア(本人不在) 今年も『雪百合騎士団』の強化合宿の季節がやってまいりました。 合宿生達は昼間は監督役たちに追い立てられ、めっちゃ走らされます。 夜は就寝時間を超えて夜中にゲームをしたり、お菓子を食べたり、夜中にこっそり宿舎を抜け出して屋台で夜食を食べたりします。監督役として参加した冒険者は見つけて天誅しましょう。 ちなみにベールコートでは、この合宿はダイエット・シェイプアップに効果抜群とまことしやかに囁かれています。 ※合宿中は監督及び参加者に百合茶が支給されます。 ●強化合宿について ダイエット&シェイプアップをメインとする合宿です。食事の量も減量時期のボクサーの並に制限が課されます。 監督役として合宿に参加した冒険者は『ひんやり棒』(後述)で合宿生を追い立てて走らせる役割が課されます。合宿生として参加した場合は、騎士達と協力して頑張って監督役から逃げて下さい。 ※鬼ごっこの範疇ならば、監督役、合宿生共にスキルの使用もOKです。 ●紋具『ひんやり棒』 監督役に支給される冷気を発する柔らかい棒です。これで殴られるととても冷たいので、合宿生たちは必至に逃げます。 ●合宿所について 一棟あたり3人~4人を収容できるコテージが点在するキャンプ場です。なぜか夜になると屋台の飲食店が出ます。 ●合宿時のユニフォームについて 男子は普通のトレーニングウェアですが、女子は体操服とブルマです。監督役は着なくても構いません。 ●登場NPC 雪百合騎士団員……約20名 雪百合騎士団の合宿参加者です。授恵者の要注意人物、非授恵者で身体能力が低めの者、あるいはダイエットしたい者達です。 ターバス教官 今回の合宿の教官として雇われたリザードマン授恵者です。指導方針はスパルタだが、教え子の顔と名前は全て記憶する主義のナイスガイ。ひんやり棒を振り回し、合宿生たちを追い立てます。夜は定期的にコテージを巡回に来ます。ちなみに睡眠時間は常人より遥かに短いです。

マスターより

おおくまねこです。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。今年最初のシナリオはリクエストRシナリオです。トンチキ寄りの日常シナリオです。ご興味がありましたらよろしくお願いいたします。

リプレイ

●
「今更自己紹介は不要でしょうけど、冒険者のアルトよ。今日はみんなのトレーニングを厳しく監督させてもらうからよろしくね」
「監督役のネーヴェです。一週間よろしくお願いしますね」
「雪百合騎士団の皆さん、お久しぶりです。今回は皆さんの合宿の監督役となります。宜しくお願いしますね。ターバス教官は厳しいことを言ってますが、無理のない程度で。ああ、それと怪我した際は言って下さいね、回復しますから」
 監督役として今回の『メイア・ブートキャンプ』に参加したアルト=ミルドレッド=バ・ロッサ、ネーヴェ・グラヌローザ、キーゼはターバス教官の隣に立ち、雪百合騎士団のメンバーへと挨拶した。

「冒険者の訓練生は私達二人みたいですね。一緒に頑張りましょう」
「そうみたいですね! 厳しい訓練みたいですが、力を合わせてやり切りましょう!」
 ほんわかした笑顔を浮かべながら話しかけてきたシルク・メイプルリーフに、カミンル・マオは元気よく答えた。シルクは冒険者だが、ダイエットの為あえて訓練生として参加した。人に見られて困るような見た目をしているつもりはないが、どうせならシェイプアップして美しくなりたいなー、ぐらいの気持ちでの参加である。合宿中は美容健康に百合茶が出るというのも見逃せないポイントだった。食事制限があると聞いているので、無制限に飲めるわけではないのだろうが……。
「ところで教官! 僕はどっちの恰好をすればいいのでしょう!」
 カミンルはぴしっと手を上げ、ターバス教官へと質問した。カミンルは見た目は美少女だが、付くものが付いているのである。自分はトレーニングウェアとブルマ、どちらを着れば良いのだろうか? ターバスはカミンルをまじまじを見つめ、こう言った。
「雌豚デハナイノカ? ヒューマンノ性別ハヤヤコシイナ! 好キナ方ヲ着ロ!」
「分かりました! 教官!」
「返事ハ『サー・イエス・サー』ダ!」
「さー・いえす・さー!」
(乙女(男)だから迷っちゃう! しょうがないね!)
 悩んだ挙句、カミンルはユニフォームは日替わりで行くことにした。

●
「しかし、キレイどころがこれだけ揃うと服装も相まって眼福ですね」
 天眼で騎士達の体調に気を配りながら、キーゼは感慨深げに呟いた。彼は表情の変化に乏しいが、感情がないわけではない。綺麗な女性は割と大好きだ。体操服&ブルマというレアな服装もお気に召した模様である。
「監督役として参加致しましたけれど、この追いかけっこを真剣にこなせば私自身にもシェイプアップ効果がありそうですわね。これは気合いを入れて頑張らなくては」
 ネーヴェはひんやり棒を手に、ふふ、と微笑む。しごかれる騎士達にはちょっと気の毒だが、仕事である以上手は抜かないつもりだ。ネーヴェは張り切って柔軟体操を始めた。

「これがひんやり棒ですか。なんとも不思議なデザインですね……」
 キーゼは準備体操をしていたネーヴェの背後に忍び寄ると、おもむろにひんやり棒を首筋に当てた。
「……きゃっ!」
 びっくり仰天したネーヴェは危うく転びそうになったが、踏み留まり、キーゼを涙目で睨み付ける。
「キーゼさん、急に驚くじゃありませんか、もうっ」
「いえ、どんなものかと思いまして……相当冷たいみたいですね、これ」
「もう、お返しです!」
 キーゼがしれっと言い放つと、ネーヴェはぽかぽかとひんやり棒でキーゼを叩いた。

●
「ナンダソノヘッピリ腰ハ! ソレデモ玉ツイテルノカ! モット本気デ走レ!」
「ふぇ~ん! ついてませ~ん!」
「……私が聞いていた合宿と全然違ってたけど……ま、これでここのみんながピシッとしてくれるなら別になんだっていいもんね」
 アルトはターバスに追い立てられ、半泣きで走っている騎士達を遠くから眺めながら呟いた。彼女は今回監督役としての参加だが、何故か(女性が大半の)騎士達と同じく、体操服とブルマ姿であり、ぴっちりした体操服によって強調された胸には、「あると」と大きく書かれた名札が躍っていた。

「さて、私もあの子達をしっかり監督しないと。……これがひんやり棒ね」
 アルトは訓練用の秘密兵器、ひんやり棒を手に取ってまじまじと見つめた。試しに振ってみると、冷気を発しながらぷるんぷるんと震えた。一体何で出来ているのだろうか……。
「……なにこれ……ちょっと、キモい……。ちょっとしばらく蒟蒻(こんにゃく)みたいな料理食べたくないかも……」

●
「竜人の誇りを胸に我らはゆく~♪ 命を賭けて戦え! 戦え! 戦え! いつか真なる竜へと至る為!」
 勇壮なマーチを口ずさみながらターバス教官は騎士達を追い立てる。歴戦のベテラン授恵者という触れ込みだけあり、ターバスはぶっ続けで走り回りながら騎士達をひんやり棒で次々とおしおきしていた。

「もう少しで休憩です。みなさん、頑張りましょう!」
 あえて隊列の後方を走っていたシルクは、弱っている騎士達に積極的に話しかけ、応援した。彼女は授恵者なので、まだまだ体力が残っている様子だ。
「カミンルさんはまだ大丈夫ですか?」
「こういう訓練はわりと平気です! ありがとうございます!」
 シルクの側を走っていたカミンルはシルクにウインクを返した。元々脳筋なので、こういう訓練は得意分野なのだ。
「ヨシ! イイゾ、雌豚ドモ! 十五分休憩ダ!」

●
「ああいう体育会系のノリは苦手なのよね……よっこいしょっと」
 ターバスとはだいぶ離れた位置で騎士達を監督していたアルトは、実家から連れてきた馬に颯爽と跨り、騎士達へと突撃した。
「さあ、これで叩かれたくなかったら必死に走りなさい!」
「つめた! アルト様! それはズルくありませんか!?」
「仕方ないじゃない。私は走るのが得意じゃないんだから。それに馬に乗るのだって体力使うのよ」
 アルトは馬で轢かないように注意しながら、参加者の首の後ろに的確にひんやり棒でぺちぺち叩いて回った。

●
「ネーヴェさん、エルディアさんは先ほどから手を抜いている様子です。おしおきして来てください」
「了解ですわ」
 天眼で訓練全体の様子を監督していたキーゼは、ネーヴェに耳打ちした。キリッと表情を引き締めたネーヴェはひんやり棒を手に問題児(エルディア)へと突撃していく。
(授恵者と非授恵者では身体能力にも差が御座いますし……何より真面目に走っていらっしゃる方を、必要以上に追い立てることは致しません。ですが)
「――手を抜いている授恵者相手には容赦致しません。私も訓練したいですし、全力でお付き合い下さいましね」
「げっ! ネーヴェ監督!」
 エルディアは長い耳をピコピコと動かし、ダッシュで逃げた。エルディアは授恵者の為、脚の速さ自体はネーヴェとそう変わらない。そこでネーヴェは、エルディアを捕獲するべく魔法をぶっ放した。
「あいた! なんだこりゃ、光の壁!?」
 突然発生した結界に正面衝突し、すっ転んだエルディアは悪態をついた。
「光縛封ですわ」
「き、きたねえぞ!」
「問答無用です!」
「ぎゃー!」
 ネーヴェは容赦なく、エルディアの素肌にひんやり棒をびしばし叩き込んだ。

●
 午前の訓練が終わり、午後の自由行動時間となった時、二人の騎士がお茶をしていたキーゼとネーヴェに話しかけてきた。
「教官どの、戦闘訓練をお願いします!」
「あなた達は……ユリーシアさんとイザベラさんでしたか?」
「はい。覚えて頂いて光栄ですわ」
 キーゼ達には話しかけてきたのは新人騎士とユリーシアと、先輩騎士のイザベラだった。
余談だが、イザベラは優秀で合宿対象者ではなかったのだが、妹分のユリーシアが心配で合宿に自主参加している。
「ちょうど私達も二人いますから、二対二にしましょうか、ネーヴェさん」
「ええ、もちろん構いませんわ。私達の連携の練習にもなりますし」
 ネーヴェは祭刀とひんやり棒を構え穏やかに微笑んだ。

●
「ソコ! ペースガ落チテルゾ!」
「ひゃあ!?」
 いつも間にか接近していたカミンルの背後に接近していたターバス教官が、ひんやり棒をぶつけてきた。
「ひゃん!?」
「サラニモウ一発ダ!」
「つめたー! 訓練は平気ですけどSM趣味はありませんー!」
「ホレホレ!」
「そういう趣味はありません! だからやめてください! やめてって言ってるだろ! いい加減にしろ!」
 ターバスの執拗なひんやり棒攻撃に、ついにカミンルは切れて叫んだ。
「教官ニ逆ラウトハイイ度胸ダナ! ナラバ戦闘訓練ダ! ソノ怒リヲ俺ニブツケテコイ!」
「望むところだぁ!」
 勢いでカミンルはターバスとの戦闘訓練になだれ込んだが、ターバス教官は鬼のように強かった。

●
 本日の訓練が終わり、騎士達はゾンビのような重い足取りで食堂へと向かった。しかし、訓練生達を待っていたのは、修行僧の如く質素な夕食であった。
「夕食、これだけ!? もっと肉は!? デザートは!?」
 カミンルは叫んだ。
「ハッ」
 ターバスは冷笑を浮かべ、鼻で笑った。
「そんなものがあると思ってるのかおぼっちゃんよってツラで見ないでください!」
「……」
 カミンルの隣では、シルクが無言で険しい表情をしていた。くいしんぼうの彼女にとっても、この分量はきつかったようだ。

「おかしいですよ教官! あれだけの運動量でこの食事! 食べ物は血となり骨となり肉となるんですよ! つまり! この量は! 体を鍛える目的ならむしろマイナス! 皆もそう思うよね!」
 カミンルはバン、と机を叩くと、雪百合騎士団のメンバーを味方につけようと、大声を張り上げた。だが……
「ヨロシイ、ナラバ戦争ダ」
「すみません、なんでもありません」
 ターバスにめっちゃ睨まれたカミンルは昼間のしごきの恐怖が蘇り、すごすごとひっこんだ。その時、エルディアがカミンルにこっそりと耳打ちした。
(おい、カミンル。夜中にこっそり抜け出して飯に行こうぜ。この近くの街道に屋台が出てるんだ)

●
 草木も眠る丑三つ時。多くの騎士達は昼間の厳しい訓練に疲れ果て、ぐっすりと眠りこけていた。だが、一部の元気な者、そして、空腹に耐えかねた者は、こっそりと合宿所を抜け出し、近くの街道に出るというシャルガネのおでん屋の屋台に足を運ぼうとしていた……。

「例年、抜け出す方がいるそうですからね。見つけたらおしおきです」
 ネーヴェは魔法の灯りで周囲を照らしながら、巡回に励んでいた。ネーヴェは明るい所で見るとエルフらしい儚げな美女だが、今は真夜中で暗い上、顔がライトアップされているので、ばったり遭遇すれば男でも悲鳴を上げるかもしれない。
 ネーヴェはしばらくうろうろしてみたが、みな、灯りを消して寝ているようだった。
「今日はみんな寝ているのでしょうか。なら良いのですが。ところでキーゼさんの姿が見えませんが、どちらへ……」
 ネーヴェはいつの間にか、キーゼの姿が男性用のコテージから消えていることに気付いた。

 その頃、なんとキーゼは件の屋台で晩酌をしていた。
「どうせ制限したところで抜け出して屋台に行くものは出るに決まっています。あの分量は少なすぎですからね……」
 キーゼは持参したスルメをかじり、焼酎を煽り、屋台の味を堪能していた。もし訓練生が今の彼の姿を見れば、絞め殺そうとするかもしれない。
「うむ、噂通りここの屋台は穴場ですね。マスター、焼酎のお代わりを。大根と牛すじもお願いします」
「へい、まいど」
(合宿生が来ても、一品奢れば口止めも容易いでしょう。それまではここでのんびり……)
 ほろ酔い状態のキーゼだったが、突然、周囲の空気が一気に10度近く下がったような寒気を覚え、ぐりんと、振り向いた。

「キーゼさん、何をやっていらっしゃるのですか……?」
 そこには、笑顔で怒りのオーラを漂わせたネーヴェが立っていた。
「おや、ネーヴェさん。いえ、ここで張っていれば合宿生が来るかなと」
「私には夜食を楽しんでいらっしゃるようにしか見えませんが? 夕食が少なかったのは分かりますが、監督自ら規律を破っては合宿生に示しがつかないでしょう。これは朝までお説教が必要でしょうか。勿論、来て頂けますよね?」
 ネーヴェは有無を言わさず、キーゼの首根っこを掴んでコテージへと引きずっていった。キーゼは正座でネーヴェの説教を聴かされながら、ぼそりと呟く。
「教官側が抜けてはいけないというルールはなかった気がしますね……?」

●
「理由はよくわかりませんが、ネーヴェさんがキーゼさんを引きずりながらコテージに戻りました! ターバス教官も今は姿が見えません。チャンスですよ!」
 灯りを消した状態で気配を殺し、ずっとチャンスを窺っていたカミンルは脱走組に声をかけた。
「よし、皆さん行きましょう!」
 食いしん坊のシルクを先頭に、飢えた訓練生達は屋台へと猛ダッシュしていく。しかし、彼らは気づいていなかった。実は、この合宿にいる監督は四人ではなく、五人だったのだ!。正確には四人と一匹。そう、存在しないはずの第五の監督の正体は、9時にはすやすやと眠り始めたアルトに代わって訓練生達を監視していたアルトの栗鼠(ペット)、チャールズである! チャールズは一部訓練生達の脱走に気付き、すぐさまターバスの元へと走った。

●
「まずい、教官が動き出したぞ! このままだと見つかる!」
 見張りをしていたエルディアは悲鳴を上げた。
「教官に見つからずに屋台に行く良い作戦があります。誰かが教官の囮にとなるのです。その間、他の人が屋台へ行く。単純にして効果的! 完璧ですね!」
 カミンルはしたり顔で囮作戦を提案した。
「なるほど、ナイスだ! で、誰が囮をやるんだ?」
「いいだしっぺでいいんじゃね? 冒険者だし」
「冒険者マジリスペクトっす!」
「ま、待って下さい、冒険者なら、僕の他にもう一人……」
 カミンルはシルクの方を見た。
「頑張って下さい、カミンルさん。戻ってきたらハグしますから」
 満面の笑顔で応援されてしまった。
「……ちくしょー! 僕の屍を超えていけぇええええ!」
 こうして、人柱となったカミンルは教官の注意を自分に引き付ける為、雄叫びを上げながら合宿所を走り回った。
「雌豚ァ! 貴様何を夜中に騒イデル!? ソンナニ俺ニシゴカレルノガ気ニ入ッタノカ!? 発情期ナノカ!?」
「あ、やっぱり怖い助けて! きゃあああ!」

●
 カミンルの尊い犠牲により、シルクや騎士達はこっそりと屋台の食事にありつくことができた。そして、合宿が終わった後、ベールコートの騎士団詰め所には写真付きで以下のような掲示が一週間貼り出された。

「カミンル・マオは夜中にこっそりコテージを抜け出し、屋台に行こうとして捕まりました」

 かくして、雪百合騎士団の強化合宿は、部外者以外の失格者を出さず、無事に幕を閉じた。そして、参加者たちの大半は、無事1~2キロのダイエットに成功したそうである。

マスターコメント

合宿お疲れ様でした! 一名星になった方もいましたが、騎士達のトレーニングは無事に完了したので、結果は大成功とさせていただきます。またご縁がありましたらよろしくお願いします。
ショートシナリオR

ショートシナリオR普通 報酬:多い5 / 4〜8人

2022年01月31日 01時48分09秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    …………… アルトよ、よろしく… まだどうするかは決めてないけど… というか、団長不参加で団長の名前のブートキャンプ………?()

  2. No.2

    シスターシルクです 最近美味しいイベントが多かったのでここらで少し身を引き締めようかと思いまして おつきあいくださるなら幸いです

  3. カミンル・マオ

    カミンル・マオと申します!皆よろしくね! って、ナイスガイの教官がいるって聞いたのにリザードマンじゃないですかー! ちょっとリザードマンの方は守備範囲外というか……。 はっ!も、もちろん合宿は合宿生として参加します! 監督役なんてできないからね!しょうがないね!! どなたか一緒に頑張ってくれる方がいたら是非一緒に! イケメンだと嬉しいなー誰かいないかなー(ちらっ ちらっ あ、いえ、もちろん女性も男性もどちらの方も大歓迎です! やましい気持ちでは一切参加してません本当です。

  4. キーゼ

    さて、よろしくお願いします 教官側ですかね

  5. ネーヴェ・グラヌローザ

    ネーヴェ・グラヌローザと申します。どうぞ宜しくお願い致します。 今のところは監督側で考えておりますが、まだ少し悩んでおりますね。合宿に参加するというのも楽しそうですわ。 出発まではあと少し日が御座いますから、もう少し検討してみますわ。

  6. カミンル・マオ

    あと2日ほどですねー。 一応、僕の行動方針を言っておくと……。 ーここからメタ入りー 僕は育ち盛りの男児なので、まず夕食の量に文句をたれると思います! そして、そうなれば必然!こっそりと屋台へ向かいます!折檻なんて怖くねぇ! そんなわけでたぶんわりと問題児になりそうですが……。 ひんやり棒で折檻しないでくださいね! 絶対にしないでね!絶対ですよ!絶対!! 【何かしらで絡んでいただければ幸いです】

  7. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    しまった、もう出発なのね んー…、なら私は監督側、かしらね?

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0