アラクネーの群れを迎撃せよ
望月誠司
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シナリオID:1836
オープニング
「くっ、蜘蛛だぁあああああああっ!!」
豊満な女人の上半身と巨大な蜘蛛の下半身を持つ亜人だった。
アラクネーと呼ばれる亜人の一種である。
蜘蛛部分だけで2m以上はあるだろうか。女身部分と併せるとその高さは3mに迫る。
1m以上ある巨大な六本の足を高速で動かし、大地を抉りながら蜘蛛型半人亜人は高速で駆けつつ、女身部分が虚空に腕を翳した。
白手が紫色に輝き網状に広がる紫光が放たれ、悲鳴をあげて逃げている少女の背へと迫る。
網光が少女へと命中するとそれは包み込むように絡みつき強烈に少女の身を束縛した。
脚がもつれ転倒した少女が恐怖に引きつった顔で後方へと振り向く。
高速で巨大な蜘蛛脚を蠢かせながら接近してきたアラクネーはその脚のうちの一本を振り上げると先端に紫色の光を纏わせ少女へと振り下ろした。
鋭い足先が少女の身を貫いた。少女の口から苦悶と共に鮮血が吐き出される。さらに少女へと突き刺された脚の節が膨れ上がるように蠢き、収縮と膨張を繰り返した。
すると少女が絶叫をあげながら急速に木乃伊のように皺だらけになり萎れてゆく。血肉と共にエーテル、生命力を吸い取っているのである。
瞬く間に骨と皮だけになってしまい絶命した少女の身をアラクネーは脚を振り回して放り捨てるとまた次の獲物を狙い高速で駆け出す。
街道沿いの小さな宿場町のあちこちから悲鳴が響き渡っている。
アラクネーは一体だけではなく、五体もの群れで襲いかかってきていたのである。
――そういう夢を、預言の魔女は見た。
解説
マスターより
リプレイ
宿場町カナアンを囲む石壁、その門を守る衛兵――恐らく、授恵者ではなく一般人だろう――へと黄金の髪と瑠璃色の瞳を持つ長身痩躯のエルフ青年が脅威を伝えている。
ロイ・アウレアだ。
「自分達が迎撃するので、ここまでは来ないとは思いますが、万一の際には」
と警戒といざという時の避難を促しておく。
衛兵は半信半疑な表情を浮かべていたが「まぁわかった。警戒しておく」と頷いた。
その後、冒険者達は予知夢に出てきたという荒野へと向かう。
「オペラさんの予知夢は当たるからなぁ……」
ロイはギルドで説明された光景を思い返しつつ呟いた。
「半人半獣? の亜人、ですか……弱者を狙い襲う亜人など、餓えたクリーパーと同じですよね」
艶やかに長い銀髪と金色の瞳を持つ少女が言った。イヴェール・イリュジオンだ。
「町へ行かせる訳にはいきません」
その言葉に黒いマフラーを巻いた金髪碧眼の青年が頷く。
「俺達で確実に仕留めたい所だ。兵に警戒は促したが、万一逃がすと町壁の内側に入られかねない」
だわと呼ばれる青年だ。故郷の村を襲った巨大な水の蛇"水の災害"を殺す方法を探し続けている。
「アラクネーか、上半身だけなら、まだ眼福で良いんだがなぁ……」
歩きながら顎を撫でつつそんな事を言っているのは紫髪のハーフリング、バーネット・フォーサイスだ。小柄で子供のような見た目だが、飲む打つ買うの三拍子を嗜む流浪の術師である。
周囲より視線が向けられると男は肩を竦め、
「ま、襲って来る奴らは迎え撃つしかないな」
とのたまった。
「町を守る為にも、一匹残らず叩っ斬ってやるぜ!」
ブロンドの黒騎士アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが気合の声をあげ、ロイが頷く。
「ああ、人を食料とする存在の跳梁を許す訳にはいかないな」
冒険者達はやがて預言に記された地に辿り着き、そこで待ち受ける事しばし。
銀髪の猫科の半獣青年セリオス・オーガストが、その超人的な視力を備えた銀色の瞳で荒野を睨んでいると、彼方に複数の影が出現したのを視界内に捉えた。
「来たぞ」
2mはあるだろうか、巨大な蜘蛛の脚が六本、高速で蠢いて大地を抉りながら高速で迫って来ている。
蜘蛛部分の上には美しく豊満な人型の女身がついていて、併せるとその高さは3mにも迫る。蜘蛛型半人亜人アラクネーだ。
「人間と蜘蛛の半身を合わせた巨体、恐ろしい異形ね……」
絹のように滑らかに長い金髪を、後頭部にて青紐を用いて結い上げている若い娘が呟いた。神官戦士のロゼットである。
曰く「荒野だからハッキリ見えるけど、山岳や樹海で遭遇したら人間の半身に惑わされて油断してしまうかもしれないわ」との事である。
確かに迂闊な何人かはひっかかりそうだ。昔話でも良くある。
「宿場には一体も通す訳にはいかない。ここで倒しましょう。幸い、預言の魔女のおかげで相手の手札は割れているわ」
実物を目の当たりにして改めて必殺の念を固めつつロゼットは戦槌を振り上げエーテル波動を周囲へと解き放った。
「勇敢なる者たちに戦神の加護を与え給え!」
支援を受けるべくロゼットの周囲に集まっていた冒険者達――全員である――のエーテルが急激に増幅・上昇し、その身より鬼火のような蒼白い光が噴き上がってゆく。蒼炎咆吼だ。ロイが折り目正しく「ありがとう」とロゼットへと礼を述べ、イヴェールもまた信頼出来る友人の武運と無事を胸中で祈る。
ブロンドの女聖職者シルク・メイプルリーフもまた豊穣神? の呼び声の備えがあったが、これはブルーフレアと同種の力で効果が被るので、効果が切れかかるまでその使用は待つ事にする。
やがて彼我の距離が詰まってゆくと、高速で大地を駆けていたアラクネー達はさらに加速した。巨大な蜘蛛脚が超高速で蠢き大地が削られ砂埃が噴き上がってゆく。
最も速くに攻撃可能態勢に入ったのは弓持ちのロイだ。
金髪のエルフ青年は攻撃の為に精神を集中させ迫るアラクネー達を見据える。
敵は巨体だが、かなり素早い。その回避能力は高いだろうか?
そう低くもなさそうだったが、ブルーフレアの援護を受け攻撃集中しているロイの弓の精度で中てられない敵というのは、明確に回避に優れた類の敵である。
(このアラクネー達はそこまでではない筈)
そうであるならオペラから注釈がついている筈だ。
戦術眼にて得ている情報を分析し己の弓の精度ならば中てられるだろうと判断をくだして、グラヴィティボルトを選択する。
180cmある長尺の弓に矢を番え、黄金髪の細身のエルフ青年は月が満ちるように目一杯に引き絞った。番えた矢の先端、鏃にエーテルを集中させ重力場に転じ結集する。瑠璃色の瞳で先頭中央のアラクネーを睨み、呼吸を止め、撃ち放つ。
弦音を響かせながら長弓より勢い良く放たれた矢は、旋転しながら唸りをあげて空を裂き、アラクネーの腰部分に炸裂、凶悪な破壊をもたらすと共に重力波がその全身へと絡みついてゆく。
バーネット、天眼と戦術眼とで場を俯瞰し思考している。
五体のアラクネーは分散して接近してきている。Vの字を逆さにしてやや平たくした陣形が近いだろうか。
手持ちの魔法の範囲では一度に一体しか狙えそうにない。何処を狙う。
(端からいっとくか)
赤い結晶があしらわれた杖の先端にエーテルを収束、蒼白い光の槍を出現させると、杖を構え、踏み込みと共に振り下ろした。
杖の遠心力で加速し投擲された蒼光の槍が、唸りをあげて右端のアラクネーへと迫り、蜘蛛人は咄嗟にかわさんと機動するも槍は逃さず突き刺さり、破裂、蒼白い光粒子を煌めかせながら蜘蛛の脚へと広がってゆく。スネアージャベリンだ。アラクネーは抵抗せんと身をよじらせるもバーネットの圧倒的な呪力は、抵抗を押し切って絡みつき、脚部の動きを強烈に阻害してゆく。
紫髪の術師はさらに素早くエーテルと共に杖を操るとその向かって左隣のアラクネー目がけて呪力を解き放った。
不可視の重力場が展開し、やはり急激にアラクネーの前進速度が鈍ってゆく。グラビティフィールド。
他方、だわは黒いマフラーを靡かせながら駆け青色の瞳を向けていた。左から二番目のアラクネーを睨み、視線にエーテルを乗せて撃ち放つ。邀撃だ。
反応した蜘蛛女の金色の瞳が、だわを見つめ返す。彼女は今、同族の血臭を感じている筈だった。視線がだわへと集中してゆく。
イヴェールもまた瞬間的に加速し長い銀髪を靡かせながら駆けていた。最左の半人半蜘蛛の亜人へと肉薄、金色の瞳で睨み据え、殺気を放つと共にエーテル波動を飛ばす。シーザーロアだ。吹きつける殺気に反応し、機動する蜘蛛女が首を動かしイヴェールを見つめた。
シルクはロイのグラヴィティボルトで中央先頭のアラクネーの動きが阻害され隙が生まれているのを見て取ると、身に纏う蒼白い光を宙に曳きながら矢の如く駆け、右手に握るトンファーを光輝かせつつ踏み込みざまに振るった。
アラクネーは咄嗟に横にステップするも、回転する白銀の旋棍が魔獣の腹部を捉え強打する。女身の口より甲高く奇怪な昆虫じみた悲鳴が洩れた。
「アラクネー共め! 貴様達を殲滅する!!」
ブロンドの黒騎士アルベルトは、荒野へと視線を走らせまだ攻撃を受けていないアラクネーを把握すると――ダメージを受けていないのは最左、左中間、右中間の三体だ。向かって左の二体はイヴェールとだわがスキルで引き付けているので、狙うなら右中間の個体が良いだろうか――エーテルを解放、爆発的に加速して飛び出した。
意識を攻撃に集中させ、城塞守の力を宿す黒い甲冑の帝国騎士は、鬼火の如き光を全身より迸らせながら半人半蜘蛛の亜人へと迫る。赤く輝く竜鉄の大太刀を振り上げる。裂帛の気合と共にエーテルを全開に解放、全霊を籠め女身の眉間目がけ振り下ろす。
天地を貫く稲妻の如き赤い光が上から下へと走り抜けた。
咄嗟に首を振った女身の肩口に赤光が喰い込み、鎖骨から胴を抜け、下半身の蜘蛛部分までをも斬り裂きながら抜けてゆく。
真っ赤な鮮血と青みがかった体液とが断面より噴出し、女身の口より奇怪に甲高い悲鳴が響き渡る。並の授恵者なら一撃で斬り倒す鬼神じみた壮絶な破壊力だ。
セリオス、彼もまた攻撃がまだ加えられていない敵を狙っていた。最左かその隣か――両方を同時に狙う。
銀髪の半獣人の青年は二本の矢を一気に引き抜くと、エーテルを全開に解放、バイアーディスの骨腱で作られた複合弓に矢を番え、引き絞り、目にもとまらぬ速さで矢継ぎ早に二連射した。
ほぼ同時に二本の矢が撃ち放たれ、旋転しながら空を裂き唸りをあげ二体のアラクネー達へと迫る。二本の矢はそれぞれアラクネー達の白い肩と脇腹に突き立つと、錐のように回転しながら骨肉を抉って深々と突き刺さった。ラピッドショットだ。
黒いマフラーを巻いた金髪の青年だわは、精神を攻撃に集中させ研ぎ澄まし、鬼火の如き光を立ち昇らせ駆け、左右の手に握る棒よりシアンブルーに輝く刃を出現させた。青い刃が燃え盛る太陽の如くに猛烈に輝く。
双剣士は青い瞳で静謐にアラクネーを見据え一閃。
三日月のごとく弧を描いて振るわれた輝く刃が、蜘蛛より生える女身の胴を熱したナイフでバターを裂くかの如く鮮やかに斬り裂きながら抜けてゆく。戦士の一断だ。護りを断つ。
真っ赤な鮮血が噴出しアラクネーが苦悶の奇声を発する。
アラクネーは身をよじらせながらもだわを憎々し気に睨むと、その白い手を紫色に輝かせ薙ぐように振るった。
光が放たれ網状に膨れ上がるように広がり飛来する。
蒼炎光を纏う金髪の青年は、エーテルを解放すると精神を研ぎ澄ませ反応速度を瞬間的に高めた。身をかわさんと飛び退く。
紫光が鋭く伸びた。
光の網はだわを逃さず迫り、包み込むように絡みついて、強烈に青年の身を束縛してゆく。
「キィィィィッ!!」
動きが急激に鈍っただわ目がけてアラクネーは巨大な蜘蛛脚を蠢かせながら踏み込むと、右の前脚を振り上げた。蜘蛛脚の先端に紫光を纏わせ猛然と振り下ろす。
だわは咄嗟に左の青剣を振り上げ脚先へと叩きつける。鈍い音と重い手応えと共に青年の首元狙って振るわれた脚先が逸れ、肩に激突する。
紫光纏うアラクネーの鋭い脚先が、皮革を貫きその下の服とチェーンメイルを貫いてだわの肩に突き立った。
激痛が青年を襲い、さらに突き刺された蜘蛛脚の節が膨れ上がるように蠢き、収縮と膨張を繰り返し、だわの身から血肉とエーテルを吸い上げてゆく。
青年の生命力が急激に減衰してゆくと同時に先程つけられたアラクネーの胴の傷が徐々に塞がってゆく。
が、だわの防御技術はかなり優れていた。
アラクネーの攻撃は決して浅い一撃ではなかったが、蒼炎で強化され左剣で巧みに捌くだわの防御力を以ってすれば一撃で倒される程でもない。アラクネーの回復量はそこそこ程度に留まり、だわもまだまだ健在だ。後二回くらいなら耐えられる。
蜘蛛女は青年から脚を引き抜くと素早く後退して間合いを広げてゆく。
他方、イヴェールはアラクネーへと踏み込み肉薄すると、家伝の宝剣を振り上げエーテルを解放した。
真っ白に眩く輝く光が宝剣の刃を包み込み、幻想の白い花びらが周囲へと舞い散り逆巻いてゆく。
艶やかに長い銀髪の少女戦士は金色の瞳でアラクネーを見据えると、その女身と蜘蛛身の繋ぎ目を目がけ、太陽の如く輝く宝剣を一閃した。光の刃が女身の白い下腹部を斬り裂き真っ赤な鮮血が勢い良く噴出する。
アラクネーが苦悶の奇声を発した。かなりのダメージだ。しかし、唯人なら両断できたかもしれぬ一撃だったが、相手もさるもの、並の人間よりも遥かに強靭だ。この亜人の腰部分を真っ二つにして上下に斬り分けるのはかなり難しそうだ。少なくとも一撃では。
奇声を発するアラクネーは銀髪の少女を睨み、手に紫色を集めると一閃した。光の網が放たれイヴェールを包み込み、その身を強く拘束し強烈に締め上げてゆく。
鬼火のような光を立ち昇らせている銀髪娘は、気合の声を発しつつ身をよじった。ブチブチと音を立てて光の網が引き千切られてゆく。力技で束縛から脱出した。イヴェールは元々抵抗力が高かったがロゼットからのブルーフレアを纏ってさらに高いものとなっている。生半には受け付けない。
しかしそれでもアラクネーは間髪入れず蜘蛛脚を振り上げ鋭い先端に紫光を宿し振り下ろした。紫光網を振り払ったイヴェールは素早く竜鱗の盾を翳す。アラクネーの脚が盾の縁に激突し、先端がイヴェールの肩に突き刺さった。蜘蛛脚の節が蠢いて銀髪少女の身より血とエーテルを吸い上げてゆく。が、イヴェールは涼しい顔をしている。ペインキルで痛みを感じていないのもあるが、装甲が厚くあまりダメージを受けていない。あと四回くらいは吸われてもまだ立っていられそうだ。アラクネーが脚をイヴェールから引き抜き離れてゆく。イヴェールもまた中央へと向かって機動し、いざという時に後衛へと割って入れる位置へと動いてゆく。
「そう忙しなく動くなよ。腰据えて遊ぶとしようぜ」
バーネットは身振り手振りと共に竜石の杖の旋回させるとエーテルを解き放ち、先にスネアージャベリンを撃ち込んだ最右のアラクネーを中心に重力場を展開した。蒼光に纏わりつかれているアラクネーの足が完全に止まる。
接近を完全に封じ込めた紫髪の術師は、意識を攻撃に集中させつつ杖を翳し、先端を動きの止まったアラクネーへと向けた。
赤い結晶があしらわれた杖先より光が膨れ上がり球形を象り、勢い良く射出された。唸りをあげて荒野を貫き飛んだ光弾がアラクネーへと迫り、その蜘蛛部分に命中し盛大に爆裂を巻き起こす。
青い体液と共に骨肉が撒き散らされ、アラクネーが苦悶の奇声を発しながらバーネットへと向かい腕を振るう。紫光の網が飛び、紫髪の小柄な術師が絡まれ、強烈に拘束、束縛されてゆく。バーネットは精神を集中させエーテルを活性化させると杖を振るった。光の網が振り払われ紫髪のハーフリングが束縛から脱出する。抵抗に成功した。
シルクは己自身と身に纏っている武具からエーテルを引き出すと増幅、光と成して右のトンファーよりだわへと向かい解き放った。
ブロンドの少女聖職者のそれは身を癒す為のエーテルが効率的に練り上げられている。金髪の青年の傷がみるみるうちに癒えてゆく。回復力が高い。生命力が一気に全回復する。
さらにシルクはイヴェールへも左のトンファーを向け、癒しの力を秘めた光球を撃ち放った。銀髪の少女の傷もまた瞬く間に塞がり、生命力が最大まで回復してゆく。
中央のアラクネーはシルクへと向かい女身の腕をかざして紫光の網を撃ち放った。金髪娘は咄嗟に飛び退かんとするも、高速で広がりながら飛来した網を避けきれず全身が紫光網に包まれ強烈に拘束、束縛されてゆく。
動きを急激に鈍らせたシルクへとアラクネーは紫光纏う蜘蛛脚を振り上げ、鋭い先端を一閃した。
紫光網に拘束されつつもシルクは咄嗟に身を低く沈めエーテルを集中させた。蒼炎光纏う絹衣の胸部装甲を蜘蛛脚へとあてて受け止める。シスターガードだ。
鋭い一撃が曲面装甲を貫くも深くまでは刺さらず表面のみに留まる。が、蜘蛛脚の節が蠢き、血肉とエーテルを吸収してゆく。アラクネーは傷を癒しながら後退してゆく。
金色のポニーテールを躍らせつつ駆けるロゼット、
(……あの網に完全に捕まるのは避けないと……!)
胸中で呟きつつ機動するアラクネーへと追って踏み込み、ダマスカス鋼の戦槌を振り上げる。
「ここは人間の住む領域、向かってくるなら迎え撃つわよ!」
蒼炎光を纏う女神官は凛とした気合の声と共に踏み込むと、戦槌にエーテルを収束させ振り下ろした。唸りをあげて走った鋼が、ロイのグラヴィティボルトに動きを鈍らせているアラクネーを逃さずその蜘蛛脚を強打、鈍く湿った重音を響かせながら甲殻を破砕し、肉体を蝕むエーテルをまとわりつかせてゆく。破脚砕だ。
直後ロイ、180cmの強弓に矢を番え引き絞り、攻撃に意識を集中させエーテルを収束させている。
ロゼットの一撃にアラクネーの身が揺らいだ瞬間を狙い、張り詰めた弓より矢を解き放つ。
弦音を響かせながら鋭く放たれた剛矢は、旋転しながら唸りをあげて飛び、荒野の宙を一瞬で貫いてアラクネーの身に命中、錐の如く回転しながら骨肉を抉り深々と突き刺さった。
他方、右中間のアラクネーは黒騎士アルベルトへと向かい紫光の網を射出していた。爆発的に広がるエーテルの網がブロンドの青年を包み込み、強烈に束縛してゆく。
蜘蛛女は間髪入れずに蜘蛛脚に紫光を宿すと奇声と共に一閃した。鋭い先端が咄嗟にアルベルトが防御に掲げた大太刀をかわしてその胴へと叩き込まれる。
意識を攻撃に集中させている為、防御が低下している。蜘蛛脚が蠢き血肉とエーテルとが青年の身より勢い良く吸われてゆく。
アラクネーは脚を引き抜いて素早く機動せんとしたが、グラビティフィールドが展開している為、その機動は緩慢だ。
アルベルトは痛撃を受けつつも歯を喰いしばって追いすがる。
「オオッ!!」
裂帛の気合と共に竜鉄の大太刀を振り上げ、エーテルを全開に振り下ろす。
爆風を巻いて赤い光が空間を断裂し、アラクネーの身を袈裟に鮮やかに掻っ捌いて抜けた。ドス黒い鮮血が噴出し、女の上半身が傾ぎ、そして蜘蛛脚から力が抜けて崩れ落ちる。それきり動かない。撃破。
他方、戦況を見渡しているセリオスは、すべてのアラクネーへと攻撃が加えられると判断し竜骨の強弓に矢を番え、目一杯に引き絞っていた。
エーテルが収束されると共に弓身と矢とが眩く強く光輝いてゆく。輝きが最高潮に達した瞬間、セリオスは中央のアラクネーへと向け光の矢を解き放った。
眩い光が錐の如く旋転しながら唸りをあげて飛び、荒野を貫いてアラクネーへと迫る。光の矢はまさしく閃光の如く蜘蛛亜人の胴へと炸裂するとその凶悪な衝撃力を解き放ち吹き飛ばした。アラクネーの巨体が僅かな滞空の後、荒野に叩きつけられて転がり、それきり動かなくなる。撃破。
だわがエーテルを全開に身をよじり紫光の網を引き千切り振り払う。
イヴェールが瞬間的に加速しアラクネーへと向かい駆けつつ、右手に握る宝剣を一閃した。
まだ剣の間合いの外、しかし半月を描いて振るわれた刃より衝撃波が撃ち放たれ、荒野の砂塵を巻き上げながら唸りをあげアラクネーへと迫る。
蜘蛛女は咄嗟に身をかわさんとしたが、衝撃波は逃さず喰らいつき、その白い女身と黒い蜘蛛身の境目部分を強打した。
アラクネーが苦悶の息を発する。
バーネットが意識を攻撃に集中させつつ竜石の杖を翳し光の魔弾を撃ち放つ。眩く輝く光の球が唸りをあげて飛び、最右のアラクネーへと迫り命中、凶悪な爆裂を巻き起こしてゆく。
だわがエーテルを全開に解き放った。荒野の土が抉られると同時、黒いマフラーを巻いた金髪の青年の姿が掻き消える。
瞬間移動したが如く一気にアラクネーへと肉薄した双剣の戦士は、シアンブルーに輝く右の剣を一閃した。青い光が縦に走って、アラクネーの女身の右腕を深く切り裂きながら抜けてゆく。
ロイは意識を攻撃に集中させつつダマスカス鋼の強弓に矢を番えた。先端にエーテルを収束しだわと交戦しているアラクネーへと狙いを定め撃ち放つ。
鋭く飛んだ矢が蜘蛛身に突き刺さると同時、炸裂して重力場を展開し、動きを阻害してゆく。本日二度目グラヴィティボルト。
アラクネーが動きを阻害されつつも蜘蛛脚に紫光を宿してだわへと振るい、だわは精神を研ぎ澄ませ反応速度を瞬間に高めた。タイミングを合わせ左の青剣を鋭く振るい脚を薙ぐように打ち払い、ベクトルを逸らしてかわす。
そこへロゼットが迫りエーテルを解放、戦槌を振り上げ思い様に強打した。風を裂く唸りをあげて振り下ろされたハンマーが、蜘蛛の胴体を痛烈に殴打し、鈍く湿った砕音が鳴り響く。
さらにアルベルトが赤く輝く大太刀を振り上げながら爆発的に加速して踏み込んだ。
「とどめだ!」
裂帛の気合と共に袈裟に一閃。
閃光の如く走った刃が、アラクネーの身を深々と斬り裂き、鮮血を噴出しながら半人半蜘蛛の亜人が崩れ落ちる。
セリオスは竜骨の強弓に矢を番えると、エーテルを解放しつつ鋭く撃ち放った。爆発的に加速して撃ち放たれた矢が唸りをあげて飛び、錐の如く回転しながらアラクネーの身に突き刺さり骨肉を貫いてゆく。
アラクネーは苦悶の声をあげつつも蜘蛛脚を振るい、イヴェールが盾を翳して一撃を受け止める。
シルクがエーテルを活性化して左右の銀のトンファーを振るい身に絡みつき束縛していた紫光の網を振り払った。
だわが最左のアラクネーへと迫り青剣を鋭く一閃。シアンブルーの光がアラクネーの右腕に深く入って斬り飛ばす。真っ赤な血を散らしながら白い腕がくるくると回りながら宙を舞い、荒野へと落下してゆく。
そこへイヴェールが加速して踏み込み宝剣にエーテルを収束、白い華びらの幻影を逆巻かせ、刃を太陽の如く白く眩く輝かせながら振るう。純白の光が半人半蜘蛛の女の下腹部、人と蜘蛛との境目に喰い込み、斬り裂きながら抜けてゆく。赤い血と青い体液とが傷口から勢い良く溢れ出してアラクネーが白目を剥いた。ついに動かなくなる。
最右で機動を封じられているアラクネーへとロイが長弓より矢を鋭く撃ち放つ。爆発的に加速して射出された矢が錐揉むように旋転しながら飛び、アラクネーに深々と突き立ち強烈な衝撃力を炸裂させる。
さらにバーネットが竜石杖を翳した。紫髪のハーフリングは光を集めると、光球と成して撃ち放ち、魔弾は一閃に荒野を貫いて飛ぶとアラクネーの身に激突、凶悪な爆裂を巻き起こした。
かくて、最後の亜人もまた盛大に血肉を散らしながら吹き飛んで、荒野に沈んだのだった。
●
「無傷とはいきませんでしたが、無事に終わったようで何よりです」
銀髪金瞳の少女はすべての敵が倒れると、周囲の味方達が健在なのを見てほっと息を吐いた。
「ロゼットさんも前衛役お疲れさまでした」
「有難う」
イヴェールの労いにブロンドポニーテールの女神官は微笑して礼を言うと、穴を掘り始めた。
「……埋めてあげるのですか?」
「ええ」
ロゼットは頷いた。
「……そうだね、匂いで他の個体が集まったりしたら目も当てられない。オレも手伝うよ」
というロイの意見もあり、冒険者達はアラクネー達の弔いを手伝う事とした。
荼毘に付してから埋める。
「ふぅ、これで仕事終了っと」
煙が初春の蒼天へと吸い込まれてゆき、すべての骨が土の下へと消えた時、バーネットは肩から力を抜いて息を吐いた。
「そんじゃま、カナアンで一杯ひっかけるかね」
男の三道楽を嗜むハーフリングは杖を肩に担ぎ宿場町へと向かい歩き出す。
「それにしても……」
黄金の髪のエルフ青年もまた町人に結果を報告すべく町へと向かいつつ、
「このアラクネーというのは、豊満な女人に似た外観――人の男を惑わす為に進化したのかそれとも単にそういう外観なのか……もしかして男のアラクネーも豊満な女性の外観……? とかなのだろうか」
生態にふとした興味が湧き言うと。
「あぁアラクネーっていうのは単性生物らしいぞ」
流浪のハーフリングの術師はロイへとそう答えた。
「単性……女しかいない?」
「そう、雄のアラクネーというのは存在しない」
ロスガリアの大地にはそういう生物もいるらしい。
そんな会話をかわしつつ一行は荒野を歩いていったのだった。
かくて宿場町カナアンを襲うべく迫り来ていたアラクネーの群れは冒険者達の活躍によって殲滅され、町はその平穏を今日も保った。
予知夢に語られた災厄の未来はまた一つ、覆されたのだった。
マスターコメント
ロングシナリオ難しい 報酬:標準8 / 6〜10人
2022年01月29日 06時57分21秒 公開
相談掲示板
No.1
やはり集中攻撃で各個撃破ですかねぇ 射撃が得意なわけではなく近接タイプならばコチラが固まって居れば勝手に寄ってくるかと
・・・・ん、人が集まってないがシューターのセリオスだ、よろしく頼む フェザーステップもある束縛のある攻撃も仕掛けてくるだから範囲攻撃とかは使いにくそうだな <集中攻撃 個人的にはなるべく避けたいところだな 解説にもあるが攻撃されなかったアラクネは追加攻撃があるとあるから一体に集中攻撃した場合最悪残りが全部追加攻撃になるしな。命中精度は低いようだが当たると厳しいしな。 やるなら最低限全員攻撃しつつ、残ったのがという形だろうか
訂正。ヒーラーの神官戦士ロゼット、よろしくね。 アラクネーの戦術は、紫光網で相手を束縛した後、 吸精撃で攻撃と自己回復をして戦うのでしょうね。 「束縛」を受けて抵抗に失敗すると移動とINIが5低下、 さらに命中と回避が50%低下する、これは痛いわ。 下手すると、こちらは当てられない、回避できない、 移動できない状態で、アラクネー側は自己回復しながら 一方的に攻撃してくるって展開にされかねない。 >皆さん 最初に「ハウリング・オブ・ブルーフレア」を できれば全員に付与したいのだけど、良いかしら。 回避と抵抗を上げて、紫光網の回避・抵抗の成功率を上げる。 紫光網を受けなければ、吸精撃を回避できる率も上がるわ。 味方強化が効いている間に、アラクネーの数を減らせれば 後半は数の有利がさらに活かせるでしょうし。 >戦い方 最終的に何人集まるかにもよるけど、フリーアタックは 実質2回攻撃だから、あまりさせたくないわね。 セリオスの言うように、1体に1人はつけて攻撃を当てつつ 優勢なところを援護して、数を減らしていくのが良いかな?
ウォーリアだ。だわと呼んでもらえれば。よろしく頼む。 万一逃がすと街へ行かれかねないから確実に仕留めたいところだ。 6人で成立、相手は5体。 1人1体抑えつつ、抑えに回っていない奴が攻撃役となって数を減らしていく感じだろうか。 ブルーフレアの支援はありがたい。抑えにあたっては回避盾的な動きが必要だろうからこちらも努力しよう。 網が厄介だな。人型部分の手から放ってくるようだから、腕を切断できればあるいは……。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 どうやら、6人揃ったみたいだな。 アラクネーにフリーアタックをさせないためにも(参加者6人の状況では)セリオスさんやロゼットさんが仰る様に各自1体ずつ相手にする必要があるよな。 けど、1体に対しては2人がかりで向かうことが出来るから、2人がかりで向かう人たちはなるべく早めにアラクネーを倒してもらって他の所の援護に向かう必要があるか。 誰と誰が2人がかりで向かうか早めに決めた方が良いかもな。 >ロゼットさん 「ハウリング・オブ・ブルーフレア」の援護は非常に助かります。 どうもありがとうございます。
なら開始時に強化を付与するわね>全員 私は敵1体を前衛で受け持つわ。 「破脚砕」で敵の命中を削って、回避強化との合わせ技で 敵の攻撃を外させながら、「強打」で蜘蛛胴体を殴ってる。 普通にやれば、攻撃力の高いウォーリアあたりが優勢になり そうだから、ウォーリアが戦う敵から切り崩すのが良いかしら。 アラクネーはフェザーステップで攻撃後は移動するらしいから、 それをちゃんと捕まえられる射程か、移動力を持ってる人が 撃破役として加勢についた方が良いかな?とは。 >だわ 人間腕を狙うのは良い案、ただ高さ3メートルの敵だから 人間腕の位置もそれなりに高い位置にあるのが注意ね。
人が足りていなさそうでしたので…ウォーリアのイヴェール・イリュジオンです。 どうぞよろしくお願い致します(ぺこり ブルーフレアに関してはとても助かりますのでお願いさせて頂ければ。 確かにフリーアタックは阻止しておきたいですよね… そして普通にやれば範囲攻撃から逃れる様に散るのでしたら1体につき1人、対応する人が必要になるのも同意です。 私も1体前衛で対処させて頂きます。シーザーロアで引き付けるか迷うところですね…距離を取られないので斬り易くはなりますが… 束縛した相手を積極的に狙ってくるのでしたら敢えて束縛を受けて殺界で待ち受ける、というのも出来るのですが。
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 現状挙がっている、敵全員に最低限一人が攻撃しつつ、 1体ずつ集中攻撃で撃破するって形で良いと思う。 ただ、敵もフェザーステップで移動しまくるから、場合によっては特定の誰かが抑えるよりも、 その場その場で抑えられる奴が抑えに回る形の方が良いかもな。 >個人行動 今のところは、グラビティフィールドとスネアージャベリンで敵の足止めを考えている。
飛び込み、失礼します。シューターのロイ・アウレアです。 火力が多い方が安定すると感じ参加させて頂きました。よろしくお願いします。 足止めしてくれてるアラクネーを1体ずつ仕留めるように動かせて頂きます。 攻撃を貰わない間合いは意識するが、アラクネーの動きが早いので、自分にもブルーフレアをお願いします。
人手はあればあるほど助かる。歓迎するぞ。 シーザーロアは付与失敗と解除の切れ目が気になる、殺界の封鎖は強行突破で抜け出されるのが懸念か。 難しいところだが、俺はシーザーロアの準備をして行こうと思う。接近用のチャージングも。 あとは程々に火力に振って、早めに決着をつけられるよう努力する。長引くと辛い相手だろうな。
参加した人はよろしくね。ブルーフレアは開始時に 全員にって書いてるけど、念のため受ける旨だけお願いね。 終盤は回復とBS治癒を優先するから、 強化切れを心配せずにガンガン行っちゃってね。 明日は出発、後は現地でよろしく。